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冬期が始まり、腕も骨折しているので松葉杖はまだ使えないレイラは車椅子で学園に復帰した。
寮生活は難しく、レイラの家は王都に屋敷を持っていないので、王宮から学園に通っている。
カイルも寮に戻らず、レイラと一緒に王宮へ帰り、学園へ通う。馬車の乗り降りの際、レイラを抱き上げるのはカイルの役目だ。
学園ではサイラスの元から学園へ通う事になったイアンと、ミシェルがレイラに付き添っていた。
「腕の固定がもうすぐ取れるから、そうしたら松葉杖が使えるかしら?」
「腕の筋力も落ちているでしょうし、暫くリハビリしてからじゃないと無理じゃないですかね?」
食堂で昼食を摂りながら言うレイラに斜め前に座ったイアンが答える。
「『リハビリ』ってなあに?」
レイラの隣、イアンの正面に座るミシェルが小首を傾げた。
「ああ、また前世の言葉が…」
「リハビリテーションの事よ。機能回復訓練」
「すいませんミシェル様。なるべく前世の言葉は使わないようにしてるのに…」
「あら、私はイアンとレイラとサイラス殿下が三人にしか通じない会話してても仲間はずれにされたなんて思わないわよ?」
「…カイルが拗ねてすみません」
レイラは肩を竦める。
カイルはレイラがイアンやサイラスと前世の事や前世の言葉で話していると必ず不機嫌になるのだ。
「レイラを取られたみたいで妬いてるんでしょう?カイル殿下も子供っぽくてかわいい処があるのね」
ふふふ。とミシェルは笑う。
カイルって割と…嫉妬深いのとは違うけど、焼きもちやきな処があるのよね。特にサイラス殿下に対しては。
「そういえば、サイラス殿下とミシェルの侍女のエマって、どうなってるの?」
「絶賛鋭意求愛中よ。エマは戸惑ってはいるけど、殿下の事は好きだと思うわ」
「そう…上手く行くと良いなあ」
「まあ、エマは幼い頃からモーリス公爵家に預けられ、ミシェル様の側付きから侍女になって、ミシェル様の輿入れに伴って王宮へも上がる予定でしたから…戸惑うのも無理はありません」
そう言うイアンの言葉で、ミシェルは半泣きで「私が公爵家の養女になるなんて無理です。ましてや王子妃なんて…しかもサイラス殿下は後々王太子から国王になるお方ですよ?妃が私なんかで許される訳がありません」と言ったエマを思い出す。
「王太子妃や王妃になるのに並々ならぬ決意と覚悟が必要なのは、まあその通りなんだけど…私、サイラス殿下は『立派な王妃』とか求めていないと思うのよね」
そう言うミシェルにレイラも頷いて言う。
「分かる。責任ある立場に立たなきゃいけないサイラス殿下は、私的な場では好きな相手と息をつける関係でいたいだけなんじゃないかな、と思うわ」
「レイラは兄上の事をよく判ってるんだな」
レイラの後ろからカイルの声。レイラが振り向くと憮然とした表情のカイルが立っていた。
「カイル」
「……」
「かわいい」
「!?」
瞠目するカイルに、レイラはにっこりと笑いかけた。
-----
「『かわいい』はやめてくれ」
帰りの馬車で、車椅子から抱き上げたレイラをそのまま自分の膝に乗せたカイルは頬を赤くして言う。
「私だって馬車で抱っことか恥ずかしいからやめて欲しい」
「どうせ王宮に着いたらまた抱いて降ろすんだから、道中の十分余りだし、このままで良いじゃないか」
「そう言う問題じゃ…」
「レイラ。今日アリスに会った」
「…あ」
だからか。
カイルがアリスに会ったり話したりした日にはカイルはレイラを自分の傍から離そうとしない。
強制的にアリスに向けられた心を戻そうとするように。
「アリスは今どんな感じなの?」
カイルはレイラの短い髪を撫でる。もう包帯はないが、裂傷の位置にはガーゼが貼ってある。
「今は四六時中ライアンにくっついてるな。恋愛感情と言うよりは兄妹のような感じだが…」
「…ライアンには妬かないの?」
「ん?」
「だって…」
「ああ。アリスがいくらライアンと仲が良くてもライアンに嫉妬心は沸かないな。むしろこのままライアンルートに変更してくれればとも思う」
「そうなの?」
「ただ、アリスがライアンと結ばれると思うと少し複雑だかな」
「複雑?」
「ライアンと結ばれると、アリスがレイラの義姉になるし…キャロライン嬢が悪役令嬢になるだろう?結果的にキャロライン嬢が失恋するのかと思うと複雑なんだ」
カイルは胸ポケットに手を入れ、一片の紙を取り出す。
「彼女は俺にとって恩人だから。これのお陰で俺は自分の感情を冷静に見つめる事ができて、レイラを失わずに済んだ」
キャロラインがくれた【自身の感情を疑え】と書いた紙は何度も服の上から握りしめたので皺になっているが、カイルのお守りになっていた。
冬期が始まり、腕も骨折しているので松葉杖はまだ使えないレイラは車椅子で学園に復帰した。
寮生活は難しく、レイラの家は王都に屋敷を持っていないので、王宮から学園に通っている。
カイルも寮に戻らず、レイラと一緒に王宮へ帰り、学園へ通う。馬車の乗り降りの際、レイラを抱き上げるのはカイルの役目だ。
学園ではサイラスの元から学園へ通う事になったイアンと、ミシェルがレイラに付き添っていた。
「腕の固定がもうすぐ取れるから、そうしたら松葉杖が使えるかしら?」
「腕の筋力も落ちているでしょうし、暫くリハビリしてからじゃないと無理じゃないですかね?」
食堂で昼食を摂りながら言うレイラに斜め前に座ったイアンが答える。
「『リハビリ』ってなあに?」
レイラの隣、イアンの正面に座るミシェルが小首を傾げた。
「ああ、また前世の言葉が…」
「リハビリテーションの事よ。機能回復訓練」
「すいませんミシェル様。なるべく前世の言葉は使わないようにしてるのに…」
「あら、私はイアンとレイラとサイラス殿下が三人にしか通じない会話してても仲間はずれにされたなんて思わないわよ?」
「…カイルが拗ねてすみません」
レイラは肩を竦める。
カイルはレイラがイアンやサイラスと前世の事や前世の言葉で話していると必ず不機嫌になるのだ。
「レイラを取られたみたいで妬いてるんでしょう?カイル殿下も子供っぽくてかわいい処があるのね」
ふふふ。とミシェルは笑う。
カイルって割と…嫉妬深いのとは違うけど、焼きもちやきな処があるのよね。特にサイラス殿下に対しては。
「そういえば、サイラス殿下とミシェルの侍女のエマって、どうなってるの?」
「絶賛鋭意求愛中よ。エマは戸惑ってはいるけど、殿下の事は好きだと思うわ」
「そう…上手く行くと良いなあ」
「まあ、エマは幼い頃からモーリス公爵家に預けられ、ミシェル様の側付きから侍女になって、ミシェル様の輿入れに伴って王宮へも上がる予定でしたから…戸惑うのも無理はありません」
そう言うイアンの言葉で、ミシェルは半泣きで「私が公爵家の養女になるなんて無理です。ましてや王子妃なんて…しかもサイラス殿下は後々王太子から国王になるお方ですよ?妃が私なんかで許される訳がありません」と言ったエマを思い出す。
「王太子妃や王妃になるのに並々ならぬ決意と覚悟が必要なのは、まあその通りなんだけど…私、サイラス殿下は『立派な王妃』とか求めていないと思うのよね」
そう言うミシェルにレイラも頷いて言う。
「分かる。責任ある立場に立たなきゃいけないサイラス殿下は、私的な場では好きな相手と息をつける関係でいたいだけなんじゃないかな、と思うわ」
「レイラは兄上の事をよく判ってるんだな」
レイラの後ろからカイルの声。レイラが振り向くと憮然とした表情のカイルが立っていた。
「カイル」
「……」
「かわいい」
「!?」
瞠目するカイルに、レイラはにっこりと笑いかけた。
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「『かわいい』はやめてくれ」
帰りの馬車で、車椅子から抱き上げたレイラをそのまま自分の膝に乗せたカイルは頬を赤くして言う。
「私だって馬車で抱っことか恥ずかしいからやめて欲しい」
「どうせ王宮に着いたらまた抱いて降ろすんだから、道中の十分余りだし、このままで良いじゃないか」
「そう言う問題じゃ…」
「レイラ。今日アリスに会った」
「…あ」
だからか。
カイルがアリスに会ったり話したりした日にはカイルはレイラを自分の傍から離そうとしない。
強制的にアリスに向けられた心を戻そうとするように。
「アリスは今どんな感じなの?」
カイルはレイラの短い髪を撫でる。もう包帯はないが、裂傷の位置にはガーゼが貼ってある。
「今は四六時中ライアンにくっついてるな。恋愛感情と言うよりは兄妹のような感じだが…」
「…ライアンには妬かないの?」
「ん?」
「だって…」
「ああ。アリスがいくらライアンと仲が良くてもライアンに嫉妬心は沸かないな。むしろこのままライアンルートに変更してくれればとも思う」
「そうなの?」
「ただ、アリスがライアンと結ばれると思うと少し複雑だかな」
「複雑?」
「ライアンと結ばれると、アリスがレイラの義姉になるし…キャロライン嬢が悪役令嬢になるだろう?結果的にキャロライン嬢が失恋するのかと思うと複雑なんだ」
カイルは胸ポケットに手を入れ、一片の紙を取り出す。
「彼女は俺にとって恩人だから。これのお陰で俺は自分の感情を冷静に見つめる事ができて、レイラを失わずに済んだ」
キャロラインがくれた【自身の感情を疑え】と書いた紙は何度も服の上から握りしめたので皺になっているが、カイルのお守りになっていた。
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