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「これで、アメリア・ブラウンの義娘、ローゼリア・ブラウンの誕生だな」
サイオンは王城の執務室で書類を「影」である侍従に差し出す。
「サイオン殿下が自ら書類を作成されなくても私共が上手く計らいましたのに」
書類を受け取りながら侍従が言う。
「いや、ローゼに『別人になる』と言う行為をさせるなら、俺も安全圏から指示を出すだけと言う訳にはいかない」
「戸籍の改竄は一応犯罪行為ですよ?」
「だから、余計に、だ」
「殿下は変な処真面目ですよねぇ」
と侍従は苦笑いしながら言う。
「変な処だけじゃなく、俺はいつでも真面目だろ?」
サイオンはニッコリと笑って侍従を見る。
「そうでしたね。では、後はお任せください」
侍従は笑いながら恭しく頭を下げた。
ローゼは、教会へ棄てられていた子供で天涯孤独の「セリア」と言う少女、という設定で戸籍が作られた。
教会で育ったセリアは珍しいピンクの髪を気にしてあまり表には出ないようにしていたが、ブラウン伯爵家の使用人が教会へ行った際、アメリアと、アメリアの娘ローゼに、とても似ているセリアを見つけ、もしやアメリアとシドニーの父の隠し子か!?と屋敷に連れ帰った。
結果、隠し子疑惑は晴れたが、セリアはそのままブラウン伯爵家の使用人として働く事になり、既に実家に戻っていたアメリアが、公爵家へ行儀見習いに出てなかなか会えなくなったローゼの代わりにセリアを自分の侍女にし、とてもかわいがっていた。
そして、ローゼが亡くなり、悲しみと淋しさの癒えないアメリアはセリアを自分の養女にし「ローゼリア」と名を改めた。
「と、いう訳で、私『ローゼリア・ブラウン』になったの」
赤茶の髪に侍従の制服のローゼは、デボラの病室で笑顔を見せた。
「ローゼリア…かわいい名前ね。じゃあ改めてローゼリアと知り合ったら『リア』って呼ぼうかな」
「いいわね」
ローゼリアとなった今のローゼは、まだデボラとは知り合っていない。なので侍従の格好で、サイオンの遣いとしてここを訪れている事になっているのだ。
「ローゼのいない二週間で私も随分歩けるようなったのよ。もうすぐ退院できるって」
「良かった!」
「…ねえ、ローゼ」
ベッドの端に座るデボラが少し俯いてローゼに言う。
「ん?」
「…クレイグ様って王都に戻られてるのよね?」
「ええ。お兄様は一週間早く戻られて…って、え?もしかしてお兄様デビィに会いに来てないの?」
デボラはますます俯いて、小さく「一週間も…」と呟いた。
「私は明日の謁見が終わったら、またブラウン家に戻るし、暫く会えないけど…二年生からローゼリアとして学園へ行くから、また私と友達になってね?」
「もちろん!楽しみにしてるわ。ローゼリアがあまりにもローゼに似てるから驚く演技の練習しておかなくちゃね!」
「ふふ。私も戸惑う練習しておくわ」
「明日の謁見も頑張って」
「明日は私はぽかんとしているだけで良いの。頑張るのは殿下よ」
「そうね。じゃあ頑張ってくださいって伝えて」
「わかったわ」
小さく手を振って、ローゼが病室を出て行く。
同じく小さく手を振ってベッドから見送ったデボラは、一人になった病室でため息を吐いた。
困らせてごめんって言われてたから…私が困ると思って来てくださらないのかな?
それとも無理して来なくて大丈夫って言ったから?
「デビィ、考え事?」
声を掛けられて、病室の入り口の方を見ると、マリックが立っていた。
「マリック…退院してからって言ったのに、また来たの?」
「俺もそう思ってたんだけど、デビィに会いたくなって」
「もうすぐ退院するのに…」
「俺はデビィがいつ退院するか聞いてないもん」
「もう。家に聞けばわかるでしょ!?まあ良いわ。庭に出ましょ」
デビィはベッドから立ち上がると、ストールを肩に掛けた。
「歩けるんだ?」
「もう走ったりしなければ平気よ」
デボラとマリックが二階にある病室から移動し中庭へ出てベンチに座る頃、デボラの病室にやって来たのはクレイグだ。
「いないのか…」
残念なような、安堵したような気持ちで病室に入り、サイドテーブルに小さな花束を置く。
すると窓の外のベンチに並んで座るデボラとマリックの後姿が見えた。
…やはり、幼なじみと縒りを戻したのか。
暫くそのままデボラを眺める。
自分にも人を好きになる事ができるのがわかった。相手が少し歳下だっただけで、おかしな嗜好などもないのがわかった。
「それだけで良いではないか…」
クレイグは小さく呟く。
その時、デボラが振り向いてクレイグと目が合った。
「!」
「クレイグ様!」
デボラが叫ぶ。
駄目だ。幼なじみとの逢瀬の邪魔をして、迷惑に思われたくない。
クレイグが踵を返して病室を出ようとすると
「痛っ」
と窓の外から声が聞こえた。
振り向いて、窓の外を見ると、デボラが脇腹を押さえてうずくまっている。
「デボラ!」
クレイグは病室を飛び出すと、階段を駆け降りた。
「これで、アメリア・ブラウンの義娘、ローゼリア・ブラウンの誕生だな」
サイオンは王城の執務室で書類を「影」である侍従に差し出す。
「サイオン殿下が自ら書類を作成されなくても私共が上手く計らいましたのに」
書類を受け取りながら侍従が言う。
「いや、ローゼに『別人になる』と言う行為をさせるなら、俺も安全圏から指示を出すだけと言う訳にはいかない」
「戸籍の改竄は一応犯罪行為ですよ?」
「だから、余計に、だ」
「殿下は変な処真面目ですよねぇ」
と侍従は苦笑いしながら言う。
「変な処だけじゃなく、俺はいつでも真面目だろ?」
サイオンはニッコリと笑って侍従を見る。
「そうでしたね。では、後はお任せください」
侍従は笑いながら恭しく頭を下げた。
ローゼは、教会へ棄てられていた子供で天涯孤独の「セリア」と言う少女、という設定で戸籍が作られた。
教会で育ったセリアは珍しいピンクの髪を気にしてあまり表には出ないようにしていたが、ブラウン伯爵家の使用人が教会へ行った際、アメリアと、アメリアの娘ローゼに、とても似ているセリアを見つけ、もしやアメリアとシドニーの父の隠し子か!?と屋敷に連れ帰った。
結果、隠し子疑惑は晴れたが、セリアはそのままブラウン伯爵家の使用人として働く事になり、既に実家に戻っていたアメリアが、公爵家へ行儀見習いに出てなかなか会えなくなったローゼの代わりにセリアを自分の侍女にし、とてもかわいがっていた。
そして、ローゼが亡くなり、悲しみと淋しさの癒えないアメリアはセリアを自分の養女にし「ローゼリア」と名を改めた。
「と、いう訳で、私『ローゼリア・ブラウン』になったの」
赤茶の髪に侍従の制服のローゼは、デボラの病室で笑顔を見せた。
「ローゼリア…かわいい名前ね。じゃあ改めてローゼリアと知り合ったら『リア』って呼ぼうかな」
「いいわね」
ローゼリアとなった今のローゼは、まだデボラとは知り合っていない。なので侍従の格好で、サイオンの遣いとしてここを訪れている事になっているのだ。
「ローゼのいない二週間で私も随分歩けるようなったのよ。もうすぐ退院できるって」
「良かった!」
「…ねえ、ローゼ」
ベッドの端に座るデボラが少し俯いてローゼに言う。
「ん?」
「…クレイグ様って王都に戻られてるのよね?」
「ええ。お兄様は一週間早く戻られて…って、え?もしかしてお兄様デビィに会いに来てないの?」
デボラはますます俯いて、小さく「一週間も…」と呟いた。
「私は明日の謁見が終わったら、またブラウン家に戻るし、暫く会えないけど…二年生からローゼリアとして学園へ行くから、また私と友達になってね?」
「もちろん!楽しみにしてるわ。ローゼリアがあまりにもローゼに似てるから驚く演技の練習しておかなくちゃね!」
「ふふ。私も戸惑う練習しておくわ」
「明日の謁見も頑張って」
「明日は私はぽかんとしているだけで良いの。頑張るのは殿下よ」
「そうね。じゃあ頑張ってくださいって伝えて」
「わかったわ」
小さく手を振って、ローゼが病室を出て行く。
同じく小さく手を振ってベッドから見送ったデボラは、一人になった病室でため息を吐いた。
困らせてごめんって言われてたから…私が困ると思って来てくださらないのかな?
それとも無理して来なくて大丈夫って言ったから?
「デビィ、考え事?」
声を掛けられて、病室の入り口の方を見ると、マリックが立っていた。
「マリック…退院してからって言ったのに、また来たの?」
「俺もそう思ってたんだけど、デビィに会いたくなって」
「もうすぐ退院するのに…」
「俺はデビィがいつ退院するか聞いてないもん」
「もう。家に聞けばわかるでしょ!?まあ良いわ。庭に出ましょ」
デビィはベッドから立ち上がると、ストールを肩に掛けた。
「歩けるんだ?」
「もう走ったりしなければ平気よ」
デボラとマリックが二階にある病室から移動し中庭へ出てベンチに座る頃、デボラの病室にやって来たのはクレイグだ。
「いないのか…」
残念なような、安堵したような気持ちで病室に入り、サイドテーブルに小さな花束を置く。
すると窓の外のベンチに並んで座るデボラとマリックの後姿が見えた。
…やはり、幼なじみと縒りを戻したのか。
暫くそのままデボラを眺める。
自分にも人を好きになる事ができるのがわかった。相手が少し歳下だっただけで、おかしな嗜好などもないのがわかった。
「それだけで良いではないか…」
クレイグは小さく呟く。
その時、デボラが振り向いてクレイグと目が合った。
「!」
「クレイグ様!」
デボラが叫ぶ。
駄目だ。幼なじみとの逢瀬の邪魔をして、迷惑に思われたくない。
クレイグが踵を返して病室を出ようとすると
「痛っ」
と窓の外から声が聞こえた。
振り向いて、窓の外を見ると、デボラが脇腹を押さえてうずくまっている。
「デボラ!」
クレイグは病室を飛び出すと、階段を駆け降りた。
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