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3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。
天から静かに降り注ぐ雪
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殺され続けた。
魔力も体力も肉体も精神も完璧に再生されるヴァインヒルトにとって、殺され続けることくらいなんとかなると思っていた。
だが、レベッカは殺し続けた。
精神はいくらでも治る。自分が最後には勝つと、そう思っていた。
だが、殺され続け、狂わないと思っていたが、それが毒だと気が付いた。
狂わない、ではなく狂えない。発狂できない。死ねない。
ゆうに700を超える回数殺され続けた。
最初は再生の猶予が少しでもあったのに対し、後半からは再生の途中で潰される。
自分を保つことはできている。否、保つことしかできない。保たせられている。
狂いたい。狂えない。死にたい、死ねない。
やがてヴァインヒルトは先の見えない蹂躙の果てに、救いを求めて………
「あっ………あ………」
自ら、命の灯火を消し去ることを選んだ。
■■■
レベッカが殺し続けたヴァインヒルトは今も尚、レベッカの目の前で生きている。
「あっ………」
だが、完全に廃人になっている。
ヴァインヒルトの恩恵はあくまでも再生。一度は傷つき、壊れなければ発動しない。
ヴァインヒルトは、それを再生する度に現実を否定し、自分の精神を壊し続けている。
これが、レベッカのヴァインヒルトの突破方法だった。
ヴァインヒルトは相変わらず蹲っている。生きてはいるが、人としては死んでいるだろうヴァインヒルトの体を見ても、レベッカの感情が動くことは無かった。
そんな時、近くの茂みから二人の人物が出てきた。
「………最近は茂みからの登場が流行ってるの?」
茂みに視線を移すことなくレベッカは今言える精一杯の皮肉を言う。
出てきた人物、トリスタンとルルアリアはレベッカのその言葉には反応しない。
だが、2人はその言葉に反応しなかっただけだ。
トリスタンはヴァインヒルトを見て一言。
「父上と母上は、死んだか………もう、ルーズ家は終わりだな………」
途中からレベッカの膨大な魔力で降り始めた雪により、エリザベスとヴァインヒルトの身体は雪に埋もれつつある。
トリスタンの言葉になんの反応もないレベッカに、ルルアリアは近づく。
「あんた、仮にも世話になった家を潰して!どういうつもりよ!」
ルルアリアはそう言うが、レベッカの反応は乏しい。
それに更に怒りを増幅させたルルアリアは掴み取ろうとするが、トリスタンがそれを阻止する。
「ちょっと、兄様!どういうつもり!?」
「お前を助けたんだ。レベッカは父上を一方的に殺せる力を持っている。二人だけじゃ嬲り殺しにされるだけだ」
トリスタンのその言葉に、ルルアリアは大人しく引き下がる。
「………諦めるの?」
レベッカのその言葉に、トリスタンは苦笑いしながら言う。
「気力が無くなったとはいえ、お前を相手に勝てるビジョンは浮かばない。代わりと言ってはなんだが、これを………」
そう言ってトリスタンが懐から取り出したのは、一封の手紙だった。
「なに?これ………」
虚ろな目でその手紙を受け取ったレベッカはトリスタンに聞く。
「お前が探し求めている人物からだ」
その言葉に、レベッカは少しだけ反応する。
レベッカが捜し求めている人物。それはアイトを殺した仇だった。
まだ、レベッカの復讐は終わっていない。
「それと、メモも預かっている」
レベッカがメモを受け取り読むと、そこには手紙には封印がかけられており、封印を解く以外で中身を読むことはできないとの事。そしてその封印を解くには三つの条件を満たさないといけないと書いていた。
そして三つの条件のうち一つが書いている文は、光っていた。
「条件を達成したら光るんだ………」
条件の一つは、ヴァインヒルト・ルーズを実質的に殺すこと。
それは既に達成された。
そうして、レベッカがこの場から離れようとすると、ルルアリアが「待ちなさいよ!」とレベッカを止めた。
「………?何?」
「何?じゃないわよ!なにもしないわけ!?」
ルルアリアは、レベッカが自分たちを殺しに来たと思っていたのだ。だから民に無駄な犠牲が出る前に現れたのだが
「?なぜ………?」
なぜ何かをしなくてはいけないのか。それが本気でわからず、レベッカは思わず聞き返してしまう。
「私は、もう、行くから………」
