家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

犯罪者が現実で「犯人はお前だ!」って言われた、実際滅茶苦茶ビビると思う

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 マスタークラスになってからも、二人はパフォーマンスの日々だった。

 元々個人でマスタークラスへと昇格していたチノは遂に2冠を達成したとも言われ、記者からも取材も多かった。
 だが、チノよりも注目されたのはフィアラだった。

 出自不明で田舎から来たばかりの少女と言われているが、チノが推薦したパフォーマーで、その実力はデビューしてから二ヶ月にも満たないにも関わらず、チノと互角以上と言われている。

 フィアラの成長は凄まじく、チノもまたフィアラに触発されてその実力を確実に伸ばしている。

 この二人のパフォーマンスにはチノの実の親であるリリルナ家当主ですら目を向け、近々対談することが約束されたという………


■■■


「情報がはやいね………」

 チノは自分の家のリビングで新聞を読みながらそう呟いた。
 確かにこの情報は真実だ。フィアラの成長速度は異常とも言えるし、チノもそれに負けじと力を伸ばしているのもまた事実。

 そしてチノの親に会って話したいと言われたのもまた事実。
 だが、チノ自身は親に会ってもいいのか悩んでいる。

(そりゃあ、何度か話したことはあるけど………)

 もちろん、娘としてではなく、パフォーマーとして。
 だが、チノは知っている。フィアラにその報告をした瞬間、フィアラの目が一瞬変わったことを。

(絶対に、狙ってるよね………)

 その事で推測した。フィアラは、リリルナ家当主と会うためにパフォーマーになったのだと。
 貴族と繋がりを持ちたい。そんな邪な思いでパフォーマーになる人がいることはチノも知っている。

 だが、ルーズ家も立派な貴族家のはずだ。それを無視するということは………
 チラリと、最近趣味で始めたボトルシップを黙々と進めているフィアラを見る。

 チノは、フィアラの目的が繋がりを持つことでは無い気がした。でも、家族を危険な目に合わせる訳にはいかない。

「ねぇ、フィアラ」

 そう話しかけても集中しているのか、フィアラは反応しない。

 予想通りとも言える。フィアラは、一度集中すると、周りの音が聞こえなくなる。
 もし暗殺者や殺人犯ならば、それは隙に見えるが、フィアラはそんなことを狙っていないと判断したチノは、もう疑ってはいない。

(仕掛けてみようかな)

 それは、この関係を破綻することになったとしても、今のチノにとっては大切なことだから。

「ねぇ、レベッカ」

 フィアラ、ではなくレベッカと、本名で呼ぶ。それだけで、フィアラの手は止まり、バランスを崩したボトルシップは床に落ちた。

「え………?なん、で………?」

 それは戸惑い。予想だにしていなかった、名前で呼ばれて、フィアラは固まる。

「誤魔化すことも、できたはずなのに………」

 チノは呆れたような笑みを浮かべながらフィアラに近づく。

 チノが一歩近づくと、フィアラは一歩後ろに下がる。
 だが、警戒しているのか、部屋中に魔力が満ちている。

(これが、フィアラの魔力)

 今まで体感したことがなかったからわからなかったが、今ならわかる。
 フィアラの、レベッカの魔力の前ではチノの力など塵芥でしかないと。

 今、この部屋で最も劣勢なのはフィアラだ。だが、生殺与奪の権を握っているのはフィアラだ。

 チノはフィアラに近づくのを辞める。

「ねぇ、フィアラ。少し真面目な話がしたいな」

 そう言ってソファーに座るが、フィアラは近づこうとしない。

「座らないの?」

「………なにが目的?」

 全力で警戒はするが、フィアラはチノを殺そうとは考えない。
 魔力を放出しているが、それはチノの意識を魔力に移し、逃げるためのもの。

「目的はさっき言ったじゃん。話そ?」

 だから、まるで日常会話を続けるように言ってくるチノが少し怖かった。
 フィアラは恐る恐るチノの隣に座る。

 チノはその姿を見て「うん!」と頷くと、フィアラの手を取った。

「!?」

 驚愕しながらチノを見るが、チノは相変わらず笑っているだけ。

 それからチノはフィアラを真正面から見ると、

「フィアラ、あなたの話しを聞かせてほしいな」

「………私の話しを聞いたって、面白くないよ?」

「でも、私は聞きたいな。なんで偽名を使ったのか、なんで私とユニットを組んでくれたのか、なんで、父様や母様に会いたがってるのか………」

 フィアラは少し静かにすると、

「わかった………」

 そう言って、少しづつ話始めた。

 そう、静かに言った。
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