いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛

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結婚したのか……俺以外の奴と

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オメガの発情期といえば甘く乱れ自他境界すら曖昧になり番と激しく求め合うもので。
どれほど強靭なアルファの理性でも消し去る【蜜月】で。
普段どれほど清楚で慎ましやかな人間だろうと【淫らで欲しがりな情婦】に変えるなんて言われる未成年アルファの夢とあこがれが詰まった甘美で背徳的な象徴であったはずなのに。


「あれっくすが、かえってきたら……」


舌っ足らずな言葉の続きが待てないほど昂った身体。
それに抗う理性などとうになくしたアレックスは噛み付くようにその唇をウィルバートのそれに寄せる。


「こら……だぁめ。にぃに、おこるよ?」


上気して熱を持ち発汗してしっとりとした肌。
首筋や額に僅かに張り付いた髪。
そして火照りを隠すことなく情を孕ませ潤んだ瞳と小さくぷっくりとした赤い唇。




「【わるいこ】にはお仕置が必要……?」



アレックスの中の想像のウィルバートのヒートは大人の文学書などに影響されたのもあり、とにかく本人も困惑しながら抗えない快楽に戸惑い助けを求め泣いて縋って自信を求めてくる。
その無自覚な誘惑に自身も翻弄されながら、その無垢な体を開発していくのだと決意にも近い気持ちで今まで待ちに待っていたというのに。
蓋を開けてみれば挑発的で扇情的で余裕綽々、むしろ巷で言う【よちよちプレイ】なるものをされそうな大人の色気に当てられ足元がおぼつかなくなっていた。
これはこれで大変情欲的だとは思う。
正直これはこれで好きだ。
好きだとは思うのだけれど……


なんだか思っていたのと違う!!!!


と脳内ではそんな情けない心の声がやまびこのように響き渡っていた。











ウィルバートがクライシス殿下と話した日の夜アレックスは遠征で疲労を滲ませた脚で屋敷へと足を踏み入れた。
玄関ホールでも僅かに香るウィルバートの香りに思わず顔を顰める。
何故こんなに離れた所までフェロモンの香りがするのか。


「おかえりなさいませアレックス様」

「ウィル兄様の体調は」

「お察しの通りでございます。本日からお入りになられました」


それだけで理解したアレックスは上着をフットマンに渡すと『軽食を頼む』と返し普段は使わない、ウィルバートが発情期の際にだけ使用する仮眠用の控えの自室へと向かった。
シャワーを浴びてラフな室内着に着替えると軽食を食べ終えたアレックスはあることに気がついて思わず部屋の扉を開けた。
その【あること】とはウィルバートのフェロモンの香りがこちらに迷いなく近づいてきた事である。
ウィルバートはオメガでありヒートがあるのは勿論だったが、軽度で本人曰く風邪みたいなモノらしい。
積み重なる近親婚の影響もあり、王家にはそういった【性別の特徴】が出にくい方が多くいるというのはアレックスも聞いていたので本人の話を聞いて実感した。
話は戻るが軽度のヒートであったウィルバートは基本フェロモンも薄く通常であれば玄関ホールまで香りを感じることは無かった。
なのでてっきりウィルバートが近くを通ったが故に香りがしたのだろうとその時は考えて深く追求しなかったが、今こちらに差し迫ってくるそれにその考えは過ちだったことに気がつく。
今どの辺にいるのか不明なほど距離があるにもかかわらず通常のヒート程のフェロモンを感じているからだ。
つまりもしウィルバートの目的地がこの部屋ならば大変なことになるのは想像に難くない。


「……まずい…シリル!」

「はい」


控え室にいた侍従を呼びがけると部屋なら飛び出てきて小走りに近寄ってくる。


「如何されましたかアレックス様」

「ウィル兄様がこちらに来ている。俺の香りにつられているのかもしれない。
俺は部屋に籠るが、もしウィル兄様が来たらその際は部屋まで付き添ってやってくれ」

「かしこまりました」


シリルは穏やかでアレックスの乳兄弟であり、テイラー伯爵家から連れてきた優秀な侍従だ。
ベータでオメガのフェロモンにも惑わされないので安心して任せられる。
そう判断して扉を閉めて鍵をかけなるべく影響を受けないよう僅かながらな抵抗として窓を開け部屋の奥で息を殺した。
アレックスは確かにウィルバートのことを愛してはいるが、今迷いのあるウィルバートとどうこうなるつもりは無い。
しばらくするとシリルの『ウィルバート様、主は就寝なさいました』という声が聞こえてくる。


