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「以前、ディアナ様たちとお菓子を作った時は…私、実はミア様と張り合う気持ちがあったんですよね」
イライザはボウルを持って卵を撹拌しながら呟いた。
「張り合う?」
ナタリアがめん棒でクッキー生地を延ばしながら言う。
「そう言えば、お菓子作りをしたのはミア様がグレイ殿下に手作りマフィンを差し上げた後すぐだったわね」
小麦粉を振るいながらディアナが言うと、イライザは頷いた。
「私も手作りのお菓子を殿下に…って思ったんです。でもそもそも私の作った物など食べていただける訳ないんですけど」
苦笑いしながら言うイライザ。
「そのミア様の手作りマフィンも手作りクッキーも、実は市販の品だったんですよね?」
ナタリアが言うと、マリアンヌがバターを練る手を止める。
「殿下を騙すだなんて、信じられませんわ」
憤った口調のマリアンヌ。砂糖を秤で計りながらブリジットは
「本当、信じられない」
と吐き捨てるように言った。
「それで今ミア様はまた男性たちの屋敷に行かれているのですか?」
そうナタリアが言うと、ディアナは眉を寄せる。
「ええ。明日の準備で、今日は馬の様子を見たり馬車の点検をしたりするそうで、ミア様も一緒に行動しているらしいわ」
「異性しかいない屋敷へ一人訪れるなど…ここが王家の避暑地だから見咎められないだけで、王都であれば大変な醜聞となる事、ミア様はどう思ってらっしゃるのかしら?」
マリアンヌが不思議そうに首を傾げた。
「ミア様は醜聞なんて何て事ないと思ってると思う。むしろ噂が立てばグレイ殿下が責任を取らざるを得なくなるでしょうから、外堀が埋まって喜びそうだわ」
苦々しくブリジットが言う。
さもありなん。とその場にいた全員…ディアナたちはもちろん、お菓子作りの補助のための二人の料理人や、控えていたディアナとマリアンヌの侍女、保養所のメイドたちも、もれなく全員が心の中で頷いていた。
コホン。と咳払いをして、皆の注目がディアナに集まると、ディアナは人差し指を立てる。
「とにかく、明日の目標はイライザ様の作ったお菓子を一つでもグレイ殿下に口にしていただく、ですからね。」
「え?」
イライザが目を見開いてディアナを見ると、ディアナはニッコリと笑った。
「そうですね。グレイ殿下にイライザ様の作ったクッキーをお勧めしますわ」
マリアンヌが言う。
「え?」
イライザがマリアンヌの方を見た。
「ミア様に阻止されないようにしないと」
ナタリアが言う。
「え?」
「私はミア様が市販のお菓子で殿下を謀ったのを男性陣の前で暴露したいです」
ブリジットがそう言い、イライザは目を見開いたまま、ナタリアからブリジットに視線を移した。
「それは証拠がないと難しいわね…それにまたミア様が言い逃れしたり泣いたりして、イライザ様を悪者にしようとしても困るし」
ディアナが頬に手を当てながら言うと、ブリジットは「ですね…」と肩を落とす。
「今でも一人で男性たちの所へ行くのは、イライザ様が主導して、私たちに仲間外れにされたから、くらいの事は言ってるでしょうしね」
ナタリアがうんざりした口調で言った。
「あの!ディアナ様が今日、お菓子を作ろうと言われたのは、私の作ったお菓子を殿下に食べていただくためだったんですか?」
イライザが当惑しながら言うと、皆が
「そうよ」
「そうです」
と、一斉に頷く。
「…何で…?」
「私はイライザ様がグレイ殿下を本当に慕われていたのを知っているわ。イライザ様は確かにミア様を虐めていて、それは咎められも仕方ない事だけれど、実はミア様の方がイライザ様を煽るような真似をしていたと知ると…グレイ殿下のお気持ちを変える事はできなくても『手作りお菓子を食べていただきたい』と言うささやかな願いくらい、叶っても良いと思うの」
ディアナが慈悲深い表現で言った。
「ディアナ様…」
「私は、イライザ様にグレイ殿下をキッパリと諦めて欲しいわ」
そうナタリアが言うと、皆が驚いてナタリアに注目する。
イライザも瞠目してナタリアを見ると、ナタリアは肩を竦めた。
「だって、グレイ殿下はミア様みたいなあざとい女性に惹かれるような人よ。第一王子がそんなに人を見る目がないなんて、この国の行く末が心配なくらいだわ。イライザ様はそんな方より、エドモンド殿下と結ばれた方が幸せだと思う。だからお菓子を食べていただくのが一種のけじめになってイライザ様の気持ちが切り替わると良いのに、と思っているの」
殿下がミアに惹かれるのは、乙女ゲームのシナリオ上、強制的なところもあると思うけど…でもそうね。確かに、もし明日お菓子を食べていただけたら、それをけじめにして、気持ちの整理をつけなきゃ。
そしてミアと対峙してディアナ様とアレックス様の赤い糸をもう一度繋ぐ方法があるのかないのかを確かめて、そしてそれからエドモンド殿下に向き合おう。
