家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

予想外の出来事に人って唖然とするって言うよね。私もそう思う

　トリスタンとルルアリアから離れ、レベッカは改めて手紙の開封条件に目を通した。

　条件1である〈ヴァインヒルトを実質的に殺す〉という条件は既に達成されている。
　そのメモの文字は光っており、手紙にも一つだけマークが光っている。
　達成したと考えて間違えなさそうだろう。

　だが、問題は残りの二つだ。
　残りの二つの開封条件のうち片方は
　〈レベッカの指名手配を取り消す〉というものだ。正直、自分の指名手配の取り消し方法なんて知らない。
　レベッカが思いつくものだと、時効くらいだろう。
　だが、それを使うには何年掛かるか分からない。だから却下だ。
　そしてもう一つの条件は、
　〈知り合いを遊びに誘う〉、だ。

「………え？」

　その一文を見てレベッカが発した言葉はそれだけだった。
　指名手配の取り消しには眉を顰めただけで反応は芳しくなかったのに、最後の予想の斜め上の条件にレベッカは思わず動揺してしまう。

「なにこれ………」

　何度見ても変わらない条件に、レベッカは差出人の正気を疑ってしまう。
　まあ、確かに現状だと難しい条件だ。この条件を本格的に始動するには、指名手配の取り消しを優先した方がいいだろう。

「はぁ………なんでこんなこと………」

　だが、現状唯一の犯人への手がかりであることには代わり内。
　高度な解呪魔法を使っても解けない手紙の封印を解くには、なんとかして指名手配の取り消しと遊びの誘いを達成しなければいけないのだ。

「そのためには、協力者を………」

　レベッカがそう呟いた瞬間、ある人物の姿が脳裏に浮かぶ。でも、

「私から振っておいて、都合がいいから誘うって、虫が良すぎるよね………」

　いくら温厚な人物でも、それは怒るだろう。

「ダメだよねぇ………」

　一度レベッカから断った人物。ナイル・フーラに協力を求めるのは。

「しかも、あれから二日くらいしか経過してないんだよね………」

　どの面下げてお願い出来るのだろう。
　なりふり構っていられないのはわかっているが、それはちょっと厚顔無恥にも程がある。

「他の人には………」

　そう考えて、レベッカは考えるのを止めた。
　無理だ。他の知り合いなんてトリスタンとルルアリアしかレベッカにはいなかった。

「どうしよぉ………」

　そんな情けない声が、誰の耳にも聞こえることなく響いた。