76 / 83
75
しおりを挟む
75
「サイオン殿下は確かに、ローゼ様を好きだったと仰いました」
王の前で意見を言う事に、ローゼの声は震える。
怖い…でもちゃんと言わなくちゃ。
「それでも、現在サイオン殿下のお気持ちは私に…ローゼリア・ブラウンにあります」
「…何故そう思う?」
王の声が一段と低くなる。
「根拠は…言葉にはなりませんが、ただ、そう感じます」
「サイオンが上手く其方を騙しているだけだとは思わんか?」
「いいえ。サイオン殿下は真摯なお方です。もしローゼ様を今も想っておられるなら、私にも正直にそう仰ると思います」
「ふむ」
王は自らの顎を撫でる。
「儂以外にも、其方をローゼの身代わりと揶揄する者たちは大勢いるだろう。市井の少女が王太子妃になろうとするのだ、様々な悪い噂や誹謗中傷もあろう。其方は…それに耐えられるのか?」
きっと想像しているよりももっと酷い事を言われたり、根も葉もない噂が流れたりするんだろう、けど。
「サイオン殿下と共にある事ができるのならば、耐えます」
ローゼはそう言い切る。
「サイオンとリリー・マーシャルとの婚約解消もまだ議会で検討中だ。其方との婚約や婚姻となると議会や教会の許可まで何年かかるか知れん。その際、サイオンの廃太子や王籍からの除籍などという話になるやも知れんが…覚悟はあるのか?」
「烏滸がましい言い方になりますが…例え、王族ではなくなられたとしても私の人生はサイオン殿下の物です。その事に何ら変わりはありません」
王は「そうか」と言うと、ため息を吐き、宰相に向かって手を上げる。
宰相が部下へ視線を送ると、ローゼが入って来たのとは違う扉が開かれて、サイオンが憮然とした表情で入って来た。
「陛下、いえ父上、趣味が悪いですよ」
「お前が親に心配掛けるからだろう」
サイオンは王と視線を交わすと、ローゼの隣に立つ。
「…殿下」
「済まない。ローゼリア。俺もさっき父上がローゼリアを呼び出したと聞いたんだ」
ぎゅっとローゼの肩を抱くと、サイオンは王の方を向く。
「どうですか?ローゼリアは父上のお眼鏡に敵いましたか?」
「…まあ、儂にも物おじせず物を言える事と、お前の事を慕っている事は良くわかった」
苦虫を噛み潰したような表情の王へサイオンはにこやかに笑い掛けた。
「それは良かったです。では我々は退出させて頂きますね」
-----
「国王陛下…難しい表情をされてたわ」
「大丈夫だ。父上はローゼ個人の事は気に入ったと思う。ただ国王としては、ローゼは色々と難しい立場だからああいう表情に成らざるを得ないんだろう」
だったら良いけど…
「…ところで、どこに向かってるんですか?」
ローゼは馬車の窓の外に視線を向けた。
国王の執務室を出た後、サイオンはローゼと共に馬車に乗り込んだのだ。
「あの湖に」
「え?」
あの「ローゼが死んだ」湖?
馬車が停まった所で、サイオンはローゼの手を引き、湖の側に建つ小屋の迫り出したデッキに立つ。
「あの小屋がローゼとデボラ嬢が捕らわれていた小屋だ」
デッキから見える小屋を指差す。
「あそこが…」
あの扉から湖に落ちたのか…
「俺はここから湖に飛び込み、ここにローゼを引き上げた」
サイオンは足元のデッキを指す。
ローゼも足元へと視線を落とした。
「ローゼ」
サイオンはローゼを緩く抱き寄せる。
「…はい」
「もうすぐローゼは学園へ編入して、なかなか自由には会えなくなるから、その前にここに来たかったんだ」
「…どうして?」
「ここは、ローゼが生まれ変わった場所だから」
サイオンはローゼの背中をゆっくりと撫でた。
「俺は、卒業パーティーの後『ゲームが終わっても変わらずローゼが好きだ』と言ったよな?」
「…はい」
「あれは、本当は少し違うんだ」
「え!?」
驚いて顔を上げるローゼの頬に手を当てる。
「変わらず…ではなく、ゲームが終わる前よりも、ローゼの事がかわいくて、愛しくて…堪らない」
サイオンの青紫の瞳にローゼが写っている。
「サイオン様…」
「だから、ローゼ、学園を卒業したら私の妃になりなさい」
!!
ゲームのサイオンの台詞!
