家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

花野拓海

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3章 逆境は真実へと至る最初の道筋である。

『フィアラ』という少女

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 レベッカにとって、『フィアラ』とは思い出の塊だ。

 親に裏切られ、親友が死に、大好きな人を殺し、あらゆる人を裏切った。それが『レベッカ』だった。

 でも、『レベッカ』は大好きな人に手を下した人物を知りたかった。執念と言うべき執着心で、『レベッカ』は『それ』を探し続けるために今は生きている。

 わかっているのだ。自分が不幸を呼ぶことを。『レベッカ』がアイトを殺したことは。

 でも、原因は『レベッカ』でも、手を下した人物は他にいる。そして、その犯人が居場所のヒントをくれた。

 だから、探すために行動することにした。
 そして、アイトの言葉を思い出した。たまには、自分の意思で生きてもいいじゃないか、と。

 パフォーマーは手段のひとつでしかなかった。だけど、『レベッカ』はどこか望んでいたのだ。自分が幸せになることを。

 例え、それが許されざることでと、それを『レベッカ』は無意識にでも願ってしまっていた。

 だから、『フィアラ』を創ったのだ。
 自分が『レベッカ』とは違う人間になれば、少しはこの罪悪感から逃れられるという、簡単な逃げ道を作ったのだ。

 それでも、『フィアラ』はまだ過去に囚われているのだろう。
 愛してくれた母に、好きになってくれたアイトに、友達になってくれたステラに。『レベッカ』は囚われている。

 『フィアラ』という少女は、一生、この罪悪感に囚われながら生きていくのだろう。


■■■


「それが私。全ての元凶を壊すのが『レベッカ』。その逃げ道が『フィアラ』」

 だから、自分は最低な人間だと、フィアラは自虐する。

「幻滅した?」

 そんな自嘲気味の笑みを浮かべるフィアラをチノは抱きしめた。

「幻滅するわけがない!」

「………え?」

「幻滅するわけない!私が、フィアラを幻滅するわけないじゃん!」

 だから、その一言はフィアラにとっては予想外の一撃だった。

「なん、で?なんで、幻滅してくれないの?私は、自分の目的のために………」

「それでも、私は幻滅しない!確かにもっと賢いやり方があるのかもしれない。でも、ずっと辛い思いをしてきた子を幻滅するわけないじゃん!」

 そのチノの言葉が優しくて、フィアラへの愛に溢れていて、フィアラはそのままチノの胸の中で涙を流した。

「ねぇ、フィアラ。フィアラさえよければこのまま、逃げ切ることもできるよ」

 もし、レベッカのことがバレても、もうフィアラへはそうそう手出しはできない。

「それじゃ、ダメなの………」

 だが、フィアラはチノの助け舟を涙声で否定する。

「私は、まだ、なにも知らない………アイトが殺された、理由も、私が嫌われ続けた本当の理由も、なにも、知らないから………」

 そう言って、懐から一通の手紙を取り出す。

「ここに、全ての答えがあるから、私は戦う」

 そこには、先程まで泣いていた少女の面影はなく、自分の意思でそういった。

「大丈夫?」

「大丈夫だよ。それで、ね?全てが終わったら、また、一緒に………」

「うん!約束、だからね」

 そう言って、二人は笑いあった。
 チノは、フィアラのために。フィアラは、未来と真実のために。リリルナ家へ向かった。
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