「……アレックス…?開けて……」


甘えるような普段より少し高い声に緊張していた心臓が強く高鳴った。


「…………アレックス…?開けなさい」

「ウィルバート様、主は……」

「うそだよぉ……悪い子だなぁ……だって…いい匂いが強くなった…」


アレックスの隠していた興奮を簡単に悟りウィルバートは扉を叩く。


「アレックス、怒ってないから出ておいで」

「…………」


何度も何度も木製の扉を叩くその音に高鳴りっぱなしの心臓が口から出そうな錯覚に陥る。
いつ嗅いでも、口で説明が難しい本能を直に触れて刺激するような香りにぐらぐらと足元が覚束無くなる。
このままではいけないと思うのに、ドアから視線を外すことが出来なくなって、気がつくとふらりと足がそちらに伸びて。


「アレックス様!お気を確かに」

「……っ」


扉かのノブに触れていた掌に慌てて身を引いても時すでに遅し。
アレックスの指先は唯一2人を隔てる扉の鍵を開けていた。
開いた扉の前で満足気に微笑むウィルバートの姿に目を奪われて差し出した手を彼に引かれる。


「帰ってきたらまず“にぃに”にただいまの挨拶でしょ」


ガンガンと本能を刺激する甘い香り。
性的衝動を駆り立てられて今にもその身体を自らのものにしたいと訴える本能。
抵抗しなければと思う度に今度はそれを包み込むように安らぎを刺激される。
まるで無理矢理心を開かされるようなそんな感覚に呑み込まれて行く。


「ねぇ……きて」

「アレックス様!」


フラフラと誘われるがまま手を引くウィルバートのあとをついて歩く。
シリルの制止の声が聞こえていてもただすり抜けて……。




気がつけばウィルバートの部屋の前に居た。
ゆっくりと開いた扉の中はいつものウィルバートの部屋。
しかしそこは噎せ返る程の彼の香りで意識が朦朧としてくる。
頭の端でオメガのフェロモンはアルファの性衝動駆り立てるものだと聞いていたはずなのに、と思う自分がいる。
今の自分の状況は駆り立てられた性衝動よりも底知れぬ心地良さに従わされるような衝動の方が大きい。


「これ……アレックスがうちに来た時の服……、こっちは婚約の初お披露目の服で……」


ベッドの上に並べられたそれは几帳面で世話焼きなウィルバートの性格を表すように規則性を持って並べられている。
美しく畳まれてベッドに広がるそれはまるで巨大な花のように鮮やかで、誘われるままその身体を押し倒した。


「あっ、ふふ……どうしたの?甘えたくなっちゃった……?」


その無防備な首元に唇を寄せると気だるげな甘い声で囁いてアレックスの頭を包み込むように撫で付けた。
その掌の優しさに安心すると同時に込み上げてくる欲求を少しでも満たすべく唇で触れ、その肌に歯を立てると身動ぎ、静かな部屋に布擦れの音が響いた。


「ん……シワになっちゃう」

「…………」


そう言って起き上がろうとしたウィルバートの上からどく事なく吸い込まれるように身を寄せるとアレックスの鍛え上げられた胸を何かが押した。


「ねぇ見て!」


不満気な声にぼんやりとしていた意識が戻ってきて、ベッドの上のそれにアレックスは喜びをかき立てられた。
先程は気が付かなかったがこれはいわゆる【巣作り】という行為で、オメガが好意のあるアルファの衣類を集め身の回りを固める習性だ。
真実に気がつくとドクドクと激しく脈打つ心臓が血の巡りを良くして身体中が燃え上がるように熱くなった。
ぐらぐらと甘く誘う夢心地のウィルバートの香り。


「これ俺のために作ってくれたの?」

「うん…」

「……嬉しいウィルバート……」

「あれっくすが、かえってきたら……」


舌っ足らずな言葉の続きが待てないほど昂った身体。
それに抗う理性などとうになくしたアレックスは噛み付くようにその唇をウィルバートのそれに寄せる。


「こら……だぁめ。にぃに、おこるよ?」

「………」

「【わるいこ】にはお仕置が必要……?」


いきなり唇を人差し指で制されて思わず身を引くと上気した肌に少し不機嫌そうなウィルバートの顔。
熱を持ち発汗してしっとりとした肌。
首筋や額に僅かに張り付いた髪。
そして火照りを隠すことなく情を孕ませ潤んだ瞳。
無意識にそんな表情をしていることすら本人は知る由もないのだろう。
想定とは違うヒートになり脳内は少々困惑していたがしばらくすれば、寧ろそれが良く思えてきた。
余裕そうに煽られると堪らなくなるのは自分に被虐趣味があるのか、それとも加虐趣味があるのか。
はたまたその両方か。
込み上げてくる興奮に喉を鳴らして嚥下すると自然と笑みがこぼれた。


