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「じゃあ、今はイライザ様とエドモンド殿下の邪魔をする気はないのですか?」
ジェフリーに頭を撫でられて少し照れたナタリアはジェフリーを上目遣いに見ながら言う。
「ああ。舞踏会でイライザ嬢がミア嬢を叩いて飛び出して行った後、エドモンド殿下が冷徹な目でミア嬢を見ていたんだ。それからイライザ嬢を追って行かれた。ブリジット嬢がイライザ嬢を追い掛けて行ったから殿下はイライザ嬢に話し掛けなかったが…あの冷徹な目を見て、俺はエドモンド殿下が本当にイライザ嬢を想っているんだなと確信したんだ」
そう言ってボートのオールを握り直すジェフリー。
ナタリアは納得したように頷いた。
「エドモンド殿下が本気ならば、後は二人の問題だからな。だからあれからは間に割って入ったりはしていない」
「そうだったんですか。でもエドモンド殿下がミア様を冷たい目でみていた…とは、あの時ミア様が何かしたんでしょうか?まあ…グレイ殿下へ泣きつく様子はあざといなーと思いましたけど」
口元に手を当ててその時の事を思い出しながらナタリアは言う。
「一番はイライザ嬢が泣いていたからだろう。それに…俺は気付かなかったが、一部の生徒たちが『グレイ殿下がイライザ嬢を止める前にミアが嗤った』と話していた」
「嗤った?」
ナタリアは首を傾げる。
「ああ。エドモンド殿下もそれを聞かれたか、実際に目にされたのかも知れないな」
「それって…ミア様がイライザ様にわざと叩かれるように…グレイ殿下にそれを止めさせるように、仕向けたって事…?」
独り言のように呟くナタリア。
「…やりかねないわ。ミア様なら」
「ナタリア?」
ジェフリーが小声で呟くナタリアに声を掛けると、ナタリアは勢いよく顔を上げた。
「ジェフリー様、私、見たんです」
-----
「ミア嬢がイライザ嬢を階段から落とした?」
ジェフリーはそう言うと、思わずオールを漕ぐ手を止めた。
「正確には『ミア様がイライザ様にぶつかりに行って、一緒に階段から落ちた』です」
頷いて言うナタリア。
「わざとぶつかったと?」
「はい。私にはそう見えました」
「ナタリアがそれを見ていたなんて初めて聞いたが?」
ジェフリーは眉を寄せて言う。
「最初は仕返しだと思ったんです。それまでイライザ様は散々ミア様を虐めていたので、ミア様が耐えきれずに思わず…と。その気持ちはわからないでもないですし、そうされても仕方ないと思っていました」
言いながらナタリアは少し俯いた。
「ああ…なるほど。でもそれは違うと?」
「あの後からイライザ様が変わって、そして、イライザ様がガイド役になって生徒会役員と話す機会も増えて…あの、もしかしてジェフリー様がイライザ様を…と思って、私、イライザ様をよく見るようになったんです。観察と言うと感じが悪いですけど…」
ナタリアが少し言いにくそうに言う。
「ああ…うん。確かに俺の態度はそう誤解されても仕方なかったな」
ジェフリーがバツが悪そうに頭を掻くと、ナタリアは小さく首を横に振った。
「それで、イライザ様がグレイ殿下とエドモンド殿下、ジェフリー様と廊下で話していて、突然グレイ殿下がイライザ様を連れ去った事がありましたよね?」
「ああ、あったな」
「あの時グレイ殿下とイライザ様が中庭に行ったのをミア様が校舎の中から見ていて、それで、まるで偶然みたいに二人の邪魔に入ったんです。それで、私、これだけ堂々と邪魔ができるミア様が『虐めに耐えきれなくて思わず仕返し』なんてしないと思ったんです。むしろグレイ殿下に近付くためにはイライザ様に虐められていた方が都合が良いとさえ思っているのではないかと…」
「……」
ジェフリーは無言で顎に手を当てる。
「その時、私がイライザ様を観察していたのと同じようにミア様を観察していた人に出会いまして…」
「ミア嬢を観察?誰が?」
「ブリジット様です」
「イライザ嬢の妹が?ミア嬢を観察?」
意外だ、と云う表情のジェフリー。
「はい。鉢合わせて少し話した処、ブリジット様はイライザ様が階段から落ちてから人が変わったのが信じられなく、ミア様を何故虐めていたのかを知りたくてミア様を見ているとの事でした。そこで私はイライザ様が階段から落ちたのを見ていて、ミア様がイライザ様にぶつかって行ったように見えた、と話しました」
「ナタリア、イライザ嬢がガイド役になった時にも俺にそれを話さなかったのは、仕返しされても仕方がないと思っていたからか?」
「そうです。それにミア様がわざとイライザ様にぶつかったと言っても、あの頃は誰も信じないだろうと思っていましたから」
「ああ…そうだな。確かに信じ難かっただろう」
ジェフリーが頷くと、ナタリアはキッパリと言った。
「でも、ここに来てミア様とイライザ様を見ていて、確信しました。舞踏会でミア様がイライザ様に叩かれるように仕向けのも、わざとぶつかってイライザ様を階段から落としたのも、グレイ殿下の気を引くためだったんだわ」
「じゃあ、今はイライザ様とエドモンド殿下の邪魔をする気はないのですか?」
ジェフリーに頭を撫でられて少し照れたナタリアはジェフリーを上目遣いに見ながら言う。
「ああ。舞踏会でイライザ嬢がミア嬢を叩いて飛び出して行った後、エドモンド殿下が冷徹な目でミア嬢を見ていたんだ。それからイライザ嬢を追って行かれた。ブリジット嬢がイライザ嬢を追い掛けて行ったから殿下はイライザ嬢に話し掛けなかったが…あの冷徹な目を見て、俺はエドモンド殿下が本当にイライザ嬢を想っているんだなと確信したんだ」
そう言ってボートのオールを握り直すジェフリー。
ナタリアは納得したように頷いた。
「エドモンド殿下が本気ならば、後は二人の問題だからな。だからあれからは間に割って入ったりはしていない」
「そうだったんですか。でもエドモンド殿下がミア様を冷たい目でみていた…とは、あの時ミア様が何かしたんでしょうか?まあ…グレイ殿下へ泣きつく様子はあざといなーと思いましたけど」
口元に手を当ててその時の事を思い出しながらナタリアは言う。
「一番はイライザ嬢が泣いていたからだろう。それに…俺は気付かなかったが、一部の生徒たちが『グレイ殿下がイライザ嬢を止める前にミアが嗤った』と話していた」
「嗤った?」
ナタリアは首を傾げる。
「ああ。エドモンド殿下もそれを聞かれたか、実際に目にされたのかも知れないな」
「それって…ミア様がイライザ様にわざと叩かれるように…グレイ殿下にそれを止めさせるように、仕向けたって事…?」
独り言のように呟くナタリア。
「…やりかねないわ。ミア様なら」
「ナタリア?」
ジェフリーが小声で呟くナタリアに声を掛けると、ナタリアは勢いよく顔を上げた。
「ジェフリー様、私、見たんです」
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「ミア嬢がイライザ嬢を階段から落とした?」
ジェフリーはそう言うと、思わずオールを漕ぐ手を止めた。
「正確には『ミア様がイライザ様にぶつかりに行って、一緒に階段から落ちた』です」
頷いて言うナタリア。
「わざとぶつかったと?」
「はい。私にはそう見えました」
「ナタリアがそれを見ていたなんて初めて聞いたが?」
ジェフリーは眉を寄せて言う。
「最初は仕返しだと思ったんです。それまでイライザ様は散々ミア様を虐めていたので、ミア様が耐えきれずに思わず…と。その気持ちはわからないでもないですし、そうされても仕方ないと思っていました」
言いながらナタリアは少し俯いた。
「ああ…なるほど。でもそれは違うと?」
「あの後からイライザ様が変わって、そして、イライザ様がガイド役になって生徒会役員と話す機会も増えて…あの、もしかしてジェフリー様がイライザ様を…と思って、私、イライザ様をよく見るようになったんです。観察と言うと感じが悪いですけど…」
ナタリアが少し言いにくそうに言う。
「ああ…うん。確かに俺の態度はそう誤解されても仕方なかったな」
ジェフリーがバツが悪そうに頭を掻くと、ナタリアは小さく首を横に振った。
「それで、イライザ様がグレイ殿下とエドモンド殿下、ジェフリー様と廊下で話していて、突然グレイ殿下がイライザ様を連れ去った事がありましたよね?」
「ああ、あったな」
「あの時グレイ殿下とイライザ様が中庭に行ったのをミア様が校舎の中から見ていて、それで、まるで偶然みたいに二人の邪魔に入ったんです。それで、私、これだけ堂々と邪魔ができるミア様が『虐めに耐えきれなくて思わず仕返し』なんてしないと思ったんです。むしろグレイ殿下に近付くためにはイライザ様に虐められていた方が都合が良いとさえ思っているのではないかと…」
「……」
ジェフリーは無言で顎に手を当てる。
「その時、私がイライザ様を観察していたのと同じようにミア様を観察していた人に出会いまして…」
「ミア嬢を観察?誰が?」
「ブリジット様です」
「イライザ嬢の妹が?ミア嬢を観察?」
意外だ、と云う表情のジェフリー。
「はい。鉢合わせて少し話した処、ブリジット様はイライザ様が階段から落ちてから人が変わったのが信じられなく、ミア様を何故虐めていたのかを知りたくてミア様を見ているとの事でした。そこで私はイライザ様が階段から落ちたのを見ていて、ミア様がイライザ様にぶつかって行ったように見えた、と話しました」
「ナタリア、イライザ嬢がガイド役になった時にも俺にそれを話さなかったのは、仕返しされても仕方がないと思っていたからか?」
「そうです。それにミア様がわざとイライザ様にぶつかったと言っても、あの頃は誰も信じないだろうと思っていましたから」
「ああ…そうだな。確かに信じ難かっただろう」
ジェフリーが頷くと、ナタリアはキッパリと言った。
「でも、ここに来てミア様とイライザ様を見ていて、確信しました。舞踏会でミア様がイライザ様に叩かれるように仕向けのも、わざとぶつかってイライザ様を階段から落としたのも、グレイ殿下の気を引くためだったんだわ」
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