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第6夜
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スケルトンの魔人種の男性がその性質を利用して女風呂に侵入して捕まり、銀と金の十字架がクロスした黒いローブを着た魔人種共存推進機関の人間に識別のため特別なインクで肌に数字を書かれたり。
夜の公園を火の玉があちこち飛び回り、木に触れて軽いぼやが起きて消防が出動したり。
魔を抑えきれなくなった淫魔の魔人種が路上で行為に及んで捕まったり。
子どものゴーストの魔人種が夜に家から抜け出して浮遊しているのを補導されたり。
だんだんと世間が魔人種で騒がしくなってきた。
「星宮君て本当にMCPOの人間なんだね。ハロウィンが近くなったら、ほとんど学校に来なくなったね」
今日の授業がすべて終わり、緑川のホームルームも終わって、放課後を告げる鐘が鳴る。
緋香梨は頬杖をついて、今週に入って欠席と早退を繰り返す聖の席を見つめる。
隣の席のよしみで授業のノートを取って、登校した時に聖に見せていたが、最近ではやんわり断られる。十字高校にいる期間は短期で、追っている事件が解決すればまた転校するのでこれ以上ノートは不要とのことだった。
「来なくて、いい……。やっとひーちゃんにつきまとわなくなった」
「そうだけど。代わりに、黎夜やたらと餌付けされてない?お肉ばっかり」
「生ものは、いらない……」
タイミングが合えばお昼を三人で一緒に摂るのだが、そのとき聖のタッパーにはたいてい生のお肉が入っていた。
レバ刺しとか、レバ刺しとか、レバ刺しとか。
草食の黎夜は聖から差し出されるタッパーをもう見ることもせず、フードを深くかぶって、緋香梨の背に隠れるようにして野菜を丸かじりするのが常だった。
「あ、もうすぐ4時半だよ。黎夜、美化委員の集まりじゃない?」
時計を見て、自分の背中を椅子ごと抱きしめている黎夜の腕を叩いて急かす。
今日は黎夜が所属する美化委員の月に一度の集まりの日だ。
スーパーのタイムセールと重なっているので、頭数が減るのは痛いが、黎夜を置いて、緋香梨はひとりで下校する予定だった。
「……面倒。行きたくない。ひーちゃんが心配。……朝も後ろのうるさい女子たちが、このへん危ないって言ってた」
「若い女の人が襲われたっていう話だっけ。大丈夫よ。夜に出歩いてって話だし、スーパーで買ったらすぐ帰るから」
近頃、夜道を歩く若い女性が襲われて、倒れているのが朝に発見されるらしい。
発見された彼女たちのほとんどに目立った外傷はなく、襲われた記憶もないらしい。金品が盗られた気配もないため、悪戯好きの魔人種の仕業じゃないのかというのが楽観的なこの街の人間の意見だった。
心配する黎夜に買う物買ったらすぐ帰るからと約束して、タイムセールに間に合うように、緋香梨は準備をしてサッと下校する。
「おや、珍しいこともあるもんです。宝条さんひとりで帰宅ですか?」
途中、白衣を着てぼーっと下駄箱に立っている担任の緑川に遭遇する。
自然と緋香梨の隣に視線を走らせ、いつも一緒にいる黎夜の姿が見えないことに首を傾げる。
「忘れちゃったんですか、先生。黎夜は美化委員なんで、その集まりに行ってるんですよ」
「ああ、そうでしたね。忘れていました。
黒崎君と一緒にいない宝条さんを見るのが新鮮で、先生うっかりしてました」
「わたし黎夜とはそんなにいつも一緒にいるわけじゃないですよ?
今月のわたしの誕生日は、ちさちゃんとふたりで買い物する予定だし」
「そうなんですか?それは、とても良いことですね。
黒崎君の監視は先生から見ても厳しいなと思ってましたから」
「そうですか……?でも、慣れたら大したことないですし。
黎夜は基本優しいから、買い物袋も積極的に持ってくれて助かることもあるんですよ?
