51 / 52
50
しおりを挟む
50
王妃殿下と話した後、私とアレクシスは二人でアレクシスの宮の庭へ出た。
その庭には色とりどりの花が咲いていて、でも一角には薬草の植る花壇があった。
「薬の本格的な研究は今はしてないけど、一般的な薬はいつでも作れるように最低限の薬草は維持してるんだよ」
アレクシスは薬草の花壇の側にしゃがみ込み、薬草の葉っぱに手を触れる。
「薬草でも結構かわいい花が咲いたりするんだよ。ああでも素手で触らない方がいいものもあるから気をつけて」
「わかったわ」
私はドキドキしながらアレクシスの隣にしゃがんでみた。
アレクシスの隣に並んで花壇の手入れをするのはフローラで、私は近くのベンチからアレクシスとフローラを見ていた。
侯爵家の令嬢として、地面にしゃがみ込むなんてできなかったし、花は好きでも植物にあまり興味のない私が隣にいてもアレクシスは喜ばないと思ってた。
でも本当は、私もアレクシスの隣でこんな風に同じ目線になって話してみたかったんだわ。
「これは夏になると白くて小さな花が咲くんだよ。その後できた種が薬になるんだ」
アレクシスが私の前の緑の葉を触る。
「そうなんだ」
白くて小さな花かあ。きっとかわいいわ。
「咲いたら…また見に来てくれる?」
アレクシスが膝に腕を置いて少し不安気に私の方を見た。
「もちろん」
力強く頷くと、アレクシスは安心したようにふわりと笑った。
「クリスティナ、来て」
アレクシスは私の手を握ると立ち上がる。
私もアレクシスに続いて立つと、アレクシスはそのまま指を絡め、所謂「恋人繋ぎ」にして庭の小径を歩き出した。
少し歩くと、アレクシスの髪と瞳のような青紫色の薔薇が目に飛び込んで来る。
「わあ…」
赤い薔薇の垣根の一部に青紫の薔薇が咲いていた。
「今の処の俺の研究の一番の成果がこの薔薇」
繋いでない方の手で愛おしそうに薔薇の花びらを撫でる。
「この薔薇…学園の花壇に植えてる…よね?」
「夢幻」で、アレクシスとフローラの仲を裂きたい王家から男爵家へ持ち込まれたフローラの縁談。
父から結婚を命じられたフローラが学園を辞める前に花壇に立ち寄る。そこにはアレクシスと共に品種改良に挑んだ青紫の薔薇が見事に咲いていて…
「いや。植えてないよ」
アレクシスがサラリと言った。
「え?」
「この薔薇が俺とフローラが駆け落ちする時に学園で咲いていた青紫の薔薇、だよね?その頃咲かせるなら今頃がちょうど植え付けの時期だけど、俺とフローラは恋人になってないし、俺が好きなのはクリスティナだし、俺の色の薔薇を学園で咲かせる意味はないから、植えてないよ」
「そ…そうなの…?」
パチパチと目を瞬かせる私に笑い掛けると、アレクシスは繋いだ手を口元へと上げて、私の手の甲へチュッと口付ける。
「!」
一瞬で私の頬が燃えるように熱くなった。
「そもそも花弁の外側が青くて、子房部分がそれに混じり合わないヘーゼル色の薔薇を作るため、まずは存在しない青い花弁の薔薇を作らなければという事で研究を始めたんだけど、図らずも樹国のおかげであと数年かかるはずだった青い薔薇は出来上がった」
「うん…」
「自分の手で生み出したくて悔しい気持ちもあったけど、その数年分早くクリスティナの瞳の薔薇の研究に取り掛かれるんだし、今はむしろ樹国に感謝してるよ」
ニコリと笑うアレクシス。
カッコよくて、かわいいし、アレクシスの笑顔破壊力ありすぎ…
アレクシスは手を解くと、ポケットから取り出した小さな鋏で一輪の青紫の薔薇の茎をパチンと切る。
器用に鋏の刃で棘を取ると、私の耳の上にその薔薇を刺した。
「うん。似合う」
耳元にあったアレクシスの手が、指の背で頬を撫でながら顎へと下りる。
「ふふっ」
くすぐったくて首を竦めると指で顎を取られ、アレクシスの唇が私の唇に重なった。
唇が離れると、アレクシスに抱きしめられる。
「母上に後悔しないって言ってくれて嬉しかった。でもクリスティナを傷付けた俺を許さないで、一生、俺と一緒にいてね」
「…うん…いる。アレクシスと一緒にいる」
私はアレクシスの背中に手を回してぎゅっと抱きついた。
「ありがとうクリスティナ。好きだよ」
アレクシスは腕を緩めると私の顔を覗き込む。
青紫色の瞳に見つめられて心臓が痛いくらい高鳴った。
「結婚式までにはクリスティナの瞳の薔薇も完成させたいな。ブーケとブートニアにしたい」
幸せそうに笑うと、アレクシスは私の頬にキスを落とす。
「た…楽しみにしてる」
熱くなった頬を押さえる私を見て、アレクシスは満足気に頷いた。
王妃殿下と話した後、私とアレクシスは二人でアレクシスの宮の庭へ出た。
その庭には色とりどりの花が咲いていて、でも一角には薬草の植る花壇があった。
「薬の本格的な研究は今はしてないけど、一般的な薬はいつでも作れるように最低限の薬草は維持してるんだよ」
アレクシスは薬草の花壇の側にしゃがみ込み、薬草の葉っぱに手を触れる。
「薬草でも結構かわいい花が咲いたりするんだよ。ああでも素手で触らない方がいいものもあるから気をつけて」
「わかったわ」
私はドキドキしながらアレクシスの隣にしゃがんでみた。
アレクシスの隣に並んで花壇の手入れをするのはフローラで、私は近くのベンチからアレクシスとフローラを見ていた。
侯爵家の令嬢として、地面にしゃがみ込むなんてできなかったし、花は好きでも植物にあまり興味のない私が隣にいてもアレクシスは喜ばないと思ってた。
でも本当は、私もアレクシスの隣でこんな風に同じ目線になって話してみたかったんだわ。
「これは夏になると白くて小さな花が咲くんだよ。その後できた種が薬になるんだ」
