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第八話︰暁の里の歴史
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パチン!と扇子が閉じられた。
彼の語りに圧倒されていた紬は、その音でハッと瞬きをする。
「……」
何とはなしに彗月の顔を見ると、ニコリと笑顔を向けられる。
「ようこそ。」
「……はい。」
やって来たばかりの余所者が、途端にこの里に引き込まれた。
“夢か現か”──こんな景色、まだ夢としか思えないはずなのに。紬にはどうも、この地が自分によく馴染む感覚があった。
(私が、巫女の生まれ変わりだから……?)
まだ少し茫然としている紬を見て、時紀があっと手を打った。
「おーそうだ。そういや、忘れるとこだった。」
彼は紬に歩み寄って、その目元に手のひらをかざす。
「ちょいと失礼」
「え?」
何のことかと聞き返す前に、ふわ、と視界が揺らいだ。
「えーと?妖術が効かないンなら、周りに妖気を張って~……何色が好きですか?巫女様」
「えっ……色?なぜ?というか、これは一体」
「ま、適当でいーか。」
ろくな説明をせずに何かを終えたらしい時紀は、スッと手をどけた。同時に視界の揺らぎもおさまる。
「これで良しっと」
「何も良くはないですが……」
一瞬の出来事だったため、何が何だか分からずにいると、彗月が代わりに説明してくれる。
「瞳の色を一時的に変えたんですよ。貴女という郷守の巫女の存在は、まだ公にされていませんので」
「なるほど、だからバレないようにしたと……妖術を使ったんですか?」
時紀は扇子の先をくるくると回しながら、「ご名答」と笑った。
「俺ァ“幻影”の妖術使いです。巫女様自身に妖術は効かないってんで、あんたの瞳を見たモンに妖術がかかるよう、ちょいと細工しておきました。」
「そんなことまで出来るんですか……」
本当に、妖術ってすごい。そう感心しかけた紬だが、彗月曰く、妖術の効力は使い手次第。単純に時紀の腕が良いらしい。沖と連の“認識阻害”の便利さも、彼らの技量を表していたんだろうか。
「彗月さん。私の目、何色に見えてます?」
「空と同じ色ですね。どうしてこの色に?」
「今日は天気がいいもんで」
「天気が」
本当に適当に目の色を変えられた。しかしまあ、空色の瞳というのは綺麗だろう。一時的なものなら文句を言うこともない。自分では見えないので、手鏡でも持っておくんだった。
「んじゃー巫女の証も隠したことだし、行きますか。」
踵を返し、再び歩き出す時紀。紬は彗月と並んで後に続く。
「どこへ行くんですか?」
「里の心臓、紅蓮邸。あやかしの頭領であり現里長を務める、焔様の御屋敷です。」
焔様──というのはたしか、彗月が言いかけていた主の名前だ。
「三十はいる従者が全員住み込んでも、部屋が有り余るぐらいにゃ立派ですよ」
「それはすごい……」
焔の側近である彗月が住み込んでいるのなら、紬も同様に、紅蓮邸に住むことになるのだろう。前情報で衣食住が充実していそうだったのも、納得である。
「いつもなら新入りさんには、里を隅から隅まで見せて回るんですがね。巫女様は、まず焔様に会わにゃならんので、屋敷に真っ直ぐ向かいますよ」
「わかりました。お願いします」
案内人である時紀は、暁の里のあれこれについて非常に詳しく──まるでその目で見てきたかのように、歴史を語って聞かせてくれた。
「昔々とある戦火で、あやかしの集落が無くなっちまって。見かねた一人の人間が、この異空間を作り出したんです。その人間ってのがー?」
「……始まりの巫女、ですか?」
「ハイそのとーり。」
度々こちらに振って答えさせるので、授業でも受けているような気分になる。聞くと彼は、案内人という役割の他に、里の学校で非常勤講師を務めているらしい。
「始まりの巫女は人間ながら、たった一人であやかし達を守ってくれたんですよ。異空間にあやかしの集落を作って、統治した。やがて身寄りのない人間も受け入れて、人とあやかしが共存する里──“暁の里”を作り上げたんです。」
端的に聞いただけでも分かる。始まりの巫女の功績は非常に大きい。自分はそんな人間の生まれ変わりだというので、他人事ながら、少し誇らしい気分になる。
