124 / 124
一章、3
1、124この手で出来ること
しおりを挟む
翌日、朝起きる。夜遅くに帰ったため。俺の腕が無くなった事を家族は知らない。
自室の空気は暖かくなってきていた。左手で触ってみると右腕は無い。家族への言い訳を考えていた俺の前に子手が現れた。
「子手? 亮介の家に住むんじゃ無かったっけ?」
「そうだよ。でも忘れ物してたから、渡しにきた」
子手は何も無い空間から腕を取り出す。
「俺の腕! でも食われたはず!」
「子影が言ってたよ、影の中で隆志が無意識に掴んでたって。だから飲み込む前に夜の冷気で冷やしておいた」
そう言うと子手は俺の腕を肩に嵌め込んだ。
「無理だって」
「ふふっ、僕たちは何の神様かな?」
「あっ! 手の……」
腕は繋がった。噛まれた跡も綺麗に無くなっている。
「まじか! ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ、また後で」
子手は消えて居なくなった。俺は右手の感触を確かめてみる。動きがいい。体も前よりも軽く感じた。それは子手と手を繋いでいないからでもあった。
「行くか」
朝の支度をして朝食を食べてから会社へ向かった。その日の仕事は翔真の計らいで早上がりをする。
そして、俺は橋の前で待って居た。隆志は休みだったためすぐに合流し歩き出す。
「隆志、体の調子は?」
「まあまあってところか。亮介の家だと動かなくってな、体が鈍っちまう。直樹は? 手が戻ってるのはなんで?」
「ありがとな。とだけ言っとく」
「?」
隆志と午後の山道を歩いていく。いつもならよく喋る隆志も今日は無言が多い。俺も漫画のことに触れていいのか迷って居た。
「なあ、直樹。僕さ漫画は止める」
「いいのか? ずっと頑張ってきたのに」
「絵が上達しねえんだよな。それに、描くの向いてない気がしてたんだよ」
「そうか……」
「ふふんっ! その代わりに小説書く事にしたんだ。シナリオ書けるし行けんじゃねって」
「おお、いいね!」
「形は違うかもだが、これからもよろしく」
「ああ!」
山道を越えて亮介の家に入る。引きずられた亮介と包鬼。子手と子影が迎えてくれた。
「こんちわ、2人とも」
「「立ってから言え!」」
亮介の家に上がり部屋の戸を開けるとそこにはたくさんの料理が並んでいた。
キッチンから疲弊した稲荷さんが顔を覗かせる。
「お待ちして居ました。今日は私の奢りです。血涙を流しながら高い料理とお酒を買ったので召し上がってくださいね!」
「「「喜びにくい歓迎だな!」」」
宴会を楽しんでから片付けをして、俺たち3人はこたつに入った。
「「「描くぞ!」」」
外はすっかり暖かい昼下がり、今日は霧が晴れて山の麓が見える。その透き通った空の先の海まで。澄み渡った空気を感じながら俺たちはペンを動かすのだった。
自室の空気は暖かくなってきていた。左手で触ってみると右腕は無い。家族への言い訳を考えていた俺の前に子手が現れた。
「子手? 亮介の家に住むんじゃ無かったっけ?」
「そうだよ。でも忘れ物してたから、渡しにきた」
子手は何も無い空間から腕を取り出す。
「俺の腕! でも食われたはず!」
「子影が言ってたよ、影の中で隆志が無意識に掴んでたって。だから飲み込む前に夜の冷気で冷やしておいた」
そう言うと子手は俺の腕を肩に嵌め込んだ。
「無理だって」
「ふふっ、僕たちは何の神様かな?」
「あっ! 手の……」
腕は繋がった。噛まれた跡も綺麗に無くなっている。
「まじか! ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ、また後で」
子手は消えて居なくなった。俺は右手の感触を確かめてみる。動きがいい。体も前よりも軽く感じた。それは子手と手を繋いでいないからでもあった。
「行くか」
朝の支度をして朝食を食べてから会社へ向かった。その日の仕事は翔真の計らいで早上がりをする。
そして、俺は橋の前で待って居た。隆志は休みだったためすぐに合流し歩き出す。
「隆志、体の調子は?」
「まあまあってところか。亮介の家だと動かなくってな、体が鈍っちまう。直樹は? 手が戻ってるのはなんで?」
「ありがとな。とだけ言っとく」
「?」
隆志と午後の山道を歩いていく。いつもならよく喋る隆志も今日は無言が多い。俺も漫画のことに触れていいのか迷って居た。
「なあ、直樹。僕さ漫画は止める」
「いいのか? ずっと頑張ってきたのに」
「絵が上達しねえんだよな。それに、描くの向いてない気がしてたんだよ」
「そうか……」
「ふふんっ! その代わりに小説書く事にしたんだ。シナリオ書けるし行けんじゃねって」
「おお、いいね!」
「形は違うかもだが、これからもよろしく」
「ああ!」
山道を越えて亮介の家に入る。引きずられた亮介と包鬼。子手と子影が迎えてくれた。
「こんちわ、2人とも」
「「立ってから言え!」」
亮介の家に上がり部屋の戸を開けるとそこにはたくさんの料理が並んでいた。
キッチンから疲弊した稲荷さんが顔を覗かせる。
「お待ちして居ました。今日は私の奢りです。血涙を流しながら高い料理とお酒を買ったので召し上がってくださいね!」
「「「喜びにくい歓迎だな!」」」
宴会を楽しんでから片付けをして、俺たち3人はこたつに入った。
「「「描くぞ!」」」
外はすっかり暖かい昼下がり、今日は霧が晴れて山の麓が見える。その透き通った空の先の海まで。澄み渡った空気を感じながら俺たちはペンを動かすのだった。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる