【完結】忘れられた妻はこ草原の鷹にからめ取られる

文野さと@書籍化・コミカライズ

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番外 黒鷹の旅路 4

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「ユルディス!」
 エランの叫びには一顧いっこだに払わず、ユルディスはノスフリント兵に向き合う。
 森は深いが、すっかり明けた空からは秋の透明な光が梢から差し込み、視界は決して悪くはなくなっている。
 その光の中に黒く細い影が佇む。手には長く優美な剣をたずさえて。
 それは構えもせずに、剣先をゆらゆらと地面近くに遊ばせていた。
 脇腹こそ斬られたが深手ではない。自分よりも二回りも小柄なその姿にノスフリント兵は凄惨に笑った。
 この子どもを斬れば、逃げられる。本隊に合流することができる、と考えたものか。
「残念だな。もう少し頭があれば助かったかもしれないのに」
 若い、けれど落ち着き払った声が、大の男を嬲った。
 それが合図。
 少年は遊ばせていた剣をゆっくりと上げる。その余裕に流石に戦士としての本能が呼び覚まされたのか、ノスフリント兵が大きく踏み出し、体に見合った大きな剣を鋭く払った。
 ぶん、と剣風がエランの頬を打つ。ユルディスの姿はそこにはもうない。まるで舞踏のようなステップで体を捻り、男の斜め後ろに移動していたのだ。流れるような動作は止まることなく、首だけこちらを向いた男の背中を皮の鎧ごと袈裟に斬った。
「ぐおぉ! こっ、小僧が!」
 しかしそれでも男は倒れない。彼とて歴戦の勇士なのだ。
 獣のような唸り声をあげてユルディスに向かって突進する姿は、もはや自分の運命を悟った覚悟さえ感じられた。
「よく戦った」
 そう言ってユルディスは、直進する男の剣先をかわす勢いそのまま、男の首に剣を突き立てる。
 エランの前で声もなく男がたおれた。
「お……終わった、のか?」
 エランが声を出せたのは、たっぷり五回ほど呼吸をしてからだった。
 周囲の兵士たちは負傷者を運んだり、伝令を出したりしている。
「終わった。ここでは戦の趨勢がわからない。本営まで戻る。怪我はないか?」
「大丈夫だ……お、俺も怪我人の運搬を手伝おう、肩につかまれ」
 そう言ってエランはユルディスの枠をすり抜けて、仲間の元へと走った。せめて何かの役に立ちたいと思ったのだろう。
 戦闘は収束し始めていた。北方守備隊は、ノスフリントの侵攻を最小限で食い止めることができ、ランサールはその名を更にあげたのだった。

 ユルディスはそれからもランサールの元で働く。
 軍務だけでなく、大きな組織を動かすため、食わせるための手腕を身につけ、戦闘の休止期には様々なところに出向して経験の幅を広げ、知識を吸収していった。
 しかし、どれだけランサールが勧めても、正規の軍人教育を受けることはなかった。
「このままで十分学べます。軍での地位は私には意味がない。それに私は……」
 冬季で戦の沈静時期に、視察を兼ねて地方都市を訪問したランサールにユルディスは言った。
 この町には特別士官学校がある。
 士官学校に上がる年齢を過ぎてから軍を希望した貴族や、推薦された平民の子弟が通うところだ。
「せっかく見学に来たのになぁ。まぁ、今更ではあるか」
「はい……でも町の様子は気に入りましたよ。小さいのに活気があって物も豊かだ」
「そうか。では門限までゆっくりしてくるといい。小遣いはあるか?」
 正規の兵ではないがユルディスは、きちんと給料をもらっている。なのに小遣いとはなんだと、ちょっとむくれた。
「もう小僧ではありませんと。お土産には何が良いですか?」
「ははは! 確かにの。ではこの町特産の、果物を練り込んだ焼き菓子でも頼もうかの」
 ランサールは彼の父を思わせる鷹揚おうようさで笑った。
 ユルディスは平服に着替えて町を探索する。広場の周りには大きな市場があって、さまざまな店が並んでいた。
 物流の傾向、人々の様子、町の繁栄、雰囲気を感じるには市場が適している。それに楽しい。軍にいると、この解放感を味わえることが少ない。

