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ローゼと一緒に攫われたデボラは、ローゼより随分早く目を覚ましていた。
薬という物に慣れているデボラには、嗅がされた薬はあまり効果がなかったのだ。
それでもデボラは気を失った振りをしたまま、辺りを窺っていた。
小屋?
耳を澄ますとチャプチャプと水の音が聞こえる。
湖の畔にある小屋の一つかしら?
薄目からの視界では木の天井しか見えない。暗くはないので攫われてからそんなに時間も経っていないようだ。
口に布を押し込まれ、更にそれを押さえた布を頭の後ろで結ばれていて、腕は身体の後ろで縛られている事が分かる。足は縛られているのではなく、男の手がデボラの両足首を押さえているようだ。黒尽くめの男はデボラの横に片膝を立てて座り、片手でデボラの足首を一纏めにして押さえている。
目だけを動かして周りを見ると、もう一人、デボラの横の男の向こうに、同じく黒尽くめの男が座っているのが少し見えた。
あっちの男の近くにローゼがいるのね?
「もう目が覚めたか?まあまだ朦朧としてるか」
向こうの男が言う。
ローゼ、目が覚めても騒がないで大人しくしてた方が良いわ。ニューマン先生やマーシャル様、他の生徒もいた目前で攫われたんだから、きっと直ぐに捜索してくれて、直ぐにここを見つけてくれる筈だもん。
デボラは心の中でローゼへ語り掛ける。
ローゼは騒いだりしなかったのでまだ覚醒していないのだろう。
「よく見りゃ貧相な小娘だなぁ」
向こうの男の声。
「ピンクの髪だし、間違いねぇとは思うが…こんな貧相なのが稀代の妖婦なのか?」
やっぱり「実父を破滅させ、学園の男を籠絡する妖婦」って噂を信じてローゼを攫ったんだわ。
だとすると、この男たちは女衒?人買い?…どちらにしても玄人か。
「船が来るまでもう少し時間があるし、ヤッてみりゃ、見た目と違ってすげぇ技があるとか、実は名器だとか分かるんじゃねぇの?」
デボラの横の男が言う。
なっ何て事言うの!?ローゼは妖婦なんかじゃないわ!ノイバラみたいな可憐な女の子なんだから!
「…そっちの女の方がよっぽど婀娜っぽいな」
「ああ?んーまあ確かにな」
…私?
「もしかして、髪を染めて擬装してるんじゃねぇか?」
私!?
…でも勘違いしてくれれば時間が稼げるかも。直ぐに助けが来るだろうけど、間に合わないなら、どうにかローゼだけでも逃す事ができれば…
「ない話でもないな。こっちも確かめてみるか」
「俺にその女をヤらせろや。こんな貧相な女じゃ…」
「いいぜ。俺はガキでも何でもいいし」
足元の男がヒヒッと下卑た笑い声を上げた。
心臓が痛いくらい鼓動している。このまま気を失った振りで助けを待つ余裕はなさそうだ。
「ぐえっ!」
ガタッと音がして、不意に向こうの男がくぐもった声を出す。
ローゼ?
「なっこの女!」
デボラの横の男の声が聞こえた。
ローゼ!逃げて!!
デボラの足首を押さえていた男の手が離れた。デボラが起き上がろうとすると
バタンッ
奥の扉が開き、光が一気に差し込んで来た。
思わず目を閉じる。
バシャーンッ
水に何かが落ちた音がした。
「あの女!!」
向こうの男が開け放たれた扉から波立つ水面を覗き込むように見ていた。
デボラは咄嗟に立ち上がると、自由な足で男の背中を思い切り押すように蹴った。
バシャーンッとまた水音がして、男が湖に落ちる。直ぐに浮いて来てバシャバシャと泳いで小さな手漕ぎボートに掴まるのが見えた。
ローゼの姿は水面には見えない。
「てめえっ!」
蹴った勢いで倒れたデボラの髪をもう一人の男が後から掴む。
「…どっちが本物の妖婦か知らねぇが、湖に落ちた女は浮いてこねぇ処を見ると、死んだんじゃねぇか?」
「うっ…」
塞がれた口からは呻き声しか出せない。
そんな事ない。きっと…ローゼを想ってる人が助け出してくれるわ。
グイッと髪を引っ張られる。
ボートを伝って、落ちた扉から小屋へ上がって来た男がポタポタと水を滴らせながらデボラの前に立った。
「…ぶっ殺す」
低い声で言う。
どこからか取り出したナイフが男の手に握られていた。
薬なら多少耐性があるけど、刺されると…さすがに死んじゃうだろうな。
ああ、私にもローゼみたいに想ってくれてる人がいれば、助けに来てもらえたかな?
