悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 イライザが屋敷に戻ると、待ちかねたようにブリジットが廊下を駆けて来た。
「どうしたの?」
「姉様、今日…」
 暗い表情のブリジットがイライザの顔を見て、ふと気付く。
「…何か…顔、赤くない?」
「え?」
「今日はミアの目が覚めたから会いに行ったのよね?何か言われたの?」
「え?ううん。ミアは何も」
 イライザはブンブンと首を振った。
「ミア?」
 訝し気にブリジットがイライザを見る。
「ミアって事は、他の誰かに何か言われたのね?」
「え…っと」
 言われた。
 確かに言われた。
 警守の騎士様から「イライザ様が王子妃になられた際には護衛騎士として全力でお護り致す所属です」って。
 それから、グレイ殿下から「俺は明確にイライザが好きだと感じている」って……

「そっ、それよりさっき言いかけてたのは?今日どうしたの?」
 少し赤くなった頬を押さえながらイライザが言うと、ブリジットはハッとして、そして床に視線を落とした。
「ブリジット?」
「…今日サクソン公爵家の遣いの方がお見えになったの」
 低い声で言うブリジット。
 心なし顔色が悪く見える。
「サクソン公爵家って…」
 聞き覚えのある名前にイライザは少し考えたが、直ぐに思い至った。
「あ!お兄様の、本当のお父様の家!」
「そう」
 ブリジットが深刻な表情で頷く。
「え?その家の遣いの方が?」
 お兄様の実のお父様とお母様が亡くなった時、サクソン公爵家の当主であるお兄様の実のお祖父様は「息子は勘当した。その子供など我が家には何の関係もない」って言い放ったって聞いたけど。今更、何しに?
 …何だか嫌な予感。
「お兄様のお父様のお兄様の長男…つまりお兄様の従兄弟が、亡くなられたんですって。それで、お兄様をサクソン公爵家に戻せって…」
「はあ!?」

ーーーーー

 サクソン公爵には息子が二人いた。
 アドルフの父である公爵の次男が、駆け落ちした商家の娘と共に事故死した当時、後に公爵家を継いだ長男は既に結婚して息子を一人もうけていた。
 その一人息子が不慮の事故で亡くなってしまったのだと言う。

「それで『何の関係もない』って切り捨てたお兄様を公爵家へ戻したい?何て勝手なの!」
 アドルフの部屋のソファでイライザが憤って言うと、アドルフは苦笑いを浮かべた。
「おまけにその使者『血の繋がらない家の後を取るより、血の繋がった本当の家の当主になれる方がアドルフ様ににとっても良いでしょう。しかも当家は名門サクソン公爵家ですし』ですって!何なの?サクソン公爵家ってご隠居様から使用人まで高飛車な人しかいないの!?」
 イライザの隣に座るブリジットも怒りながら言うと、アドルフは困ったように眉を寄せる。
「それでお兄様…どうなさるんですか?」
「……」
 イライザの問い掛けに、ブリジットは黙ってアドルフを見た。

「…そうだな」
 アドルフは膝の上で手を組む。
「まさか、戻るつもりですか?」
 イライザがそう言うと、ブリジットは俯いて自分の手をぎゅっと握った。
「いや。戻るつもりはないし、戻りたい訳ではない。ただ…」
「ただ?」
「夜会で、サクソン卿と少し話した事があって…前当主の祖父ではなく、現当主の伯父と」
 そうアドルフが言うと、ブリジットが顔を上げる。
「そうなんですか?」
「ああ。話したと言っても二言三言、俺は相槌を打っただけだが。サクソン卿は『父が済まなかった』『君に何かあれば力になる』と。そして『君は弟に良く似ている』と…」
 アドルフは片手で目元を覆う。
「…お兄様」
 ブリジットも目を潤ませてアドルフを見つめた。
「今のサクソン公爵…お兄様の伯父様は、良い方なんですね…」
 イライザが言うと、アドルフは無言で頷く。
 お兄様…もしかして一人息子を亡くして気落ちしているだろう伯父様の力になりたいと思われているのかも。
 でもお兄様はきっと赤の他人の子である自分を実の子供と分け隔てなく育ててくれた恩を返すため、フォスター家を継ぐつもりで…

 イライザはソファから立ち上がった。
「イライザ?」
「姉様?」
 アドルフとブリジットがイライザを見上げる。
 私の兄と妹。二人は好き同士なんだもん。何としても結ばれてもらわなきゃ!
「もし、お兄様がサクソン公爵家に戻るなら、ブリジットはサクソン公爵家に嫁ぐ。そうなったら、私が婿を取ってフォスター侯爵家を継ぐわ」

「は?」
「え?」
 アドルフとブリジットが面食らった表情でイライザを見た。



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