 俺は、こういうものを見るのが好きなのかもしれないな。

 ユルディスは、たった今買った焼き菓子の袋を手に、広場の噴水の縁に腰を下ろした。たくさんの人が行き交っている。
 その年齢も服装もそれぞれに違う。中には彼のようにこの国の人間ではない者もいる。
 世間はまだまだ広いのだ。
「おい」
 振り向くとエランが立っていた。
 彼は現在も北方守備隊だが、今は小隊を任され、中尉の徽章をつけていた。任地はスール川の河口の大きな町だ。
「久しぶりだな」
「ああ、こっちに来ていたのか」
「休暇でな。俺の家が近い」
「貴族だったな。この辺りに領地があるのか?」
「領地なんか、とうに売っ払ったさ。切り売りでな。町外れに屋敷があるだけだ。それも抵当に入っているらしい」
「……貴族がそれでいいのか? 領地は君主から賜ったものだろう?」
「よくない。しかし、もう広大な領地や屋敷を維持していけない貴族が多いんだ……俺も、だから軍に入ったのさ」
「……そうか」
「以前、つまらない当てこすりを言ったな。謝るのが遅くなった。ずっとすまないと思っていた」
「気にもしていない」
「この国の貴族はどんどん衰退していく、俺たちも何か考えなくちゃいけない時が来ていると思う。まだ何ができるかはわからないけれど、とりあえず俺は、自分で自分を食わせる術を見つけたいと、軍に入ったんだ」
「軍は無産組織だぞ。人も物も食い潰すばかりで。目的だけは、はっきりしているが」
 ユルディスが、いずれ軍を離れようと思っている理由がそれである。
 軍はそれだけでは何も生み出さない。しかし、軍は国に必要なものだ。人や町を守るにも、その巨大な図体を養う産業のためにも。
「ユルディス。お前はこれからどうするんだ? このまま一従卒だけのつもりもなさそうだし」
「そうだな……」
 ユルディスは袋から焼き菓子を取り出し、黙ってエランに渡した。
「お、うまいな」
「そうか」
 自分も一つかじってみる。
 彼は普段あまり菓子は食べないが、これは美味いと思った。
 この町の名物なので売っている店は多いが、道ゆく老若男女に尋ねて、一番名の出る店から買ったものだ。それは裏通りの小さな店だった。

 この菓子ひとつ見ても、小麦の他にたくさんのものが使われている。
 砂糖や中の果物は、この地域で採れたものではないだろう。
 いろんな物が、たくさんの人の手を渡って手間暇をかけ、今ここに菓子としてある。

「俺はもう少し、この国でいろんなものを見たい……と思っている。まだ何か出会っていないものがあるように思うんだ」
「だったら、お前、貴族の家を見てみないか?」
「貴族の?」
「そうさ! 内部から」
 珍しくユルディスを驚かせたことが嬉しそうにエランは言った。
「お前、いろんなものを見て回ったそうだが、まだ貴族の家の様子は知らないだろう?」
「……確かに。だが俺に何ができる? 貴族というものは格式を重んじるものだろう?」
「だからどんどん落ちぶれていくんだけどな。だから、そういう落ちぶれ貴族の家を、自分の才覚で立て直すなんてどうだい? 俺の家では人を雇う余裕はもうないが、ランサール閣下なら、お前を雇い入れてくれる家を知っているかもしれないぞ」
「……貴族の家を立て直す?」
 ユルディスはその考えを、ゆっくり咀嚼そしゃくする。
 その時、二人の前に小さな影が通りかかった。見ると灰茶の髪を固く編んでお下げにした、十三、四歳の少女が立っている。
「お兄さん、そのお菓子どこで買ったの?」
 少女は、はきはきと尋ねた。その琥珀色の目はユルディスを見ている。袋を持っているから、彼が買ったと判断したのだろう。
「お爺ちゃんに買ってあげたいのよ」
「え? この菓子を売ってる店は多いだろう?」
 エランは不思議そうに尋ねた。
「うん。でも私は、一番美味しい店がいいのよ」
「なんでこれがうまいって、わかるんだい?」
「だって普段お菓子を食べなさそうなお兄さんが、美味しそうに食べていたから」
「なんでこいつが普段、菓子を食べないってわかるんだい?」
「……だって、なんとなくわかるんだもん」
 少女のはユルディスを見上げている。甘い匂いとは無縁の雰囲気をまとった男を。
「これは噴水の反対側の裏通りの小さい店で買った。赤くて丸い看板が出ている」
 ユルディスは利発そうな少女に丁寧に教えてやった
「そう? ありがとうお兄さん! すぐに行ってみるね」
 少女はユルディスに手を振って、噴水の向こうに走って行った。背中でぴょんぴょん跳ねるお下げが遠ざかる。
「変な子だな。どこで買ったって、大した違いはないだろうに」
 エランが呆れたように呟く。
「いや、違うな。同じ買うなら、少しでも良いものをって、あの子は思ったんだろう。人にあげるなら尚更」
「ふぅん……ちょっと珍しい雰囲気だったけど」
「そうだな。俺はもう行く。エラン、じゃあな」
 ユルディスは立ち上がった。
 ゆっくりと立ち上がる。少女の姿はもう見えない。

