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「今日はイライザと二人きりになれるかと思っていたんだけどな」
ボートから小島へ移り、イライザがぼんやり湖を眺めていると、傍に来たエドモンドが言った。
「エドモンド殿下」
「ディアナ嬢なら向こうで花を見ているよ」
エドモンドが視線で示した先で、ディアナが自生しているラベンダーの花畑を歩いている。こちらの話し声は聞こえなさそうだ。
「ごめんなさい。どうしてもディアナ様と一緒にいたくて…」
「まあ、ディアナ嬢とアレックスの間の微妙な空気は俺も感じているから。イライザが俺と二人きりになるのを避けているのではないなら良いんだ」
イライザの横に立ってニコリと笑うエドモンドにイライザの胸が少し痛んだ。
俯くと、二人の手首を繋ぐ蝶々結びが付いた赤い糸が見える。
私は、エドモンド殿下を嫌いではない。でも特別に好きでもない。
赤い糸を切られたディアナ様とアレックス様はすぐに相手に対する恋愛感情を失くしてるのに、何で私はいつまでも殿下の事を諦められないんだろう。
イライザの見ていた方角にはグレイたちが乗っているボートが見える。
「それにしてもイライザがボートを漕ぐ気満々で現れたのには驚いた。漕いでいる処を見たかった気もするけどな」
クスクスと笑いながら言う。
「あのボート、二人しか乗れないと思ってたので…頑張って漕ぐつもりはありましたけど、多分ほとんど進まない内にバテていたでしょうね」
「そうだな」
クスクスと笑うエドモンドを見て、イライザも微笑んだ。
「イライザ、俺を見て」
エドモンドがイライザの頬に触れ、顔を自分の方へ向ける。
「エドモンド殿下…?」
ぱちぱちと瞬きしながらエドモンドを見た。
「イライザはずっとグレイを好きなんだろう?今はそれでも良いよ。ただ、これからはグレイを見た後、同じだけの時間俺を見て」
イライザを見つめて微笑むエドモンド。
「…エドモンド殿下」
イライザの頬を親指で軽く撫でると、エドモンドは頬から手を離し、イライザの手を取る。
「少しづつ俺を見ている時間が長くなって、留学が終わる頃には俺だけを見てくれるようになれば良いな」
にっこりと笑うと、エドモンドはイライザの手を自分の顔に近付け、指先にキスを落とした。
-----
夕食後のサロンで、丸いテーブルを一人掛けソファ三つが囲む内の二つのソファに座りイライザとディアナが話していると、ナタリアがやって来て、イライザの傍で立ち止まった。
「ナタリア様?」
イライザがナタリアを見上げると、ナタリアは少し唇を尖らせてぶっきらぼうに言う。
「…悪かったわ」
「はい?」
何が悪かったのかわからず、首を傾げるイライザ。
「ジェフリー様がイライザ様を…その、気に?そう必要以上に気にされている気がして、私、睨んだり…とか、したじゃない。だから。悪かったわ」
ナタリアは唇を尖らせたままで言った。
あ、ナタリア様も悪役令嬢だもの。素直に謝るとかそう言うのはきっとキャラ的にも苦手なんだわ。
「はい。あの…」
えーと…こう言う場合「大丈夫です」も何か違うし「気にしてません」って言うのも嘘だし「許します」も変だし…何て答えるのが正解なのかな?
「ナタリア様が謝られたと言う事は、ジェフリー様がイライザ様を気に掛けていたのは誤解だったと言う事なの?」
ディアナがナタリアに空いたもう一つのソファに座るように手で示しながら言う。
ナタリアは礼をしてソファに座った。
「ジェフリー様が気に掛けられていたのは本当です。ただ、理由が…私の考えていたのとは違っていたので、そこは私の誤解でした」
ナタリアは昼間にボートでジェフリーと話した内容をかい摘んで説明する。
そしてイライザを見ながら言った。
「ミア様はグレイ殿下の気を引くために、イライザ様を利用しているのでしょう?」
「「え?」」
イライザとディアナが声を上げる。
「そうなの?」
ディアナが眉を顰めてイライザを見た。
「ええと、あの…」
イライザはキョロキョロと周りを見回す。
「イライザ様?」
不思議そうなナタリアとディアナの方へイライザは身を乗り出すようにして小声で言った。
「…あの、ブリジットによれば、ミア様はあらゆる所であらゆる人の話を聞いているらしいので…」
「それは…所謂盗み聞き…と言うのでは…?」
イライザと同じように小声で言うディアナ。
「その通りです。そう言えばブリジット様がそう言ってたわね。でもミア様は今グレイ殿下の所へ行っているから大丈夫よ」
ナタリアが言うと、ディアナがまた眉を顰めた。
「もう夜なのに…」
「……」
夕食後、就寝前の夜に異性と共に居る。そんなにミアは殿下と親しくしてるのか…
俯くイライザの肩をナタリアがポンポンと叩く。
「みんなで行くピクニックの話をしに行ったらしいわ。ジェフリー様とアレックス様がグレイ殿下と二人きりにはさせないと言っていたから大丈夫よ」
「今日はイライザと二人きりになれるかと思っていたんだけどな」
ボートから小島へ移り、イライザがぼんやり湖を眺めていると、傍に来たエドモンドが言った。
「エドモンド殿下」
「ディアナ嬢なら向こうで花を見ているよ」
エドモンドが視線で示した先で、ディアナが自生しているラベンダーの花畑を歩いている。こちらの話し声は聞こえなさそうだ。
「ごめんなさい。どうしてもディアナ様と一緒にいたくて…」
「まあ、ディアナ嬢とアレックスの間の微妙な空気は俺も感じているから。イライザが俺と二人きりになるのを避けているのではないなら良いんだ」
イライザの横に立ってニコリと笑うエドモンドにイライザの胸が少し痛んだ。
俯くと、二人の手首を繋ぐ蝶々結びが付いた赤い糸が見える。
私は、エドモンド殿下を嫌いではない。でも特別に好きでもない。
赤い糸を切られたディアナ様とアレックス様はすぐに相手に対する恋愛感情を失くしてるのに、何で私はいつまでも殿下の事を諦められないんだろう。
イライザの見ていた方角にはグレイたちが乗っているボートが見える。
「それにしてもイライザがボートを漕ぐ気満々で現れたのには驚いた。漕いでいる処を見たかった気もするけどな」
クスクスと笑いながら言う。
「あのボート、二人しか乗れないと思ってたので…頑張って漕ぐつもりはありましたけど、多分ほとんど進まない内にバテていたでしょうね」
「そうだな」
クスクスと笑うエドモンドを見て、イライザも微笑んだ。
「イライザ、俺を見て」
エドモンドがイライザの頬に触れ、顔を自分の方へ向ける。
「エドモンド殿下…?」
ぱちぱちと瞬きしながらエドモンドを見た。
「イライザはずっとグレイを好きなんだろう?今はそれでも良いよ。ただ、これからはグレイを見た後、同じだけの時間俺を見て」
イライザを見つめて微笑むエドモンド。
「…エドモンド殿下」
イライザの頬を親指で軽く撫でると、エドモンドは頬から手を離し、イライザの手を取る。
「少しづつ俺を見ている時間が長くなって、留学が終わる頃には俺だけを見てくれるようになれば良いな」
にっこりと笑うと、エドモンドはイライザの手を自分の顔に近付け、指先にキスを落とした。
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夕食後のサロンで、丸いテーブルを一人掛けソファ三つが囲む内の二つのソファに座りイライザとディアナが話していると、ナタリアがやって来て、イライザの傍で立ち止まった。
「ナタリア様?」
イライザがナタリアを見上げると、ナタリアは少し唇を尖らせてぶっきらぼうに言う。
「…悪かったわ」
「はい?」
何が悪かったのかわからず、首を傾げるイライザ。
「ジェフリー様がイライザ様を…その、気に?そう必要以上に気にされている気がして、私、睨んだり…とか、したじゃない。だから。悪かったわ」
ナタリアは唇を尖らせたままで言った。
あ、ナタリア様も悪役令嬢だもの。素直に謝るとかそう言うのはきっとキャラ的にも苦手なんだわ。
「はい。あの…」
えーと…こう言う場合「大丈夫です」も何か違うし「気にしてません」って言うのも嘘だし「許します」も変だし…何て答えるのが正解なのかな?
「ナタリア様が謝られたと言う事は、ジェフリー様がイライザ様を気に掛けていたのは誤解だったと言う事なの?」
ディアナがナタリアに空いたもう一つのソファに座るように手で示しながら言う。
ナタリアは礼をしてソファに座った。
「ジェフリー様が気に掛けられていたのは本当です。ただ、理由が…私の考えていたのとは違っていたので、そこは私の誤解でした」
ナタリアは昼間にボートでジェフリーと話した内容をかい摘んで説明する。
そしてイライザを見ながら言った。
「ミア様はグレイ殿下の気を引くために、イライザ様を利用しているのでしょう?」
「「え?」」
イライザとディアナが声を上げる。
「そうなの?」
ディアナが眉を顰めてイライザを見た。
「ええと、あの…」
イライザはキョロキョロと周りを見回す。
「イライザ様?」
不思議そうなナタリアとディアナの方へイライザは身を乗り出すようにして小声で言った。
「…あの、ブリジットによれば、ミア様はあらゆる所であらゆる人の話を聞いているらしいので…」
「それは…所謂盗み聞き…と言うのでは…?」
イライザと同じように小声で言うディアナ。
「その通りです。そう言えばブリジット様がそう言ってたわね。でもミア様は今グレイ殿下の所へ行っているから大丈夫よ」
ナタリアが言うと、ディアナがまた眉を顰めた。
「もう夜なのに…」
「……」
夕食後、就寝前の夜に異性と共に居る。そんなにミアは殿下と親しくしてるのか…
俯くイライザの肩をナタリアがポンポンと叩く。
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