ヒロインに転生しましたけど、私、王太子より悪役令嬢が好きなんです。

ねーさん

文字の大きさ
37 / 83

36

しおりを挟む
36

「あ、あそこにイラクサがあるわ。イラクサはハーブとして料理にも使うけど、鼻炎の症状の緩和に使ったりするし、利尿作用、浄血作用もあるのよ」
 デボラが指差しながら言う。ローゼが課題の書かれた紙を捲ると地図を持った他の班員も覗き込む。
「イラクサ…イラクサ…」
「あ、あった。これじゃない?」
 班員が指差す。ローゼはペンを取り出した。
「ありがとう。じゃあ丸…と」
 ローゼの手には観察と、採取のリストがあり、観察の方のイラクサの名の隣にある括弧に丸印を書いた。
「葉に棘があって刺さると痛くて痒くなるのよ」
「さすがムーサフさん、薬屋さんだっけ?詳しいのね」
 地図を持つ班員が言うと、デボラは照れたように笑う。
「ハーブとか薬草はね。その代わり普通の観賞用の花とかよく分からないの」
「あらあ。そっちに詳しい方が女子的には良いのにね」
「そうなのよねぇ」
「惜しいわぁ」
 他の班員と皆でクスクスと笑い合う。
 こういう雰囲気、前世の学校生活でも、味わうの初めてかも。

「もうすぐ第一地点よ」
 班長の子が班員に声を掛ける。
 程なく木の棒に白い布を掛けたテントのような物が見えて来て、生徒会副会長のルーク・スペンサーと、サポートメンバーの女子生徒が立っていた。
「ローゼ、久しぶりだな」
 班長がサポートメンバーから印を貰っている間、少し離れた所にいたローゼとデボラにルークが歩み寄って来る。
「…お久しぶりです」
 少し身構えるローゼ。デボラがローゼの手を握ってくれた。
「そう身構えるな。顔が見られて嬉しいよ」
 ルークが苦笑いしながら言う。
 そこへ次の班がやって来て、ルークは「じゃあまたな。ローゼ」と手を上げてテントの方へ歩いて行った。
「私、露骨に身構えてた?」
 ルークに何かされた訳じゃないのに、失礼だったかな?
「そうでもないと思うけど。印、終わったみたい。行こ」
 デボラは笑って言うと、ローゼと手を繋いだまま歩き出した。

-----

 次のチェックポイントには生徒会副会長で第二王子のロイズ・ルーセントがいて、ローゼを見ると
「無事で良かった。姿は見掛けていたけど、こうして話が出来てようやく安心した」
 と言った。
 そういえば、コーネリア様からロイズ殿下が心配してくださっていた事聞いてたのに、何の挨拶もしてなくて…ちょっと薄情だったかも。
「ありがとうございます。ご心配お掛けしました」
 ローゼが少し笑顔で言うと、ロイズも少し微笑んだ。

 三つ目のチェックポイントにはマリック・ドイル。生徒会会計のデボラの幼なじみの元恋人だ。
 マリックはデボラといつものように会話を交わし、ローゼの方を向いて
「デビィと友達になったんだってな。良かったら俺とも友達になって…」
 と言い掛けて、デボラに
「不純な動機の友達なんてローゼにはいらないの!」
 と後ろから軽く蹴りを入れられていた。

 湖を見下ろす丘の上で、学園から配られたサンドイッチと、各々水筒に入れて来た紅茶で昼食を摂る。
 班員で話し合って、それぞれフレーバーティーを持って来ていて、皆で分け合って飲んだ。
 ローゼは名前に因んでバラのフレーバーティーだ。甘い香りで好評だった。他にはオレンジ、アップルの定番の物、レモンとキウイとイチゴのフルーツティー、ラベンダーの香りの紅茶を少しづつ味わう。
 デボラがカップに注いでくれた紅茶を一口飲んで…
「苦っ!」
「え!?何これ苦い!」
「にがーい」
「……」
 皆一斉に声を上げる。苦すぎて声を出せない子もいた。
「センブリのお茶よ。胃腸に良いの。私いつも飲んでるのよ?」
 ケロリとしてデボラが言う。デボラは平気な顔をして飲んでいる。
「センブリって『千回振っても苦い』からセンブリって名前になったんでしょ?」
 班員の一人がそう言うと、残りの皆が
「そりゃあ苦いわ!」
 と声を揃える。
「美味しいのに」
 デボラが不思議そうに言った。

 四つ目のチェックポイントにいたのはランドルフ・リード。生徒会長で、舞踏会でローゼを中傷したサフィの婚約者だ。
 ランドルフはローゼを見るなり、帽子を取り頭を下げた。
「サフィ・デップマンは知っての通り俺の婚約者だ。サフィが酷い事を言って、悪い噂が流れてしまって本当に済まない」
「いえ、あの。デップマン様からも直接謝罪を受けましたので…こちらこそリード様にまで気を使わせて申し訳ありません」
 ローゼも帽子を取って頭を下げる。
「ローゼが謝る事などないじゃないか…噂については耳にしたら訂正するようにしているが…」
「噂はその内消えるでしょうから大丈夫だと思います」
 ローゼはできるだけ気にしていないように見えるよう、ランドルフに微笑んで見せた。

「あれか」
「後ろ姿だから顔が見えねえが…ピンクの髪だし、あれだな」
 木の影で、二人の男が頷き合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...