42 / 57
41 ひとときの休息 5
しおりを挟む
レーゼはふらふらと階段を上っていった。
湯に浸かり過ぎ、その上カーネリアの迫力に押されて、体力をすっかり使い果たしてまったのだ。
髪もろくに乾かせていないから、背中はぐっしょりと濡れている。
部屋は三階だが、二階へ続く階段でついに座り込んでしまった。
『取らないで』
って、あの人は言ってた。
よくわからないけど、私とナギが一緒にいてはダメなんだろうか?
考えなくちゃと思うのに、頭がぐるぐる回って部屋にもたどり着けない。
「レーゼ様!」
気がつくとクチバが除き込んでいた。
「どうなさいました!」
「あ、クチバ……大丈夫よ」
「そんな顔色ではありませんな」
浮遊感がするのは抱き上げられたのだろう。階段を登るリズムを感じる。
「レーゼ!」
部屋から飛び出してきたのはナギだ。
「どうした! 何があった!?」
ナギは素早くレーゼの顔を確かめた。
「魔女の攻撃か!?」
「違う。私が宿舎の見張りから帰ってきたら、階段にうずくまっておられた」
「俺が運ぶ」
ナギは素早くレーゼをクチバから取り戻す。
「すっかり冷たくなっているじゃないか!」
「ともかく部屋へ!」
「ああ」
レーゼはすぐさま部屋へと運ばれ、乾いた布で濡れた髪を包み込まれた。
「服も湿っています。これ以上体が冷える前に着替えを」
「ああ。だが……」
レーゼは女の子だ、男の自分が服を脱がしていいわけがないとナギは焦った。
「大丈夫。少し長くお湯に浸かり過ぎただけだから……」
「でも着替えないと、布団まで湿ってしまう」
「じゃあ、ナギが手伝って」
「え! それはできない」
「じゃあこのままで」
レーゼは気だるげに答えた。自分が何を言っているのか、よくわかっていないのだろう。
「わ、わかった! 手伝う。着替えはどこにある?」
「横の戸棚に……」
「これですね」
出してくれたのはクチバだ。
「俺は出ています。ナギ、頼んだぞ。信じているからな」
そう言い残して無情にクチバは出ていく
「うう……じゃあ俺は目を瞑っているから!」
「なんで?」
「いいから、服を脱がすぞ!」
それからの数分間はナギにとって、今までのどの戦いで味わった経験より、緊張と集中を必要とするものとなった。
ぐったりとしているレーゼの服を脱がし、手探りでクチバがそばに置いていった服を着せる。
夏場なので替えの服がゆったりしていて、着せやすかったのがせめてもの救いだが、それでも時々柔らかい素肌に触れてしまうのはどうしようもなかった。
「最後に、この紐を結べばいいんだな」
ナギは固く目を瞑ったまま、最後の紐をよじり合わせる。多少難儀したが、なんとか蝶々結びが出来上がり、着せ替えは終了した。
「レーゼ。もういいな、目を開けるぞ」
レーゼが何も言わないので、ナギは恐る恐る目を開いた。
彼がみたのは──。
真っ白いシーツに広がる湿った髪、ボタンを一つ掛け違えた寝巻きと、ペンダントを巻き込んでしまった胸元の蝶々結び、そして悲しそうなレーゼの顔だった。
「レーゼ? 辛いか? 寒いのか?」
「ううん。私ってやっぱり見るのも嫌なほど醜いの?」
「……っ!」
「ごめんなさい。嫌なことさせて」
「ち、違う! 俺が目を閉じてたのはレーゼが女の子だからだ! 男は女の子の裸を見ちゃいけないんだ! 昔ルビアも言ってたろ!」
「そうだっけ……?」
「そうだよ。女の子はむやみに素肌を見せたらダメだ。レーゼみたいに綺麗な子は絶対に」
「……」
「まだしんどいか?」
「うん、ちょっと目が回るの。でも、喉乾いた。お水ちょうだい」
「水? あこれか。待ってろ、枕を重ねるから」