「すごい人だったんですね、とても」
「えェほんと。あんな超人的な力と器を持つ人間は、そうそう現れんでしょう」
ただ、と、時紀は扇子で手のひらを打つ。
「その始まりの巫女の死が、マズかった。」
「!」
「あんまり若く亡くなったんで、誰かが毒を盛ったんじゃないかとか、あれこれ憶測が飛んだんですよ。後の時代で、単に寿命が短かったことが判明しますけど……当時はもう大騒ぎ。人間はあやかしを疑って、あやかしはそれに憤慨して、両者の関係に大きな亀裂が入った。」
「……そんなことが……」
巫女を失い、人とあやかしが対立する里の光景を想像して、紬は苦い顔をした。
「じゃあ、巫女を嫌うあやかしがいるというのも、その過去の因縁が尾を引いているから……でしょうか?」
「冴えてんねェ、当たりです。あやかしは長生きなもんで、対立時代からの根深~い恨みを持つやつがいるんだ、これが」
争いの火種となった巫女を嫌い、濡れ衣を被せんとしてきた人間を嫌う──そんなあやかしから教育を受けて育てば、若いあやかしの中でも、恨みを受け継ぐ者が現れる。
「古臭い教育で巫女嫌い、人間嫌いになったやつは、紅蓮邸にもいるンですよ。巫女様も会ったんじゃねェかな」
「ああ……会いましたね……」
言われてすぐに紬の頭に浮かぶのは、面をつけた二人の男。
あやかしの年齢は見かけでは分からないが、失礼ながら彼らの態度は、明らかに若輩者だった。恨みの教育を受けているのだと言われてしまったら、あの失礼の数々も許さざるを得ないが。
「里の空気が険悪になった時、一番大変だったのは魔物の件です。知ってます?魔物が何から生まれるか」
「たしか、負の感情や言霊ですよね。……人間とあやかしが憎しみ合う里なんて、魔物にとって格好の場所じゃないですか……」
「そーなんですよねェ。始まりの巫女の生まれ変わり──郷守の巫女が現れなきゃあ、里は魔物の巣窟になるとこでしたよ」
初代の郷守の巫女は、朧気ながら前世──始まりの巫女だった頃の記憶を持っていたそうだ。
彼女は退魔の結界を張り、暁の里を魔物から守った。そして人間とあやかしの関係を修復するべく、尽力した。
「そんで、退魔の結界が弱まる頃に現れたのが、二代目。ここで、結界の効力が限界を迎えるのと、郷守の巫女が現れる周期が、同じぐらいだと分かりました。」
三代目の時には、鬼族・影族が協力し、後世の巫女のための組織的な体制を整えた。影族は彗月の家系のことで、鬼族とは、焔の家系を指す。
「それから四代、五代ときて──」
時紀は振り返り、ピッと扇子を紬に向ける。
「あんたで六代目だ。巫女様。」
「!」
六代目。その数字を聞くことで、自分の運命と立場とを、改めて強く自覚した。
この魂が輪廻転生を繰り返し、巫女の役目を全うし続けてきた。歴代にわたって、人間とあやかしの架け橋となるべく力を尽くしてきたのだ。
紬は、胸が熱くなるのを感じた。
「先代たちから引き継いで……私も、頑張ります。」
「なはは、頼もしいや。六代目は強そうだし、こっちとしても安心ですよ。精神状態も問題なさそ──」
時紀は言いかけて、「っと」と扇子を口元に当てた。
「精神状態?」
紬は思わず聞き返す。
穏やかではない四文字。まるで、過去に問題があったかのような言い方だ。
「先代に、何か?」
「……」
ここまでずっと舌を回して、案内人の仕事をこなしていた時紀が、初めて答えかねるように口を閉じる。
そして、彗月と顔を見合わせた。
「彗月さん」
「……」
先程まで、二人の会話をにこやかに聞いていた彗月は、時紀に問われて苦い顔をする。
「……それは……」
彼が薄く口を開いた、その時だった。
「!」
前から通りすがった女性が、紬の肩にドンとぶつかった。
彼の語りに圧倒されていた紬は、その音でハッと瞬きをする。
「……」
何とはなしに彗月の顔を見ると、ニコリと笑顔を向けられる。
「ようこそ。」
「……はい。」
やって来たばかりの余所者が、途端にこの里に引き込まれた。
“夢か現か”──こんな景色、まだ夢としか思えないはずなのに。紬にはどうも、この地が自分によく馴染む感覚があった。
(私が、巫女の生まれ変わりだから……?)
