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ピチョン。
雫が落ちてカップの中に小さな王冠が出来る。
「…ごめんなさい」
女性は小さく呟いた。
-----
暗くなった学園の校舎の屋上にレイラとミシェルは足を踏み出す。
「暗いからよく見えないけど、結構人は多いわね」
所々に明かりが灯され、人影が沢山見える。レイラはきょろきょろと周りを見回した。
「カイル殿下とサイラス殿下は東校舎の屋上らしいわ。西校舎には来ない予定だそうよ」
ミシェルが言う。
「そう。良かった。この辺りなら人が少なくて良いかしら」
「そうね」
屋上の隅の人が少ない場所に敷物を敷いて座り、持って来た毛布を肩から掛けた。
「ミシェル、寒くない?空気が澄んでるから星は綺麗だけど」
「ううん。でもじっと座ってたら冷えるかも」
ミシェルも毛布を掛ける。
「寒くなったらあそこで暖かい飲み物もらいましょ」
レイラは屋上の隅で生徒会役員とサポートメンバーが暖かいスープやコーヒーなどを配っているテントを指差す。
「イアンがあそこにいるから、その内取りに行かなくても持って来てくれると思うわ」
「でも私たちがここにいるの、イアンは知らないでしょ?」
「使用人の技能か技量か分からないけど、割とイアンにはどこに居ても見つけられちゃうから」
「そうなの?そんな技能があるの!?」
レイラは上を見上げながら言う。
「横になった方が見やすいかしら」
夜空に無数の星が瞬いていて、とても綺麗だ。
今日は時間が来たら灯りを落とし、生徒会役員や星好きの有志が手分けをして星座の解説や神話を紹介したりするのだそうだ。
「見やすいけど、手足が冷えそうね」
「ふふ。そうね」
「ミシェル様、レイラ様」
イアンが両手にスープが注がれたカップを持ってやって来た。
「イアンは本当にミシェルがどこに居ても見つけられるのね」
「何ですか?それ」
一つのカップをレイラに手渡しながらイアンが首を傾げる。
「使用人の技能の話よ。ありがとうイアン」
もう一つのカップを受け取りながらミシェルが言う。
「…はい」
イアンは何か言いた気にミシェルを見るが、ミシェルはイアンの方を見ず、カップを両手で持って息を吹きかけていた。
イアンは無言でミシェルの斜め後ろに座った。
「何も敷かずに…寒くないの?」
「レイラ様。ありがとうございます。さっきまでスープを温めている火の近くに居たので、今は暑いくらいです」
イアンはレイラに軽く頭を下げながら言った。
音楽が流れ始め、灯りが消される。
少し離れた所で男子生徒が星座の解説を始めた。
寒いけど、綺麗…
星空に吸い込まれそう。
久しぶりに心が穏やかな気がするな…
「眠くなっちゃうわね。でもここで眠ったらさすがに風邪を引くわ」
くすくす笑いながらミシェルが言う。
「そうね」
ああでも眠ってしまいそう。
穏やかな空気の中、突如遠くの一角で騒めきが起きた。
「何かしら?」
「誰かが騒いでるの?」
レイラとミシェルは騒めきの方へ視線をやる。
「見て来ます」
イアンが立ち上がった。
「レイラ様!どこですか!?」
遠くから声が聞こえる。
「え?私?」
「レイラさまあ!」
アリスの声だ。
「何?」
「アリス様?」
レイラとミシェルは顔を見合わせる。
暗い中で声が近付いて来る。
アリスらしき影が見える。後に数人着いて来ている。
「アリス、待て!」
カイルの声。
「アリス!あ、危ない!」
ライアンの声。
レイラたちより十メートルくらい向こうで、ドサッと音がして近付いて来る影が見えなくなる。暗いので誰かにぶつかって転んだようだ。
「痛っ!」
「アリス、大丈夫か?」
カイルらしき影とライアンらしき影がアリスを助け起こしているようだ。
「何なのよ…」
ここでまたカイルとアリスの姿を見せられるの?折角穏やかな気分だったのに…
レイラは座ったまま呟いて、少し後退る。
「ミシェル、レイラ」
後ろから男性の声。
「サイラス殿下…」
サイラスがミシェルとレイラの後ろに立っていた。
「まだアリス嬢は二人がここにいるのに気付いてない。そこの階段へゆっくりと移動しよう」
しゃがみ込むと二人の腕を取り、小声で言う。
ミシェルが口元を押さえて呆然とサイラスを見ている。
「サイラス殿下、アリス様はどうされたんですか?」
レイラも小声で言うと
「よく分からないが…ライアンが恋人から渡された手紙を覗き見てから、とても興奮しているんだ」
ライアン兄様?恋人ってキャロライン様から?
三人で、姿勢を低くしたまま、壁際に寄る。壁際ならデコボコとした小壁体の隙間に気を付ければ影が動いても目立たないだろう。
「…サイラス殿下、レイラを助けに…?」
ミシェルが小さな声で呟く。
「何だ?ミシェル」
サイラスが小声で言うと、ミシェルは小さくかぶりを振る。
サイラスが階段の方へ向き直す。と、ミシェルは突然立ち上がり、レイラの腕を掴み、身体ごと強く押した。
「きゃあ!」
ミシェルはレイラの腕を掴んだまま、小壁体と小壁体の隙間へと倒れ込んだ。
ピチョン。
雫が落ちてカップの中に小さな王冠が出来る。
「…ごめんなさい」
女性は小さく呟いた。
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暗くなった学園の校舎の屋上にレイラとミシェルは足を踏み出す。
「暗いからよく見えないけど、結構人は多いわね」
所々に明かりが灯され、人影が沢山見える。レイラはきょろきょろと周りを見回した。
「カイル殿下とサイラス殿下は東校舎の屋上らしいわ。西校舎には来ない予定だそうよ」
ミシェルが言う。
「そう。良かった。この辺りなら人が少なくて良いかしら」
「そうね」
屋上の隅の人が少ない場所に敷物を敷いて座り、持って来た毛布を肩から掛けた。
「ミシェル、寒くない?空気が澄んでるから星は綺麗だけど」
「ううん。でもじっと座ってたら冷えるかも」
ミシェルも毛布を掛ける。
「寒くなったらあそこで暖かい飲み物もらいましょ」
レイラは屋上の隅で生徒会役員とサポートメンバーが暖かいスープやコーヒーなどを配っているテントを指差す。
「イアンがあそこにいるから、その内取りに行かなくても持って来てくれると思うわ」
「でも私たちがここにいるの、イアンは知らないでしょ?」
「使用人の技能か技量か分からないけど、割とイアンにはどこに居ても見つけられちゃうから」
「そうなの?そんな技能があるの!?」
レイラは上を見上げながら言う。
「横になった方が見やすいかしら」
夜空に無数の星が瞬いていて、とても綺麗だ。
今日は時間が来たら灯りを落とし、生徒会役員や星好きの有志が手分けをして星座の解説や神話を紹介したりするのだそうだ。
「見やすいけど、手足が冷えそうね」
「ふふ。そうね」
「ミシェル様、レイラ様」
イアンが両手にスープが注がれたカップを持ってやって来た。
「イアンは本当にミシェルがどこに居ても見つけられるのね」
「何ですか?それ」
一つのカップをレイラに手渡しながらイアンが首を傾げる。
「使用人の技能の話よ。ありがとうイアン」
もう一つのカップを受け取りながらミシェルが言う。
「…はい」
イアンは何か言いた気にミシェルを見るが、ミシェルはイアンの方を見ず、カップを両手で持って息を吹きかけていた。
イアンは無言でミシェルの斜め後ろに座った。
「何も敷かずに…寒くないの?」
「レイラ様。ありがとうございます。さっきまでスープを温めている火の近くに居たので、今は暑いくらいです」
イアンはレイラに軽く頭を下げながら言った。
音楽が流れ始め、灯りが消される。
少し離れた所で男子生徒が星座の解説を始めた。
寒いけど、綺麗…
星空に吸い込まれそう。
久しぶりに心が穏やかな気がするな…
「眠くなっちゃうわね。でもここで眠ったらさすがに風邪を引くわ」
くすくす笑いながらミシェルが言う。
「そうね」
ああでも眠ってしまいそう。
穏やかな空気の中、突如遠くの一角で騒めきが起きた。
「何かしら?」
「誰かが騒いでるの?」
レイラとミシェルは騒めきの方へ視線をやる。
「見て来ます」
イアンが立ち上がった。
「レイラ様!どこですか!?」
遠くから声が聞こえる。
「え?私?」
「レイラさまあ!」
アリスの声だ。
「何?」
「アリス様?」
レイラとミシェルは顔を見合わせる。
暗い中で声が近付いて来る。
アリスらしき影が見える。後に数人着いて来ている。
「アリス、待て!」
カイルの声。
「アリス!あ、危ない!」
ライアンの声。
レイラたちより十メートルくらい向こうで、ドサッと音がして近付いて来る影が見えなくなる。暗いので誰かにぶつかって転んだようだ。
「痛っ!」
「アリス、大丈夫か?」
カイルらしき影とライアンらしき影がアリスを助け起こしているようだ。
「何なのよ…」
ここでまたカイルとアリスの姿を見せられるの?折角穏やかな気分だったのに…
レイラは座ったまま呟いて、少し後退る。
「ミシェル、レイラ」
後ろから男性の声。
「サイラス殿下…」
サイラスがミシェルとレイラの後ろに立っていた。
「まだアリス嬢は二人がここにいるのに気付いてない。そこの階段へゆっくりと移動しよう」
しゃがみ込むと二人の腕を取り、小声で言う。
ミシェルが口元を押さえて呆然とサイラスを見ている。
「サイラス殿下、アリス様はどうされたんですか?」
レイラも小声で言うと
「よく分からないが…ライアンが恋人から渡された手紙を覗き見てから、とても興奮しているんだ」
ライアン兄様?恋人ってキャロライン様から?
三人で、姿勢を低くしたまま、壁際に寄る。壁際ならデコボコとした小壁体の隙間に気を付ければ影が動いても目立たないだろう。
「…サイラス殿下、レイラを助けに…?」
ミシェルが小さな声で呟く。
「何だ?ミシェル」
サイラスが小声で言うと、ミシェルは小さくかぶりを振る。
サイラスが階段の方へ向き直す。と、ミシェルは突然立ち上がり、レイラの腕を掴み、身体ごと強く押した。
「きゃあ!」
ミシェルはレイラの腕を掴んだまま、小壁体と小壁体の隙間へと倒れ込んだ。
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