ナギはそう言って予備の枕をレーゼに頭の下に重ねる。上体が少し持ち上がったが、レーゼはまだ辛そうにしていた。
「すぐに飲ませてやる」
そう言ってナギは口に水を含むと、ゆっくりとレーゼに水を飲ませる。
レーゼの小さな喉が、ナギの含んだ水を飲み下すたびにこくんと動き、ナギを困惑させた。
だめだ。
こんな気持ちになってはいけない。
汚い気持ちでレーゼを見てはだめだ。
もうすぐにエニグマとの決戦が待ち構えているというのに。
「レーゼ?」
気がつくとレーゼは眠っていた。微かに微笑んでいる。
ナギはくれた口元を拭いてやり、まだ少し湿った額に唇を落とすと、傍の長椅子に横になった。
彼の長身にやや寝心地が悪いが、レーゼのことが心配だったのだ。何事もなければ朝早く自室に戻ればいいだろう。
「おやすみ、レーゼ」
──その時。
『若者よ』
「……っ!」
声はビャクランのもので、レーゼの胸元で守り石が小さく光る。
「あんたか。まさか一緒に風呂に入っていたんじゃないだろうな」
『もちろん、入ったとも。私は彼女の守り人だからな。あ、待て待て。殺気はよしてくれ』
ビャクランは慌てたような声になったが、ナギの殺気は収まらない。ただ、実体がないのでどうしようもないだけだ。まさかレーゼの胸にある石に触れるわけにもいかない。
「……」
『心配せずとも良い。私はちゃんと眠っていた。やれやれ若者よ』
守り石が淡く光り始める。
光は人の像を結んでナギの前に立った。彼よりもまだ背が高く、古めかしい服装の男だ。
「お前がビャクラン?」
『そうだ。この姿になるのは久しぶりだ。結構疲れるから、滅多にしないんだけど』
「……ならなんで出てきた?」
『若者とは、少し話をしたほうがいいと思ったからね。孫娘と言っていいレーゼに、邪な気持ちは起きないよ。落ち着いたかい?』
ビャクランは透けるような光の姿で微笑んだ。
「あんたはゴールディフロウの王族だったんだろう?」
『そうだ。滅んだ王──レーゼの祖父のことだが、それより五代くらい前になるかな? その辺りは眠っていたので曖昧なんだよ』
「力と能力を有した王だと聞いたが、その割に若いな」
ナギを若者と呼ぶ割にはビャクランも、さほど歳の変わらない青年の姿をしている。
『まぁ、一番美しかった頃の姿で現れたいのは人情だろう』
「……」
ナギは嫌そうな顔つきになっている。
『あのな若者、私はそなたには少しくらい感謝されてもいいんだぞ。彼女の呪いの進行を遅らせたのも、能力を増長させたのも私なのだからな!』
「それはまぁ……」
『それからな。風呂で、良い体付きをした赤毛の娘が、レーゼに絡んでおったぞ』
「……眠っていたんじゃなかったのか?」
『ちょっとだけ目を覚ましたんだ。あ、こら! 剣に手をかけるな! 私はレーゼの守り人だ、危険な気配を察知するのは当然だろう!?』
ナギは無言で手を下ろす。
「……で、カーネリア、彼女が何を?」
『鈍感な男だな。つまり、そなたを挟んで女同士の火花のやりとりよ』
「俺を挟んで火花のやりとり……?」
『あ~、モテる男が無知なのは罪だな。つまり、あの赤毛の娘は、そなたに横恋慕しておるのだ。だからレーゼに喧嘩を売ったと』
「俺が守るのはレーゼだけだ。カーネリアは強いから」
『……』
ビャクランは半目になってナギを見ていたが、やがて首を振った。
『まぁ、これ以上私が口を挟むのも野暮というものだろう。それに長くこの姿を晒すわけにもいかんからな。とにかく、レーゼを大切にしてくれ。この娘は我が王家の良心のようなものだ』
「わかっている」
『それからエニグマだが、彼女は東北を拠点としているが、新たに島を作ってそこに立てこもっている』
「島だと!?」
