ヴァルキリーレイズ

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第二笑(フレイヤ編)

5 : 索敵

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 フレイヤを見つけるべく、街から出てしばらく歩いていると、オーディンが、

「それにしても、この服は少し窮屈じゃ」

 その言葉に、ミカンの肩が一瞬、揺れる。

「ならばここで剥いてやろうかオーディン。そうすれば窮屈からも解放されるぞ?」
「してみよヴァルキュリア。出来るものならな」
「なんだと……」

 俺は張り合う二人の頭に手を乗せる。
 ポスっとその重みを感じた二人は俺を見上げて、

「コウタぁ! この女がうざいのだ!」
「我が眷属よ、胸の辺りが少し窮屈なのじゃ」
「言ったな!? 私の胸が小さいと言ったなぁあ!? うがぁぁあ!」
「何じゃ! やり合うつもりか!?」

 小さな手を掻き回しながら、今にも取っ組み合わんとする二人の頭を押さえつけ、互いの距離を保つ。

「やめろよ二人とも」

 オーディンは今、ミカンの服を着ている。俺が日本に帰っていて、ここにいない間にテシリーが買ってきた服だ。
 何を思って買ったのか、一言で表せばゴシック・アンド・ロリータ。俗に言うゴスロリという衣装だ。
 黒を基調としたミニドレスはもちろん幼女サイズなのだが、オーディンにとっては少し窮屈に感じるらしい。
 ミカンがスッポリと収まるであろうその服を、オーディンに窮屈と言われたことにより、彼女は腹を立てたのだ。
 幼女同士の発育争いなど、見るに堪えない。

「判決はコウタに託そうではないか!」
「は」
「そうじゃの。コウタは私たちの全裸をよく見ておるようじゃからの」
「人聞きの悪いことを言うな」
「どっちの身体が魅力的だ! コウタ!」

 向いてくる幼女二人。
 …………いや、何一つ違いがわからん。

「どっちでもいいよ」
「むぅ……おいコウタ」
「ん?」

 ミカンは真剣な顔で、

「元気がないようだが、お前……もしかしてシャミーが傷ついたのを自分のせいだと思っているからか?」
「ああ。まあ……」

 俺があの時、シャミーを外に出さなかったら、彼女は無事でいられたのに。元はといえば、コアを投げ捨てたのが間違いだったんだ。

「確かに、お前があの時、捨ててこいとシャミーに頼んでいなかったら彼女一人が傷つくことはなかったかもしれん」
「……」
「だが、もしコアが家の中にあったのなら、そこに居た全員、どうなっていたか分からんかったぞ」
「え?」

 代わって、オーディンが続ける。

「その通りじゃ。言い方は悪いが、コアを持ったシャミーを外に出して正解だったとも言える。お前がコアを放り投げておらんかったら、とっくにあの家は火の海じゃったろう」

 あの時、あの瞬間、コアが家の中にあったら、皆が……。

「フレイヤはそんなに強いのか?」

 オーディンはきりっと目をとがらせて。

「べらぼうに強い」
「っ……」

 思わず唾液を飲み下す。
 オーディンに強いと言わせるような奴と、今から戦おうとしてるのか、俺たちは。
 今度はネーシャが、

「シャミーのおかげでみんな無事でいれてるってことね! シャミーには感謝しなくちゃ! ね?」

 シャミーが傷ついたことによって、ネーシャが一番苦しんでいるはずなのに、こいつは俺に気を遣わせまいと……。
 たまに優しい奴だから、こういう時どんな顔を向けたらいいか分からない。
 そこでシオラ。

「しんみりすんのはそこまでだ。……フレイヤは近くにいるんだろうな?」

 答えるのはミカン。

「フレイヤは我々のコアを持っているから、近くにいれば分かる。だが、今は感じない。さっきまでは微量に感じ取れていたのだが」

 フレイヤは既に遠くへ行ってしまったということか。

「どうやって探せばいいんだ……」
「案ずるな我が眷属よ。我々のコアはフレイヤごときに使いこなせん。いつしか向こうからやってくるじゃろう。このオーディンとヴァルキュリアを求めてな」

 やっぱり、この二人じゃないとあのコアの力を引き出せないのか。
 じゃあフレイヤがこの世界を滅ぼす危険性も無いわけだ。
 
「というか、フレイヤごときって……お前たちはフレイヤよりも強いのか?」

 言った瞬間。二人揃って俺の前に立ちはだかり、無い胸を張る。

「私は最強の戦神ヴァルキュリアだぞ! どこの神の骨かもわからん奴に負けるわけがなかろう!」
「私は最高神オーディンじゃ! 最高なんじゃぞ!? その上はないわい!」