 いい目をした女の子だったな。それに声もいい。

 ユルディスはその姿をもう一度見いと思った自分に驚いていた。
 それから更に数年。北方での戦闘は一応の終結を見た。ノスフリントの国力が尽きたのだ。

「そうか、とうとう去るか」
「はい。今までお世話になりました」
 ユルディスは草原式の深礼をする。一番尊敬するべき相手にとる所作だ。
「俺はまた、知らない世界を見に行きます」
「望みは貴族の屋敷で勤めたいということだったな。また、奇矯ききょうな願いだのぅ」
「多分、俺の最後の学びの場になるかと」
「貴族か。きっとくだらぬ虚飾や鼻持ちならぬ高慢に嫌気がさすと思うが」
「それもまた学びでしょう」
「あいわかった! 本気だとは思っておったよ。ほれ紹介状だ」
 ユルディスはランサールが用意していた封書を受け取った。
「エルトレー子爵 ドナルディ閣下」
 それが表に記された名前。
「そう。中流の家柄で、代々優秀な軍人を輩出してきた。私とも交流がある。嫡男も軍にいるが王宮勤務だ。いずれ家を継ぐために退役するだろうが、子爵家の内情はあまりよろしくはないようだな。領地経営に不手際があったそうで」
「理想的です」
「まったく物好きな……私の養子縁組を断って、わざわざ妙な苦労を選ぶとはなぁ」
「申し訳ございません」
「また会えるか?」
 重ねてランサールが尋ねる。
「おそらく」
「いつか、お前に大切なものができて、旅を終える時には私に教えに来てほしい。息子よ」
 ランサールは青年の手を固く握った。
「お約束しましょう」
 
 そうして青年は旅に出る。
 鷹の導きに従い、南へ、都へと──。


     *****


少しもちっとも全然甘くない、番外編を見ていただき、ありがとうございました。
好きなように書いたので、時系列とか変なところもあったかと思います。
ご感想などいただけると嬉しいですが、作者の自信に繋がりますので、少しでも面白いと思われた方は、作品目次下部のツイッターボタンなどポチしてください。

現在、次回作を構想中です。(まだぼんやりしています)
多分、全年齢になると思います。
それでも良いと思われる方は、新作情報などをお待ちください。
ツィッターでも小出しにしていきます。アンケートとかもあるかもしれません。
普段は、別の創作活動や、季節の様子などを呟いていますが、ほぼ毎日顔を出しますので、フォローしてくださると嬉しいです。
今後とも、文野さととその物語をよろしくお願いします。
                               2022.9.23
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感想 65

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みんなの感想(65件)

ttyy
2022.09.25 ttyy

長編も面白いですし、一方でこういったさくさくテンポも良いですね〜!
エランと少し打ち解けた、しかもユルディスにとって重要な道標を残してくれた!感動しました。そう繋がっていくのか〜。
エランはどの時点で生まれたキャラクターなのでしょうか?今回生まれてきたキャラクターなら、こんな風にピースが自然にはまっていくように描けるのは素晴らしいなあと思いますし、もともと構想があったのならそれもしっかりした設定の元のあの本編だったのだなあとすごいと思います。エラン、正直な子で好きです。
あの子は、まさか、やはり??そうであって欲しいし、そうでなくても明るい予感のする素敵な物語の閉じ方だなあと嬉しくなりました。時間軸的に登場できないのかなと寂しく思っておりましたので、すごいサービスですね!ありがとうございます!
新作情報も楽しみにしています。存分にお好きな物語を創造して頂けたらいいなあと思っております!

2022.09.27 文野さと@書籍化・コミカライズ

*ttyyさん、いらっしゃいませ。

いつもありがとうございます
番外編は甘さの「あ」の字もないので、こちらではほとんど読まれないものと思っていました。
エランは番外編を書くにあたって、創作しました。
ユルディスの対になるキャラで、大した才覚もない、容姿も平凡な貧乏貴族の息子です。
けど、こういうキャラは私たちの代表なんですね。
美男美女、才能バリバリのキャラばっかりでは物語は平坦になるし、キーワードを吐かせたことで、ユルディスにとってはある種の「恩人」かもしれません。
あの子はあの子です。
転んでもただでは起きません。
次回作は、全年齢になるかと思いますが、ttyyさんのご考察にはいつも励まされますので、また是非お越しいただけたら、と思います。

解除
ttyy
2022.09.19 ttyy

とっても面白いですよ!私は文野さんの書かれる物語が大好きです。
戦闘シーン、これまた映像が見えるようで流石です。
二話目の自称小僧のユルディス、奔放かと思いきや礼儀がしっかりしていて素敵。
あと一話ですね。エランとの関係はどこに落ち着くのか楽しみです!

2022.09.20 文野さと@書籍化・コミカライズ

*ttyyさん、いらっしゃいませ。

いつも嬉しいお言葉ありがとうございます。
戦闘場面が具体にわかりやすいってことは、表現する上で自信になります!
恋愛好きなアルファポリスの民の方々にはきっと敬遠されるだろうと思っていたのですが、
読んでくださる方もいて、ありがたい限りです。
この番外では、自分の好きなようにぐいぐいやっちゃってます。
週末に完結予定です!

解除
Jelsomina_K
2022.09.11 Jelsomina_K

ユルディスの冒険譚!!
彼を形成をしていった過去が読めるなんて!!
なんてありがたいことを!!感謝感謝!!
ありがとうございまする(*’∀’人)♥*+

2022.09.11 文野さと@書籍化・コミカライズ

*JasmineKanonasさん、いらっしゃいませ。

番外編にもお言葉をありがとうございます。
ワタシの方こそ、感謝感謝!!
少年は経験値を積み重ね、賢く、強く、悪くなるのです。
次回もお楽しみに!

解除

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