悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん

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「クリスティナ、疲れてる?大丈夫?」
 エイデン侯爵家の私の部屋で、キャロルが私の顔を覗き込んで心配そうに言う。
 ダメダメ。キャロルが珍しく「相談があって…少しでも時間が取れないかしら…?」って言うんだから、私が逆に心配させるような顔してちゃダメでしょ!
 キャロルにはたくさん話聞いてもらったし、相談にも乗ってもらったし、慰めてもらったり、励ましてもらったり、たくさんたくさんしたんだから私だってキャロルの相談はちゃんと聞きたいじゃない。
「妃教育、大変なんでしょう?」
 うー…確かに。婚約してからずっと教育は受けてたけど、学園を卒業してから本格化した王子妃教育は…正直かなり大変で、かなり疲れてる。でも。
「大丈夫よ。それより我が家まで来てもらってごめんね」
 私が笑って言うと、キャロルは安心したように息を吐いた。
「ううん。クリスティナは忙しいんだから時間を取ってくれただけでも嬉しいわ」

 卒業してから八か月経つけどキャロルとは月に一度くらいしか会えていないので、少しお互いの近況などを話す。
「あの…ね、マチルダ妃殿下からお手紙を頂いて…」
 キャロルが言いにくそうに話し出した。
「マティ様から?」
「そう。クリスティナとアレクシス殿下の様子を報告するって私が受けた依頼の報酬で、私たち姉妹に良い方を紹介してくださるってマチルダ妃殿下が仰ったじゃない?」
「うん」
 キャロルは卒業パーティーのドレス一式で報酬には充分だと主張したけど、マティ様がそれだけでは足りない!って言われたのよね。
「お姉様には名門子爵家の三男の方を紹介してくださったの。お姉様と気が合ってるみたいだし、ウチみたいな弱小子爵家に婿入りしてくださるって。だからとても良い縁を頂いたと家族で感謝してるの」
「それは良かったわ。……という事は、相談って、キャロルのお相手の事?」
 私が顎に指を当てて言うと、キャロルはコクンと頷く。
 つまり、キャロルに縁談が来たって事ね!
「どんな方なの?いい人そう?」
「それが……ユージーン様…なの」
 眉を顰めたキャロルは困ったように言った。
「え?」
 詳しく聞こうと身を乗り出した時、扉をノックする音がする。
 返事をすると侍女ミリーが入って来た。
「アレクシス殿下がお見えです」
「アレクシスが?」
 ミリーが「お通しして宜しいですか?」と言うので許可すると、キャロルがそわそわしながら
「お邪魔だし、帰るわね」
 と立ち上がろうとする。
「待ってキャロル」
 キャロルを引き止めていると、アレクシスが扉から顔を覗かせた。

「俺の用事はすぐ済むから、いてもらって大丈夫だよ?」
 部屋に入って来ながら「挨拶はいらないよ」と手を振り、アレクシスが言う。
「え…でも」
 逡巡するキャロルは、アレクシスの後ろに立っているユージーン様を見て「あ!」と声を上げた。
「こんにちは、キャロル嬢。アレクがクリスティナ嬢と話してる間、俺の話し相手をお願いしても?」
 にっこり笑ってユージーン様がキャロルに手を差し出す。
「は…はい」
 頬を染めたキャロルはユージーン様の手を取った。

-----

「アレクシス、キャロルの縁談の相手がユージーン様って…」
 庭を歩くキャロルとユージーン様の姿が窓から見える。婚約者同士でもないキャロルとユージーン様は部屋に二人きりになる訳にはいかないものね。
「ああ。ユージーンがマチルダ義姉上に『キャロル嬢に紹介する令息は私にしてください』と頼んだんだ」
「やっぱり!」
 何となくユージーン様、キャロルを気に入ってるような気がしてたのよ!
 それにキャロルの方も…

「クリスティナ」
 キャロルの事を考えていた私はアレクシスが首を傾げて苦笑いしながら私を見てるのに気付いてハッとした。
 せっかくアレクシスが会いに来てくれたのに、他の事に気を取られる場合じゃなかったわ!
「妃教育が休みなのに押し掛けて来てごめんね。でも早く知らせたくて」
 アレクシスはニコリと笑うと、上着の内ポケットに手を入れた。
 そこから取り出したのは、花弁の外側が濃い青色、それが内側にいくほど薄くグラデーションしていて、花の中心から薄ら緑がかったベージュのような、ヘーゼル色が円形を描いている薔薇の花で───…
「アレクシスこれ…」
「良かった折れてない。そう、クリスティナの瞳の薔薇だよ。まだ試作段階でこの一輪しか開花してないんだけど……綺麗だよね」
「うん…」
「どうしてもクリスティナに見せたくて」
 嬉しそうに笑うアレクシスがとても…とても愛しい。
 ……前世を思い出してからの私はとても泣き虫だわ。
 じんわり涙で薔薇が滲んでくると、アレクシスが私の前で跪く。
「樹国と技術提携はしたけど、これは正真正銘俺が咲かせた薔薇だよ。この薔薇を捧げてもう一度クリスティナにプロポーズするって決めてたんだ。……クリスティナ、俺と結婚してください」
 薔薇を差し出すアレクシスに、私は薔薇を折らないように気を付けながら抱きついた。



         - 完 -



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みんなの感想(41件)

ネコやん
2025.12.08 ネコやん

母上と呼んでくれないと義母様って呼んで貰えないではないかなんて…、王妃殿下カワイすぎるやないかーー!!
そして、こんなに可愛い妻がありながらあろう事に自分とそっくりな女に夢中な国王マジ死ね!!女の敵め。

2025.12.09 ねーさん

感想ありがとうございます!

このお話の中でアレクシスより誰より最悪なのは国王陛下ですよねぇ(-言-)
きっと妻にも子供にも慕われず、臣下にも心許せず、寂しい老後になるんだと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございましたm(_ _)m

解除
らいおん
2025.12.03 らいおん

完結おめでとうございます!
最後まで私のアレクシス株は回復せず暴落したままでした笑
おかげでクリスティナにも最後まで「うおーー!知ってた!こうなることは分かってた!けどなんでやねん!それでいいの!??」と共感できぬままでしたが、そこも含めて感情が揺さぶられ読ませていただきました。
完結まで持ってきてくださってありがとうございました。それだけでもすごいと思います。

2025.12.03 ねーさん

感想ありがとうございます!

あはは、最後までアレクシス株値上がりせず、でしたか〜
途中詰まりながら「ちゃんと着地するのか!?この話!?」と苦悩しつつ書いたお話なので、完結できて良かったなーとホッとしております。
感情揺さぶられたと言っていただいて、とってもとっても嬉しいです!

最後までお付き合いくださいましてありがとうございましたm(_ _)m


解除
おねね
2025.11.30 おねね

作者さま、お疲れ様でした!

でもでも、抱きついて終わりじゃなくて、もうちょっと余韻が欲しかったーーー!

あとキャロルとユージーンのことも、ぜひ。後日談でいいので!
是非よろしくお願いします(>人<;)

2025.11.30 ねーさん

感想ありがとうございます!

キャロルは最初、クリスティナの兄ヒューバートと…とも考えていたのですが、私のお話って主人公の兄と主人公の友人がくっつく展開が結構あったので、違うパターンにしてみました。
ヒューバートはとても良いお兄さんなので、きっと素敵な婚約者が見つかると思います。もちろんベルナルドにも。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございましたm(_ _)m

解除

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