それじゃ、先生。タイムセールに間に合わなくなるので、おつかれさまです」
「はい、おつかれさま」
グリーンの瞳を優しく細めて、緑川は緋香梨にひらひらと手を振る。
玄関から小走りで校門まで向かう緋香梨の後ろ姿をしばらく眺め、眼鏡のブリッジを押し上げて、白衣を翻してその場を後にした。
黒崎家のエンゲル係数は高い。
冬でも大量の野菜を食べる黎夜のせいで食費が嵩むのだ。
緋香梨はスーパーに着くとここぞとばかりに安売りのキャベツや白菜といった葉物を買い占め、自分用のおかずも買う。
エコバッグにはち切れんばかりにたくさんに買ってしまい、学校から直帰したせいで教科書の入ったリュックの重さと合わさって、ふらふらしながら帰宅の途についていると。
「――――宝条さん?」
「あ、星宮君。うわぁ、MCPOの服だ」
都会の洗練された発音で話しかけられる。
振り向けば、見知った同級生が、物珍しい服装で立っていた。
「まあね。……”うわぁ”てどういうリアクション?荷物重そうだね、持つよ」
「いいのに。でもありがとう」
「いえいえ、レディには当然だから。聞いるよね、この辺で女性の一人歩きは危ない。家まで送るよ」
メディアでよく見かける金と銀の十字架の刺繍が印象的な黒のローブを身にまとった聖が立っていて、緋香梨のエコバッグを流れるような仕草で持ってくれた。
襟元から見えるのは制服のシャツで、聞けば今朝早退してローブを羽織っただけでそのままMCPOとして活動していたらしい。
「守秘義務があるからあまり言ってはダメなんだけど。宝条さんには言ってもいいかな」
肩を並べて歩くも、たいして会話は弾まず。
最近は落ち着いたとはいえ聖にはうんざりしていたので、緋香梨からもほとんど話題を振らなかった。
とりとめのない話に相づちを打っていると、隣を歩いていた聖が不意に足を止める。
「聖君?」
夕日に反射して、聖の少し長い金髪がきらきらと光り輝く。
「女性ばかりが狙われている事件だけど、近頃は10代の―――もっと言うと、女子高生が狙われてるんだ」
逆光で、聖の表情がよく見えない。
「ちょうど君くらいの背丈で、君みたいに髪をひとつに結んだ女子高生ばかり。
ねえ、君の周りに危ないヤツはいない?」
真っ青な瞳も暗く陰り、その瞳にどんな感情を浮かべているのかも定かではなかった。
夜の公園を火の玉があちこち飛び回り、木に触れて軽いぼやが起きて消防が出動したり。
魔を抑えきれなくなった淫魔の魔人種が路上で行為に及んで捕まったり。
子どものゴーストの魔人種が夜に家から抜け出して浮遊しているのを補導されたり。
だんだんと世間が魔人種で騒がしくなってきた。
「星宮君て本当にMCPOの人間なんだね。ハロウィンが近くなったら、ほとんど学校に来なくなったね」
今日の授業がすべて終わり、緑川のホームルームも終わって、放課後を告げる鐘が鳴る。
緋香梨は頬杖をついて、今週に入って欠席と早退を繰り返す聖の席を見つめる。
隣の席のよしみで授業のノートを取って、登校した時に聖に見せていたが、最近ではやんわり断られる。十字高校にいる期間は短期で、追っている事件が解決すればまた転校するのでこれ以上ノートは不要とのことだった。
「来なくて、いい……。やっとひーちゃんにつきまとわなくなった」
「そうだけど。代わりに、黎夜やたらと餌付けされてない?お肉ばっかり」
「生ものは、いらない……」
タイミングが合えばお昼を三人で一緒に摂るのだが、そのとき聖のタッパーにはたいてい生のお肉が入っていた。
レバ刺しとか、レバ刺しとか、レバ刺しとか。
草食の黎夜は聖から差し出されるタッパーをもう見ることもせず、フードを深くかぶって、緋香梨の背に隠れるようにして野菜を丸かじりするのが常だった。
「あ、もうすぐ4時半だよ。黎夜、美化委員の集まりじゃない?」
時計を見て、自分の背中を椅子ごと抱きしめている黎夜の腕を叩いて急かす。
今日は黎夜が所属する美化委員の月に一度の集まりの日だ。
スーパーのタイムセールと重なっているので、頭数が減るのは痛いが、黎夜を置いて、緋香梨はひとりで下校する予定だった。
