ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三

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7 ランチタイムバトル

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 ダンスレッスンでパートナーを組むようになってから、私とレニーはかなり仲良くなった。お互いに名前で呼び合う様になり、お昼を一緒に食べる事も少なくない。そして私はジェリコと競い合うようにしてクレアをお昼に誘い、アロイスと4人でテーブルを囲んだ。もちろんアロイスのために。

 最初のうち、私の行動は周囲に好奇の目で見られた。第二王子の元婚約者が婚約破棄の原因になった相手に付き纒っているのだから。でもクレアが周囲の生徒に私から謝罪があった事を話してくれたおかげで、今では気にする生徒も少なくなった。

 今日、お昼前の授業は選択科目だった。クレアと私は同じ科目を選択しているが、ジェリコは別だ。こういう日はジェリコより先にクレアを誘える! 家政科の授業が終わると、他の女子生徒に声を掛けられる前に即効でクレアをお昼に誘った。今日も私の勝ちよ! ざまみろジェリコ!

 食堂でテーブルに着くとアロイスもレニーを伴いやって来る。

「アロイス、レニーこっちよ~」

 二人の姿を認めた私は大きく手を振る。

「今日はいい席が空いてたね。ここからは中庭が良く見える」

 レニーが食事のトレーを置きながら、窓から差し込む陽光にまぶしそうに目を細めた。

「そうよね! レニーはきっとこういう席が好きだと思ったの。私、ダッシュでここを取ったのよ!」

 好きだと思ったんじゃなくて、知っていたんですけどね。テヘ。

「私も明るい席で食べるのは気分がいいですわ。ジーナさんはいつもながら、席取りが上手ね」クレアもニッコリと微笑んだ。

 私としてはレニーに褒めてもらいたかったんだけど、レニーはクレアの笑みに目を奪われている。小さな溜息をつく私の背後に、不穏な影が覆いかぶさった。

「私も相席させて貰うよ」

 私の背後から声を掛けて来たのはジェリコだった。

「あらジェリコ様、このテーブルは4人掛けですわ!」

 いつもなら私が居るテーブルは避けていたジェリコが、とうとう痺れを切らしてやって来た。毎度お昼休みにクレアを横取りされるのと、私と相席する屈辱さを天秤にかけた結果だったみたいね。苦虫を噛み潰したみたいな表情で、私をチラリと見る。

「少し詰めれば5人座れるだろう」

 ジェリコはクレアとアロイスの間に、椅子をねじ込んだ。アロイスとクレアは少しずつ席を詰めて、私たちが座る半円形のテーブルは5人でぎゅうぎゅうになった。

「最近君たちは随分とクレアに付きまとってるようだが、少しはクレアの迷惑も考えた方がいいんじゃないか?」

 そういうジェリコの口角は上がっているが、目が笑っていない。心なしか顔が引きつっているように見える。あれはジェリコが怒っている時の顔だわ。

「付きまとってるなんてジェリコ様、俺たちはそんなつもりでは……」

 レニーは王室に対しての忠誠心が強い。ジェリコの不興を買ったのかと焦ってしまっている。

「そうですわジェリコ様。付きまとっているなんて、人聞きが悪い。私たちはただお昼を一緒に頂いているだけです。それにクレア様はジェリコ様の婚約者でもないのですから、独り占めはいけませんわよ」

「クレアを独り占めしようとしている訳ではないさ。そもそも元婚約者の君に口出しする権利はないと思うがね。それとも君はクレアに嫉妬してるのか?」

 自意識過剰もここまで来ると相当ね。私が今でもジェリコの事を好きだと思っているのかしら? おあいにく様、初めから私の視野にはレニーしかいないのよ!

 今、私とジェリコの視線の間に火薬を落としたら大爆発すること間違いなしね。

 レニーは私とジェリコのやり取りに目を白黒させている。フォークを持った手も止まったままだ。アロイスだけが下を向いてもくもくと口を動かしている。

「まあ嫉妬ですって? 嫉妬から私がクレア様とジェリコ様を遠ざけようとしていると? そんなこ……」

「ジーナさんはまだこの国に慣れない私に、色々と親切にして下さっているのですわ。ジェリコ様、食後には二人で中庭を散歩しませんか?」

 クレアは私の言葉をやんわり遮って、隣に座るジェリコに首をかしげて見せた。それはもう誰もがうっとりするような聖女の微笑で。

 つい先ほどまでは眉間にしわを寄せて、私に文句を言っていたジェリコも『二人で』散歩と言われたのに気をよくして、食事も早々に席を立ち、クレアを連れ去って行った。

 二人が出ていくと、期末試験が終わった後みたいにレニーが大きなため息をついて椅子の背に体を投げ出した。

「ふう~っ、全く心臓に悪いよジーナ。ジェリコ様に喧嘩を売ってるのかと思った」

「ああいう人は鼻っ柱のひとつや二つ、折って差し上げた方がいいんだわ。ここだけの話、ジェリコ殿下の清廉な王子様って笑顔に騙されてはだめよ、レニー」

 私が前屈みになって囁くと、アロイスはぷっと吹き出した。

「なぁに? アロイス」

「いや、実際王子様だろ、清廉かどうかは置いといて。それにしても、なかなか見応えのあるやり取りだったよ。さてと、今日はこの後の授業はもう無いな。二人は図書室で勉強するのか?」

「ええ、そうよ。試験も近いし、レニーと宗教学の勉強をするの」
「アロイスも行くだろ?」

「俺は今日はやめておく、じゃあまたな」

 私は食堂に残るアロイスを振り返り、二人にしてくれた気遣いにサムズアップとウインクを送った。相変わらずアロイスの目は前髪で隠されていたが、口元はニヤリと笑っていた。

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