家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

ラブコメに戦闘シーン入れるって、有るまじき失態だと思う。まあ、入れるけど

　警報が鳴り響いた瞬間、

（驚いてられない！）

　レベッカはすぐに行動し、机の上に置いていた手紙をポケットに入れると、周囲に結界を展開した。
　その瞬間、部屋が爆発した。

「あ、危なかったぁ～」

　あと一歩遅れていれば、レベッカは死んでいただろう。それほどの規模の大爆発。

「でも、生きてた………」

　ひとまず生存できたことに安堵しつつ、すぐにその後に備える。その後、つまりヴァインヒルトとの戦闘に。

　煙が晴れる直前に、レベッカに向かって何かが飛来する気配を感じた。

「！？」

　あまりにも唐突な出来事だったが、アイトに鍛えられた反射神経で全て回避した。

（生半可な威力や速さじゃない。けど………）

　飛んできた魔法は、素人が打ったものには見えなかったが、

（アイトの魔法に比べたら、止まってるように見える！）

　アイトに比べると、雲泥の差だった。

　やがて煙が晴れると、そこには予想通りヴァインヒルトが立っていた。

「久しぶりだな、レベッカ」

「ヴァイン、ヒルト………」

「ほう？いつの間に私のことを呼び捨てにし始めたのだ？」

「昨日からだよ………」

　レベッカは、最早父親とは呼ばない。

「ふむ。少し遅めの反抗期か？遅かったな」

　その態度を見て、レベッカは怒りが込み上げてくるが、それを抑え込む。

「ほう。激高して襲いかからないとはな。今のお前の判断能力ならば、それくらいしてくると思ったんだがな」

「決めつけないで欲しいな。なんで、私がそうするって、思ったの？」

　レベッカのその質問に、ヴァインヒルトは鼻で笑いながら教える。

「迂闊にも程があると、そう思っただけだ。昨日出ていった貴様には、なにか戻る理由があるはず。その戻る理由はお前の部屋かアイトの部屋だと思って罠を仕掛けたのだがな。まさかこんなにはやいとは………」

　それが迂闊だと思った理由。だが、焦っていたのは事実だ。

「私は、はやく行動する理由があっただけ。あなたに何かを言われる筋合いはない」

「ほう？そんなにこの家の誰かを殺したかったのか？」

　ヴァインヒルトは、未だにレベッカが真犯人だと思い込んでおり、他の可能性を考えない。

「私としては、あなた達を殺すつもりはないし、理由もないよ」

「その言葉を、誰が信じる？」

　平行線だ。二人の会話は。
　片方が否定しても、それを否定する。それの繰り返し。
　ただ、不毛なだけの時間。

「私は、もうここに留まる理由が無くなった。だから、もう行くね？」

　そうして背を向けたレベッカに

「死ね」

　ヴァインヒルトは無慈悲にも魔法を放った。

「それが、実の娘にする態度？」

　それをいとも容易くかき消したレベッカは、呆れたように言う。

「何が実の娘だ？お前は本当にそんな風に俺の事を思ってたのか？」

「さあ？」

　実際には、少し前までは思っていたのだが。

「俺は、お前を殺すために準備を進めてきた。死んでもらうぞ」

「殺せるものなら！」

　そうして、二人は激突する。