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二日後に王都に戻ったデボラとローゼ。ローゼはそのままデボラの家に滞在していた。
あの湖の畔で採れた薬草を天日干しする作業など、ムーサフ家の手伝いをしながら過ごし、ローゼがブラウン伯爵家から姿を消して一週間が経った。
明後日から学園の秋期が始まる。
「私、明日の夕方には寮へ行くけど…ローゼはどうするの?学園へも家へも戻りたくないならここに居ても良いのよ。ウチで正式に雇うわ」
ベッドの上から、ベッドの下にマットレスを敷いて横になっているローゼを覗き込んでデボラは言う。
デボラはずっとそう言ってくれているが、まだ学園の一年生で男爵令嬢であるローゼを正式に雇うのは難しいのはローゼにもよく分かっていた。
「ありがとうデビィ。学園へは…だけど、明日家に戻ろうと思ってるの」
「大丈夫なの?」
「…お兄様には迷惑な妹だろうけど、きっと疎まれたりはしないと思うわ」
「じゃあ明日、私、ローゼを家に送って行くわ」
「そんな…」
「いいの。私がローゼのお兄様を見てみたいだけだから」
「お兄様を見たいの?」
「だって、学園の頃はモテモテだった美男子って聞いたから、本当かどうか見てみたいじゃない」
デボラはにっこりと笑った。
翌日。
「ローゼ!」
馬車がエンジェル男爵家の前に着くなり、クレイグが屋敷から駆け出して来た。
「…お兄様」
馬車を降りたローゼをぎゅうっと抱きしめる。
「心配したぞ」
「ごめんなさい。お兄様…」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
私…お兄様に疎まれていない?
「君がデボラ・ムーサフ嬢?」
クレイグはローゼを抱きしめたまま、続いて馬車を降りて来たデボラに声を掛ける。
「はじめまして。エンジェル男爵」
デボラはスカートを摘み礼を取る。
「ローゼを保護してくれて、連絡をくれて…本当にありがとう」
…え?
クレイグはローゼを抱いていた手を解くと、デボラに右手を差し出した。
「お兄様、私がデビィ…デボラさんの所に居るの、知ってたの?」
「ああ。デボラ嬢が連絡をくれたんだ」
「え?」
「ローゼ、お兄様はあの湖まで行ってローゼを探してたの。連絡しなきゃ今もずっと居もしないローゼを探しておられた筈なのよ」
デボラはクレイグと握手をすると、ローゼの方を向く。
「それはあんまりでしょう?だからこっそりと連絡しておいたわ」
悪戯っぽく笑うデボラに、ローゼは飛び付くように抱きついた。
「きゃっ!」
「デビィ!貴女やっぱりいい人だわ!」
-----
「ローゼは私のたった一人の身内でかわいい妹だ。私がローゼを疎んじているなんて…二度と考えてないでくれ」
「…ごめんなさい。お兄様」
応接室のソファで、クレイグは隣に座るローゼの頭を撫でて言う。
向かいに座るデボラはニコニコと二人を見ていた。
その時、応接室の扉が勢い良く開き、三つの人影が飛び込んで来た。
「ローゼ!」
最初に入って来たのはリリーだ。
「リリー様!?」
リリーはそのままソファから立ち上がったローゼに抱きつく。
「ローゼ、心配したよ」
「ローゼ…無事で良かった」
続いて入って来たのはイヴァン。最後に入って来たのはサイオンだ。
「サイオン殿下…ニューマン先生…」
リリーの肩越しにその姿を見て、ローゼは呆然と呟く。
「お、王太子殿下!?」
デボラは慌ててソファから立ち上がると、ソファの後ろへと回る。
「ああ、サイオンは今、お忍びだから、王太子扱いしなくて良いよ。ムーサフさん」
イヴァンがそう言うが、デボラはソファの後ろの壁に背中を貼り付け目を白黒させながら「そんな訳には…」と呟いている。
「ど…どうして?」
リリー様は婚約解消を申し出られて私を恨んでいる筈じゃあ?
それにどうしてそのサイオン殿下と一緒に?
あ、もしかして婚約解消の話はなかった事になったの?
「ローゼ、私、怒っているのよ」
リリーはローゼに抱きついた腕を緩めて背の低いローゼを斜め上から見下ろす。
あ、やっぱり。
「クレイグ様にもシドニー様にも心配掛けて!もちろん私だってサイオン殿下だって先生だって、すごくすごく心配したんだから!」
ぷうっと頬を膨らませて言うリリー。ああ、こんな顔初めて見た。膨れるリリー様もかわいい!
あれ?でもリリー様が怒ってる理由って婚約解消の事じゃないの?
ん?それに…「シドニー様」って、何でリリー様の口から伯父様の名前が出て来るの?
