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ねえ、お母さん、お父さん。
私はそんなにも「いらない子」だった?
舞踏会の日の夜、コーネリアの部屋で目覚めたローゼ。
イヴァンがコーネリアの部屋までローゼを運んでくれたらしい。
そのままコーネリアの部屋に泊まり、翌日マーシャル公爵家に戻ると、直ぐにリリーの部屋に呼ばれた。
「リリー様、騒ぎを起こしてしまって本当に申し訳ありませんでした」
ローゼはリリーの部屋に入るなり頭を下げる。
「ローゼが騒ぎを起こした訳じゃないでしょう?」
リリーはローゼに笑顔を向けた。
「でも…」
「そもそも、わざわざ舞踏会を欠席したローゼを、大して必要でもない忘れ物とやらを持って来いなんて言って呼び出したクリスのせいで、ローゼは何も悪くないわ」
リリーは呆れたように言う。
ああ、リリー様はやっぱり優しい。
「それで、ローゼは講堂から出てコーネリア様の部屋に行くまでの間の事は…覚えてるの?」
「え?いえ。サフィ様に…父の事を言われてからの事はあまり…目が覚めたらコーネリア様の部屋でした」
ローゼは首を傾げながら言う。
「そう…」
リリーはローゼに分からないように小さく息を吐いた。
-----
「リリー様、ローゼをこのままにして良いのですか?」
「ベティ」
リリーの筆頭侍女、ベティがリリーの髪を梳きながら言う。
「ローゼは王太子殿下に近付き過ぎだと思います」
「…ローゼの方から近付こうとしている訳ではなさそうだし」
「そうですけど、舞踏会で王太子殿下に庇われたり、跪かれたり…更に抱き上げて運ばれるなんて、その場に取り残されたリリー様のお立場はどうなります?」
「改めてそう言われると…でもそれもローゼは覚えていないのよ?」
「本当に覚えていないのか、疑わしいです」
「そう言う処で嘘を吐くような子じゃないと思うの」
「…リリー様はお人好し過ぎます」
ベティは悔しそうに言う。
「ベティはローゼを嫌いなの?」
「嫌いとかではなく…」
ベティはリリーの髪を梳かす手を止める。
「ベティ?」
「私は…ローゼは所謂『魔性の女』などと言われる類いの女なのではないかと思うのです」
「魔性の女?ローゼが?」
「はい。まだ十五歳であどけなさがある程なのに、教師とお付き合いしていると噂されていたり、生徒会の面々が一様にローゼに夢中になっていたり」
リリーの正面にある鏡に映るベティの表情は真剣そのものだ。
「……」
「このままではリリー様が悲しい思いをされるのではないかと…心配でならないんです」
-----
「ローゼ、今年の避暑にはベティだけを連れて行くからローゼはお留守番しててくれる?」
リリーは手元の紅茶のカップを見ながら言う。
「はい」
ローゼは紅茶のポットをワゴンに置きながら返事をする。
リリーは毎年夏にはマーシャル公爵家の海のある領地へ避暑に行く。リリー付きの侍女やメイドの慰安旅行も兼ねているので毎年結構な人数になるのだ。
「あのね、ローゼだけじゃなくて、他の侍女やメイドも連れて行かないのよ。こうして領地へ避暑に行けるのも今年が最後だろうからできるだけ小規模で行ってゆっくりしようかなって思って」
少し早口でリリーは言う。
「最後…なのですか?」
「そうよ。来春には学園を卒業するから、来年の今頃はサイオン殿下との婚儀の準備で忙しいし、婚儀が終われば公爵家の領地じゃなく王家の領地へ行く事になるから…」
リリー様と、サイオン殿下の婚儀。
…そうか。そうよ。当たり前の話だわ。
「それにね、今年はサイオン殿下をご招待したの。殿下がいらっしゃったら王宮からも沢山侍従や侍女を連れて来られるし…」
ああ。
とローゼは得心する。
私がサイオン殿下を意識してるの、リリー様はご存知なんだ。
だから私がこれ以上サイオン殿下を変に意思しないように、気遣ってくださってるのね。
私のために。
そう、自分に言い聞かせる。
「分かりました。楽しんで来てくださいね。リリー様」
ローゼは意識して口角を上げた。
ねえ、お母さん、お父さん。
私はそんなにも「いらない子」だった?
