38 / 98
37
しおりを挟む
37
「フェリシティ嬢は馬の扱いが上手いな」
「我が家は地方貴族なので、移動は馬が多いんですよ。もちろん馬車も使いますけど」
「なるほどな」
王都の外にある王立公園の一角を立ち入り禁止し、木影の芝生に敷いた敷物の上に並べられた昼食のバスケットからフェリシティはサンドイッチを取り、皿に乗せると、膝の上に置いた。
「…実は私、ここまで残れて、王太子殿下や王妃殿下に名前と顔を覚えていただいただけで充分なんですよね」
モグモグとサンドイッチを咀嚼した後でフェリシティは言う。
「充分?」
ユリウスは特に気分を害した様子もなく言う。
「父が…中央政治に絡みたいみたいで、顔を売れ、と…」
「はは。つまりフェリシティ嬢は王太子妃にはなりたいとは考えていないという事か?」
「…おそれながら」
笑いながら言うユリウスを、おずおずと上目遣い見るフェリシティ。
「かまわん。俺も忌憚ない処を聞きたいからな。フェリシティ嬢は物怖じしないし、乗馬も上手い。騎士の妻などが向いているのではないか?」
「騎士様の…」
仮にも婚約者候補に他の職種の方の妻が向いているって言われるなんて、告白してない相手に先に振られた気分だわ。でも私も王太子妃になりたくないって先に殿下を振ったんだから、これはお互い様というものね。
ところで、私、騎士の妻に向いてるのかしら?
フェリシティの頭に王女の護衛騎士アールの顔が浮かぶ。
…あの騎士様、エイマーズ様、ですっけ。相変わらず格好良かったわ。
フェリシティは視線だけでそっと辺りを見回す。が、護衛騎士も侍従も姿は見えなかった。
でもこうして王太子妃になりたくないと表明したんだから、もうユリウス殿下に呼ばれて王宮へ行く事もないだろうし、王女殿下の護衛騎士ならそうそう会う事もないわね。
-----
「ロッテ」
シャーロットがルーカスに呼ばれて部屋へ入ると、グリフがソファに座っていて、シャーロットを見て手をヒラヒラと振った。
「グリフ様!?」
グリフの向かいに座っていたルーカスがグリフの隣に移動して、シャーロットと、シャーロットの後に付いて部屋に入ったマリアが並んでソファに座った。
「今年はお妃選びのせいでルーカスの休暇が後ろにずれ込むから、別荘へは行けないから家に来たんだ」
「お兄様が長期休暇で別荘に行かれた時に呼ぶお友達ってグリフ様だったんですか?」
「そう。それもルーカス話してなかったのか?」
「お友達としか…」
ルーカスはグリフを見ながら眉を顰める。
「いちいち妹に友人が誰かなど話すか?」
「まあ、そうか」
「グリフ様」
マリアがグリフの方へ身を乗り出す。
「ん?マリア嬢、だったか?どうした?」
「マリアとお呼びください。あの、ちょっとロッテと並んで立っていただけますか?」
「ん?」
「ロッテとグリフ様がダンスしている処は遠目で見たんですけど、並んでいる処をじっくり見た事がないので」
「ああ。一次選考の時な」
グリフは頷いてすっと立ち上がると、テーブルの脇に立つ。
「ロッテも」
マリアはシャーロットに立つよう促す。
「マリア?何?」
「いいから、並んで」
「うん…」
立ち上がると、グリフの隣に立つ。
マリアは顎に手を当てて、シャーロットとグリフを真剣な眼差しで見上げた。
「…うん。いいわ」
マリアは顎に手を当てたまま、満足気に頷いた。
「何だったの?」
ソファに座り直しながらシャーロットが聞くと、ルーカスの隣にドカッと座ったグリフがマリアに「俺は合格か?」と言う。
「合格?」
シャーロットが問うと、マリアはグリフに頭を下げた。
「はい。失礼いたしました。私はロッテの幼なじみの友人として、そして侍女として、命の恩人として、ロッテのお相手には一家言あるのですわ」
「お相手!?」
シャーロットが声を上げると、ルーカスが口角を上げてマリアに言う。
「グリフなら安心だ、と、マリアも思っただろう?」
「お兄様?」
安心って、何?
「ええ。ロッテより背が高くて、筋肉隆々で、鉄板…例え鉄骨が落ちて来ても守ってくれそうな男性ですわ」
マリアは真剣な表情で頷く。
鉄板!?いや鉄骨はさすがにグリフ様でも危ない…って、そうじゃないわ!さっきの命の恩人発言といい、もしかしてお兄様もマリアと私の前世の事を知ってるの!?
それにお相手って事は、お兄様もマリアも私の、こ…恋人とか結婚相手とかにグリフ様を…って考えているって事?