「……面倒。行きたくない。ひーちゃんが心配。……朝も後ろのうるさい女子たちが、このへん危ないって言ってた」
「若い女の人が襲われたっていう話だっけ。大丈夫よ。夜に出歩いてって話だし、スーパーで買ったらすぐ帰るから」
近頃、夜道を歩く若い女性が襲われて、倒れているのが朝に発見されるらしい。
発見された彼女たちのほとんどに目立った外傷はなく、襲われた記憶もないらしい。金品が盗られた気配もないため、悪戯好きの魔人種の仕業じゃないのかというのが楽観的なこの街の人間の意見だった。
心配する黎夜に買う物買ったらすぐ帰るからと約束して、タイムセールに間に合うように、緋香梨は準備をしてサッと下校する。
「おや、珍しいこともあるもんです。宝条さんひとりで帰宅ですか?」
途中、白衣を着てぼーっと下駄箱に立っている担任の緑川に遭遇する。
自然と緋香梨の隣に視線を走らせ、いつも一緒にいる黎夜の姿が見えないことに首を傾げる。
「忘れちゃったんですか、先生。黎夜は美化委員なんで、その集まりに行ってるんですよ」
「ああ、そうでしたね。忘れていました。
黒崎君と一緒にいない宝条さんを見るのが新鮮で、先生うっかりしてました」
「わたし黎夜とはそんなにいつも一緒にいるわけじゃないですよ?
今月のわたしの誕生日は、ちさちゃんとふたりで買い物する予定だし」
「そうなんですか?それは、とても良いことですね。
黒崎君の監視は先生から見ても厳しいなと思ってましたから」
「そうですか……?でも、慣れたら大したことないですし。
黎夜は基本優しいから、買い物袋も積極的に持ってくれて助かることもあるんですよ?
それじゃ、先生。タイムセールに間に合わなくなるので、おつかれさまです」
「はい、おつかれさま」
グリーンの瞳を優しく細めて、緑川は緋香梨にひらひらと手を振る。
玄関から小走りで校門まで向かう緋香梨の後ろ姿をしばらく眺め、眼鏡のブリッジを押し上げて、白衣を翻してその場を後にした。
黒崎家のエンゲル係数は高い。
冬でも大量の野菜を食べる黎夜のせいで食費が嵩むのだ。
緋香梨はスーパーに着くとここぞとばかりに安売りのキャベツや白菜といった葉物を買い占め、自分用のおかずも買う。
エコバッグにはち切れんばかりにたくさんに買ってしまい、学校から直帰したせいで教科書の入ったリュックの重さと合わさって、ふらふらしながら帰宅の途についていると。
「――――宝条さん?」
「あ、星宮君。うわぁ、MCPOの服だ」
都会の洗練された発音で話しかけられる。
振り向けば、見知った同級生が、物珍しい服装で立っていた。
「まあね。……”うわぁ”てどういうリアクション?荷物重そうだね、持つよ」
「いいのに。でもありがとう」
「いえいえ、レディには当然だから。聞いるよね、この辺で女性の一人歩きは危ない。家まで送るよ」
メディアでよく見かける金と銀の十字架の刺繍が印象的な黒のローブを身にまとった聖が立っていて、緋香梨のエコバッグを流れるような仕草で持ってくれた。
襟元から見えるのは制服のシャツで、聞けば今朝早退してローブを羽織っただけでそのままMCPOとして活動していたらしい。
「守秘義務があるからあまり言ってはダメなんだけど。宝条さんには言ってもいいかな」
肩を並べて歩くも、たいして会話は弾まず。
最近は落ち着いたとはいえ聖にはうんざりしていたので、緋香梨からもほとんど話題を振らなかった。
とりとめのない話に相づちを打っていると、隣を歩いていた聖が不意に足を止める。
「聖君?」
夕日に反射して、聖の少し長い金髪がきらきらと光り輝く。
「女性ばかりが狙われている事件だけど、近頃は10代の―――もっと言うと、女子高生が狙われてるんだ」
逆光で、聖の表情がよく見えない。
「ちょうど君くらいの背丈で、君みたいに髪をひとつに結んだ女子高生ばかり。
ねえ、君の周りに危ないヤツはいない?」
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