62 / 79
61
しおりを挟む
61
「ディアナ?」
グレイの執務室に入って来たアレックスは、ソファに座っているディアナに気付き、声を上げた。
「あの…エレノーラ様に会いに来たのですけど…」
ディアナが言い辛そうに言う。
「ああ…」
アレックスは納得したように頷いた。
「アレックス、王都に戻ってからディアナ嬢に連絡していないそうだが、何故だ?」
執務机に付いていたグレイが立ち上がりながら言う。
グレイは、イライザとディアナが並んで座っているソファの向かい側にアレックスに座るよう示し、自分もアレックスの隣に座った。
「何故と問われる程の理由はないんだが…王太子殿下の側近に付いて仕事を習っている間は休みもないし、むしろ連絡する理由がなかったと言うか」
アレックスがバツが悪そうに言う。
「だからと言って婚約者を放置はないだろう」
グレイが言うと、アレックスは肩を竦めた。
「仕事を習うのもあと一週間だからそろそろ連絡するつもりでいたんだ」
「本当ですか?」
ディアナがアレックスの方へ少し身を乗り出して言う。
「本当、とは?」
首を傾げてアレックスが言うと、ディアナはアレックスをじっと見た。
「連絡いただけなかったので、もしかして、私との婚約を解消したいとお考えなのかと思いました」
アレックスはその言葉に目を見開いた。
「まさか。婚約解消など考えた事もない」
「…それは、アンカーソン公爵を継げるから?」
上目遣いでアレックスを見つめるディアナ。
アレックスはますます目を見開いて、ディアナを見る。
…何だか空気が不穏だわ。
アレックスとディアナの間に火花が散った気がして、イライザは内心狼狽えた。
「そんな事を言い出すのは、ディアナの方が婚約解消したいからではないのか?」
アレックスが眉を顰めて言うと、今度はディアナが目を見開く。
「まさか」
「…好きでもない男と結婚させられるのは嫌な物なんだろう?」
「え?」
「エレノーラ嬢のように」
「……」
ディアナが黙ってアレックスを見つめると、アレックスはディアナから視線を逸らした。
「…アレックス様、エレノーラ様がこのような事件を起こされた事に関してアレックス様が気に病む事はないのですよ?」
ディアナがアレックスを見ながら言う。
え?
何でエレノーラ様の事件でアレックス様が気に病むの?
エレノーラ様がアレックス様を好きだったから、ミアが勝手に取引条件にしただけなのに。
「…それはわかっているんだ。ただ…」
言い淀むアレックス。
「はい」
ディアナが真剣な表情で頷くと、アレックスは俯いて言いにくそうに言った。
「意に沿わぬ相手との縁が犯罪を犯す程の嫌悪となるのかと…」
「まあ!」
吃驚したようにディアナが声を上げる。
アレックスが思わず顔を上げ、ディアナと目が合い、ディアナはニッコリと笑った。
「私はアレックス様以外の方と結婚したいとは全く思っていませんわ」
「……」
艶やかな笑顔に、アレックスは思わず見惚れる。
「お互い、心境の変化があった事に間違いはありません。それでも私はアレックス様が良いのです」
「本当に?」
「はい」
アレックスが問うと、ディアナは笑顔で頷いた。
「あ!」
イライザが声を出し、急いで両手で自分の口を覆う。
「どうした?」
グレイがイライザを見ると、イライザは口を押さえたままで何度か頷いた。
「イライザ様?」
ディアナとアレックスが不思議そうにイライザを見る。
グレイは、イライザがアレックスのために準備しテーブルの上に置いていたクッキーの入った袋を手に取ると、アレックスに差し出した。
「アレックス、ディアナ嬢と庭を散歩でもしてしっかりと話をして来ると良い。父上には今日はこのまま退勤すると伝えておく」
ーーーーー
「変な声出してすみませんでした」
ディアナとアレックスが出て行った執務室でイライザが言う。両手で口を押さえたままだ。
「見えたのか?」
グレイが言うと、イライザはコクコクと頷いた。
「微かに…ですけど…」
確かに、ディアナ様とアレックス様の手首に、薄っすらと、赤い糸が繋がってるのが見えた。
やっぱりディアナ様とアレックス様は通じ合ってるんだ。
ディアナ様とアレックス様はきっとまた元のように想い合う二人に戻れるわ。ううん、元のようには戻れなかったとしても、新しい二人の関係をお互いで築いていけるのよ。
「良かった…」
そう呟くイライザ。
「イライザ、自分の赤い糸は…やはり見えないのか?」
グレイは神妙な表情で言う。
「私の?」
自分の両手首を顔の前まで上げてじっと見つめ、眉を顰めて首を横に振った。
「まったく」
「…俺の……」
そう言い掛けて、グレイは俯いてため息を吐く。
「?」
「いや、何でもない」
グレイはそう言うと、顔を上げて髪を掻き上げた。
「ディアナ?」
グレイの執務室に入って来たアレックスは、ソファに座っているディアナに気付き、声を上げた。
「あの…エレノーラ様に会いに来たのですけど…」
ディアナが言い辛そうに言う。
「ああ…」
アレックスは納得したように頷いた。
「アレックス、王都に戻ってからディアナ嬢に連絡していないそうだが、何故だ?」
執務机に付いていたグレイが立ち上がりながら言う。
グレイは、イライザとディアナが並んで座っているソファの向かい側にアレックスに座るよう示し、自分もアレックスの隣に座った。
「何故と問われる程の理由はないんだが…王太子殿下の側近に付いて仕事を習っている間は休みもないし、むしろ連絡する理由がなかったと言うか」
アレックスがバツが悪そうに言う。
「だからと言って婚約者を放置はないだろう」
グレイが言うと、アレックスは肩を竦めた。
「仕事を習うのもあと一週間だからそろそろ連絡するつもりでいたんだ」
「本当ですか?」
ディアナがアレックスの方へ少し身を乗り出して言う。
「本当、とは?」
首を傾げてアレックスが言うと、ディアナはアレックスをじっと見た。
「連絡いただけなかったので、もしかして、私との婚約を解消したいとお考えなのかと思いました」
アレックスはその言葉に目を見開いた。
「まさか。婚約解消など考えた事もない」
「…それは、アンカーソン公爵を継げるから?」
上目遣いでアレックスを見つめるディアナ。
アレックスはますます目を見開いて、ディアナを見る。
…何だか空気が不穏だわ。
アレックスとディアナの間に火花が散った気がして、イライザは内心狼狽えた。
「そんな事を言い出すのは、ディアナの方が婚約解消したいからではないのか?」
アレックスが眉を顰めて言うと、今度はディアナが目を見開く。
「まさか」
「…好きでもない男と結婚させられるのは嫌な物なんだろう?」
「え?」
「エレノーラ嬢のように」
「……」
ディアナが黙ってアレックスを見つめると、アレックスはディアナから視線を逸らした。
「…アレックス様、エレノーラ様がこのような事件を起こされた事に関してアレックス様が気に病む事はないのですよ?」
ディアナがアレックスを見ながら言う。
え?
何でエレノーラ様の事件でアレックス様が気に病むの?
エレノーラ様がアレックス様を好きだったから、ミアが勝手に取引条件にしただけなのに。
「…それはわかっているんだ。ただ…」
言い淀むアレックス。
「はい」
ディアナが真剣な表情で頷くと、アレックスは俯いて言いにくそうに言った。
「意に沿わぬ相手との縁が犯罪を犯す程の嫌悪となるのかと…」
「まあ!」
吃驚したようにディアナが声を上げる。
アレックスが思わず顔を上げ、ディアナと目が合い、ディアナはニッコリと笑った。
「私はアレックス様以外の方と結婚したいとは全く思っていませんわ」
「……」
艶やかな笑顔に、アレックスは思わず見惚れる。
「お互い、心境の変化があった事に間違いはありません。それでも私はアレックス様が良いのです」
「本当に?」
「はい」
アレックスが問うと、ディアナは笑顔で頷いた。
「あ!」
イライザが声を出し、急いで両手で自分の口を覆う。
「どうした?」
グレイがイライザを見ると、イライザは口を押さえたままで何度か頷いた。
「イライザ様?」
ディアナとアレックスが不思議そうにイライザを見る。
グレイは、イライザがアレックスのために準備しテーブルの上に置いていたクッキーの入った袋を手に取ると、アレックスに差し出した。
「アレックス、ディアナ嬢と庭を散歩でもしてしっかりと話をして来ると良い。父上には今日はこのまま退勤すると伝えておく」
ーーーーー
「変な声出してすみませんでした」
ディアナとアレックスが出て行った執務室でイライザが言う。両手で口を押さえたままだ。
「見えたのか?」
グレイが言うと、イライザはコクコクと頷いた。
「微かに…ですけど…」
確かに、ディアナ様とアレックス様の手首に、薄っすらと、赤い糸が繋がってるのが見えた。
やっぱりディアナ様とアレックス様は通じ合ってるんだ。
ディアナ様とアレックス様はきっとまた元のように想い合う二人に戻れるわ。ううん、元のようには戻れなかったとしても、新しい二人の関係をお互いで築いていけるのよ。
「良かった…」
そう呟くイライザ。
「イライザ、自分の赤い糸は…やはり見えないのか?」
グレイは神妙な表情で言う。
「私の?」
自分の両手首を顔の前まで上げてじっと見つめ、眉を顰めて首を横に振った。
「まったく」
「…俺の……」
そう言い掛けて、グレイは俯いてため息を吐く。
「?」
「いや、何でもない」
グレイはそう言うと、顔を上げて髪を掻き上げた。
23
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる