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5.紫色の瞳
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ズルズルと時間が過ぎていき、レオポルトはいっそのこと政略的な結婚をしようかと思った。
その時にふと思い出したのが鮮やかな紫色の瞳だった。
レオポルトの執務室にある机の一番上の引き出し、その中にずっと入っていたルチアにもらったハンカチ。
たまに目に付いたハンカチに、癒されたことは幾度とある。
彼女は乳母に渡して下さいと言っていたが、このハンカチと離れがたく、乳母には個人的に別のものを購入し贈っていた。
ああ、そうか。彼女に会いたいのか。
そう自分の気持ちに気付いたのが、半年前。
もう一年半も前の話、彼女が既にどこかに嫁いでいてもおかしくない。
だがもう一度会って話してみたかった。
調べた結果、彼女は結婚しておらずカファロ家はかなり追い詰められた生活をしていた。
ちょうどあの晩餐会の後、カファロ卿が投資詐欺にあったのだ。
ならば援助を申し出て、その代わりに求婚すればいいのではないか。
あの時の少女は二年経ってきっと美しく成長しているに違いない。
うかうかしていたら、彼女目当ての裕福な男が援助と引き換えに彼女に無体を働くかも知れない。
自分の事は棚に上げて、レオポルトはカファロ卿と接触する事にした。
だから彼は今日ルチアに会うことをとても楽しみにしていた。
どんな女性に成長しているのか。きっと美しく成長しているに違いない。
けれど期待し過ぎると会った時に残念だと思うかもしれないと、レオポルトは彼女の容姿の想像を控えめにした。
もしかしたら自分の事を覚えているのではないか。
会った瞬間、あの時の……と何か反応してくれるかも知れない。
いい歳をした大の男が浮ついた気持ちになっていた。
再会したルチアはとても美しい女性に成長していた。想像より上だった。
思わず見惚れてしまい緊張も相まって碌に話せなかった。
だが彼女は全くレオポルトを覚えていなかった。
残念だが二年前のほんの短時間の出会い、覚えていなくても仕方がないとレオポルトは自分に言い聞かせた。
それに彼女は夜会で見初めたという話も疑っていて、何が目的かと聞いてきた。
彼女の様子にこのままでは良くないと焦ってしまい、思わず出た言葉が……
『期間限定の妻』
ない、それはない。とレオポルトは声に出した瞬間思ったが、訂正したらまたどうしてか聞かれてしまう。
二年前の夜会で一目惚れという説明を信じてもらえるのか、信じてもらえたとしても二年も前だ……気持ち悪いと思われるのではないかと彼は躊躇した。
それに寧ろ期間限定の妻という事で、彼女がホッとした様子を見せたのも真実を話しづらい理由になった。
その時、彼女にとって自分は援助を盾に結婚を迫ってきた最低な男なのではないかとレオポルトは気が付いた。
彼がすべき事は彼女との信頼関係を築く事だ。
今、口説くのは悪手だとレオポルトは考えた。
とにかく、妻として一年側にいてくれる事になったのだ。
ならば、ここから信頼関係を築きいずれ恋愛的な発展を目指した方がいいのではないか。
先ずは完璧な結婚式。そして彼女が過ごしやすい部屋の確保。やる事は沢山ある。
レオポルトは、既に迷走していると自分では気付いていなかった。
その時にふと思い出したのが鮮やかな紫色の瞳だった。
レオポルトの執務室にある机の一番上の引き出し、その中にずっと入っていたルチアにもらったハンカチ。
たまに目に付いたハンカチに、癒されたことは幾度とある。
彼女は乳母に渡して下さいと言っていたが、このハンカチと離れがたく、乳母には個人的に別のものを購入し贈っていた。
ああ、そうか。彼女に会いたいのか。
そう自分の気持ちに気付いたのが、半年前。
もう一年半も前の話、彼女が既にどこかに嫁いでいてもおかしくない。
だがもう一度会って話してみたかった。
調べた結果、彼女は結婚しておらずカファロ家はかなり追い詰められた生活をしていた。
ちょうどあの晩餐会の後、カファロ卿が投資詐欺にあったのだ。
ならば援助を申し出て、その代わりに求婚すればいいのではないか。
あの時の少女は二年経ってきっと美しく成長しているに違いない。
うかうかしていたら、彼女目当ての裕福な男が援助と引き換えに彼女に無体を働くかも知れない。
自分の事は棚に上げて、レオポルトはカファロ卿と接触する事にした。
だから彼は今日ルチアに会うことをとても楽しみにしていた。
どんな女性に成長しているのか。きっと美しく成長しているに違いない。
けれど期待し過ぎると会った時に残念だと思うかもしれないと、レオポルトは彼女の容姿の想像を控えめにした。
もしかしたら自分の事を覚えているのではないか。
会った瞬間、あの時の……と何か反応してくれるかも知れない。
いい歳をした大の男が浮ついた気持ちになっていた。
再会したルチアはとても美しい女性に成長していた。想像より上だった。
思わず見惚れてしまい緊張も相まって碌に話せなかった。
だが彼女は全くレオポルトを覚えていなかった。
残念だが二年前のほんの短時間の出会い、覚えていなくても仕方がないとレオポルトは自分に言い聞かせた。
それに彼女は夜会で見初めたという話も疑っていて、何が目的かと聞いてきた。
彼女の様子にこのままでは良くないと焦ってしまい、思わず出た言葉が……
『期間限定の妻』
ない、それはない。とレオポルトは声に出した瞬間思ったが、訂正したらまたどうしてか聞かれてしまう。
二年前の夜会で一目惚れという説明を信じてもらえるのか、信じてもらえたとしても二年も前だ……気持ち悪いと思われるのではないかと彼は躊躇した。
それに寧ろ期間限定の妻という事で、彼女がホッとした様子を見せたのも真実を話しづらい理由になった。
その時、彼女にとって自分は援助を盾に結婚を迫ってきた最低な男なのではないかとレオポルトは気が付いた。
彼がすべき事は彼女との信頼関係を築く事だ。
今、口説くのは悪手だとレオポルトは考えた。
とにかく、妻として一年側にいてくれる事になったのだ。
ならば、ここから信頼関係を築きいずれ恋愛的な発展を目指した方がいいのではないか。
先ずは完璧な結婚式。そして彼女が過ごしやすい部屋の確保。やる事は沢山ある。
レオポルトは、既に迷走していると自分では気付いていなかった。
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