「ローゼ、リリー様はブラウン家までローゼを探しに来て下さったんだよ」
クレイグがそう言うと、リリーは頷く。
「リリー様が?私を探しに?」
「まあ、探しにって言っても、ブラウン伯爵家にお邪魔しただけだけれど」
それでもリリーがわざわざ足を運んだのは確かなのだ。
「リリー様…」
眼を潤ませるローゼ。
「場を壊すようでアレなんだが、とりあえず…全員立ったままなのもナンだし、座らないか?」
一番身分の高いサイオンが「座れ」と言わないと、誰もソファに座る事ができない。それを知るサイオンが言いにくそうに言った。
二日後に王都に戻ったデボラとローゼ。ローゼはそのままデボラの家に滞在していた。
あの湖の畔で採れた薬草を天日干しする作業など、ムーサフ家の手伝いをしながら過ごし、ローゼがブラウン伯爵家から姿を消して一週間が経った。
明後日から学園の秋期が始まる。
「私、明日の夕方には寮へ行くけど…ローゼはどうするの?学園へも家へも戻りたくないならここに居ても良いのよ。ウチで正式に雇うわ」
ベッドの上から、ベッドの下にマットレスを敷いて横になっているローゼを覗き込んでデボラは言う。
デボラはずっとそう言ってくれているが、まだ学園の一年生で男爵令嬢であるローゼを正式に雇うのは難しいのはローゼにもよく分かっていた。
「ありがとうデビィ。学園へは…だけど、明日家に戻ろうと思ってるの」
「大丈夫なの?」
「…お兄様には迷惑な妹だろうけど、きっと疎まれたりはしないと思うわ」
「じゃあ明日、私、ローゼを家に送って行くわ」
「そんな…」
「いいの。私がローゼのお兄様を見てみたいだけだから」
「お兄様を見たいの?」
「だって、学園の頃はモテモテだった美男子って聞いたから、本当かどうか見てみたいじゃない」
デボラはにっこりと笑った。
翌日。
「ローゼ!」
馬車がエンジェル男爵家の前に着くなり、クレイグが屋敷から駆け出して来た。
「…お兄様」
馬車を降りたローゼをぎゅうっと抱きしめる。
「心配したぞ」
「ごめんなさい。お兄様…」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。
私…お兄様に疎まれていない?
「君がデボラ・ムーサフ嬢?」
クレイグはローゼを抱きしめたまま、続いて馬車を降りて来たデボラに声を掛ける。
「はじめまして。エンジェル男爵」
デボラはスカートを摘み礼を取る。
「ローゼを保護してくれて、連絡をくれて…本当にありがとう」
…え?
クレイグはローゼを抱いていた手を解くと、デボラに右手を差し出した。
「お兄様、私がデビィ…デボラさんの所に居るの、知ってたの?」
「ああ。デボラ嬢が連絡をくれたんだ」
「え?」
「ローゼ、お兄様はあの湖まで行ってローゼを探してたの。連絡しなきゃ今もずっと居もしないローゼを探しておられた筈なのよ」
デボラはクレイグと握手をすると、ローゼの方を向く。
「それはあんまりでしょう?だからこっそりと連絡しておいたわ」
悪戯っぽく笑うデボラに、ローゼは飛び付くように抱きついた。
「きゃっ!」
「デビィ!貴女やっぱりいい人だわ!」
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「ローゼは私のたった一人の身内でかわいい妹だ。私がローゼを疎んじているなんて…二度と考えてないでくれ」
「…ごめんなさい。お兄様」
応接室のソファで、クレイグは隣に座るローゼの頭を撫でて言う。
向かいに座るデボラはニコニコと二人を見ていた。
その時、応接室の扉が勢い良く開き、三つの人影が飛び込んで来た。
「ローゼ!」
最初に入って来たのはリリーだ。
「リリー様!?」
リリーはそのままソファから立ち上がったローゼに抱きつく。
「ローゼ、心配したよ」
「ローゼ…無事で良かった」
続いて入って来たのはイヴァン。最後に入って来たのはサイオンだ。
「サイオン殿下…ニューマン先生…」
リリーの肩越しにその姿を見て、ローゼは呆然と呟く。
「お、王太子殿下!?」
デボラは慌ててソファから立ち上がると、ソファの後ろへと回る。
「ああ、サイオンは今、お忍びだから、王太子扱いしなくて良いよ。ムーサフさん」
イヴァンがそう言うが、デボラはソファの後ろの壁に背中を貼り付け目を白黒させながら「そんな訳には…」と呟いている。
「ど…どうして?」
リリー様は婚約解消を申し出られて私を恨んでいる筈じゃあ?
それにどうしてそのサイオン殿下と一緒に?
あ、もしかして婚約解消の話はなかった事になったの?
「ローゼ、私、怒っているのよ」
リリーはローゼに抱きついた腕を緩めて背の低いローゼを斜め上から見下ろす。
あ、やっぱり。
「クレイグ様にもシドニー様にも心配掛けて!もちろん私だってサイオン殿下だって先生だって、すごくすごく心配したんだから!」
ぷうっと頬を膨らませて言うリリー。ああ、こんな顔初めて見た。膨れるリリー様もかわいい!
あれ?でもリリー様が怒ってる理由って婚約解消の事じゃないの?
ん?それに…「シドニー様」って、何でリリー様の口から伯父様の名前が出て来るの?
「ローゼ、リリー様はブラウン家までローゼを探しに来て下さったんだよ」
クレイグがそう言うと、リリーは頷く。
「リリー様が?私を探しに?」
「まあ、探しにって言っても、ブラウン伯爵家にお邪魔しただけだけれど」
それでもリリーがわざわざ足を運んだのは確かなのだ。
「リリー様…」
眼を潤ませるローゼ。
「場を壊すようでアレなんだが、とりあえず…全員立ったままなのもナンだし、座らないか?」
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