 そうだったのか。
 オーディンがフレイヤをべらぼうに強いとか言うからてっきりこの二人よりも強いのかと思ってしまったが。そうだよな、最強と、最高だもんな。フレイヤより弱いわけが無い。

「ま、コアがなければ勝てるものも勝てんがな」
「あ、スンマセンホント……」



 コアの反応を察知出来なくなったことで、フレイヤは近くにいないということが分かり、俺たちは、渋々帰路につくことになった。
 道中、頭の後ろで手を組むネーシャが、

「張り切って出てきちゃったけど、無駄足になったわねー」

 それに返すのはテシリー。

「あの時は皆興奮してしまっていたからな、仕方ない」

 俺も、シャミーが傷ついてるのを見たら冷静でいられなかったしな。
 シャミーにはいつか大量の魚をプレゼントしてあげよう。
 そこで、ふと思いついた俺はサラに問う。

「サラ、商店街に寄ってかないか? 晩飯の食材、まだ買ってないよな?」

 サラがいつもクエスト終わりに食材の買い出しに行っていたことを思い出す。
 外に出たついでに、帰りに買っといた方があとが楽だろうと思って提案したのだが。

「ぷいっ!」

 そっぽを向かれてしまう。
 本当に、どうしてしまったんだよサラ。何で今日のサラはこんなにも俺に冷たいの?
 ネーシャはため息をついて、

「ちょっとコウタくん。あんたサラに何したのよ? どうせあんたの事だから、セクハラでもしたんでしょ?」
「してねぇよ! お前俺の事なんだと思ってやがんだ!?」
「「性犯罪者」」
「ン?」

 ネーシャは、まあ流れ的に良しとしよう。
 その声に合わせて同じことを言ったやつが、もう一人居た。

「何だコウタ。そんなにじろじろ見ないでくれ。孕んだらどうする」
「孕むかァ!! テシリー何でお前まで俺を性犯罪者呼ばわりしてんだよ? どこをどう見ても紳士だろうが!? ナ!? サラ!」
「……ぷいっ!」

 あっれ。

「コウタ、あんた本当にサラに何したのよ?」
「いや、別に何も」
「嘘をつけ。でなければサラがこれほど不機嫌になるはずがない」

 だって俺、この世界でいうと一週間、ここにいなかったんだよ? ナニをしようにもできないんだよ?
 もし俺が何かをしたとするなら。それよりも前ということになる。最後から遡ってみると……。
 オーディンと戦いました。
 デルタの皆が集まりました。
 何かミカンが大きくなりました。
 学校でテシリーと戦いました。
 テシリーと、戦って……俺は……。
 サラが大切にしていたアヒンアヒンをテシリーにぶちまけました。

 土下座。

「ごめんなさァァアイ!!」

 心を鬼にして没収したアヒンアヒンだが、やっぱりサラはご立腹だったようだ。
 だって、サラがアヒンアヒンするとこなんて見たくないんだもん! 間違いが起こってからじゃ遅いじゃないか!
 全ては彼女のためにと思ってしたことだったんだ!

「んもうっ! 私、あの小瓶気に入ってたんですよ!?」

 サラの言葉を聞いて、テシリーが思い出したように、

「おお、あれのことか。いや、サラが探していたものでな。私に訊ねてくるものだから教えてやったのだ。コウタが大喜びで私にぶちまけ……」
「ヤメテェェェエ!! テシリーさんそれ以上は言わないでェェエエ工!!」

 テシリーがチクってやがったのか!
 こっそり没収できたと思ってたのに。
 テシリーのことだから、サラの質問に対して素直に答えたのだろう。機密ですら息をするように漏らしてしまうような奴だ。いい意味でも悪い身でも馬鹿正直だこいつは。
 ため息をつくネーシャ。キョトンとしているテシリー。額に手を当てて呆れている様子のシオラ。特に反応しないゲザ。喧嘩を始めそうな幼女達。
 俺たち、さっきまでフレイヤとかいう神様と戦おうとしてたんだよな?
 俺の腕に、すらっとした腕が絡んでくる。

「ふふっ。許してあげますっ。買い物、一緒に行きましょうか!」
「お、おう!」

 サラの豊満な胸が俺の腕に……!

「そ、それにしても、本当に悪かったな。勝手に捨てちゃったりして」

 オホホ……柔らかい。

「いいんですよ。あれはサービスで貰ったものですから……今度は自分で買いますので!」
「うん、それが良……ちょっと待て今買うって言ったのか」

 この日、サラはサービスでアヒンアヒンを一箱貰った。
 一箱にいくつのアヒンアヒンが入ってるかは、分からない。
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