どうやらこの物語、ヒロインが一度死ぬ仕様です

山口三

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16話 現実は甘くない

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 屋敷に帰ってきたローズはまっすぐ自室へ行き、ベッドに身を投げ出した。

 はぁぁ~やっぱりそう簡単には行かないものなんだな。

 ここはドラマの世界、お話の中なんだからきちんと計画を立てれば上手く行くと思ってたのに。

 こうやって生きている実感があるし、この世界でこうやって考えごとをしている私がいる。この世界も現実に存在しているんだわ。そして現実は甘くないってことか……日本でもそうだったな。

 うまくやってるって思う時ほど、ちょっとしたことで足をすくわれたりするもの。

 明日はどうしよう? もう来なくていいと言われたけれど。

「お嬢様、お帰りですか?」

 ドアをノックする音がしてエリーが入って来た。
 疲れた様子の私を見て、エリーは早めにお風呂にしましょうと準備をしに行った。

 「ふぅ~っ。気持ちいいわね」

 日本人はやっぱりお風呂よね。DNAにふ・ろ・は・い・れって刻まれてるんだわ、きっと。

「皇宮でのお仕事は大変でございますか?」

 私の背中を流しながらエリーが聞いてくる。

「そうね。気も使うし、ちょっと壁にぶつかっちゃったわ」

「……お風呂の後には冷たいレモネードをお持ちしますね。疲れた時には甘いものが一番ですから!」

 エリーの明るい声は私を元気づけてくれる。エリーには、私が落ち込んでいることがすっかり見抜かれていたんだね。

 お風呂に入ってさっぱりしたら、少し気持ちも軽くなってきた。明日はレモネードを皇子様に作って差し上げよう。蜂蜜漬けにしたレモンをたっぷり入れて。まあそれも門前払いを食わなかったらの話だけれど。 


 翌日もお父様とお兄様と3人でガタガタ揺れる馬車で皇宮に向かった。

 この時間、皇子は自室で遅い朝食を取っている頃かしら・・。皇子の自室に向かって歩いていると、ネイサンが私を見つけ近付いて来た。ネイサンは皇子付きの従者だ。

「ローズ様、皇子様は執務室で外国語の勉強をされておいでです。もうすぐ終了の時間ですのでそちらへお越しください」

 ん? 外国語は今日じゃないし時間も違うと思うんだけど。それに朝食は?

 ちょっとした困惑を覚えながら皇子の執務室の前まで行くとちょうど外国語の教師が部屋から出てくる所だった。

「リード先生」
「ローズ様、お変わりないですか?」

「はい、ありがとうございます」
「皇子がお待ちですよ、どうぞ」

 リード先生は温厚で物静かな方だ。私が挨拶するとにこやかに答えてくださり、中に入るよう促された。皇子が私を待っているの? ということは正式に解雇になるのかな・・。

「ローズです。入ってよろしいでしょうか?」
「ああ、入ってくれ」

 皇子は執務室のデスクにドーンと構えていた。
 皇子の表情は硬く、口を真一文字に結んでいる。やっぱりダメかぁと思いながらデスクの前まで近づいた。

「昨日はすまなかった。君に当たり散らした事、恥ずかしく思う。ローズがまだ僕を見捨てないと言うなら・・いや、一人でもダイエットを続けていくつもりだ。君はまた僕を補佐してくれるだろうか?」

 皇子はそう言いながら自分の手に視線を移した。じっと私の返事を待っている。もしかして表情が硬いのは緊張しているからなのかな? それでも皇子の目には固い決意がハッキリと見て取れた。
 
 意表を突かれた私の返事はちょっと遅れたが「はい、喜んでサポートさせて頂きます」

 と、にっこりと笑顔で答えると、【おおお~~~】という感心した声と拍手がどこからか聞こえてきた。そしてまたピコンと音がして表示が出てきた。

『只今の視聴率3.3%』

 うん、感心してる割には辛口だわ・・。

 
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