第二王子は婚約破棄して王太子になりたいらしい。

ねーさん

文字の大きさ
5 / 36

4

しおりを挟む
4

 学園は15歳で入学し、四年間学び18歳で卒業する。貴族の令息令嬢は15歳までは家庭教師に学び学園へ入学するが、貴族でない者は家の都合により5歳から10歳には初等教育校へ入学し、数年間字や計算などを学び、成績優秀者やお金のある商家の子供などが15歳で学園へと入学する。
 全寮制で、いかに高位の貴族でも侍女や侍女、メイドなどを伴う事はできない決まりだ。もちろん王族でも。

 学園は一学年が春期、秋期、冬期の三月期制で、春期と秋期の間に約二ヶ月の夏季休暇、秋期と冬期の間、冬期と春期の間にそれぞれ約二週間の休暇がある。

 フィオナはこの春15歳になり、学園に入学した。
 レオンは17歳、三年生だ。
「レオン兄様、ここ女子寮ですよ?どうしてフィオナの部屋に毎日の様に居るんですか?」
 マルティナが、フィオナの部屋のソファに腰掛け、悠然とお茶を飲んでいるレオンに言う。
「そうなの!ティナもっと言って!」
 フィオナは部屋の入り口に立ったマルティナに駆け寄った。
 入学してから一カ月、ほぼ毎日レオンはフィオナの部屋を訪れて、お茶を一杯飲んで帰って行くのだ。
「フィオは俺の婚約者だからだ」
「いえ。レオン兄様、そもそも女子寮には婚約者でもおいそれと入れない筈ですよね?」
「まあ、抜け道はある」
 レオンはそう言うと、カップに残ったお茶を一気に飲み干すと立ち上がった。
「じゃあまた明日な。フィオ」
 レオンはマルティナと共に扉の前に立っていたフィオナの頬をするりと撫でて、部屋から出て行った。
 寮の出入口とは違う方へ歩いて行くレオン。本当に抜け道を通って来ているようだ。

「…つまり、レオン兄様とフィオナは仲良しなの?」
 撫でられた頬を押さえたフィオナに、マルティナが言う。少しフィオナの頬が赤い。
「仲良しじゃないわ」
 フィオナはマルティナから視線を逸らす。
 レオン様は多分…私をとしてる。でもそれは婚約したのと同じ理由で、妃になりたくないと言われてプライドが傷付いたから。
 レオン様が私を好きだとか、そういう訳じゃないわ。
「そうなの?仲良しに見えるけど…」
 マルティナをソファに促す。お茶を入れ替えるために部屋に付いたミニキッチンへ向かうとポットを火に掛けた。
 仲良しに見えるのは当たり前よ。レオン様がそう見える様に振る舞ってるんだから。
 フィオナがそう考えるのは、二人きりの時のレオンは決してフィオナに甘い言葉を言ったり、さっきの様に触れたりしないからだ。マルティナが来ない日はお茶を飲んで、少し話して、帰るだけなのだ。

 もしも、もしも私がレオン様を好きになったら…「ザマア」と言わんばかりに速攻で婚約破棄されるんじゃないかなあ。
 そう言えば、前世でも振られたっけ。
 高三の時付き合った同じクラスの男子。告白されて付き合い始めたけど、さすがにもう顔も思い出せないな…違う大学に行って、あっちに他に好きな人が出来たんだったっけ。
 前世でキスもその先も経験してるんだから、レオン様に頬を撫でられたくらいで赤くなる事ないのに。もっと余裕でかわせる筈なのにな。
 やっぱりレオン様がカッコ良すぎるから?
「顔は好みよ。確かに」
 フィオナは一人で呟く。
「…今なら婚約破棄も『待ってました』なのにな」
 自分を好きにならせてから婚約破棄なんて、性格悪すぎるわ。
 フィオナはレオンの使ったカップを洗いながらそっとため息を吐いた。

-----

 学園では、春期の終わりには夏季休暇に入る前の舞踏会があり、冬期の終わりには卒業パーティーがあるので、貴族の令息令嬢は社交を学び、貴族でない者も貴族社会との繋がりを作ろうと励む場となるのだ。

「フィオが入学して初めての舞踏会だからドレスを贈ろうか?」
 フィオナの部屋で、ソファの肘掛けに肘を着いたレオンが言う。
「…要りませんよ」
「フィオはかわいくないな。相変わらず」
 レオンが苦笑いしながら言う。
 かわいくない、かあ。でもドレスを贈られても困るしなあ。
「……」
「…な、何故黙る?」
 あれ?ちょっとレオン様慌ててる?
「いえ。私って相当かわい気がないんだろうなと思って」
「どうしたんだ?誰かに何か言われたのか?」
 レオンがソファから腰を浮かすようにしてフィオナの顔を覗き込んだ。
 昼休みに一人で中庭を歩いていると、第一王子の婚約者スーザンと、その取り巻きの令嬢たちがフィオナに近寄って来た。
 そしてまた「伯爵令嬢が王子妃になろうなんて図々しい」「レオン殿下にふさわしくない」と嫌味を言われたので、フィオナは敢えて満面の笑みを浮かべると「でもレオン殿下はそんな私良いんですって」と言った。
 毒気を抜かれて去って行く時、取り巻きの一人が「あの子本当にかわいくないわ」と呟いたのだ。
「いえ、そう言う訳ではないんです」
 フィオナはそう言うとレオンに笑顔を向ける。
 レオンは眉を顰めると、フィオナには聞こえないように
「…フィオはかわいくない処がかわいいんだろ」
 と呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい

瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。 伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。 --- 本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。

【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。 伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。 幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。 素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、 ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。 だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。 記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、 また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──…… そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。 ※婚約者をざまぁする話ではありません ※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました

隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~

夏笆(なつは)
恋愛
 ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。  ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。 『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』  可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。  更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。 『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』 『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』  夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。  それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。  そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。  期間は一年。  厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。  つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。  この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。  あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。    小説家になろうでも、掲載しています。 Hotランキング1位、ありがとうございます。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?

宝月 蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ! ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。 エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。 ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。 しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。 「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」 するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

全力でお手伝いするので、筆頭聖女の役目と婚約者様をセットで引継ぎお願いします!

水無月あん
恋愛
6歳から筆頭聖女として働いてきたルシェルも今や16歳。このままいけば、大聖女様のあとを継ぐことになる。が、それだけは阻止したい。だって、自由にお菓子が食べられないから! ということで、筆頭聖女の役目と婚約者をまるっとお譲りいたします。6歳から神殿で、世間から隔離され、大事に育てられたため、世間知らずで天然のヒロイン。ちなみに、聖女の力はバケモノ級。まわりの溺愛から逃れ、自由になれるのか…。 ゆるっとした設定のお話ですので、お気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。

転生令嬢は腹黒夫から逃げだしたい!

野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
華奢で幼さの残る容姿をした公爵令嬢エルトリーゼは ある日この国の王子アヴェルスの妻になることになる。 しかし彼女は転生者、しかも前世は事故死。 前世の恋人と花火大会に行こうと約束した日に死んだ彼女は なんとかして前世の約束を果たしたい ついでに腹黒で性悪な夫から逃げだしたい その一心で……? ◇ 感想への返信などは行いません。すみません。

処理中です...