悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 エドモンドは素早くソファから立ち上がりながら、首に巻き付いたアンリの腕を解き、脇に手を入れると、アンリの身体を持ち上げて自分の方へと引く。
「きゃあ!」
 アンリはソファの背を越えて、座面へと倒れ込み…気が付くとソファの前にしゃがんだエドモンドと抱き合う形になっていた。
「で、殿下!?」
 アンリが慌てて少し顔を離す。
 エドモンドは眉を顰めて口角を上げて…泣き笑いの表情かおでアンリを見ていた。

「…ご無礼を…お許しください」
 アンリは震える両手でエドモンドの頬に触れる。
 エドモンドは片方の手で頬に触れたアンリの手を握ると、自分の頬に押し付けた。
「あの…わ…私…怖くて。王子様を好きになるなんて…怖くて…」
「うん。わかるよ」
「…でも…エドモンド殿下が他の令嬢と結婚されるんだと思うと…それも…嫌で……」
「うん。そう思ってくれるなら、俺は嬉しい」
 アンリの掌へ頬擦りをする。

「アンリは俺の事、少しは好きなんだと思っていいかな?」
「…あの…少しではないです」
 アンリは小声で言うと、俯いた。
「ん?」
 上目遣いにエドモンドを見るアンリの頬が真っ赤に染まっている。
「か、かなり……好き…です」
「……!」
 エドモンドは目を丸くすると、感極まったようにアンリを抱きしめた。
「ひゃあ!」
 小さく悲鳴を上げるアンリ。
「嬉しい。アンリ、好きだ」
「……私も」
 聞こえるか聞こえないかの声で言うアンリをエドモンドは強く抱きしめた。

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「それで、エドモンド殿下が『少しづつ怖さを失くして行こう』と仰いまして…」
 イライザの髪を梳きながらアンリが言うと、イライザはうんうんと頷く。
「ええ。それで?」
「『兎にも角にも、慣れる事だ』と。『次に来た時には向かいに座ってお茶を飲んで欲しい』と…緊張するなら無理に喋ろうとしなくても良いと仰っていただきました」
 少し頬を赤くして言うアンリを見て、嬉しそうで良かったとイライザは思った。
「そうね。少しづつ慣れていくしかないわ」

「でも、本当にいいのでしょうか?私なんかが…」
「アンリ、そんな言い方しては駄目。エドモンド殿下に失礼よ」
 イライザは鏡越しにアンリを見る。
「…そうですね。気を付けます」
 しゅんとした顔をするアンリ。
「アンリの『怖い』って気持ちはわかるわ。だって『王子様』だもん。自分が雲の上の人と恋愛するだなんて想像もしてないものね」
 イライザがそう言うと、アンリは勢い良く頷いた。
「そう。そうなんです」
「でも好きになっちゃったんだから仕方ないわ。エドモンド殿下が地上に降りて来ようとしてくださってるんだから、アンリも塔の上まで頑張って登って出迎えなきゃ」
「な…成程」
 聳え立つ塔を想像するようにアンリは視線を上にあげた。

「イライザお嬢様が眠られている間には、あまり王子殿下だと意識もせずに話していたんです。それなのに恋愛とか結婚とか意識すると…途端に怖くなるなんて…不思議ですよね」
 アンリは上を見上げたままで言う。
「アンリの場合は色々付随する物事が多いんだから、多少怖気付いたとしても仕方ないし、何の不思議もないわ」
「そう…ですかね?」
「そうよ。だって相手は隣国の王子で、その王子が他国の貴族の家を継ぐと言ってて、自分も侯爵家の養女…つまり私とブリジットの姉になるのよ?それでいずれは侯爵家か公爵家の女主人だもの。怖気付かない方がおかしいわ」
 イライザが人差し指を立てて言うと、アンリは自分の両腕を抱いて身震いした。
「…改めてそう並べられると余計に怖くなって来ました」
「あ。脅すつもりじゃないのよ」
「はい。もちろん。私にとっては世界が一変するに等しいので、怖いと思うのが当たり前って事ですよね?でも…イライザお嬢様と姉妹になれるのは嬉しいです」
 アンリは少し微笑みながら言う。
「本当?」
 イライザがアンリの方に振り向くと、アンリはニコリと笑った。
「僭越ながら、これまでも私はイライザお嬢様に、姉のような気持ちでお仕えして来ました」
「そうね」
「それが、義理ではありますが名実共にイライザお嬢様が『私の妹』ですよ?誰憚る事なく『私の義妹、かわいい!』って言えるんですよ!?」
 アンリが握り拳をぐっと握るのを、イライザはポカンとして眺める。
「かわ…いい?」
「そうです!ミア様が現れてから…悪役令嬢とやらになっていたイライザお嬢様は…まあでしたけど、基本的にお嬢様は一途でかわいいと私はずっと思っていました」
 って…まあだけども…
「グレイ殿下にお嬢様のかわいらしさに気付いていただけないのが本当に歯痒くて。でも今なら殿下とイライザお嬢様のかわいさについて語り合えそうな気がします」
 真顔で言うアンリ。
「かかか語り合うならエドモンド殿下との将来にしてちょうだい!」
 イライザは頬を真っ赤にして思わず叫んだ。



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