悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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「…ねえミアは今赤い糸見えないのよね?」
 イライザは絨毯の床に突っ伏したミアに問いかけた。
「とりあえずグレイ殿下とエドモンド殿下とイライザのは見えない。けど他の人には会ってないから全部見えないのかはわかんない」
 突っ伏したままでミアが答える。
「そっか…私も、自分とグレイ殿下とエドモンド殿下、あとディアナ様のは見えないの。でもブリジットのは見える」
「…切った糸だけ見えないって事?」
「そうなのかも。じゃあ、見えないだけで繋がってるのか、繋がってないから見えないのか、わからないか…」
 イライザがため息まじりに言うと、ミアが起き上がった。
「本当の処はわかんないけど、私は赤い糸、繋がってない気がする」
「何で?」
「赤い糸の繋がる相手がいないロイ殿下みたいな場合でも、私には手首から三十センチくらいの糸は見えた訳。でも今は手首に赤い糸が巻いてるのすら見えないし、後は、グレイ殿下やエドモンド殿下の態度?」
「態度…」
「グレイ殿下が私の事を好意的に見たり、何かから庇ったりってのがなくなったわ。エドモンド殿下は…多分だけどイライザ以外に好きなひとがいる…できたと思う」
「え?そうなの?」
 そう言えば、目が覚めてからエドモンド殿下から「グレイと同じ時間だけ俺を見て」とか、そう言う類の事言われてないかも。それにグレイ殿下が毎日私の所にお見えになる事に関してもそんなに気にしてなかったような気もする…あ、じゃあ夏季休暇明けに「話したい事」があるって、もしかしてこの事?

「…イライザ、意外と鈍いタイプ?」
 ミアが上目遣いでジトっとイライザを見る。
「そうなのかな?…前世でも恋愛した事ないって言うか、好きな人とかできた事ないからわかんないや」
 首を傾げるイライザに、ミアが驚いた声を上げた。
「え?じゃあグレイ殿下が初恋なの?」
「は?…つこい?…うん、まあそう、だけど、ミアは?」
「地味でコミュ障なJKにカレシなんかいる訳ないじゃん。美愛は『赤い糸の伝説』のグレイが推しだったの!」
 唇を尖らせてミアが言う。
「二次元ガチ恋勢…」
「悪かったわね!」

「失礼致します」
 二人がそんな遣り取りとしていると、扉の外に居た騎士が部屋に入って来た。
「あ、ちょうど良いわ!騎士様、イライザの顔を触ってみてよ」
 ミアが騎士に向かって言うと、イライザと騎士は同時に
「「は?」」
 と声を上げる。
「それと、私の手も」
 ミアが鉄柵の間から手を差し出した。

「?…いえ、それより面会人が…」
「いいから。ちょっと触るだけよ。ほら、その手甲を外して」
 ミアは騎士の甲冑の手袋の部分を触る。
「やめてください」
 騎士が手を引こうとするが、ミアは騎士の手甲の指をぎゅっと握り締めて離さない。
「ちょっと、ミア」
 イライザが咎めるように言うと、ミアは騎士の手甲を握ったままイライザに小声で言った。
「触るだけなんだからいいじゃない。だって、この人の赤い糸が見えるようになるのかどうか、イライザも興味ない?」
「それは…あるけど」

「ほら、ね?」
 ミアは強引に騎士の手から手甲を引き抜く。
「やめてください!」
 婦女子相手に手荒な事をできず、慌てる騎士の手にミアが触れる。
 それからその手を握るとイライザの顔へと押し当てた。

 イライザの身体がピンクの光に包まれる。
 そして、騎士の手首に赤いリボン状の糸が見えた。
「あ…見えた…」
 イライザが呟いた、その時。

 開け放たれている部屋の扉から飛び込んで来た人影がイライザの視界を横切り、何かがキラリと光る。

「!!!」
 誰かの言葉にならない声が聞こえ、騎士がイライザの肩を押した。
「きゃあ!」
 イライザは床に尻餅をつき、視界が甲冑の銀色で遮られる。

 甲冑の擦れるガチャガチャとした金属音が止まり、イライザの視界が開けるとーーー

 ーーーそこに、鉄格子の向こうで胸にナイフが刺さったまま仰向けに倒れたミアと、騎士に両手を後手に掴まれ、頭を床に押し付けられているエレノーラの姿が見えた。
 






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