「ウィルバートがそういうのなら。
でも……もう待ては聞けない」


そう言ってその手を掴みベッドに押し倒しその前開きの部屋着の一番首元のボタンをひとつ外した。


「……?アレックス……やだ…はずかしいよ…あれっくす」

「恥ずかしい?目、閉じてるの?……じゃあ……その分俺がちゃんと見てるよ。
後でちゃんと叱られるんだからそれくらいいいだろ?」


二つ、三つと外してその薄い胸元がはらりとさらけ出されて僅かに骨が浮いた華奢な身体が顕になっていく。


「だめ……やだ…」

「どうして?」


『どうして?』と問いかけた時キョトンとした顔が赤子のようにわなわなと震える。
様子がおかしい、そう思い至った時にはあろうことかウィルバートは鼻水を垂らして不細工に泣き出した。
何事かと慌てて距離をとるといちばん手近にあった服を抱え込み顔を隠すこともなくわんわんと泣く。


「ぅえっ……うぁああん!」

「うぃ、ウィル?!」


反射的にちり紙を用意するとウィルバートに必死な表情で差し出すアレックス。


「ぼく!やだって、いっだぁ!……ぐすっ…な、なんで意地悪するのぉ!!ぼく!アレックスと……ひっく……おはな…っ……あれっくすめもりある、したいだけなのに」

「アレックスメモリアル」


なんだその摩訶不思議な造語は。
アレックスは身体の昂りに耐えられないというのにウィルバートは呑気にゴーイングマイウェイ。
むしろ爆走中で泣きながら話を続ける。


「ぐずっ……これっ…ごれ!ひっく、ぼく、初めて仕立てたやつ……」

「あ、ああ……そうだね…この青色のリボンが美しくて大好きだったな」

「ごれ!!ごれは…、ぼぐと……初めてそろえ
に……、ごっぢはアレックスがお庭で、転んだどぎの……」

「そんなことまで覚えてるの?!」


泣いて引きつけを起こしながら懸命に説明するウィルバートの背を色々なものを命懸けのつもりで飲み込み、何とか撫でると少しづつ症状が落ち着いてくる。


「ごれ……アレックスが夜怖いからトイレ一緒に来てって。『にぃに、ぼく、もうおもらししちゃう』ってなきながら、言った時のパジャマ……」

「さすがにそれは忘れて欲しい。俺の尊厳が……」


お預け?まだ?まだなの?と催促するような下半身を気力だけで押さえつけて何とか話し続けること三十分。
まさに死ぬかと思う惨さのお預けを食らった後待ち受けていたのはウィルバートの寝落ちだった。
アレックスの腕を掴んで寝てしまったウィルバートに、大きくため息を吐き出すと最後の難関である引き止める腕に抗い部屋を出る。
すると外にはウィルバートの生みの親である義父が居た。
その美しい蒼銀の髪に、切れ長で神秘的な青い瞳に見つめられるとアレックスは少し緊張した。


「お、とうさん……。いらっしゃったんですね」


やましさ等ないが驚きから詰まった声でそう言うと義父はその美しい顔を驚きの表情に変化させて右手で頭を抑えた。
その姿はまるで彫刻のようだ。


「…………本当に……アレックスはなんて出来た息子なんだ…そんな有様でよく……」

「有様はやめて頂けますか?」


有様とは考えずともこの下半身の話だろう。
確かに無様かつ見ようによっては痛々しいだろうがこれは男の勲章なのだ。
男たるもの愛しいものの気持ちを省みず、己の欲望に流されるのは情けないだろう。
と何とか自分に言い聞かせてアレックスは、このようなものをいつまでも人の前に晒す訳にも行かず『ご前失礼致します』と一言断ってそうそうにその前を横切った。
けれどそれが少々失礼であると遅ればせながら気がついて早くこの場を離れたいのを堪えながら足を止める。


「案ずるな、やっと本来のヒートが来たようだ。
とはいえまだ未成熟。次回には成熟しているかもしれないな。
そうなればそのような有……我慢などせずに済むことだろう。
本来のオメガのヒートはそれはそれは、もうめちゃくちゃにみだ」

「レオお義父様、その先は大丈夫です」
 

義父はオブラートという言葉を知らないのでこの先はきっとアケスケな言葉が続くことを察して言葉を遮る。
少し遅かった気がしないでもない。


「ああすまない。つい……。気をつけてはいるのだが。
まぁその状態は苦しかろうし何回か……その、あれを、アレすればそうだな」

「お義父様、お義父様はオブラートに包もうとするのを諦めた方がいいかもしれません」


全然オブラートになっていないどころかむしろストライクを突っ切っている気がする。


「あのお義父様、本当に見苦しいものをお見せして申し訳ありませんでした。
今日はこのあたりで……」

「見苦しいものか、大層立派ではないか。
うん。立派立派……じゃぁおやすみアレックス。
遠征で疲れているところウィルがすまなかったね」

「……お心遣い感謝致します」


離れた場所にシリルと義父の側近らしい男達が様子を伺うようにこちらを見ているのを横目に懸命に足を動かす。
その立派発言は必要だっただろうか。
何度立派といえば気が済むのか。
確かに我ながら立派だとは思うが。
正常な思考を失っているアレックスは香りの誘惑に抗いながら何とか控えの自室に戻り収めたあと、疲れた体は泥のように眠った。

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