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15話 ミーガンの叱責
しおりを挟むジェイミーは広い自室のソファに座っていた。
テーブルの上にはお茶や菓子が散乱しており、近付くと甘い匂いでむせ返りそうになる。
「ミーガン妃、僕はやっぱり駄目な人間だ、今回も続かなかったよ。ローズは頑張ってくれたけど僕には無理だ。だからあなたももう僕に構わないでほしい」
ミーガンは黙ってソファのジェイミーの隣に腰かけた。
「ジェイミー様、私はただの皇妃でジェイミー様の母でも乳母でもありません。ですが気持ちだけは母親のようにありたいと、常日頃から思っておりました」
ジェイミーは驚いて隣のミーガンを見た。
「ですから無礼を承知で言わせていただきます。泣き言はお止め下さい。ジェイミー様はまだお若く、ご自分の中の可能性に気づいておられません。ただそれだけです。ダメな人間などとご自分を卑下なさってはいけません」
「ミーガン、僕は意気地無しなんだ、頑張れないんだよ。ダイエットだってそうだし、とてもこの帝国にふさわしい君主になんてなれっこない」
「私の姪のローズ。一昨年の建国祭に私の兄のサトリア男爵と皇宮に来ておりました。ローズはジェイミー様を遠くから見かけただけと申しておりましたが、ジェイミー様はローズにお気づきだったと思います」
「ローズを? 記憶にないが……。なぜローズの話になるのだ?」
「いえ、ジェイミー様は私にローズのことを話されました。『僕と似合いの令嬢があそこにいる』と」
ジェイミーは思い出した。
建国祭の舞踏会会場で、自分と同じようにでっぷりと太った令嬢がおいしそうにご馳走を頬張っている姿を。
自分の姿と重ねたジェイミーは、自虐的にミーガンにああ言ったのだった。
「まさかあれがローズだったと申すのか? まるで別人ではないか! たった一年かそこらであれほど痩せたと申すのか?」
「はい。ですからジェイミー様の助けになると思い、ローズを皇宮に呼んだのです」
ミーガンは続けた。
「ローズのメイドにも話を聞いたのですが、食事制限から運動までとても努力していたそうです。ローズは家族に甘やかされて育ち、礼儀知らずで忍耐の無いわがままな子でした」
「ローズがわがまま……」
「そうです。ですが去年、心臓の発作を起こして一度死にかけ、それから人が変わったように努力してあそこまで痩せたのです。ジェイミー様、死ぬ気になってもう一度挑戦なさいませ」
ミーガンは膝の上で硬く握られたジェイミーの手に、そっと自分の手を重ねた。
「世の中には死んだ方がましと思えるような辛いこともあります。でも私やローズはジェイミー様の味方です。弱気になったらいつでも励ましに参ります」
ジェイミーは首を振った。後悔の色がその顔に浮かぶ。
「僕はローズに酷い言葉を吐いた。彼女はもう戻ってこないだろう」
「ジェイミー様がお望みでしたらローズはきっと戻って参ります」
ミーガンは侍女を呼んでテーブルの上を片付けさせた。そしてもう一度ジェイミーを力づけるように、肩を叩いてから出て行った。
菓子の甘い匂いが薄れていく。
ジェイミーは部屋の奥に行き、大きな姿見に映った自分を見つめた。
以前は鏡なんて見たくもなかった……醜く太った自分の姿。
ふと気づけば、洋服にはかなり余裕ができていた。半年近く頑張ってきたのだ、もう半年続けるのも悪くないかもしれないな。
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