ヒロインに転生しましたけど、私、王太子より悪役令嬢が好きなんです。

ねーさん

文字の大きさ
15 / 83

14

しおりを挟む
14

 リリー様が帰って来られるまであと十九日。
 と言うか、一昨日王都を立たれて領地へ向かわれたばかりなんだけどね。
「そろそろ領地屋敷に着かれた頃かしら」
 毎年大人数での移動だったので、領地までたっぷり三日は掛かっていたが、今年はリリーとベティだけなので馬車は二台。丸々三日までは掛からない筈だ。
「ローゼ?ぼんやりしてどうした?」
 テーブルの向かい側に座るイヴァンが言う。
「リリー様そろそろ到着されたかな、と思いまして」
「ああ、領地で避暑だったか」
「はい」
「マーシャル公爵家の領地って南の方だったかしら?」
 ローゼの隣に座るコーネリアが言う。
「はい。王都から一番近い海のある領地です」
「海!いいわねぇ」

 ここは王宮の使用人棟のコーネリアの部屋だ。
 舞踏会でのサフィの発言により、街に出ればひそひそと噂をされるローゼ。珍しいピンクの髪の毛のせいですぐにローゼだと分かってしまうのだ。
 夏期休暇が始まってから公爵家に篭っているローゼを連れ出してやりたいイヴァンだが、一人暮らしの自分のフラットや実家にローゼを呼ぶ訳にもいかず、こうしてコーネリアの部屋を二人で訪ねて三人で過ごす事が増えていた。
「コーネリア様、お休みの邪魔してばかりして済みません…」
「あら、気にする事ないわ。私は楽しいわよ」
「でも折角のお休み、お出掛けしたかったりするでしょう?」
「うーん…私あまり物欲ないから買い物とかは必要最低限で良いし、乙ゲーにハマるような人間だから基本インドア派なのよね。あ、でもローゼさんと一緒にお出掛けしたら楽しいかも」
 自分の胸の前でパンッと手を合わせるコーネリア。
「でも…」
「変装したら良いのよ。大きな帽子で髪を隠せば…そうだわ」
 コーネリアは立ち上がると、隣の部屋へと入って行く。
 そして出て来たコーネリアは大きなキャスケットのような帽子を手にしていた。
「これなら髪を全部隠せるわ。シャツにズボンにベストで少年風ローゼさんの出来上がりよ」
 コーネリアはローゼの頭に帽子を被せる。
 確かにこれなら特徴的なピンクの髪の毛をすっぽり隠せそうだ。
「シャツにズボン…」
「ローゼその帽子よく似合ってる。今度実家に帰ったら俺の子供の頃の服と靴を持って来るよ。さすがに今の俺の服じゃ大きすぎるからな」
 イヴァンがニコニコして帽子を被るローゼを見ていた。
「伊達眼鏡もあるわよ」
「コーネリアは何でこんな物を持ってるんだ?」
「…乙ゲー好きとしては『お忍びデート』というものに憧れがありましてね。でもインドア派で、更にお忍びでデートするような相手と縁がないから帽子と眼鏡しかないんですけども」
 少し照れた様子でコーネリアが言う。
 ああ。お忍びデートって「愛しの生徒会」でも王太子と第二王子のルートにはそんなイベントもあったっけ。
 そう言えば教師生徒カプのイヴァンのルートにもあったかも…
 ローゼがそう思った時、コーネリアがニヤッと笑う。
「イヴァンルートにもあったわよね?『お忍びデート』」
「ありましたね」
「俺のルートにあるんだ。じゃあローゼ、俺とお忍びデートしよ」
「あ、イヴァン様狡い!私とローゼさんのお忍びデートが先ですからね」
「デートなんだ?」
「かわいい女の子が男の子に変装するとか大好物なので歴としたデートです」
 コーネリアは胸を張って言った。

-----

「設定は姉と弟かしら」
「そうですね」
 ローゼはコーネリアの部屋の寝室に置いてある姿見に写る、少年になった自分を眺めながら言う。
「私の背が小さいからか思ったより子供っぽくなったんで恋人同士の設定はちょっと苦しそう」
「んー…ゲームの世界観の中で麗しの男性キャラとのデートって夢だったけど、そもそもローゼさん女の子だし、姉弟のデートもアリよね」
「はい!」

「早く出て来て見せて~」
 ダイニングからイヴァンの声。
「イヴァン様とのデートも兄弟設定かしら?」
 くすくす笑いながらコーネリアが言う。
「そうなりますかね」
「イヴァン様はバイだから、少年風ローゼさんでも恋人扱いしそうよね…」
「先生ってバイなの公言してましたっけ?」
「してないと思うけど…」
「じゃあ先生も変装が必要ですね」
「本当ね」
 コーネリアとローゼは顔を見合わせて笑う。

 コーネリアとローゼはその日、姉の買い物に付き合わされる弟という設定でショッピングを楽しんだ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

処理中です...