アレクシスが私の前の緑の葉を触る。
「そうなんだ」
白くて小さな花かあ。きっとかわいいわ。
「咲いたら…また見に来てくれる?」
アレクシスが膝に腕を置いて少し不安気に私の方を見た。
「もちろん」
力強く頷くと、アレクシスは安心したようにふわりと笑った。
「クリスティナ、来て」
アレクシスは私の手を握ると立ち上がる。
私もアレクシスに続いて立つと、アレクシスはそのまま指を絡め、所謂「恋人繋ぎ」にして庭の小径を歩き出した。
少し歩くと、アレクシスの髪と瞳のような青紫色の薔薇が目に飛び込んで来る。
「わあ…」
赤い薔薇の垣根の一部に青紫の薔薇が咲いていた。
「今の処の俺の研究の一番の成果がこの薔薇」
繋いでない方の手で愛おしそうに薔薇の花びらを撫でる。
「この薔薇…学園の花壇に植えてる…よね?」
「夢幻」で、アレクシスとフローラの仲を裂きたい王家から男爵家へ持ち込まれたフローラの縁談。
父から結婚を命じられたフローラが学園を辞める前に花壇に立ち寄る。そこにはアレクシスと共に品種改良に挑んだ青紫の薔薇が見事に咲いていて…
「いや。植えてないよ」
アレクシスがサラリと言った。
「え?」
「この薔薇が俺とフローラが駆け落ちする時に学園で咲いていた青紫の薔薇、だよね?その頃咲かせるなら今頃がちょうど植え付けの時期だけど、俺とフローラは恋人になってないし、俺が好きなのはクリスティナだし、俺の色の薔薇を学園で咲かせる意味はないから、植えてないよ」
「そ…そうなの…?」
パチパチと目を瞬かせる私に笑い掛けると、アレクシスは繋いだ手を口元へと上げて、私の手の甲へチュッと口付ける。
「!」
一瞬で私の頬が燃えるように熱くなった。
「そもそも花弁の外側が青くて、子房部分がそれに混じり合わないヘーゼル色の薔薇を作るため、まずは存在しない青い花弁の薔薇を作らなければという事で研究を始めたんだけど、図らずも樹国のおかげであと数年かかるはずだった青い薔薇は出来上がった」
「うん…」
「自分の手で生み出したくて悔しい気持ちもあったけど、その数年分早くクリスティナの瞳の薔薇の研究に取り掛かれるんだし、今はむしろ樹国に感謝してるよ」
ニコリと笑うアレクシス。
カッコよくて、かわいいし、アレクシスの笑顔破壊力ありすぎ…
アレクシスは手を解くと、ポケットから取り出した小さな鋏で一輪の青紫の薔薇の茎をパチンと切る。
器用に鋏の刃で棘を取ると、私の耳の上にその薔薇を刺した。
「うん。似合う」
耳元にあったアレクシスの手が、指の背で頬を撫でながら顎へと下りる。
「ふふっ」
くすぐったくて首を竦めると指で顎を取られ、アレクシスの唇が私の唇に重なった。
唇が離れると、アレクシスに抱きしめられる。
「母上に後悔しないって言ってくれて嬉しかった。でもクリスティナを傷付けた俺を許さないで、一生、俺と一緒にいてね」
「…うん…いる。アレクシスと一緒にいる」
私はアレクシスの背中に手を回してぎゅっと抱きついた。
「ありがとうクリスティナ。好きだよ」
アレクシスは腕を緩めると私の顔を覗き込む。
青紫色の瞳に見つめられて心臓が痛いくらい高鳴った。
「結婚式までにはクリスティナの瞳の薔薇も完成させたいな。ブーケとブートニアにしたい」
幸せそうに笑うと、アレクシスは私の頬にキスを落とす。
「た…楽しみにしてる」
熱くなった頬を押さえる私を見て、アレクシスは満足気に頷いた。
371
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした
ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。
自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。
そんなある日、彼女は見てしまう。
婚約者に詰め寄る聖女の姿を。
「いつになったら婚約破棄するの!?」
「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」
なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。
それを目撃したリンシアは、決意する。
「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」
もう泣いていた過去の自分はいない。
前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。
☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m
☆10万文字前後完結予定です
侯爵令嬢ソフィアの結婚
今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚した。これは金が欲しい父の思惑と、高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない。
そもそもヴィンセントには恋人がいて、その恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ。
結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら屋に住むように言われて……
表紙はかなさんのファンアートです✨
ありがとうございます😊
2024.07.05
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる