5 / 5
五歩目
しおりを挟む
※前回までのお話
啓太にスーツ姿を見てもらおうと
サプライズで家に訪れた亜衣。
だが、家から出てきたのは啓太の母だった。
うまく誤魔化して啓太の部屋にあがると、全てお見通しのように笑う啓太。
「おいで」
と啓太に言われ、ギュッと抱きしめられる。
「‥啓太、なんかいい匂いする」
「んー。さっきシャワー浴びたから」
「そっか‥この匂い好き」
亜衣がそう言うと、少し間を空けて
啓太が覗き込むように亜衣と目を合わせる。
「‥匂いだけ?」
そう言われ、亜衣は恥ずかしくなり啓太の腕の中に顔を埋める。
「ねーねー。匂いだけ?」
少し意地悪な声をしているのはわかったけど、亜衣は恥ずかしくて黙ってしまう。
「‥匂いだけかー。ショックだなー」
あからさまに残念がる啓太に
亜衣は振り絞るように
「‥‥全部好きだよ」
そう伝えると、啓太は何も言わずに抱きしめた腕をギュッと強くした。
人は好意のある人に抱きしめられると
ドーパミンが多く分泌され、幸福感を感じやすい。と、高校の化学の授業で教わった事がふとよぎった。
「‥これが幸福感か‥」
そう感じていた時
♫リリリリリリリ
急に携帯電話のタイマーが鳴った。
「ごめん。鳴ったら勉強しようと思ってタイマーかけてたの忘れてた」
啓太は受験生。
そんな当たり前の事に気付かされてしまった。
「ごめんね、急に押しかけて。スーツ姿みせたかっただけだから、帰るね」
そう言って、借りていたCDを渡し帰ろうとする亜衣。啓太は少し考え込んでから、
「ねぇ、亜衣。この後時間あるなら、俺の事、見張っててくれない?サボらないように」
そう、亜衣に笑いかける。
そんな風に言われた、断る理由なんて無い亜衣は、
「いいよ、見張っててあげる」
偉そうに答えたが、内心啓太と一緒にいられる事が嬉しくて、心の中でガッツポーズをしていた。
♫ガチャ
啓太の部屋の扉が急に開き
飲み物とお菓子を持った啓太の母が入ってくる。
「こんなものしか無いけど、よかったらどうぞ」
「あ、すみません。ありがとうございます」
チョコレートと紅茶が置かれていて、いい香りがする。
「お母さん、ちょっとお買い物してくるから、お留守番お願いね」
はいはい。と答える啓太を横目に、亜衣にニコっと笑いかけ、部屋を出て行く啓太の母。
「じゃあ、ちゃんと見張ってるから!勉強頑張ってね!」
そう伝えて、啓太の近くから離れようとすると
「亜衣。こっち来て」
急に啓太が甘い声で私を呼ぶ。
啓太の隣に亜衣が座ると、何か言い出しにくい様子の啓太。
「啓太?どうしたの?」
「‥母親、1時間以上は帰って来ないと思うんだ‥」
「うん」
「いま、家にいるのは亜衣と俺だけでしょ?」
「うん」
「その‥えっと‥嫌だったら別にいいんだけど‥」
「うん、何?」
「‥亜衣と‥したいんだ」
「‥何を?」
亜衣がそう答えると、啓太は黙ってしまった。
数秒の沈黙の後、「したい」の意味に気がつく亜衣。それと同時に「何を?」と聞き返してしまった自分が恥ずかしくなり、慌てて、
「あの、私ね。まだそーゆーのした事無くて、その、初めてで!あ、でも友達とか先輩から聞いた事あるから知識はあって、でも、ほんとにした事は無いから、その、わからないってゆーか、、」
次々と言葉にする亜衣をみて、緩やかに笑いながら。
「亜衣、落ち着いて。大丈夫。自慢じゃないけど、俺も初めてだから」
そう言い、ゆっくりと亜衣のおでこにキスをする啓太。
「‥いい?」
恥ずかしそうに尋ねてくる啓太が可愛くて、私は声に詰まり、ゆっくり頷いた。
「途中で怖くなったり、止めたいって思ったら、正直に言ってね」
おでこ、ほっぺた、唇、耳、首筋
と順番にキスをしていく啓太。
啓太に触れられるたびに、触れられた場所がスッと冷たくなるような感覚に、体が震える亜衣。
初めてとは思えないくらい、ゆっくりとジャケットを脱がせて、シャツのボタンを外していく啓太。
「亜衣。その顔は反則だよ」
どんな表情をしてるかなんてわからないけど、でも、とにかくドキドキしていた。
啓太のベッドに移動すると、そこは啓太のいい匂いに包まれた空間だった。
「亜衣。これが最後だよ。‥ほんとにいいの?」
真剣な目つきと優しい声。
啓太の匂いに包まれた私は‥
ゆっくりと頷き、目を閉じて、啓太に身を任せた。
啓太にスーツ姿を見てもらおうと
サプライズで家に訪れた亜衣。
だが、家から出てきたのは啓太の母だった。
うまく誤魔化して啓太の部屋にあがると、全てお見通しのように笑う啓太。
「おいで」
と啓太に言われ、ギュッと抱きしめられる。
「‥啓太、なんかいい匂いする」
「んー。さっきシャワー浴びたから」
「そっか‥この匂い好き」
亜衣がそう言うと、少し間を空けて
啓太が覗き込むように亜衣と目を合わせる。
「‥匂いだけ?」
そう言われ、亜衣は恥ずかしくなり啓太の腕の中に顔を埋める。
「ねーねー。匂いだけ?」
少し意地悪な声をしているのはわかったけど、亜衣は恥ずかしくて黙ってしまう。
「‥匂いだけかー。ショックだなー」
あからさまに残念がる啓太に
亜衣は振り絞るように
「‥‥全部好きだよ」
そう伝えると、啓太は何も言わずに抱きしめた腕をギュッと強くした。
人は好意のある人に抱きしめられると
ドーパミンが多く分泌され、幸福感を感じやすい。と、高校の化学の授業で教わった事がふとよぎった。
「‥これが幸福感か‥」
そう感じていた時
♫リリリリリリリ
急に携帯電話のタイマーが鳴った。
「ごめん。鳴ったら勉強しようと思ってタイマーかけてたの忘れてた」
啓太は受験生。
そんな当たり前の事に気付かされてしまった。
「ごめんね、急に押しかけて。スーツ姿みせたかっただけだから、帰るね」
そう言って、借りていたCDを渡し帰ろうとする亜衣。啓太は少し考え込んでから、
「ねぇ、亜衣。この後時間あるなら、俺の事、見張っててくれない?サボらないように」
そう、亜衣に笑いかける。
そんな風に言われた、断る理由なんて無い亜衣は、
「いいよ、見張っててあげる」
偉そうに答えたが、内心啓太と一緒にいられる事が嬉しくて、心の中でガッツポーズをしていた。
♫ガチャ
啓太の部屋の扉が急に開き
飲み物とお菓子を持った啓太の母が入ってくる。
「こんなものしか無いけど、よかったらどうぞ」
「あ、すみません。ありがとうございます」
チョコレートと紅茶が置かれていて、いい香りがする。
「お母さん、ちょっとお買い物してくるから、お留守番お願いね」
はいはい。と答える啓太を横目に、亜衣にニコっと笑いかけ、部屋を出て行く啓太の母。
「じゃあ、ちゃんと見張ってるから!勉強頑張ってね!」
そう伝えて、啓太の近くから離れようとすると
「亜衣。こっち来て」
急に啓太が甘い声で私を呼ぶ。
啓太の隣に亜衣が座ると、何か言い出しにくい様子の啓太。
「啓太?どうしたの?」
「‥母親、1時間以上は帰って来ないと思うんだ‥」
「うん」
「いま、家にいるのは亜衣と俺だけでしょ?」
「うん」
「その‥えっと‥嫌だったら別にいいんだけど‥」
「うん、何?」
「‥亜衣と‥したいんだ」
「‥何を?」
亜衣がそう答えると、啓太は黙ってしまった。
数秒の沈黙の後、「したい」の意味に気がつく亜衣。それと同時に「何を?」と聞き返してしまった自分が恥ずかしくなり、慌てて、
「あの、私ね。まだそーゆーのした事無くて、その、初めてで!あ、でも友達とか先輩から聞いた事あるから知識はあって、でも、ほんとにした事は無いから、その、わからないってゆーか、、」
次々と言葉にする亜衣をみて、緩やかに笑いながら。
「亜衣、落ち着いて。大丈夫。自慢じゃないけど、俺も初めてだから」
そう言い、ゆっくりと亜衣のおでこにキスをする啓太。
「‥いい?」
恥ずかしそうに尋ねてくる啓太が可愛くて、私は声に詰まり、ゆっくり頷いた。
「途中で怖くなったり、止めたいって思ったら、正直に言ってね」
おでこ、ほっぺた、唇、耳、首筋
と順番にキスをしていく啓太。
啓太に触れられるたびに、触れられた場所がスッと冷たくなるような感覚に、体が震える亜衣。
初めてとは思えないくらい、ゆっくりとジャケットを脱がせて、シャツのボタンを外していく啓太。
「亜衣。その顔は反則だよ」
どんな表情をしてるかなんてわからないけど、でも、とにかくドキドキしていた。
啓太のベッドに移動すると、そこは啓太のいい匂いに包まれた空間だった。
「亜衣。これが最後だよ。‥ほんとにいいの?」
真剣な目つきと優しい声。
啓太の匂いに包まれた私は‥
ゆっくりと頷き、目を閉じて、啓太に身を任せた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
続きが気になります✨
ありがとうございます。
励みになります。
毎日更新、頑張ります。