悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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「ディアナ?」
 グレイの執務室に入って来たアレックスは、ソファに座っているディアナに気付き、声を上げた。
「あの…エレノーラ様に会いに来たのですけど…」
 ディアナが言い辛そうに言う。
「ああ…」
 アレックスは納得したように頷いた。
「アレックス、王都に戻ってからディアナ嬢に連絡していないそうだが、何故だ?」
 執務机に付いていたグレイが立ち上がりながら言う。
 グレイは、イライザとディアナが並んで座っているソファの向かい側にアレックスに座るよう示し、自分もアレックスの隣に座った。

「何故と問われる程の理由はないんだが…王太子殿下の側近に付いて仕事を習っている間は休みもないし、むしろ連絡する理由がなかったと言うか」
 アレックスがバツが悪そうに言う。
「だからと言って婚約者を放置はないだろう」
 グレイが言うと、アレックスは肩を竦めた。
「仕事を習うのもあと一週間だからそろそろ連絡するつもりでいたんだ」
「本当ですか?」
 ディアナがアレックスの方へ少し身を乗り出して言う。
「本当、とは?」
 首を傾げてアレックスが言うと、ディアナはアレックスをじっと見た。
「連絡いただけなかったので、もしかして、私との婚約を解消したいとお考えなのかと思いました」
 アレックスはその言葉に目を見開いた。
「まさか。婚約解消など考えた事もない」
「…それは、アンカーソン公爵を継げるから?」
 上目遣いでアレックスを見つめるディアナ。
 アレックスはますます目を見開いて、ディアナを見る。

 …何だか空気が不穏だわ。
 アレックスとディアナの間に火花が散った気がして、イライザは内心狼狽えた。
「そんな事を言い出すのは、ディアナの方が婚約解消したいからではないのか?」
 アレックスが眉を顰めて言うと、今度はディアナが目を見開く。
「まさか」
「…好きでもない男と結婚させられるのは嫌な物なんだろう?」
「え?」
「エレノーラ嬢のように」
「……」
 ディアナが黙ってアレックスを見つめると、アレックスはディアナから視線を逸らした。

「…アレックス様、エレノーラ様がこのような事件を起こされた事に関してアレックス様が気に病む事はないのですよ?」
 ディアナがアレックスを見ながら言う。
 え?
 何でエレノーラ様の事件でアレックス様が気に病むの?
 エレノーラ様がアレックス様を好きだったから、ミアが勝手に取引条件にしただけなのに。
「…それはわかっているんだ。ただ…」
 言い淀むアレックス。
「はい」
 ディアナが真剣な表情で頷くと、アレックスは俯いて言いにくそうに言った。
「意に沿わぬ相手との縁が犯罪を犯す程の嫌悪となるのかと…」

「まあ!」
 吃驚したようにディアナが声を上げる。
 アレックスが思わず顔を上げ、ディアナと目が合い、ディアナはニッコリと笑った。
「私はアレックス様以外の方と結婚したいとは全く思っていませんわ」
「……」
 艶やかな笑顔に、アレックスは思わず見惚れる。
「お互い、心境の変化があった事に間違いはありません。それでも私はアレックス様が良いのです」
「本当に?」
「はい」
 アレックスが問うと、ディアナは笑顔で頷いた。

「あ!」
 イライザが声を出し、急いで両手で自分の口を覆う。
「どうした?」
 グレイがイライザを見ると、イライザは口を押さえたままで何度か頷いた。
「イライザ様?」
 ディアナとアレックスが不思議そうにイライザを見る。
 グレイは、イライザがアレックスのために準備しテーブルの上に置いていたクッキーの入った袋を手に取ると、アレックスに差し出した。
「アレックス、ディアナ嬢と庭を散歩でもしてしっかりと話をして来ると良い。父上には今日はこのまま退勤すると伝えておく」

ーーーーー

「変な声出してすみませんでした」
 ディアナとアレックスが出て行った執務室でイライザが言う。両手で口を押さえたままだ。
のか?」
 グレイが言うと、イライザはコクコクと頷いた。
「微かに…ですけど…」
 確かに、ディアナ様とアレックス様の手首に、薄っすらと、赤い糸が繋がってるのが見えた。
 やっぱりディアナ様とアレックス様は通じ合ってるんだ。
 ディアナ様とアレックス様はきっとまた元のように想い合う二人に戻れるわ。ううん、元のようには戻れなかったとしても、新しい二人の関係をお互いで築いていけるのよ。
「良かった…」
 そう呟くイライザ。

「イライザ、自分の赤い糸は…やはり見えないのか?」
 グレイは神妙な表情で言う。
「私の?」
 自分の両手首を顔の前まで上げてじっと見つめ、眉を顰めて首を横に振った。
「まったく」

「…俺の……」
 そう言い掛けて、グレイは俯いてため息を吐く。
「?」
「いや、何でもない」
 グレイはそう言うと、顔を上げて髪を掻き上げた。



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