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天気の良い夏の午後、リネットとリリアの滞在するゴルディ家の別荘へ、青い顔をしたセドリックと、王宮からの使者がやって来た。
「王都の侯爵家には別の使者がすでに向かいゴルディ公爵へのご説明をしております。私はリリア嬢へのご説明をいたしたく参上しました」
使者は跪き、リリアへ礼を取る。
「…わかりました。応接室へどうぞ。兄と、バーストン伯爵令嬢リネット様は同席を許されますか?」
リリアは使者を応接室に案内しながら聞く。
「お兄様…セドリック殿は宜しいですが、バーストン伯爵令嬢はご遠慮いただきたく」
「わかりました。リネットごめんね。私の部屋で待っていて」
「わかったわ」
応接室の前でリネットはリリアの両手をギュッと握った。何か言いたかったけれど、何も言葉は出てこなかった。
リリアとセドリックが使者と話している間、リネットが落ち着かずにソファを立ったり座ったりしていると、別荘の執事がリネット宛の手紙を二通部屋へ持って来た。
「一通はチャールズお兄様から。もう一通は…え?」
差出人を確認しようと封筒を裏返すと、王家の蝋封が目に飛び込んで来た。
ええ!?何、何、何!?
差出人の名は記されていない。
王家の蝋封のある手紙なんて王宮舞踏会の招待状くらいしか見た事はないわよ。それもバーストン伯爵家の当主である父や代替わりした兄に宛てた物しか…。
リネットは混乱しながらも、兄チャールズからの手紙を先に開けてみる事にした。
お兄様が私に手紙をくださるのだって珍しい事だし…それに今しがた使者が王宮から持ってきた話の内容が書いてあるかも。
兄からの手紙には、セルダが王太子となる事が正式に決まった事が書かれていた。
そして、セルダとリリアの婚約は解消される方向である事。
そこまでは想定内だったが…
「アリシア公爵令嬢が自家の執事と婚約した…って、どういう事?」
思わず声が出た。
手紙によると、アリシアは以前からウィルフィス公爵家の筆頭執事の息子で、第二執事として働いている青年に想いを寄せていたらしい。
しかし高位貴族の令嬢として、恋心は仕舞い込み、王太子の婚約者として王妃教育にも積極的に取り組み、王太子妃となる事も当然と受け止めていた。
なのに王太子が「真実の愛」に目覚め、婚約は破棄された…ならば、自分も好きな人と結ばれたい。と父に訴えたらしい。
父は当然反対したらしいが、アリシアが駆け落ちも辞さずという姿勢で、今にも既成事実を作りそうだったので、しぶしぶ婚約を許したそうだ。
ちなみにアリシアと第二執事は元々恋人同士だった訳ではなく、お互い想い合っていた事もアリシアが父に訴えてはじめて分かったらしい。
あれ?アリシア様が他の方と婚約したなら、何故リリアとセルダ殿下の婚約を解消する必要があるの?
そう考えた時、リリアの部屋のドアがノックもなく勢いよく開かれた。
「な!?え?セドリック?」
ドアの向こうに立っていたのは厳しい表情のセドリック。そしてその後ろでリリアが泣いていた。
「リネット」
セドリックが低い声でリネットを呼んだ。
そして、おろおろするリネットから目を逸らしながら絞り出すように言った。
「…今すぐ王都に帰れ」
-----
ゴルディ家が用意した馬車で王都に帰っているリネットはとても混乱していた。
セドリックはリネットに「王都に帰れ」と言った後、リリアを引きずるように連れて行ってしまって、リネットが別荘を出る時にもセドリックもリリアも顔を見せなかった。
使用人がまとめてくれた荷物を見ながらリネットはため息を吐く。
セドリックは怒っていたのかしら…?
あんなセドリック初めて見たわ。
何も説明してくれなかったし…私の顔を見もしなかった…。
リネットは悲しくなって膝に置いた手でドレスのスカートを握りしめた。
するとドレスのポケットに入れて持って出た二通の手紙がカサリと音を立てる。
王族の蝋封のある手紙はまだ読んでいないのだったわ。
泣きそうな気分を引き立たせるように顔を上げ、手紙を取り出す。
【リネット・バーストン伯爵令嬢へ】
封筒の表にある宛名の字を見て見覚えがあるなと思う。
リネットが字に見覚えがある王族と言えばセルダしかいない。
何故セルダ殿下が私に…?
ゆっくり手紙を開き、書かれた文字を読み、リネットは思わず手紙を取り落とした。
【リネット嬢が好きです】
そこにはたったそれだけが書いてあった。
天気の良い夏の午後、リネットとリリアの滞在するゴルディ家の別荘へ、青い顔をしたセドリックと、王宮からの使者がやって来た。
「王都の侯爵家には別の使者がすでに向かいゴルディ公爵へのご説明をしております。私はリリア嬢へのご説明をいたしたく参上しました」
使者は跪き、リリアへ礼を取る。
「…わかりました。応接室へどうぞ。兄と、バーストン伯爵令嬢リネット様は同席を許されますか?」
リリアは使者を応接室に案内しながら聞く。
「お兄様…セドリック殿は宜しいですが、バーストン伯爵令嬢はご遠慮いただきたく」
「わかりました。リネットごめんね。私の部屋で待っていて」
「わかったわ」
応接室の前でリネットはリリアの両手をギュッと握った。何か言いたかったけれど、何も言葉は出てこなかった。
リリアとセドリックが使者と話している間、リネットが落ち着かずにソファを立ったり座ったりしていると、別荘の執事がリネット宛の手紙を二通部屋へ持って来た。
「一通はチャールズお兄様から。もう一通は…え?」
差出人を確認しようと封筒を裏返すと、王家の蝋封が目に飛び込んで来た。
ええ!?何、何、何!?
差出人の名は記されていない。
王家の蝋封のある手紙なんて王宮舞踏会の招待状くらいしか見た事はないわよ。それもバーストン伯爵家の当主である父や代替わりした兄に宛てた物しか…。
リネットは混乱しながらも、兄チャールズからの手紙を先に開けてみる事にした。
お兄様が私に手紙をくださるのだって珍しい事だし…それに今しがた使者が王宮から持ってきた話の内容が書いてあるかも。
兄からの手紙には、セルダが王太子となる事が正式に決まった事が書かれていた。
そして、セルダとリリアの婚約は解消される方向である事。
そこまでは想定内だったが…
「アリシア公爵令嬢が自家の執事と婚約した…って、どういう事?」
思わず声が出た。
手紙によると、アリシアは以前からウィルフィス公爵家の筆頭執事の息子で、第二執事として働いている青年に想いを寄せていたらしい。
しかし高位貴族の令嬢として、恋心は仕舞い込み、王太子の婚約者として王妃教育にも積極的に取り組み、王太子妃となる事も当然と受け止めていた。
なのに王太子が「真実の愛」に目覚め、婚約は破棄された…ならば、自分も好きな人と結ばれたい。と父に訴えたらしい。
父は当然反対したらしいが、アリシアが駆け落ちも辞さずという姿勢で、今にも既成事実を作りそうだったので、しぶしぶ婚約を許したそうだ。
ちなみにアリシアと第二執事は元々恋人同士だった訳ではなく、お互い想い合っていた事もアリシアが父に訴えてはじめて分かったらしい。
あれ?アリシア様が他の方と婚約したなら、何故リリアとセルダ殿下の婚約を解消する必要があるの?
そう考えた時、リリアの部屋のドアがノックもなく勢いよく開かれた。
「な!?え?セドリック?」
ドアの向こうに立っていたのは厳しい表情のセドリック。そしてその後ろでリリアが泣いていた。
「リネット」
セドリックが低い声でリネットを呼んだ。
そして、おろおろするリネットから目を逸らしながら絞り出すように言った。
「…今すぐ王都に帰れ」
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ゴルディ家が用意した馬車で王都に帰っているリネットはとても混乱していた。
セドリックはリネットに「王都に帰れ」と言った後、リリアを引きずるように連れて行ってしまって、リネットが別荘を出る時にもセドリックもリリアも顔を見せなかった。
使用人がまとめてくれた荷物を見ながらリネットはため息を吐く。
セドリックは怒っていたのかしら…?
あんなセドリック初めて見たわ。
何も説明してくれなかったし…私の顔を見もしなかった…。
リネットは悲しくなって膝に置いた手でドレスのスカートを握りしめた。
するとドレスのポケットに入れて持って出た二通の手紙がカサリと音を立てる。
王族の蝋封のある手紙はまだ読んでいないのだったわ。
泣きそうな気分を引き立たせるように顔を上げ、手紙を取り出す。
【リネット・バーストン伯爵令嬢へ】
封筒の表にある宛名の字を見て見覚えがあるなと思う。
リネットが字に見覚えがある王族と言えばセルダしかいない。
何故セルダ殿下が私に…?
ゆっくり手紙を開き、書かれた文字を読み、リネットは思わず手紙を取り落とした。
【リネット嬢が好きです】
そこにはたったそれだけが書いてあった。
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