悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 馬車の前を走る三頭の馬、先頭にアレックス、続いてグレイ、エドモンドが乗っている。
 一台目の馬車にはディアナとイライザとナタリア、続く二台目にはマリアンヌとブリジット、そしてミアが乗り、その馬車の後ろの三頭の馬にロイ、ワイゼル、ジェフリーが乗って続いて走っていた。
「ブリジット様ってイライザ様と仲が悪くてほとんど口をきかないって聞いたんですけど、今は普通に話していますよね?仲直りしたのですか?」
 ミアが明るい口調で言うと、ミアの向かいの座席に座ったブリジットは少し眉を顰める。
「ええ。姉様は…戻ったので」
 ブリジットは「…」の部分の「ミア様が現れる前に」と云う言葉を口には出さず心の中だけで言った。
 元々すごく仲が良い姉妹だった訳ではないイライザとブリジットだが、ミアが現れてイライザが「悪役令嬢化」する前には口もきかない程に仲が悪かった訳でもないのだ。
「戻った?」
 ミアが首を傾げる。
「ええ。階段から落とされて、姉様は以前の姉様に戻りましたから」
 本当は今の姉様は、以前の姉様とも少し感じが違う。でもそれは瑣末な事だわ。
「階段からって…私がイライザ様を下敷きにしてしまったから怒っているんですね!あの時は本当にごめんなさい。下敷きにするつもりなんかなかったんです。おかげで私は怪我一つなかったのでイライザ様には感謝しかありません」
 胸の前で手を組んで言うミア。
 良く言うわ。それに、自分がかわいい事を承知の上でのこの言い様。本当にこの女、あざといわ。

「でもあれからイライザ様が『戻った』とは?何かイライザ様が言われていたんですか?」
 キラリ。ミアの目が光った…ような気がした。
「何か?」
「例えば…『運命』とか『好感度』とか」
「いいえ」
 ブリジットが首を傾げると、ミアはズイッとブリジットの方へ身体を乗り出す。
「『赤い糸』…とか」
 じっとブリジットを見るミアに圧力を感じたブリジットは顎を引いた。
「赤い…?何ですか?」
「聞いてないなら良いんです」
 ミアが身体を引いて姿勢を正す。
「…?」
「もうすぐ着きますね」
 訝し気にミアを見るブリジットにミアは笑顔を向けた。

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 湖の側の芝生の広場の大きな木の下の大きな木陰にシートを敷いて料理人が作ってくれた昼食を広げて皆で囲む。

「良い天気で良かったですね」
 イライザが隣に座るエドモンドに話し掛けると、エドモンドはニッコリと笑った。
「ああ。しかし本当はイライザを馬に乗せて来たかったがな。帰りには乗るか?」
「帰りは…眠ってしまいそうですね」
「眠っても良いよ。こうしてしっかり掴まえて、絶対に落とさないから」
 エドモンドは自分の身体の前に片腕を出して空気を抱くような仕草をする。
 つまり前に乗る私のお腹に手を回して抱きしめておくって事…そんなの寝られる訳ないし!
「片手で馬を操るのは危ないです」
「まあ道中長いし残念ながら難しいか。じゃあ後で湖の辺りを少し駆けようか」
「はい」
 馬かあ…元のイライザは昔、お父様やお兄様に馬に乗せてもらった事があるわ。でも「私」は前世でも今世でも一度も乗った事ないけど大丈夫かな?

 イライザはエドモンドと話しながら向かい側に座っているディアナをチラッと見た。
 ディアナの隣は当然アレックス。しかし二人はたまに短い会話を交わすだけで、かなりよそよそしく見える。
「イライザが作ったのはどれ?」
 エドモンドが言う。
 目の前には昼食のデザートに昨日作ったお菓子たちが並んでいた。
「クッキーとプリンです」
「じゃあクッキーをいただこう」
 エドモンドは籠に入ったクッキーに手を延ばすと一枚取り口に入れる。
「うん。美味しいよ」
 サクサクと咀嚼しながらエドモンドが笑って言う。
「良かった。嬉しいです」
 エドモンドと話しながら、イライザは視界の端でグレイの手元を見ていた。
 グレイがクッキーに手を延ばすと、イライザの心臓が跳ねる。
 グレイの手がクッキーに触れそうになった時、

「毒味はいいんですか!?」
 とミアが立ち上がって言った。 



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