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3話 昨日の私は
しおりを挟む私は南出 冬華、三十八才。OL、一人暮らし。
子供の頃はまず名前でよくからかわれた。まぁそれでも本格的なイジメなどには遭わず大学までこぎつけた。
大学卒業後に就職した会社にずっと務めていて、今ではお局様と囁かれている。仕事はそこそこ出来る方だったが、自他共に厳しく接するタイプだったため、よく煙たがられていた。
あの日も、たまたまトイレで女子社員達のおしゃべりを聞いてしまったのだ。
「また書類の不備を指摘されたわよ~」
「南出さんに?」
「そう! 間違った私が悪いんだけど、言い方ってものがあるわよねぇ」
「ナナちゃんが可愛いから嫉妬してるんじゃな~い?」
「彼女、もうすぐ四十なんでしょ? 彼氏もいないみたいだし。趣味もないんじゃない? 寂しい人生よねぇ」
「あれじゃぁ彼氏も出来ないわよ。特に美人でもなければ愛想もないし」
「ガリガリだしねぇ、色気を感じないわ。私が男だったら絶対抱きたくない女ナンバーワンかも!」
嘲笑を残して彼女たちは出て行った。
別に色々言われるのは日常茶飯事だ。可愛げがないのは子供の時から。照れ屋で素直じゃないけど、自分の真価を認めてくれる人がいればそれでいいと思っていた。
ちゃっかり者の五歳年下の妹は両親からも周囲からも可愛がられて、私は格好の比較対象だった。だからこんな風に言われるのは慣れていたはずなのに……。
その日の帰りの電車で『鶏の唐揚げをよく食べる女性は胸が大きい傾向にある』なんて記事を目にした私は、くだらないと思いつつも、ついコンビニで唐揚げを手に取ってしまった。
部屋に帰り、口惜しさと悲しさ半分で唐揚げを口に放り込みながらTVドラマを見ていた私は、ビールを取ろうと立ち上がりかけ、バランスを崩して仰向けに倒れたのだった。
そこから先を覚えていない。目が覚めたらここに居たのだ。
もしかして、倒れた拍子に頭でも打って死んじゃったのかな? それとも唐揚げが喉に詰まって窒息死?
四十路手前の侘しい独り暮らしのOLが自宅で死亡……しかも唐揚げを口に入れたまま。
あーあ、ごく平凡な人生でしかなかった上に、死ぬ時までこんな惨めな姿をさらすなんて。
自分の運の悪さや情けなさに、なんとも言えない気持ちが込み上げてきて、思わず泣きたくなってきた。
そうして終わったはずの人生の続きを、なぜか私は今、ローズ・サトリアとして生きている。そういえば、倒れた瞬間、テレビの音だけがやけに大きく聞こえた気がするわ……。
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