「以前、ディアナ様たちとお菓子を作った時は…私、実はミア様と張り合う気持ちがあったんですよね」
イライザはボウルを持って卵を撹拌しながら呟いた。
「張り合う?」
ナタリアがめん棒でクッキー生地を延ばしながら言う。
「そう言えば、お菓子作りをしたのはミア様がグレイ殿下に手作りマフィンを差し上げた後すぐだったわね」
小麦粉を振るいながらディアナが言うと、イライザは頷いた。
「私も手作りのお菓子を殿下に…って思ったんです。でもそもそも私の作った物など食べていただける訳ないんですけど」
苦笑いしながら言うイライザ。
「そのミア様の手作りマフィンも手作りクッキーも、実は市販の品だったんですよね?」
ナタリアが言うと、マリアンヌがバターを練る手を止める。
「殿下を騙すだなんて、信じられませんわ」
憤った口調のマリアンヌ。砂糖を秤で計りながらブリジットは
「本当、信じられない」
と吐き捨てるように言った。
「それで今ミア様はまた男性たちの屋敷に行かれているのですか?」
そうナタリアが言うと、ディアナは眉を寄せる。
「ええ。明日の準備で、今日は馬の様子を見たり馬車の点検をしたりするそうで、ミア様も一緒に行動しているらしいわ」
「異性しかいない屋敷へ一人訪れるなど…ここが王家の避暑地だから見咎められないだけで、王都であれば大変な醜聞となる事、ミア様はどう思ってらっしゃるのかしら?」
マリアンヌが不思議そうに首を傾げた。
「ミア様は醜聞なんて何て事ないと思ってると思う。むしろ噂が立てばグレイ殿下が責任を取らざるを得なくなるでしょうから、外堀が埋まって喜びそうだわ」
苦々しくブリジットが言う。
さもありなん。とその場にいた全員…ディアナたちはもちろん、お菓子作りの補助のための二人の料理人や、控えていたディアナとマリアンヌの侍女、保養所のメイドたちも、もれなく全員が心の中で頷いていた。
コホン。と咳払いをして、皆の注目がディアナに集まると、ディアナは人差し指を立てる。
「とにかく、明日の目標はイライザ様の作ったお菓子を一つでもグレイ殿下に口にしていただく、ですからね。」
「え?」
イライザが目を見開いてディアナを見ると、ディアナはニッコリと笑った。
「そうですね。グレイ殿下にイライザ様の作ったクッキーをお勧めしますわ」
マリアンヌが言う。
「え?」
イライザがマリアンヌの方を見た。
「ミア様に阻止されないようにしないと」
ナタリアが言う。
「え?」
「私はミア様が市販のお菓子で殿下を謀ったのを男性陣の前で暴露したいです」
ブリジットがそう言い、イライザは目を見開いたまま、ナタリアからブリジットに視線を移した。
「それは証拠がないと難しいわね…それにまたミア様が言い逃れしたり泣いたりして、イライザ様を悪者にしようとしても困るし」
ディアナが頬に手を当てながら言うと、ブリジットは「ですね…」と肩を落とす。
「今でも一人で男性たちの所へ行くのは、イライザ様が主導して、私たちに仲間外れにされたから、くらいの事は言ってるでしょうしね」
ナタリアがうんざりした口調で言った。
「あの!ディアナ様が今日、お菓子を作ろうと言われたのは、私の作ったお菓子を殿下に食べていただくためだったんですか?」
イライザが当惑しながら言うと、皆が
「そうよ」
「そうです」
と、一斉に頷く。
「…何で…?」
「私はイライザ様がグレイ殿下を本当に慕われていたのを知っているわ。イライザ様は確かにミア様を虐めていて、それは咎められも仕方ない事だけれど、実はミア様の方がイライザ様を煽るような真似をしていたと知ると…グレイ殿下のお気持ちを変える事はできなくても『手作りお菓子を食べていただきたい』と言うささやかな願いくらい、叶っても良いと思うの」
ディアナが慈悲深い表現で言った。
「ディアナ様…」
「私は、イライザ様にグレイ殿下をキッパリと諦めて欲しいわ」
そうナタリアが言うと、皆が驚いてナタリアに注目する。
イライザも瞠目してナタリアを見ると、ナタリアは肩を竦めた。
「だって、グレイ殿下はミア様みたいなあざとい女性に惹かれるような人よ。第一王子がそんなに人を見る目がないなんて、この国の行く末が心配なくらいだわ。イライザ様はそんな方より、エドモンド殿下と結ばれた方が幸せだと思う。だからお菓子を食べていただくのが一種のけじめになってイライザ様の気持ちが切り替わると良いのに、と思っているの」
殿下がミアに惹かれるのは、乙女ゲームのシナリオ上、強制的なところもあると思うけど…でもそうね。確かに、もし明日お菓子を食べていただけたら、それをけじめにして、気持ちの整理をつけなきゃ。
そしてミアと対峙してディアナ様とアレックス様の赤い糸をもう一度繋ぐ方法があるのかないのかを確かめて、そしてそれからエドモンド殿下に向き合おう。
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