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 起きてベッドに座れるようになったレイラと、いつものようにレイラに付き添うカイルの元へ、サイラス、ライアン、イアンとキャロラインがやって来た。
「レイラちゃん!起きられるようになったのね!良かったわ」
「キャロライン様ありがとうございます」
「顔のガーゼも取れたのね」
 顔の左側を大きく覆っていたガーゼは、今は左目の目尻から額に掛けての傷を覆う小さな物になっている。
「カイルは相変わらずレイラに付き添ってんのか」
 ライアンが言うと、カイルは「ああ」と頷く。
「ずっとじゃないわ。昼間だけよ。今は」
「朝食を摂ってすぐから夕食前までってのは『昼間だけ』とは言わないだろう?」
「あう」
 サイラスが面白そうに言う。レイラは少し赤くなって口をパクパクとさせた。
「カイル殿下、レイラちゃんに許してもらえたんですか?」
「いや、まだだ」
 キャロラインの問いにカイルはきっぱりと答える。
「俺だってそんなに直ぐに許されるとは思っていないし、レイラの不安も判る」
「不安?レイラちゃん」
 キャロラインがレイラを見る。レイラはこくんと頷いた。
「だって…卒業パーティーまでは何が起こるか…」
 ゲームの強制力はきっと卒業パーティーまでは続くだろう、とレイラとイアンは予想しているのだ。
「そうね。だから今日は色々な情報を共有するために集まってもらったのよ」

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 五人がレイラのベッドの周りを囲うように座る。レイラの右側の枕元にカイル、その隣にサイラス、足元にライアン、左側の枕元にキャロライン、その隣にイアンだ。
 キャロラインが話し出す。
「先ずは、この間サイラス殿下がイアンさんに確認してくださったのと、私がレイラちゃんに確認したように、サイラス殿下、イアンさん、レイラちゃんが『転生者』だと言うのは皆承知してるわよね?」
 全員が頷く。
「それでは、イアンさんとレイラちゃんが言うように、が前世で遊んでいた『乙女ゲーム』の世界だ、と言うのは?」
「…正直に言えば、画面に映る架空の人物を動かして?その登場人物と恋をするゲーム?って言うのが感覚的に理解できないんだが…」
 ライアンが言うと、カイルも頷く。
「私は、小説や絵本の主人公になって、相手役を自分が選べる、ような感じだと理解してるんだけど…レイラちゃん違うかしら?」
「そうですね。土台となる舞台と物語があって、主人公であるヒロインが攻略対象者の中から好みの相手役を選んで、その相手役の婚約者などに苛められたり邪魔されたりしながらも、その相手役と両思いになれるよう対応していくって感じ…よね?イアン」
 キャロラインに聞かれたレイラが考えながら言い、イアンに同意を求める。
「そんな感じですね」
 イアンも頷いた。
「何となく判る…ような気がする…ような」
 ライアンがぶつぶつと呟く。
「俺は前世でもパズルくらいしかゲームしていないからなあ。このゲームに関してはレイラとイアンの記憶に頼るしかない」
 サイラスが言った。
「レイラは…」
「え?」
 カイルがレイラを見ながら言う。
「ああ、いや、また後で」
「?」
「それで、今は主人公…ヒロインは相手役としてカイル殿下を選んだ状態。ここまでは皆共通した認識よね?」
 キャロラインの言葉に全員が頷いた。

「それで、ヒロインの気になる言動をライアンが聞き出して来てくれたんでしょう?」
「気になる言動ですか?」
 キャロラインが問い、イアンが言うと、ライアンは頷いた。
「先ずは天体観測会で、キャロラインからの手紙を見て、レイラにどうしても聞きたい事があると言っていた事」 
「私に?」
 聞きたい事があってあの時私を探してたんだ…
「ああ。それからこの前王宮に来た時、アリスは『私が選べば必ずその男性ひとと結ばれるって言ったのに』と言ったんだ。そうだったよな?カイル」
「ああ、確かにそう言っていた」

「アリス嬢はゲームの展開を知っているのか?」
 サイラスが問う。
 そうよね。「私が選べば」って言うのは「ヒロインが特定の攻略対象者のルートに入れば」っていう意味じゃないのかな?
 つまりアリスも転生者…?
 レイラがそう思ってイアンを見ると、イアンは小さく首を傾げた。
「いや、アリスが知っている訳じゃない。『言ったのに』という事は、誰かからそう言われたという事だ」
「誰がアリスにそう言ったんだ?」
 サイラスがそう聞くと、ライアンは人差し指を立てる。
「アリスの母親。しかも引き取られた男爵家の、義理の母親だ」


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