「わかった。また、いつか会えたら………」
そんな言葉を交わして、トリスタンとレベッカは別れる。
空からは、未だに雪がチラチラと降り続いていた。
魔力も体力も肉体も精神も完璧に再生されるヴァインヒルトにとって、殺され続けることくらいなんとかなると思っていた。
だが、レベッカは殺し続けた。
精神はいくらでも治る。自分が最後には勝つと、そう思っていた。
だが、殺され続け、狂わないと思っていたが、それが毒だと気が付いた。
狂わない、ではなく狂えない。発狂できない。死ねない。
ゆうに700を超える回数殺され続けた。
最初は再生の猶予が少しでもあったのに対し、後半からは再生の途中で潰される。
自分を保つことはできている。否、保つことしかできない。保たせられている。
狂いたい。狂えない。死にたい、死ねない。
やがてヴァインヒルトは先の見えない蹂躙の果てに、救いを求めて………
「あっ………あ………」
自ら、命の灯火を消し去ることを選んだ。
■■■
レベッカが殺し続けたヴァインヒルトは今も尚、レベッカの目の前で生きている。
「あっ………」
だが、完全に廃人になっている。
ヴァインヒルトの恩恵はあくまでも再生。一度は傷つき、壊れなければ発動しない。
ヴァインヒルトは、それを再生する度に現実を否定し、自分の精神を壊し続けている。
これが、レベッカのヴァインヒルトの突破方法だった。
ヴァインヒルトは相変わらず蹲っている。生きてはいるが、人としては死んでいるだろうヴァインヒルトの体を見ても、レベッカの感情が動くことは無かった。
そんな時、近くの茂みから二人の人物が出てきた。
「………最近は茂みからの登場が流行ってるの?」
茂みに視線を移すことなくレベッカは今言える精一杯の皮肉を言う。
出てきた人物、トリスタンとルルアリアはレベッカのその言葉には反応しない。
だが、2人はその言葉に反応しなかっただけだ。
トリスタンはヴァインヒルトを見て一言。
「父上と母上は、死んだか………もう、ルーズ家は終わりだな………」
途中からレベッカの膨大な魔力で降り始めた雪により、エリザベスとヴァインヒルトの身体は雪に埋もれつつある。
トリスタンの言葉になんの反応もないレベッカに、ルルアリアは近づく。
「あんた、仮にも世話になった家を潰して!どういうつもりよ!」
ルルアリアはそう言うが、レベッカの反応は乏しい。
それに更に怒りを増幅させたルルアリアは掴み取ろうとするが、トリスタンがそれを阻止する。
「ちょっと、兄様!どういうつもり!?」
「お前を助けたんだ。レベッカは父上を一方的に殺せる力を持っている。二人だけじゃ嬲り殺しにされるだけだ」
トリスタンのその言葉に、ルルアリアは大人しく引き下がる。
「………諦めるの?」
レベッカのその言葉に、トリスタンは苦笑いしながら言う。
「気力が無くなったとはいえ、お前を相手に勝てるビジョンは浮かばない。代わりと言ってはなんだが、これを………」
そう言ってトリスタンが懐から取り出したのは、一封の手紙だった。
「なに?これ………」
虚ろな目でその手紙を受け取ったレベッカはトリスタンに聞く。
「お前が探し求めている人物からだ」
その言葉に、レベッカは少しだけ反応する。
レベッカが捜し求めている人物。それはアイトを殺した仇だった。
まだ、レベッカの復讐は終わっていない。
「それと、メモも預かっている」
レベッカがメモを受け取り読むと、そこには手紙には封印がかけられており、封印を解く以外で中身を読むことはできないとの事。そしてその封印を解くには三つの条件を満たさないといけないと書いていた。
そして三つの条件のうち一つが書いている文は、光っていた。
「条件を達成したら光るんだ………」
条件の一つは、ヴァインヒルト・ルーズを実質的に殺すこと。
それは既に達成された。
そうして、レベッカがこの場から離れようとすると、ルルアリアが「待ちなさいよ!」とレベッカを止めた。
「………?何?」
「何?じゃないわよ!なにもしないわけ!?」
ルルアリアは、レベッカが自分たちを殺しに来たと思っていたのだ。だから民に無駄な犠牲が出る前に現れたのだが
「?なぜ………?」
なぜ何かをしなくてはいけないのか。それが本気でわからず、レベッカは思わず聞き返してしまう。
「私は、もう、行くから………」
「わかった。また、いつか会えたら………」
そんな言葉を交わして、トリスタンとレベッカは別れる。
空からは、未だに雪がチラチラと降り続いていた。
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