ヒロインに転生しましたけど、私、王太子より悪役令嬢が好きなんです。

ねーさん

文字の大きさ
77 / 83

エピローグ

しおりを挟む
エピローグ

「リア!これからサイオン殿下の所?」
 学園の寮の廊下で、ローゼはデボラに声を掛けられる。
「うん。デビィは?お兄様の所へ?」
「そうなの。今日の夜にはリリー様とシドニー様が到着されるんですって。リアと殿下も夜来るんでしょ?」
「もちろん!」

 ローゼとデボラは正門の前でそれぞれ迎えの馬車に乗り込む。
 二人はこの春で学園の四年生になった。あと半年で卒業だ。
 デボラとクレイグは相変わらず「正式なお付き合い」はしていない。それでもデボラが卒業したら、お付き合いを通り越して正式に婚約する約束をしているそうだ。
 それは付き合っているのとは違うのかとローゼたちは思うが、本人たちにとっては違うらしい。

「ローゼ。良い話だ」
 迎えに出てきたサイオンが馬車から降りるローゼの手を取りながら言う。
「良い話ですか?」
「ああ。教会から許可が降りた」
「婚約の?」
「婚約と婚姻、両方だ」
 サイオンは馬車から降りたローゼをぎゅっと抱きしめる。
「次の議会では婚儀の日程を決める事になるだろう」
「……」
「ローゼ?」
 サイオンがローゼの顔を覗き込む。ローゼは静かに涙を流していた。
「ローゼ…」
「…ごめんなさい。嬉しくて…」
「ああ。俺も嬉しい」
 サイオンはローゼの目尻に口付けた。

 ローゼがローゼリアになってからもうすぐ三年。サイオンの恋人として、あらゆる人々からあらゆる事を言われて来た。
 学園内でも「お前のような卑しい出自の女が王太子妃になるなんて」「所詮ローゼの身代わりの癖に」と数え切れない程言われた。
 巷でも、ローゼリアが成り上がるためにローゼを殺害したのではと噂されたり、ローゼリアの出生についてありもしない話を流されたり、サイオンを廃太子すべしとの一部国民からの声が届いたり、王太子と別れろと一部貴族から脅されたりもしたのだ。
 
「これからも色々あるだろうが、正式に婚約すれば俺が守ってやれる」
「私は大丈夫です。でも嬉しいです」
「強くてかわいいな、ローゼは」
 サイオンはローゼの額に自分の額をこつんと着ける。二人は見つめ合って、微笑み合った。

-----

「ローゼリア様~」
 廊下の向こうから声がして、ローゼが目をやるとコーネリアが小さく手を振っていた。
「コーネリア様!お久しぶりです。里帰りですか?」
「私が王宮の侍女を辞めて隣国へ行ってから、なかなか会う機会がなかったものね」
 コーネリアは一年前行われた隣国との会談で、隣国の王太子に伴いこの国に来ていた侍従と、互いに一目で恋に落ち、あっと言う間に隣国へと嫁いで行ったのだ。
「旦那様が仕事でこっちに来るって言うから着いて来ちゃった。城で元同僚とかに会えるかな~と思ってたけど、ローゼリア様に会えるなんてラッキーだわ」
 ローゼとコーネリアは並んで廊下を歩く。
「コーネリア様が『一目惚れしたから結婚します』と言われた時には本当にビックリしました」
「自分が一番ビックリな展開だったわ」
 コーネリアは「実はね」と言うと、ローゼの耳元に顔を寄せた。
「旦那様…前世の夫にそっくりなの」
「え?」
 もしかして、転生者?
 そう思ってコーネリアを見ると、小さく首を横に振る。
「全然そういうのじゃなくて、向こうは私が初恋の人に似てたから好きになったらしいわ。ちょっとムカつくけど、美女だったって言うからまあ良いかって」
 ペロリと舌を出して笑う。
 コーネリア様…幸せそうだわ。
「ローゼリア様もいよいよ婚約が本決まりになりそうなんでしょ?良かったわ」
「はい。ありがとうございます」
「あ、そろそろ行かなくちゃ。じゃあローゼリア様、またお手紙書くわね」
「私も!今日は会えて嬉しかったです」
 コーネリアは「新婚旅行では隣国にも寄ってね!」と言って手を振って去って行った。

-----

 エンジェル男爵家の前に馬車が停まる。
「ローゼ!デビィ!久しぶり」
 馬車から降りて来たリリーは、待っていたローゼとデボラに駆け寄って抱き着いた。
「リリー、走るな」
 シドニーが慌ててリリーを追い掛ける。
「あらもう安定期ですもの。平気よ」
 少し膨らんだお腹を摩りながらシドニーを振り向くリリー。
「リリー様、見ている方が心配な物ですよ」
「そうです。走るのはなしです」
 ローゼとデボラがそう言うとリリーは肩を竦めた。
「そうだ。心配だから大人しくしてくれ」
「はあ~い旦那様」
 シドニーは後ろからリリーのお腹に手を回す。リリーは微笑んでシドニーの手に自分の手を重ねた。

 リリーとシドニーは、リリーが学園を卒業して一年後、サイオンとの婚約解消の許可が出てすぐに結婚し、ブラウン伯爵家でローゼの母アメリアと三人で暮らしている。
 待望の第一子を授かり、夫婦はとても幸せそうだ。

 夜、リリーとデボラと、いつかのように三人で同じベッドに横たわるローゼは嬉しそうに言った。

「今日はとても嬉しい事がたくさんあったの」



          ー了ー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

処理中です...