第二王子は婚約破棄して王太子になりたいらしい。

ねーさん

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 国王陛下の生誕祭パーティーにレオンとフィオナは揃って出席し、婚約のお披露目をした。
 レオンと共にレオンの祖父母である国王陛下と王妃殿下、父である王太子殿下に挨拶をする。王太子妃はすでに亡く、王太子殿下の隣に立つ側妃であるレオンとマルティナの母とも挨拶を交わした。
「初めまして。フィオナ嬢」
 第一王子のブライアンがにこやかに手を差し出してくれる。
「は、初めまして。ブライアン殿下」
 フィオナが手を出すと、ブライアンが優しくキュッと握った。
 ブライアンはレオンより四歳年上の19歳、隣にはブライアンの婚約者のスーザン・キッシンジャーが立っている。
 スーザンはブライアンより三歳下、レオンより一歳上の侯爵令嬢だ。
「婚約おめでとう」
 ニコニコ笑うブライアン。レオンより薄い紫の髪がウェーブしていて柔和な印象だった。
「兄上、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
 レオンに続いてフィオナも頭を下げた。
「レオン殿下、どうしてそちらの伯爵令嬢を婚約者に選ばれたのですか?」
 スーザンがにっこりと笑ってレオンに問い掛ける。
 ちらっとフィオナを見る眼差しは厳しい…気がした。
 今、睨まれた?
 スーザン様はブライアン殿下の婚約者なのに、レオン殿下の婚約が気に入らないのかしら?
 それとも私の身分とか見た目が将来の義妹として気に入らないとか?
「フィオナと一緒に居ると楽しいからだ」
 レオンがフィオナの肩を抱きながら言うと、周りから遠巻きに見ていた貴族たちの中から「きゃあ」と悲鳴にも歓声にも聞こえる声が聞こえて来る。
 …レオン殿下、令嬢たちに人気があるものね。ブライアン殿下がご婚約されてからは特に。
 ああ、これから今悲鳴を上げた令嬢たちに嫌味とか言われる日々が始まるんだわ。

「そうなのですね。ご婚約おめでとうございます」
 スーザンはそう言って扇で口元を隠して微笑んだが、後でブライアンとレオンが居ない時に他の令嬢たちと一緒にフィオナの元にやって来た。
「レオン殿下ったら…楽しいだなんて、令嬢に対する評価にしてはあんまりですわね」
 と、明らかに蔑んだ笑みを浮かべてスーザンが言うと、隣の令嬢たちが次々と喋り出す。
「本当ですわ」
「楽しいって、フィオナ様は何か芸がお出来になるの?」
「まあ。芸って。遊戯団の方々じゃないのですから」
「あらあのレオン殿下がお選びになったんですもの、もっと凄い手練手管がおありなのでは?」 
「嫌だわ。まだ子供の癖に」
 …早速嫌味キター!
 でもここで第一王子の婚約者と騒ぎを起こす訳にはいかないし、今日の処は反論はせずやり過ごそう。
 お姉様方、いつか反撃しますからね。乞うご期待ですよ。
 フィオナはワザと傷付いたような表情を浮かべると「酷いわ…」と小さく言いながらその場を後にした。

-----

「…疲れた」
 パーティーの後、レオンの私室に戻ったフィオナはソファに倒れ込んだ。
「お前本当に令嬢らしくないな」
 レオンがため息混じりに言う。
「あー緊張したあ。こういうのがやだって言うのに…レオン殿下もこんな私が嫌なら早目に婚約解消してください」
「それこそ嫌だ」
 レオンはフィオナの向かい側のソファに座ると脚を組む。
 レオン殿下、別に私の事好きとかじゃない癖に…私が王子妃になるの嫌だって言ったからプライド傷付けられた腹いせの婚約でしょ?こんなの。
「フィオナだから『フィオ』にするか」
「はい?」
「婚約者だからな。仲睦まじく見せるため愛称で呼ぶ」
「はあ」
 仲睦まじくため、ね。
「お前も『殿下』はなしだ」
「はい?でも人前で敬称なしでは呼べませんよ」
「二人だけの時だ」
 レオンがじっとフィオナを見詰める。
 …二人だけの時は「仲睦まじく見せる」相手いないのに。ああ二人だけって言っても侍従とか侍女とかが側に居る事も多いし、だからかな。
「レオン様、で良いんですか?」
 フィオナは起き上がってソファに座り直す。
 すると侍女が部屋に入って来てお茶の準備をし始めた。
 …さすがに横になってる時には入って来れなかったのね。タイミング計ってたのかな?悪い事したわ…
「『様』も要らない」
「それは無理です」
「お前な…無理とか嫌とか言い過ぎだろ」
 レオンが呆れたような表情を見せる。
「ついでに『お前』って言われるのも嫌です」
「…フィオ」
 ドキン。とフィオナの鼓動が高鳴る。
 カッコいい男子に愛称で呼ばれるのって心臓に悪い。
「頬が赤いぞ」
 レオンがニヤッと笑う。
 侍女が紅茶を二人の前に置いて部屋を出て行くと、レオンは立ち上がってフィオナの隣に座った。
「殿下」
「『レオン』だろ?」
 レオンはフィオナの顎に手を当てる。
 いやああああ。レオン殿下、無駄に色気を振り撒かないで!
 私まだ13歳!子供ですから!子供の顎を掴むのはやめてください!
「フィオは俺の顔は好きみたいだな」
 レオンは嬉しそうに笑うと、フィオナの頬に唇を当てる。
 頬か。良かった。いや良くない。開けたままの扉の向こうからさっきの侍女が見てるじゃない!
「…レオン様の意地悪」
 フィオナが耳まで赤くなって上目遣いで言うと、レオンは満足気に口角を上げた。




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