『そうだ。そなた達のことを脅威と感じ、陸から攻め込まれないように、魔力で島を作った。そこには塔のような山が聳え、波も荒く、近づくのは容易ではない』
「……」
『しかし一方で、これは彼女が脅威を感じている証拠でもある。さて、私が教えられるのはここまでだ。戦いに備えてまた眠らなければならない。レーゼを頼んだぞ』
そう言ってビャクランの姿はかき消えた。後には眠るレーゼと、青い宝石が光るのみだった。
「お前、レーゼ様に何か言っただろう」
クチバは風呂から上がったカーネリアを見つけて問いかけた。
「別に? お風呂で少し女の子同士の話をしていただけよ、おっさん」
「ナギは今レーゼの部屋にいるぞ」
おっさんと呼ばれたことは無視して、クチバは無情に告げる。
「えっ!」
カーネリアの顔色がさっと変わる。表情の豊かな娘だと、クチバは思った。
「まぁ、釘を刺しておいたし、ナギはナギだから、心配するようなことは決してない」
「……」
「なぁ、カーネリア。もし誰かに自分を認めさせたいなら、己の価値は己で示すことだ」
「……」
「お前は若くて美しい。そして戦士としても優秀だ。およそ女の持つ魅力は全て持っている。そしてそれはレーゼ様も同じ。あの方はこんな俺でも救ってくれた」
「ふ、ふん! 誰にも情けを下さる女神様ってわけ? 男ってちょろいわね!」
「他人を貶めることは、自分をも貶める。かつて俺がそうだったように。だがレーゼ様を傷つけることは許さない。あの方は、お前が思うほど弱くはないぞ」
「……わかってるわよ」
「もう一度行っておく。お前の価値はお前でしめせ。お前を慕う人は大勢いるぞ、カーネリア。俺も、お前には大いに期待している」
クチバはそう言ってカーネリアの前から去った。
暗い廊下には、唇を噛み締める赤毛の娘が残った。
湯に浸かり過ぎ、その上カーネリアの迫力に押されて、体力をすっかり使い果たしてまったのだ。
髪もろくに乾かせていないから、背中はぐっしょりと濡れている。
部屋は三階だが、二階へ続く階段でついに座り込んでしまった。
『取らないで』
って、あの人は言ってた。
よくわからないけど、私とナギが一緒にいてはダメなんだろうか?
考えなくちゃと思うのに、頭がぐるぐる回って部屋にもたどり着けない。
「レーゼ様!」
気がつくとクチバが除き込んでいた。
「どうなさいました!」
「あ、クチバ……大丈夫よ」
「そんな顔色ではありませんな」
浮遊感がするのは抱き上げられたのだろう。階段を登るリズムを感じる。
「レーゼ!」
部屋から飛び出してきたのはナギだ。
「どうした! 何があった!?」
ナギは素早くレーゼの顔を確かめた。
「魔女の攻撃か!?」
「違う。私が宿舎の見張りから帰ってきたら、階段にうずくまっておられた」
「俺が運ぶ」
ナギは素早くレーゼをクチバから取り戻す。
「すっかり冷たくなっているじゃないか!」
「ともかく部屋へ!」
「ああ」
レーゼはすぐさま部屋へと運ばれ、乾いた布で濡れた髪を包み込まれた。
「服も湿っています。これ以上体が冷える前に着替えを」
「ああ。だが……」
レーゼは女の子だ、男の自分が服を脱がしていいわけがないとナギは焦った。
「大丈夫。少し長くお湯に浸かり過ぎただけだから……」
「でも着替えないと、布団まで湿ってしまう」
「じゃあ、ナギが手伝って」
「え! それはできない」
「じゃあこのままで」
レーゼは気だるげに答えた。自分が何を言っているのか、よくわかっていないのだろう。
「わ、わかった! 手伝う。着替えはどこにある?」
「横の戸棚に……」
「これですね」
出してくれたのはクチバだ。
「俺は出ています。ナギ、頼んだぞ。信じているからな」
そう言い残して無情にクチバは出ていく
「うう……じゃあ俺は目を瞑っているから!」
「なんで?」
「いいから、服を脱がすぞ!」
それからの数分間はナギにとって、今までのどの戦いで味わった経験より、緊張と集中を必要とするものとなった。
ぐったりとしているレーゼの服を脱がし、手探りでクチバがそばに置いていった服を着せる。
夏場なので替えの服がゆったりしていて、着せやすかったのがせめてもの救いだが、それでも時々柔らかい素肌に触れてしまうのはどうしようもなかった。
「最後に、この紐を結べばいいんだな」
ナギは固く目を瞑ったまま、最後の紐をよじり合わせる。多少難儀したが、なんとか蝶々結びが出来上がり、着せ替えは終了した。
「レーゼ。もういいな、目を開けるぞ」
レーゼが何も言わないので、ナギは恐る恐る目を開いた。
彼がみたのは──。
真っ白いシーツに広がる湿った髪、ボタンを一つ掛け違えた寝巻きと、ペンダントを巻き込んでしまった胸元の蝶々結び、そして悲しそうなレーゼの顔だった。
「レーゼ? 辛いか? 寒いのか?」
「ううん。私ってやっぱり見るのも嫌なほど醜いの?」
「……っ!」
「ごめんなさい。嫌なことさせて」
「ち、違う! 俺が目を閉じてたのはレーゼが女の子だからだ! 男は女の子の裸を見ちゃいけないんだ! 昔ルビアも言ってたろ!」
「そうだっけ……?」
「そうだよ。女の子はむやみに素肌を見せたらダメだ。レーゼみたいに綺麗な子は絶対に」
「……」
「まだしんどいか?」
「うん、ちょっと目が回るの。でも、喉乾いた。お水ちょうだい」
「水? あこれか。待ってろ、枕を重ねるから」
ナギはそう言って予備の枕をレーゼに頭の下に重ねる。上体が少し持ち上がったが、レーゼはまだ辛そうにしていた。
「すぐに飲ませてやる」
そう言ってナギは口に水を含むと、ゆっくりとレーゼに水を飲ませる。
レーゼの小さな喉が、ナギの含んだ水を飲み下すたびにこくんと動き、ナギを困惑させた。
だめだ。
こんな気持ちになってはいけない。
汚い気持ちでレーゼを見てはだめだ。
もうすぐにエニグマとの決戦が待ち構えているというのに。
「レーゼ?」
気がつくとレーゼは眠っていた。微かに微笑んでいる。
ナギはくれた口元を拭いてやり、まだ少し湿った額に唇を落とすと、傍の長椅子に横になった。
彼の長身にやや寝心地が悪いが、レーゼのことが心配だったのだ。何事もなければ朝早く自室に戻ればいいだろう。
「おやすみ、レーゼ」
──その時。
『若者よ』
「……っ!」
声はビャクランのもので、レーゼの胸元で守り石が小さく光る。
「あんたか。まさか一緒に風呂に入っていたんじゃないだろうな」
『もちろん、入ったとも。私は彼女の守り人だからな。あ、待て待て。殺気はよしてくれ』
ビャクランは慌てたような声になったが、ナギの殺気は収まらない。ただ、実体がないのでどうしようもないだけだ。まさかレーゼの胸にある石に触れるわけにもいかない。
「……」
『心配せずとも良い。私はちゃんと眠っていた。やれやれ若者よ』
守り石が淡く光り始める。
光は人の像を結んでナギの前に立った。彼よりもまだ背が高く、古めかしい服装の男だ。
「お前がビャクラン?」
『そうだ。この姿になるのは久しぶりだ。結構疲れるから、滅多にしないんだけど』
「……ならなんで出てきた?」
『若者とは、少し話をしたほうがいいと思ったからね。孫娘と言っていいレーゼに、邪な気持ちは起きないよ。落ち着いたかい?』
ビャクランは透けるような光の姿で微笑んだ。
「あんたはゴールディフロウの王族だったんだろう?」
『そうだ。滅んだ王──レーゼの祖父のことだが、それより五代くらい前になるかな? その辺りは眠っていたので曖昧なんだよ』
「力と能力を有した王だと聞いたが、その割に若いな」
ナギを若者と呼ぶ割にはビャクランも、さほど歳の変わらない青年の姿をしている。
『まぁ、一番美しかった頃の姿で現れたいのは人情だろう』
「……」
ナギは嫌そうな顔つきになっている。
『あのな若者、私はそなたには少しくらい感謝されてもいいんだぞ。彼女の呪いの進行を遅らせたのも、能力を増長させたのも私なのだからな!』
「それはまぁ……」
『それからな。風呂で、良い体付きをした赤毛の娘が、レーゼに絡んでおったぞ』
「……眠っていたんじゃなかったのか?」
『ちょっとだけ目を覚ましたんだ。あ、こら! 剣に手をかけるな! 私はレーゼの守り人だ、危険な気配を察知するのは当然だろう!?』
ナギは無言で手を下ろす。
「……で、カーネリア、彼女が何を?」
『鈍感な男だな。つまり、そなたを挟んで女同士の火花のやりとりよ』
「俺を挟んで火花のやりとり……?」
『あ~、モテる男が無知なのは罪だな。つまり、あの赤毛の娘は、そなたに横恋慕しておるのだ。だからレーゼに喧嘩を売ったと』
「俺が守るのはレーゼだけだ。カーネリアは強いから」
『……』
ビャクランは半目になってナギを見ていたが、やがて首を振った。
『まぁ、これ以上私が口を挟むのも野暮というものだろう。それに長くこの姿を晒すわけにもいかんからな。とにかく、レーゼを大切にしてくれ。この娘は我が王家の良心のようなものだ』
「わかっている」
『それからエニグマだが、彼女は東北を拠点としているが、新たに島を作ってそこに立てこもっている』
「島だと!?」
『そうだ。そなた達のことを脅威と感じ、陸から攻め込まれないように、魔力で島を作った。そこには塔のような山が聳え、波も荒く、近づくのは容易ではない』
「……」
『しかし一方で、これは彼女が脅威を感じている証拠でもある。さて、私が教えられるのはここまでだ。戦いに備えてまた眠らなければならない。レーゼを頼んだぞ』
そう言ってビャクランの姿はかき消えた。後には眠るレーゼと、青い宝石が光るのみだった。
「お前、レーゼ様に何か言っただろう」
クチバは風呂から上がったカーネリアを見つけて問いかけた。
「別に? お風呂で少し女の子同士の話をしていただけよ、おっさん」
「ナギは今レーゼの部屋にいるぞ」
おっさんと呼ばれたことは無視して、クチバは無情に告げる。
「えっ!」
カーネリアの顔色がさっと変わる。表情の豊かな娘だと、クチバは思った。
「まぁ、釘を刺しておいたし、ナギはナギだから、心配するようなことは決してない」
「……」
「なぁ、カーネリア。もし誰かに自分を認めさせたいなら、己の価値は己で示すことだ」
「……」
「お前は若くて美しい。そして戦士としても優秀だ。およそ女の持つ魅力は全て持っている。そしてそれはレーゼ様も同じ。あの方はこんな俺でも救ってくれた」
「ふ、ふん! 誰にも情けを下さる女神様ってわけ? 男ってちょろいわね!」
「他人を貶めることは、自分をも貶める。かつて俺がそうだったように。だがレーゼ様を傷つけることは許さない。あの方は、お前が思うほど弱くはないぞ」
「……わかってるわよ」
「もう一度行っておく。お前の価値はお前でしめせ。お前を慕う人は大勢いるぞ、カーネリア。俺も、お前には大いに期待している」
クチバはそう言ってカーネリアの前から去った。
暗い廊下には、唇を噛み締める赤毛の娘が残った。
1
あなたにおすすめの小説
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる