甘い夜にわたしを食べないで

志藤みかづき

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第5夜★

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 ―――どうしよう。転校生の星宮聖ほしみやせいくんが、うざい。


 星宮聖が転校してから1週間が経った。

 担任の緑川に言われ、黎夜れいやの代わりを務めるかのように学校を案内して。
 そのまま放課後も一緒に帰る流れになって、街でおすすめのカフェやお店、スーパーと生活に困らない程度のお店を教えた。
 聖自体は壁が薄いことで有名な賃貸のひとつに住んでいるらしく、建物の前まで案内され、お茶でもと言われたが黎夜とふたりで丁重にお断りした。


 そうこうしている間に聖が転校してきてから2週間が経って。

 聖は顔が良いだけでなく勉強もそれなりに出来、運動神経も良かった。
 さらには人当たりも悪くないこともあって、あっという間に学校中の女子の注目の的になった。
 一時期は肉食系の女子たちが連日聖に告白するも、「ごめん。僕、この街にはそれほどいられないと思うから」と魔人種共存推進機関MCPOを暗に匂わせ断り。
 聖からMCPOという闇を感じた女子たちは、聖は観賞用のイケメンとして離れて見守るという暗黙の了解が出来上がった。

 これで聖にまつわる一連の女子たちの騒ぎが終わりかと思えば、黎夜に興味を示していたはずが、気がつくと緋香梨ひかりの近くにいるようになって。

 個人情報の保護はどうなっているのか。

 緋香梨と黎夜の家から一番近い交差点で聖が毎朝待っているようになり、黎夜の後ろの席だったのが緋香梨の隣の席の男子と入れ替わったり、昼ご飯も一緒に屋上でご飯を食べるようになったり、美化委員で黎夜が不在のときに限って帰るタイミングが重なったり。


 時間とともに聖と過ごす機会が増えるということは、必然的に緋香梨にべったりの黎夜の機嫌が悪くなるわけで。



 遂に、今週末。
 帰宅しシャワーを浴びてベッドの上で横になっているところに、珍しくフードを脱いで白のシャツに布のズボンだけのラフな格好をした濡れた髪の黎夜がのしかかってきた。


「ひーちゃん、なに、あいつ。うざい。嫌い。目障り。
ほかの男が、ひーちゃんの近くにいたら、俺、我慢できない………」


 黎夜は聖に対して不満と暴言を吐くと、最後は掠れた声で、そのまま緋香梨の首筋に顔を埋めた。


「ちょ……れい、やっ」

 黎夜の温度の低い鼻息が首筋をくすぐり、緋香梨はくすぐったさに身を捩る。

 枕元に常備してあるハンドタオルに手を伸ばし、黎夜の髪の水分をよしよしと撫でながら吸い取る。


「あいつって、聖くんのことね。気持ちはわかるけど、落ち着いて。
あの人……なんだろうね、わたしじゃなくて、黎夜に興味があるみたいなんだけどな」


 黎夜の自分を見つめる瞳には熱がある、と緋香梨は思う。

 緋香梨のこと以外には全く無頓着だからそう見えるのだと言われればそうかも知れないが、それでも黒崎家に引き取られて会ったときから黎夜の琥珀色の瞳はずっと緋香梨自身を映している。
 小学校の時はそうは思わなかったが、中学はそんな黎夜が鬱陶しかったこともあった。わざとひどいことをして嫌われようとしたこともあったが、黎夜は何も変わらなくて、ひどいことをした緋香梨だけには優しく、助けられ、諦めるように絆された。

 対して、聖の自分を見つめる瞳は無機質で、冷静で、観察されているように緋香梨は思う。
 なによりさりげなく振られる話題は、最終的に黎夜に繋がることばかりだった。


 『いつから黒崎くんの家にお世話になってる?』 
 『へえ、黒崎くんの両親て何してる?』
 『ご飯も黒崎くんと食べるんだろ?、何を好んでる?』
 『普段何時に寝てる?家は真っ暗になってる?』


 ―――プライベートなことを聞かれて、うざいな。黎夜も爆発寸前だし、関わり合いたくない。


 聖からの質問の嵐を思い出し、思わず渋い顔になる。
 ストレスを発散するかのように、乾燥してきた黎夜の頭ぎゅっと抱え込む。


「ひーちゃん」


 乾いて無造作に跳ね始めた黎夜の黒髪が頬をくすぐり、琥珀色の瞳が蜂蜜のように甘く蕩ける。
 日に焼けていない白い指先が、強請るように緋香梨のチョーカーの隙間にはめ込まれ、くりくりと弄られる。


 黎夜からの誘いに、緋香梨はしょうがないなと微笑む。


「ん、して、いいよ」


 ―――聖のことを考えると、煩わしさに何もかも忘れたくなる。


 緋香梨はチョーカーを弄る黎夜の手を掴んで、その指をやさしく甘噛みして。


 ふたりのコミュニケーションを、はじめることにした。




 一人で寝るにはすこし大きい緋香梨のベッドの上で。
 ハーフパンツにボーダーのシャツを着た寝巻き姿の緋香梨の顔中を、黎夜が一心不乱に口づける。
 緋香梨の黒髪をかきわけて額、ココア色の瞳を食べるように口を開ければ呼応すように目が閉じられ、その上の瞼に。それから顔のラインをなぞるようにして左右の頬に、擽るようにして顎の下にも。最後に焦らしように口の周りにキスをして、ようやく誘うように潤う唇に。


「んっ、んっ、んぅ」
「……、……、……っ」

 ちゅっちゅっと、2、3回触れるだけのキスをして。


「ひー……緋香梨」
「ん、黎夜」


 黎夜がまともに緋香梨の名前を呼び、緋香梨がやわらかく笑みを浮かべた。


 黎夜の口が微かに開き、緋香梨の口も同じよう開けてれば。
 黎夜の真っ赤な舌がそっと口の中に差し込まれ、緋香梨の舌に沿わされる。
 ぺちゃ、ぺちゃと官能を高めるように舌をゆっくりと舐められ、舌全体をゆっくりと絡め取られる。緋香梨もお返しとばかりに黎夜の動きを再現し、黎夜の背を抱きしめるように、鼻を鳴らしながらふたりでキスに没頭する。

 そうしてキスの合間の息継ぎをするタイミングで互いの服を脱がし合い、ベッドの下に落として、上半身の裸体を晒す。


「……緋香梨のここ、まだ何もしてないのに、勃ってる」
「んぅ、そういうことは、ん、いちいち、言わなくていいからっ」


 外気に晒され、つんと刺激を期待するように勃ち上がった薄桃色の胸の先端を指さし、黎夜がからかうように口角をつり上げる。
 緋香梨は黎夜をたしなめるように頭をぺちっと叩き、ココア色の瞳を閉じて黎夜から与えられる官能に身を委ねる。


 黎夜は自身の大きな手の指の隙間からこぼれんばかりの乳房を、下から支えるようにして掴み、下から外側へ回すようにしてゆっくり揉み込んでいく。左胸から伝わる緋香梨の鼓動に合わせるようにして何度か揉み込み、今度は指の内側だけで同じように愛撫し、だんだんと自身が揶揄した胸の先端へと近づけていく。


「んっ」
「きもちい?」


 先端まわりの円の縁に辿り着いたので、焦らすように不意打ちで勃ち上がっている乳首を指の腹で弾いてやる。えい、えいと子どもみたいな無邪気な声を出して責め立てれれば、また緋香梨に弱く叩かれる。


「れいや」
「うん、ごめん、ちょーしのった」


 宥めるようにむっと突き出された唇にキスをしてご機嫌を取り、胸への愛撫を続ける。
 断続的に触っていた乳首に触れる回数を増やし、とんとんと叩いたり、弾いたり。
 緋香梨のチョコレートの如き蕩けた瞳と目を合わせながら、舌先でつうっと舐めて、それからぱくっと口に含んでちゅうちゅうと赤ん坊のように強く吸いつく。


「ん、ん、ん……ぅぁ」


 強弱をつけて吸いつけば、緋香梨が腰を反らし、喘ぎ声を漏らす。
 普段と違う高く甘い声を聞いて、黎夜の股間に血が集まっていき、より愛撫も熱心になる。
 もがこうとする緋香梨の両肩を押さえつけ、ちゅうっと強く吸って、離れて。てられた光る乳首を満足めに琥珀色の目で見つめ、それから心臓の上の白い乳房に吸いついて赤い痕を残した。


「おしりあげて」
「……ん」


 はあはあと息をする緋香梨が頷き、黎夜の指示に従って腰をあげる。
 ハーフパンツが脱がされ、白いパンツを身につけただけの姿になる。
 黎夜は少し逡巡した後、そのままパンツもえいっと剥ぎ取った。


「れいやっ」
「だって……もういらないよね」
「そ、そうだけどっ」


 枕元の暖色の光でもわかるほど、緋香梨の秘所を覆う淡い茂みはきらきらと反射して輝いていた。
 自分でも自覚していて、言い逃れできない指摘をされ、羞恥で緋香梨は両腕で目元を覆う。


「緋香梨、かわいい」


 心からそう呟き、黎夜は己の指先を一瞥してから、その淡い茂みをかきわけて、そっと濡れそぼった穴に指を差し込んだ。


「あ、ぁ…っ」
「痛かったら、言って」
「ん、いたく、ない」


 濡れを確かめ、利用するかのように、ぎゅっと締めつけてくる緋香梨の膣の腹側をくすぐる。
 お腹側をなぞるようにして、きゅぽ、きゅぽと、数回引き抜いて出し入れをすれば、緋香梨がより高い声で鳴く。数回繰り返し、黎夜の指の根元まで濡れたのを確認してから、黎夜は己の下を全部脱ぎ去り、ちょっと躊躇って、避妊具を身につける。


「いれる」
「うん」


 狙いを定めて、正面からゆっくり押し入れて。
 ん、と声を漏らす緋香梨の背中に手を回し、倒れこむようにして繋がったまま抱き合って、お互いに呼吸を整える。
 その間もきゅうきゅうと緋香梨に締めつけられ、黎夜は細く息を吐いて落ち着かせる。


「動いていい?」
「いいよ」
「うん」


 身体を離し、膝の裏を持ち上げて、ゆっくりと腰を前後に引いて、肉棒を出し入れする。
 下に組み敷いた緋香梨が引くたびに悩ましげな表情と声で、視覚と聴覚で黎夜に快楽を訴える。
 緋香梨の愛液ですべりが増し、黎夜の抽送のスピードが上がる。


「あ、あ、あ、あ」
「緋香梨、緋香梨、ひかりっ」


 足を肩の上に乗せ、より奥に挿入し、がつがつと突き入れて。


「ひーちゃん……っ」


 ―――俺の、俺だけの、ひーちゃんっ。


 必死に名を呼び、果てた。
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