ゲームが終わって、ローゼも私も本当の恋をするの、楽しみにしてたんだけどな…
男の振り上げたナイフが陽の光でギラリと光って、デボラはぎゅうっと固く目を閉じた。
ローゼと一緒に攫われたデボラは、ローゼより随分早く目を覚ましていた。
薬という物に慣れているデボラには、嗅がされた薬はあまり効果がなかったのだ。
それでもデボラは気を失った振りをしたまま、辺りを窺っていた。
小屋?
耳を澄ますとチャプチャプと水の音が聞こえる。
湖の畔にある小屋の一つかしら?
薄目からの視界では木の天井しか見えない。暗くはないので攫われてからそんなに時間も経っていないようだ。
口に布を押し込まれ、更にそれを押さえた布を頭の後ろで結ばれていて、腕は身体の後ろで縛られている事が分かる。足は縛られているのではなく、男の手がデボラの両足首を押さえているようだ。黒尽くめの男はデボラの横に片膝を立てて座り、片手でデボラの足首を一纏めにして押さえている。
目だけを動かして周りを見ると、もう一人、デボラの横の男の向こうに、同じく黒尽くめの男が座っているのが少し見えた。
あっちの男の近くにローゼがいるのね?
「もう目が覚めたか?まあまだ朦朧としてるか」
向こうの男が言う。
ローゼ、目が覚めても騒がないで大人しくしてた方が良いわ。ニューマン先生やマーシャル様、他の生徒もいた目前で攫われたんだから、きっと直ぐに捜索してくれて、直ぐにここを見つけてくれる筈だもん。
デボラは心の中でローゼへ語り掛ける。
ローゼは騒いだりしなかったのでまだ覚醒していないのだろう。
「よく見りゃ貧相な小娘だなぁ」
向こうの男の声。
「ピンクの髪だし、間違いねぇとは思うが…こんな貧相なのが稀代の妖婦なのか?」
やっぱり「実父を破滅させ、学園の男を籠絡する妖婦」って噂を信じてローゼを攫ったんだわ。
だとすると、この男たちは女衒?人買い?…どちらにしても玄人か。
「船が来るまでもう少し時間があるし、ヤッてみりゃ、見た目と違ってすげぇ技があるとか、実は名器だとか分かるんじゃねぇの?」
デボラの横の男が言う。
なっ何て事言うの!?ローゼは妖婦なんかじゃないわ!ノイバラみたいな可憐な女の子なんだから!
「…そっちの女の方がよっぽど婀娜っぽいな」
「ああ?んーまあ確かにな」
…私?
「もしかして、髪を染めて擬装してるんじゃねぇか?」
私!?
…でも勘違いしてくれれば時間が稼げるかも。直ぐに助けが来るだろうけど、間に合わないなら、どうにかローゼだけでも逃す事ができれば…
「ない話でもないな。こっちも確かめてみるか」
「俺にその女をヤらせろや。こんな貧相な女じゃ…」
「いいぜ。俺はガキでも何でもいいし」
足元の男がヒヒッと下卑た笑い声を上げた。
心臓が痛いくらい鼓動している。このまま気を失った振りで助けを待つ余裕はなさそうだ。
「ぐえっ!」
ガタッと音がして、不意に向こうの男がくぐもった声を出す。
ローゼ?
「なっこの女!」
デボラの横の男の声が聞こえた。
ローゼ!逃げて!!
デボラの足首を押さえていた男の手が離れた。デボラが起き上がろうとすると
バタンッ
奥の扉が開き、光が一気に差し込んで来た。
思わず目を閉じる。
バシャーンッ
水に何かが落ちた音がした。
「あの女!!」
向こうの男が開け放たれた扉から波立つ水面を覗き込むように見ていた。
デボラは咄嗟に立ち上がると、自由な足で男の背中を思い切り押すように蹴った。
バシャーンッとまた水音がして、男が湖に落ちる。直ぐに浮いて来てバシャバシャと泳いで小さな手漕ぎボートに掴まるのが見えた。
ローゼの姿は水面には見えない。
「てめえっ!」
蹴った勢いで倒れたデボラの髪をもう一人の男が後から掴む。
「…どっちが本物の妖婦か知らねぇが、湖に落ちた女は浮いてこねぇ処を見ると、死んだんじゃねぇか?」
「うっ…」
塞がれた口からは呻き声しか出せない。
そんな事ない。きっと…ローゼを想ってる人が助け出してくれるわ。
グイッと髪を引っ張られる。
ボートを伝って、落ちた扉から小屋へ上がって来た男がポタポタと水を滴らせながらデボラの前に立った。
「…ぶっ殺す」
低い声で言う。
どこからか取り出したナイフが男の手に握られていた。
薬なら多少耐性があるけど、刺されると…さすがに死んじゃうだろうな。
ああ、私にもローゼみたいに想ってくれてる人がいれば、助けに来てもらえたかな?
ゲームが終わって、ローゼも私も本当の恋をするの、楽しみにしてたんだけどな…
男の振り上げたナイフが陽の光でギラリと光って、デボラはぎゅうっと固く目を閉じた。
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