舞踏会の日の夜、コーネリアの部屋で目覚めたローゼ。
イヴァンがコーネリアの部屋までローゼを運んでくれたらしい。
そのままコーネリアの部屋に泊まり、翌日マーシャル公爵家に戻ると、直ぐにリリーの部屋に呼ばれた。
「リリー様、騒ぎを起こしてしまって本当に申し訳ありませんでした」
ローゼはリリーの部屋に入るなり頭を下げる。
「ローゼが騒ぎを起こした訳じゃないでしょう?」
リリーはローゼに笑顔を向けた。
「でも…」
「そもそも、わざわざ舞踏会を欠席したローゼを、大して必要でもない忘れ物とやらを持って来いなんて言って呼び出したクリスのせいで、ローゼは何も悪くないわ」
リリーは呆れたように言う。
ああ、リリー様はやっぱり優しい。
「それで、ローゼは講堂から出てコーネリア様の部屋に行くまでの間の事は…覚えてるの?」
「え?いえ。サフィ様に…父の事を言われてからの事はあまり…目が覚めたらコーネリア様の部屋でした」
ローゼは首を傾げながら言う。
「そう…」
リリーはローゼに分からないように小さく息を吐いた。
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「リリー様、ローゼをこのままにして良いのですか?」
「ベティ」
リリーの筆頭侍女、ベティがリリーの髪を梳きながら言う。
「ローゼは王太子殿下に近付き過ぎだと思います」
「…ローゼの方から近付こうとしている訳ではなさそうだし」
「そうですけど、舞踏会で王太子殿下に庇われたり、跪かれたり…更に抱き上げて運ばれるなんて、その場に取り残されたリリー様のお立場はどうなります?」
「改めてそう言われると…でもそれもローゼは覚えていないのよ?」
「本当に覚えていないのか、疑わしいです」
「そう言う処で嘘を吐くような子じゃないと思うの」
「…リリー様はお人好し過ぎます」
ベティは悔しそうに言う。
「ベティはローゼを嫌いなの?」
「嫌いとかではなく…」
ベティはリリーの髪を梳かす手を止める。
「ベティ?」
「私は…ローゼは所謂『魔性の女』などと言われる類いの女なのではないかと思うのです」
「魔性の女?ローゼが?」
「はい。まだ十五歳であどけなさがある程なのに、教師とお付き合いしていると噂されていたり、生徒会の面々が一様にローゼに夢中になっていたり」
リリーの正面にある鏡に映るベティの表情は真剣そのものだ。
「……」
「このままではリリー様が悲しい思いをされるのではないかと…心配でならないんです」
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「ローゼ、今年の避暑にはベティだけを連れて行くからローゼはお留守番しててくれる?」
リリーは手元の紅茶のカップを見ながら言う。
「はい」
ローゼは紅茶のポットをワゴンに置きながら返事をする。
リリーは毎年夏にはマーシャル公爵家の海のある領地へ避暑に行く。リリー付きの侍女やメイドの慰安旅行も兼ねているので毎年結構な人数になるのだ。
「あのね、ローゼだけじゃなくて、他の侍女やメイドも連れて行かないのよ。こうして領地へ避暑に行けるのも今年が最後だろうからできるだけ小規模で行ってゆっくりしようかなって思って」
少し早口でリリーは言う。
「最後…なのですか?」
「そうよ。来春には学園を卒業するから、来年の今頃はサイオン殿下との婚儀の準備で忙しいし、婚儀が終われば公爵家の領地じゃなく王家の領地へ行く事になるから…」
リリー様と、サイオン殿下の婚儀。
…そうか。そうよ。当たり前の話だわ。
「それにね、今年はサイオン殿下をご招待したの。殿下がいらっしゃったら王宮からも沢山侍従や侍女を連れて来られるし…」
ああ。
とローゼは得心する。
私がサイオン殿下を意識してるの、リリー様はご存知なんだ。
だから私がこれ以上サイオン殿下を変に意思しないように、気遣ってくださってるのね。
私のために。
そう、自分に言い聞かせる。
「分かりました。楽しんで来てくださいね。リリー様」
ローゼは意識して口角を上げた。
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