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木漏れ日の気持ちいい天気。木にもたれて足を伸ばして座るセシリア。その腿の上には銀の髪。
セシリアの膝枕で目を閉じる男性はシルベストだ。
「セシリア…」
シルベストの細くて長い指がセシリアの脛を撫でる。
「くすぐったいです。シルベスト様」
足を動かすセシリア。シルベストは身体を回転させて仰向けになるとセシリアを見上げた。
「何度も言うが『シル』と呼んでくれ」
「何度も言いますけど、無理です」
シルベストはまた身体を回転させると、セシリアのお腹に額を付け、腕を腰に回す。
「シ…シルベスト様」
シルベストに抱き付かれたセシリアは両手をオロオロと動かした。
周りに誰もいない丘の上とはいえ、さすがにこれは。
「……撫でて」
小声でシルベストが言う。
シルベストはセシリアに頭を撫でられるのが好きなのだ。
甘えたような声にセシリアの胸がギュンッと疼いた。
か、かわいい。
どうしよう。好き。
セシリアがシルベストの頭にそっと手を置き、髪の間に指を入れるように撫でる。
シルベストは安心したように、気持ち良さそうに、ふう…と息を吐いた。
-----
マルセル公爵家の嫡男、この国の第二王子の側近でもあるシルベストは、学園の三年生になった今春、生徒会長に選ばれた。
「生徒会長のシルベスト・マルセルだ」
生徒会室で自己紹介をすると、生徒会役員たちは一斉に息を飲む。
銀の髪に青い瞳、整いすぎるくらい整った容姿に加え、いかなる時にも表情が変わらないシルベストは、いつからか周りから「氷の彫刻」と呼ばれるようになっていた。
続いて二人いる副会長の内の一人が挨拶をする。伯爵令息の四年生だ。その後はもう一人の副会長、侯爵令嬢の三年生が挨拶をした。
「書記のセシリア・アボットです。二年生です」
セシリアは明るい声で言う。
その時のシルベストは「アボットといえば子爵家か」「赤い髪は目立ちそうだな」と思っただけだった。
-----
生徒会室で学園主催の舞踏会のための会議をしている時、セシリアがポツリと呟く。
「会長は綺麗ですよね」
ピリッとした空気が走り、そこにいた全員がセシリアに注目した。
「それは舞踏会と関係あるのか?」
シルベストが正面にいたセシリアをチラッと見る。
シルベストは普通に見ただけのつもりだが、目が合うと怯えた表情を見せる人もいたので、一瞬「しまった」と思った。
シルベストは無表情だが、決して冷酷な人間ではない。自分を見て怯えられるのを平然と受け入れている訳でもないのだ。
しかし、セシリアに怯えた様子はなかった。
「会長とダンスする権利を販売したらすごい売上になりそうだな、と思ったんですけど、会長が綺麗すぎてダンスのパートナーの女子生徒が自信喪失しそうですよね?」
えへへと笑いながら頭を掻く。
セシリアが笑顔を見せた事で、その場の空気が軽くなった。
「ダンスの権利を販売って、面白い事を思いつきますね」
会計の二年生の商家の息子が言う。
「人気がある生徒のダンス権を販売すればすごい金額になりそうだけど、舞踏会は利益を得るために開催するんじゃないからなあ」
「確かにマルセル会長は綺麗すぎてダンスは躊躇しますね」
男女の副会長がそれぞれ言う。
「それは女性だけじゃないですよ。男だって横に並びたくないですもん」
会計が言うと、シルベスト以外の全員が笑う。
生徒会室がこんな和やかな空気になったのは初めてじゃないか?