まだ少し茫然としている紬を見て、時紀があっと手を打った。
「おーそうだ。そういや、忘れるとこだった。」
彼は紬に歩み寄って、その目元に手のひらをかざす。
「ちょいと失礼」
「え?」
何のことかと聞き返す前に、ふわ、と視界が揺らいだ。
「えーと?妖術が効かないンなら、周りに妖気を張って~……何色が好きですか?巫女様」
「えっ……色?なぜ?というか、これは一体」
「ま、適当でいーか。」
ろくな説明をせずに何かを終えたらしい時紀は、スッと手をどけた。同時に視界の揺らぎもおさまる。
「これで良しっと」
「何も良くはないですが……」
一瞬の出来事だったため、何が何だか分からずにいると、彗月が代わりに説明してくれる。
「瞳の色を一時的に変えたんですよ。貴女という郷守の巫女の存在は、まだ公にされていませんので」
「なるほど、だからバレないようにしたと……妖術を使ったんですか?」
時紀は扇子の先をくるくると回しながら、「ご名答」と笑った。
「俺ァ“幻影”の妖術使いです。巫女様自身に妖術は効かないってんで、あんたの瞳を見たモンに妖術がかかるよう、ちょいと細工しておきました。」
「そんなことまで出来るんですか……」
本当に、妖術ってすごい。そう感心しかけた紬だが、彗月曰く、妖術の効力は使い手次第。単純に時紀の腕が良いらしい。沖と連の“認識阻害”の便利さも、彼らの技量を表していたんだろうか。
「彗月さん。私の目、何色に見えてます?」
「空と同じ色ですね。どうしてこの色に?」
「今日は天気がいいもんで」
「天気が」
本当に適当に目の色を変えられた。しかしまあ、空色の瞳というのは綺麗だろう。一時的なものなら文句を言うこともない。自分では見えないので、手鏡でも持っておくんだった。
「んじゃー巫女の証も隠したことだし、行きますか。」
踵を返し、再び歩き出す時紀。紬は彗月と並んで後に続く。
「どこへ行くんですか?」
「里の心臓、紅蓮邸。あやかしの頭領であり現里長を務める、焔様の御屋敷です。」
焔様──というのはたしか、彗月が言いかけていた主の名前だ。
「三十はいる従者が全員住み込んでも、部屋が有り余るぐらいにゃ立派ですよ」
「それはすごい……」
焔の側近である彗月が住み込んでいるのなら、紬も同様に、紅蓮邸に住むことになるのだろう。前情報で衣食住が充実していそうだったのも、納得である。
「いつもなら新入りさんには、里を隅から隅まで見せて回るんですがね。巫女様は、まず焔様に会わにゃならんので、屋敷に真っ直ぐ向かいますよ」
「わかりました。お願いします」
案内人である時紀は、暁の里のあれこれについて非常に詳しく──まるでその目で見てきたかのように、歴史を語って聞かせてくれた。
「昔々とある戦火で、あやかしの集落が無くなっちまって。見かねた一人の人間が、この異空間を作り出したんです。その人間ってのがー?」
「……始まりの巫女、ですか?」
「ハイそのとーり。」
度々こちらに振って答えさせるので、授業でも受けているような気分になる。聞くと彼は、案内人という役割の他に、里の学校で非常勤講師を務めているらしい。
「始まりの巫女は人間ながら、たった一人であやかし達を守ってくれたんですよ。異空間にあやかしの集落を作って、統治した。やがて身寄りのない人間も受け入れて、人とあやかしが共存する里──“暁の里”を作り上げたんです。」
端的に聞いただけでも分かる。始まりの巫女の功績は非常に大きい。自分はそんな人間の生まれ変わりだというので、他人事ながら、少し誇らしい気分になる。
「すごい人だったんですね、とても」
「えェほんと。あんな超人的な力と器を持つ人間は、そうそう現れんでしょう」
ただ、と、時紀は扇子で手のひらを打つ。
「その始まりの巫女の死が、マズかった。」
「!」
「あんまり若く亡くなったんで、誰かが毒を盛ったんじゃないかとか、あれこれ憶測が飛んだんですよ。後の時代で、単に寿命が短かったことが判明しますけど……当時はもう大騒ぎ。人間はあやかしを疑って、あやかしはそれに憤慨して、両者の関係に大きな亀裂が入った。」
「……そんなことが……」
巫女を失い、人とあやかしが対立する里の光景を想像して、紬は苦い顔をした。
「じゃあ、巫女を嫌うあやかしがいるというのも、その過去の因縁が尾を引いているから……でしょうか?」
「冴えてんねェ、当たりです。あやかしは長生きなもんで、対立時代からの根深~い恨みを持つやつがいるんだ、これが」
争いの火種となった巫女を嫌い、濡れ衣を被せんとしてきた人間を嫌う──そんなあやかしから教育を受けて育てば、若いあやかしの中でも、恨みを受け継ぐ者が現れる。
「古臭い教育で巫女嫌い、人間嫌いになったやつは、紅蓮邸にもいるンですよ。巫女様も会ったんじゃねェかな」
「ああ……会いましたね……」
言われてすぐに紬の頭に浮かぶのは、面をつけた二人の男。
あやかしの年齢は見かけでは分からないが、失礼ながら彼らの態度は、明らかに若輩者だった。恨みの教育を受けているのだと言われてしまったら、あの失礼の数々も許さざるを得ないが。
「里の空気が険悪になった時、一番大変だったのは魔物の件です。知ってます?魔物が何から生まれるか」
「たしか、負の感情や言霊ですよね。……人間とあやかしが憎しみ合う里なんて、魔物にとって格好の場所じゃないですか……」
「そーなんですよねェ。始まりの巫女の生まれ変わり──郷守の巫女が現れなきゃあ、里は魔物の巣窟になるとこでしたよ」
初代の郷守の巫女は、朧気ながら前世──始まりの巫女だった頃の記憶を持っていたそうだ。
彼女は退魔の結界を張り、暁の里を魔物から守った。そして人間とあやかしの関係を修復するべく、尽力した。
「そんで、退魔の結界が弱まる頃に現れたのが、二代目。ここで、結界の効力が限界を迎えるのと、郷守の巫女が現れる周期が、同じぐらいだと分かりました。」
三代目の時には、鬼族・影族が協力し、後世の巫女のための組織的な体制を整えた。影族は彗月の家系のことで、鬼族とは、焔の家系を指す。
「それから四代、五代ときて──」
時紀は振り返り、ピッと扇子を紬に向ける。
「あんたで六代目だ。巫女様。」
「!」
六代目。その数字を聞くことで、自分の運命と立場とを、改めて強く自覚した。
この魂が輪廻転生を繰り返し、巫女の役目を全うし続けてきた。歴代にわたって、人間とあやかしの架け橋となるべく力を尽くしてきたのだ。
紬は、胸が熱くなるのを感じた。
「先代たちから引き継いで……私も、頑張ります。」
「なはは、頼もしいや。六代目は強そうだし、こっちとしても安心ですよ。精神状態も問題なさそ──」
時紀は言いかけて、「っと」と扇子を口元に当てた。
「精神状態?」
紬は思わず聞き返す。
穏やかではない四文字。まるで、過去に問題があったかのような言い方だ。
「先代に、何か?」
「……」
ここまでずっと舌を回して、案内人の仕事をこなしていた時紀が、初めて答えかねるように口を閉じる。
そして、彗月と顔を見合わせた。
「彗月さん」
「……」
先程まで、二人の会話をにこやかに聞いていた彗月は、時紀に問われて苦い顔をする。
「……それは……」
彼が薄く口を開いた、その時だった。
「!」
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