シャーロットは混乱しながらグリフの顔をチラッと見る。
「何だかよくわからないが、合格したなら良かった」
グリフはシャーロットを見ながらニコニコと笑った。
「フェリシティ嬢は馬の扱いが上手いな」
「我が家は地方貴族なので、移動は馬が多いんですよ。もちろん馬車も使いますけど」
「なるほどな」
王都の外にある王立公園の一角を立ち入り禁止し、木影の芝生に敷いた敷物の上に並べられた昼食のバスケットからフェリシティはサンドイッチを取り、皿に乗せると、膝の上に置いた。
「…実は私、ここまで残れて、王太子殿下や王妃殿下に名前と顔を覚えていただいただけで充分なんですよね」
モグモグとサンドイッチを咀嚼した後でフェリシティは言う。
「充分?」
ユリウスは特に気分を害した様子もなく言う。
「父が…中央政治に絡みたいみたいで、顔を売れ、と…」
「はは。つまりフェリシティ嬢は王太子妃にはなりたいとは考えていないという事か?」
「…おそれながら」
笑いながら言うユリウスを、おずおずと上目遣い見るフェリシティ。
「かまわん。俺も忌憚ない処を聞きたいからな。フェリシティ嬢は物怖じしないし、乗馬も上手い。騎士の妻などが向いているのではないか?」
「騎士様の…」
仮にも婚約者候補に他の職種の方の妻が向いているって言われるなんて、告白してない相手に先に振られた気分だわ。でも私も王太子妃になりたくないって先に殿下を振ったんだから、これはお互い様というものね。
ところで、私、騎士の妻に向いてるのかしら?
フェリシティの頭に王女の護衛騎士アールの顔が浮かぶ。
…あの騎士様、エイマーズ様、ですっけ。相変わらず格好良かったわ。
フェリシティは視線だけでそっと辺りを見回す。が、護衛騎士も侍従も姿は見えなかった。
でもこうして王太子妃になりたくないと表明したんだから、もうユリウス殿下に呼ばれて王宮へ行く事もないだろうし、王女殿下の護衛騎士ならそうそう会う事もないわね。
-----
「ロッテ」
シャーロットがルーカスに呼ばれて部屋へ入ると、グリフがソファに座っていて、シャーロットを見て手をヒラヒラと振った。
「グリフ様!?」
グリフの向かいに座っていたルーカスがグリフの隣に移動して、シャーロットと、シャーロットの後に付いて部屋に入ったマリアが並んでソファに座った。
「今年はお妃選びのせいでルーカスの休暇が後ろにずれ込むから、別荘へは行けないから家に来たんだ」
「お兄様が長期休暇で別荘に行かれた時に呼ぶお友達ってグリフ様だったんですか?」
「そう。それもルーカス話してなかったのか?」
「お友達としか…」
ルーカスはグリフを見ながら眉を顰める。
「いちいち妹に友人が誰かなど話すか?」
「まあ、そうか」
「グリフ様」
マリアがグリフの方へ身を乗り出す。
「ん?マリア嬢、だったか?どうした?」
「マリアとお呼びください。あの、ちょっとロッテと並んで立っていただけますか?」
「ん?」
「ロッテとグリフ様がダンスしている処は遠目で見たんですけど、並んでいる処をじっくり見た事がないので」
「ああ。一次選考の時な」
グリフは頷いてすっと立ち上がると、テーブルの脇に立つ。
「ロッテも」
マリアはシャーロットに立つよう促す。
「マリア?何?」
「いいから、並んで」
「うん…」
立ち上がると、グリフの隣に立つ。
マリアは顎に手を当てて、シャーロットとグリフを真剣な眼差しで見上げた。
「…うん。いいわ」
マリアは顎に手を当てたまま、満足気に頷いた。
「何だったの?」
ソファに座り直しながらシャーロットが聞くと、ルーカスの隣にドカッと座ったグリフがマリアに「俺は合格か?」と言う。
「合格?」
シャーロットが問うと、マリアはグリフに頭を下げた。
「はい。失礼いたしました。私はロッテの幼なじみの友人として、そして侍女として、命の恩人として、ロッテのお相手には一家言あるのですわ」
「お相手!?」
シャーロットが声を上げると、ルーカスが口角を上げてマリアに言う。
「グリフなら安心だ、と、マリアも思っただろう?」
「お兄様?」
安心って、何?
「ええ。ロッテより背が高くて、筋肉隆々で、鉄板…例え鉄骨が落ちて来ても守ってくれそうな男性ですわ」
マリアは真剣な表情で頷く。
鉄板!?いや鉄骨はさすがにグリフ様でも危ない…って、そうじゃないわ!さっきの命の恩人発言といい、もしかしてお兄様もマリアと私の前世の事を知ってるの!?
それにお相手って事は、お兄様もマリアも私の、こ…恋人とか結婚相手とかにグリフ様を…って考えているって事?
シャーロットは混乱しながらグリフの顔をチラッと見る。
「何だかよくわからないが、合格したなら良かった」
グリフはシャーロットを見ながらニコニコと笑った。
20
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる