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「フェリシティ嬢は馬の扱いが上手いな」
「我が家は地方貴族なので、移動は馬が多いんですよ。もちろん馬車も使いますけど」
「なるほどな」
王都の外にある王立公園の一角を立ち入り禁止し、木影の芝生に敷いた敷物の上に並べられた昼食のバスケットからフェリシティはサンドイッチを取り、皿に乗せると、膝の上に置いた。
「…実は私、ここまで残れて、王太子殿下や王妃殿下に名前と顔を覚えていただいただけで充分なんですよね」
モグモグとサンドイッチを咀嚼した後でフェリシティは言う。
「充分?」
ユリウスは特に気分を害した様子もなく言う。
「父が…中央政治に絡みたいみたいで、顔を売れ、と…」
「はは。つまりフェリシティ嬢は王太子妃にはなりたいとは考えていないという事か?」
「…おそれながら」
笑いながら言うユリウスを、おずおずと上目遣い見るフェリシティ。
「かまわん。俺も忌憚ない処を聞きたいからな。フェリシティ嬢は物怖じしないし、乗馬も上手い。騎士の妻などが向いているのではないか?」
「騎士様の…」
仮にも婚約者候補に他の職種の方の妻が向いているって言われるなんて、告白してない相手に先に振られた気分だわ。でも私も王太子妃になりたくないって先に殿下を振ったんだから、これはお互い様というものね。
ところで、私、騎士の妻に向いてるのかしら?
フェリシティの頭に王女の護衛騎士アールの顔が浮かぶ。
…あの騎士様、エイマーズ様、ですっけ。相変わらず格好良かったわ。
フェリシティは視線だけでそっと辺りを見回す。が、護衛騎士も侍従も姿は見えなかった。
でもこうして王太子妃になりたくないと表明したんだから、もうユリウス殿下に呼ばれて王宮へ行く事もないだろうし、王女殿下の護衛騎士ならそうそう会う事もないわね。
-----
「ロッテ」
シャーロットがルーカスに呼ばれて部屋へ入ると、グリフがソファに座っていて、シャーロットを見て手をヒラヒラと振った。
「グリフ様!?」
グリフの向かいに座っていたルーカスがグリフの隣に移動して、シャーロットと、シャーロットの後に付いて部屋に入ったマリアが並んでソファに座った。
「今年はお妃選びのせいでルーカスの休暇が後ろにずれ込むから、別荘へは行けないから家に来たんだ」
「お兄様が長期休暇で別荘に行かれた時に呼ぶお友達ってグリフ様だったんですか?」
「そう。それもルーカス話してなかったのか?」
「お友達としか…」
ルーカスはグリフを見ながら眉を顰める。
「いちいち妹に友人が誰かなど話すか?」
「まあ、そうか」
「グリフ様」
マリアがグリフの方へ身を乗り出す。
「ん?マリア嬢、だったか?どうした?」
「マリアとお呼びください。あの、ちょっとロッテと並んで立っていただけますか?」
「ん?」
「ロッテとグリフ様がダンスしている処は遠目で見たんですけど、並んでいる処をじっくり見た事がないので」
「ああ。一次選考の時な」
グリフは頷いてすっと立ち上がると、テーブルの脇に立つ。
「ロッテも」
マリアはシャーロットに立つよう促す。
「マリア?何?」
「いいから、並んで」
「うん…」
立ち上がると、グリフの隣に立つ。
マリアは顎に手を当てて、シャーロットとグリフを真剣な眼差しで見上げた。
「…うん。いいわ」
マリアは顎に手を当てたまま、満足気に頷いた。
「何だったの?」
ソファに座り直しながらシャーロットが聞くと、ルーカスの隣にドカッと座ったグリフがマリアに「俺は合格か?」と言う。
「合格?」
シャーロットが問うと、マリアはグリフに頭を下げた。
「はい。失礼いたしました。私はロッテの幼なじみの友人として、そして侍女として、命の恩人として、ロッテのお相手には一家言あるのですわ」
「お相手!?」
シャーロットが声を上げると、ルーカスが口角を上げてマリアに言う。
「グリフなら安心だ、と、マリアも思っただろう?」
「お兄様?」
安心って、何?
「ええ。ロッテより背が高くて、筋肉隆々で、鉄板…例え鉄骨が落ちて来ても守ってくれそうな男性ですわ」
マリアは真剣な表情で頷く。
鉄板!?いや鉄骨はさすがにグリフ様でも危ない…って、そうじゃないわ!さっきの命の恩人発言といい、もしかしてお兄様もマリアと私の前世の事を知ってるの!?
それにお相手って事は、お兄様もマリアも私の、こ…恋人とか結婚相手とかにグリフ様を…って考えているって事?
シャーロットは混乱しながらグリフの顔をチラッと見る。
「何だかよくわからないが、合格したなら良かった」
グリフはシャーロットを見ながらニコニコと笑った。
「フェリシティ嬢は馬の扱いが上手いな」
「我が家は地方貴族なので、移動は馬が多いんですよ。もちろん馬車も使いますけど」
「なるほどな」
王都の外にある王立公園の一角を立ち入り禁止し、木影の芝生に敷いた敷物の上に並べられた昼食のバスケットからフェリシティはサンドイッチを取り、皿に乗せると、膝の上に置いた。
「…実は私、ここまで残れて、王太子殿下や王妃殿下に名前と顔を覚えていただいただけで充分なんですよね」
モグモグとサンドイッチを咀嚼した後でフェリシティは言う。
「充分?」
ユリウスは特に気分を害した様子もなく言う。
「父が…中央政治に絡みたいみたいで、顔を売れ、と…」
「はは。つまりフェリシティ嬢は王太子妃にはなりたいとは考えていないという事か?」
「…おそれながら」
笑いながら言うユリウスを、おずおずと上目遣い見るフェリシティ。
「かまわん。俺も忌憚ない処を聞きたいからな。フェリシティ嬢は物怖じしないし、乗馬も上手い。騎士の妻などが向いているのではないか?」
「騎士様の…」
仮にも婚約者候補に他の職種の方の妻が向いているって言われるなんて、告白してない相手に先に振られた気分だわ。でも私も王太子妃になりたくないって先に殿下を振ったんだから、これはお互い様というものね。
ところで、私、騎士の妻に向いてるのかしら?
フェリシティの頭に王女の護衛騎士アールの顔が浮かぶ。
…あの騎士様、エイマーズ様、ですっけ。相変わらず格好良かったわ。
フェリシティは視線だけでそっと辺りを見回す。が、護衛騎士も侍従も姿は見えなかった。
でもこうして王太子妃になりたくないと表明したんだから、もうユリウス殿下に呼ばれて王宮へ行く事もないだろうし、王女殿下の護衛騎士ならそうそう会う事もないわね。
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「ロッテ」
シャーロットがルーカスに呼ばれて部屋へ入ると、グリフがソファに座っていて、シャーロットを見て手をヒラヒラと振った。
「グリフ様!?」
グリフの向かいに座っていたルーカスがグリフの隣に移動して、シャーロットと、シャーロットの後に付いて部屋に入ったマリアが並んでソファに座った。
「今年はお妃選びのせいでルーカスの休暇が後ろにずれ込むから、別荘へは行けないから家に来たんだ」
「お兄様が長期休暇で別荘に行かれた時に呼ぶお友達ってグリフ様だったんですか?」
「そう。それもルーカス話してなかったのか?」
「お友達としか…」
ルーカスはグリフを見ながら眉を顰める。
「いちいち妹に友人が誰かなど話すか?」
「まあ、そうか」
「グリフ様」
マリアがグリフの方へ身を乗り出す。
「ん?マリア嬢、だったか?どうした?」
「マリアとお呼びください。あの、ちょっとロッテと並んで立っていただけますか?」
「ん?」
「ロッテとグリフ様がダンスしている処は遠目で見たんですけど、並んでいる処をじっくり見た事がないので」
「ああ。一次選考の時な」
グリフは頷いてすっと立ち上がると、テーブルの脇に立つ。
「ロッテも」
マリアはシャーロットに立つよう促す。
「マリア?何?」
「いいから、並んで」
「うん…」
立ち上がると、グリフの隣に立つ。
マリアは顎に手を当てて、シャーロットとグリフを真剣な眼差しで見上げた。
「…うん。いいわ」
マリアは顎に手を当てたまま、満足気に頷いた。
「何だったの?」
ソファに座り直しながらシャーロットが聞くと、ルーカスの隣にドカッと座ったグリフがマリアに「俺は合格か?」と言う。
「合格?」
シャーロットが問うと、マリアはグリフに頭を下げた。
「はい。失礼いたしました。私はロッテの幼なじみの友人として、そして侍女として、命の恩人として、ロッテのお相手には一家言あるのですわ」
「お相手!?」
シャーロットが声を上げると、ルーカスが口角を上げてマリアに言う。
「グリフなら安心だ、と、マリアも思っただろう?」
「お兄様?」
安心って、何?
「ええ。ロッテより背が高くて、筋肉隆々で、鉄板…例え鉄骨が落ちて来ても守ってくれそうな男性ですわ」
マリアは真剣な表情で頷く。
鉄板!?いや鉄骨はさすがにグリフ様でも危ない…って、そうじゃないわ!さっきの命の恩人発言といい、もしかしてお兄様もマリアと私の前世の事を知ってるの!?
それにお相手って事は、お兄様もマリアも私の、こ…恋人とか結婚相手とかにグリフ様を…って考えているって事?
シャーロットは混乱しながらグリフの顔をチラッと見る。
「何だかよくわからないが、合格したなら良かった」
グリフはシャーロットを見ながらニコニコと笑った。
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