シルベストはニコニコと笑っているセシリアを見た。
-----
「赤い髪の女性を見ると、セシリアかと思ってしまう」
シルベストの言葉に、セシリアは困ったように苦笑いを浮かべる。
「目立ちますもんね、この髪」
クセ毛を抑えるように一つにまとめている髪をセシリアは自分の手で撫でた。
「そうではない」
少し苛立った口調で言うと、シルベストはソファの向かい側から、セシリアの隣へ移動する。
「会長」
咎めるように上目遣いにシルベストを見るセシリア。
シルベストは後ろで結ばれたセシリアの髪に手を伸ばした。
「名前で呼んでくれ」
髪を一束取ると、人差し指にクルクルと絡める。
「…マルセル様、やめてください」
「それは家名だ。名前じゃない」
「それは…」
シルベストは公爵家の嫡男だ。いくらシルベストに婚約者がいないとはいえ、子爵令嬢のセシリアが親密になっていい相手ではない。
「意外と柔らかいんだな、髪」
表情はあまり変わらないがシルベストの雰囲気がふと緩んだ。
セシリアの胸がキュンと痛む。
「…シルベスト様」
極々小さな声だが、シルベストには聞こえたらしい。シルベストが、ふんわりと微笑んだ。
──ああ、ダメだ。
セシリアは激しく鳴る心臓の正直さに、シルベストが好きだと改めて自覚する。
「セシリア…好きだ…」
囁く声がセシリアの耳に届いた。
木漏れ日の気持ちいい天気。木にもたれて足を伸ばして座るセシリア。その腿の上には銀の髪。
セシリアの膝枕で目を閉じる男性はシルベストだ。
「セシリア…」
シルベストの細くて長い指がセシリアの脛を撫でる。
「くすぐったいです。シルベスト様」
足を動かすセシリア。シルベストは身体を回転させて仰向けになるとセシリアを見上げた。
「何度も言うが『シル』と呼んでくれ」
「何度も言いますけど、無理です」
シルベストはまた身体を回転させると、セシリアのお腹に額を付け、腕を腰に回す。
「シ…シルベスト様」
シルベストに抱き付かれたセシリアは両手をオロオロと動かした。
周りに誰もいない丘の上とはいえ、さすがにこれは。
「……撫でて」
小声でシルベストが言う。
シルベストはセシリアに頭を撫でられるのが好きなのだ。
甘えたような声にセシリアの胸がギュンッと疼いた。
か、かわいい。
どうしよう。好き。
セシリアがシルベストの頭にそっと手を置き、髪の間に指を入れるように撫でる。
シルベストは安心したように、気持ち良さそうに、ふう…と息を吐いた。
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マルセル公爵家の嫡男、この国の第二王子の側近でもあるシルベストは、学園の三年生になった今春、生徒会長に選ばれた。
「生徒会長のシルベスト・マルセルだ」
生徒会室で自己紹介をすると、生徒会役員たちは一斉に息を飲む。
銀の髪に青い瞳、整いすぎるくらい整った容姿に加え、いかなる時にも表情が変わらないシルベストは、いつからか周りから「氷の彫刻」と呼ばれるようになっていた。
続いて二人いる副会長の内の一人が挨拶をする。伯爵令息の四年生だ。その後はもう一人の副会長、侯爵令嬢の三年生が挨拶をした。
「書記のセシリア・アボットです。二年生です」
セシリアは明るい声で言う。
その時のシルベストは「アボットといえば子爵家か」「赤い髪は目立ちそうだな」と思っただけだった。
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生徒会室で学園主催の舞踏会のための会議をしている時、セシリアがポツリと呟く。
「会長は綺麗ですよね」
ピリッとした空気が走り、そこにいた全員がセシリアに注目した。
「それは舞踏会と関係あるのか?」
シルベストが正面にいたセシリアをチラッと見る。
シルベストは普通に見ただけのつもりだが、目が合うと怯えた表情を見せる人もいたので、一瞬「しまった」と思った。
シルベストは無表情だが、決して冷酷な人間ではない。自分を見て怯えられるのを平然と受け入れている訳でもないのだ。
しかし、セシリアに怯えた様子はなかった。
「会長とダンスする権利を販売したらすごい売上になりそうだな、と思ったんですけど、会長が綺麗すぎてダンスのパートナーの女子生徒が自信喪失しそうですよね?」
えへへと笑いながら頭を掻く。
セシリアが笑顔を見せた事で、その場の空気が軽くなった。
「ダンスの権利を販売って、面白い事を思いつきますね」
会計の二年生の商家の息子が言う。
「人気がある生徒のダンス権を販売すればすごい金額になりそうだけど、舞踏会は利益を得るために開催するんじゃないからなあ」
「確かにマルセル会長は綺麗すぎてダンスは躊躇しますね」
男女の副会長がそれぞれ言う。
「それは女性だけじゃないですよ。男だって横に並びたくないですもん」
会計が言うと、シルベスト以外の全員が笑う。
生徒会室がこんな和やかな空気になったのは初めてじゃないか?
シルベストはニコニコと笑っているセシリアを見た。
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「赤い髪の女性を見ると、セシリアかと思ってしまう」
シルベストの言葉に、セシリアは困ったように苦笑いを浮かべる。
「目立ちますもんね、この髪」
クセ毛を抑えるように一つにまとめている髪をセシリアは自分の手で撫でた。
「そうではない」
少し苛立った口調で言うと、シルベストはソファの向かい側から、セシリアの隣へ移動する。
「会長」
咎めるように上目遣いにシルベストを見るセシリア。
シルベストは後ろで結ばれたセシリアの髪に手を伸ばした。
「名前で呼んでくれ」
髪を一束取ると、人差し指にクルクルと絡める。
「…マルセル様、やめてください」
「それは家名だ。名前じゃない」
「それは…」
シルベストは公爵家の嫡男だ。いくらシルベストに婚約者がいないとはいえ、子爵令嬢のセシリアが親密になっていい相手ではない。
「意外と柔らかいんだな、髪」
表情はあまり変わらないがシルベストの雰囲気がふと緩んだ。
セシリアの胸がキュンと痛む。
「…シルベスト様」
極々小さな声だが、シルベストには聞こえたらしい。シルベストが、ふんわりと微笑んだ。
──ああ、ダメだ。
セシリアは激しく鳴る心臓の正直さに、シルベストが好きだと改めて自覚する。
「セシリア…好きだ…」
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