目を見開くローゼの頬にサイオンは口付ける。
「ゲームの台詞は俺にはしっくり来ないな」
サイオンはクスッと笑うと、ローゼの青い瞳を覗き込む。
「ローゼ、議会と教会の許可が出たら、例え在学中でも俺と結婚してくれ」
ちゅっと額に口付ける。
「…はい」
ローゼがそう答えると、サイオンは頬を撫でながら顔を近付ける。
そしてゆっくりと唇が重なった。
「サイオン殿下は確かに、ローゼ様を好きだったと仰いました」
王の前で意見を言う事に、ローゼの声は震える。
怖い…でもちゃんと言わなくちゃ。
「それでも、現在サイオン殿下のお気持ちは私に…ローゼリア・ブラウンにあります」
「…何故そう思う?」
王の声が一段と低くなる。
「根拠は…言葉にはなりませんが、ただ、そう感じます」
「サイオンが上手く其方を騙しているだけだとは思わんか?」
「いいえ。サイオン殿下は真摯なお方です。もしローゼ様を今も想っておられるなら、私にも正直にそう仰ると思います」
「ふむ」
王は自らの顎を撫でる。
「儂以外にも、其方をローゼの身代わりと揶揄する者たちは大勢いるだろう。市井の少女が王太子妃になろうとするのだ、様々な悪い噂や誹謗中傷もあろう。其方は…それに耐えられるのか?」
きっと想像しているよりももっと酷い事を言われたり、根も葉もない噂が流れたりするんだろう、けど。
「サイオン殿下と共にある事ができるのならば、耐えます」
ローゼはそう言い切る。
「サイオンとリリー・マーシャルとの婚約解消もまだ議会で検討中だ。其方との婚約や婚姻となると議会や教会の許可まで何年かかるか知れん。その際、サイオンの廃太子や王籍からの除籍などという話になるやも知れんが…覚悟はあるのか?」
「烏滸がましい言い方になりますが…例え、王族ではなくなられたとしても私の人生はサイオン殿下の物です。その事に何ら変わりはありません」
王は「そうか」と言うと、ため息を吐き、宰相に向かって手を上げる。
宰相が部下へ視線を送ると、ローゼが入って来たのとは違う扉が開かれて、サイオンが憮然とした表情で入って来た。
「陛下、いえ父上、趣味が悪いですよ」
「お前が親に心配掛けるからだろう」
サイオンは王と視線を交わすと、ローゼの隣に立つ。
「…殿下」
「済まない。ローゼリア。俺もさっき父上がローゼリアを呼び出したと聞いたんだ」
ぎゅっとローゼの肩を抱くと、サイオンは王の方を向く。
「どうですか?ローゼリアは父上のお眼鏡に敵いましたか?」
「…まあ、儂にも物おじせず物を言える事と、お前の事を慕っている事は良くわかった」
苦虫を噛み潰したような表情の王へサイオンはにこやかに笑い掛けた。
「それは良かったです。では我々は退出させて頂きますね」
-----
「国王陛下…難しい表情をされてたわ」
「大丈夫だ。父上はローゼ個人の事は気に入ったと思う。ただ国王としては、ローゼは色々と難しい立場だからああいう表情に成らざるを得ないんだろう」
だったら良いけど…
「…ところで、どこに向かってるんですか?」
ローゼは馬車の窓の外に視線を向けた。
国王の執務室を出た後、サイオンはローゼと共に馬車に乗り込んだのだ。
「あの湖に」
「え?」
あの「ローゼが死んだ」湖?
馬車が停まった所で、サイオンはローゼの手を引き、湖の側に建つ小屋の迫り出したデッキに立つ。
「あの小屋がローゼとデボラ嬢が捕らわれていた小屋だ」
デッキから見える小屋を指差す。
「あそこが…」
あの扉から湖に落ちたのか…
「俺はここから湖に飛び込み、ここにローゼを引き上げた」
サイオンは足元のデッキを指す。
ローゼも足元へと視線を落とした。
「ローゼ」
サイオンはローゼを緩く抱き寄せる。
「…はい」
「もうすぐローゼは学園へ編入して、なかなか自由には会えなくなるから、その前にここに来たかったんだ」
「…どうして?」
「ここは、ローゼが生まれ変わった場所だから」
サイオンはローゼの背中をゆっくりと撫でた。
「俺は、卒業パーティーの後『ゲームが終わっても変わらずローゼが好きだ』と言ったよな?」
「…はい」
「あれは、本当は少し違うんだ」
「え!?」
驚いて顔を上げるローゼの頬に手を当てる。
「変わらず…ではなく、ゲームが終わる前よりも、ローゼの事がかわいくて、愛しくて…堪らない」
サイオンの青紫の瞳にローゼが写っている。
「サイオン様…」
「だから、ローゼ、学園を卒業したら私の妃になりなさい」
!!
ゲームのサイオンの台詞!
目を見開くローゼの頬にサイオンは口付ける。
「ゲームの台詞は俺にはしっくり来ないな」
サイオンはクスッと笑うと、ローゼの青い瞳を覗き込む。
「ローゼ、議会と教会の許可が出たら、例え在学中でも俺と結婚してくれ」
ちゅっと額に口付ける。
「…はい」
ローゼがそう答えると、サイオンは頬を撫でながら顔を近付ける。
そしてゆっくりと唇が重なった。
6
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
