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第一章 勇者の聖剣が呪われてた
ラスボスってこいつじゃね?
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「ちょっとどういう事ですかぁ!聖剣が呪われてるなんて聞いてませんよぉ!!」
「俺だって聞いてねぇわ!」
聖剣。聖なる剣。王家の禁域にあった剣のくせにすでに呪われている。勇者以外には抜けない仕様だったくせに。
流石にアズラルトもミズイロと一緒にわたわたするしかない。
「どっ、どうするんだこれ……!お前いつ戻るんだ!?」
「知りませんよぉ!」
びぇぇ、と泣き出したミズイロは幼い容姿と相まって庇護欲をそそり、アズラルトの中のまだまだ小さな父性的な物がうず、と動く。
ふわふわとした名前と同じ淡い水色の髪に優しく触れたーー瞬間、ぼふん、と音を立てて元に戻り、ミズイロは絶望した。あわよくば子供を危険な旅には連れていけない、と家に帰れるのではないかと画策していたからである。
そしてアズラルトも絶望した。何でこんな成人男子の頭を撫でなくてはいけないのか、と。
そしてやはり、パァン!と小気味のいい音が試練の塔に響くのだった。
「叩かなくてもいいのにぃ……横暴……狂暴……暴れん坊王子ぃぃぃ……!」
「もう一発いってやろうか?」
「脳が揺さぶられたら脳細胞死ぬんですよ!そんなに叩いて僕の頭がバカになったら王子様のせいですからねーー!」
うわぁぁぁんバカァァァ!と泣くミズイロを引きずって塔の出入口まで戻ってきたものの、この先どうしたら良いのだろう。一度王都に戻って(呪われた)聖剣を手に入れたと報告すべきなのだろうか。というか、この呪いは一体どういう類いの物なのか鑑定士を頼った方が良いのだろうか。今のところチラリと見下ろしたミズイロはバカァァァ!嫌いぃぃぃ!と叫ぶのみで他に何か異常があるようには見えない。一応ステータスを確認したが状態異常はなかった。
アズラルトは、ふむ、と空を見上げ思った。空が青いなぁ。ーーつまりは現実逃避である。
しかしいつまでも現実逃避し続けるわけにもいかない。ひとまず王都に戻ろう。そうしよう。それで誰か別の人にミズイロを押し付けてしまおう。きっとそれがいい。
うんうん頷いて大型魔術二輪の元へ戻った時であった。
「迷っておるのぉ、お若いの」
大型魔術二輪の横にいかにも怪しげな黒ローブの人物。紫の布がかかった机にある水晶という名のガラス玉は今日もピカピカしている。
一瞬の間の後ミズイロは叫んだ。
「何やってるのおばあちゃーーーん!!?」
「悩める者の所にオババありじゃ。ふむふむ、何と。聖剣が呪われておったとな?」
「何で知ってるのおばあちゃーーーん!!?」
アズラルトは思った。もしかしてラスボスってこいつじゃね、と。というか聖剣呪ったのもこいつじゃね?
「たわけが!」
すこーん!と頭に当たる風の魔術は突っ込み専用魔術なのか。
「聖剣が呪われておるのは国王陛下もご存知よ!」
「じゃあ何で僕に抜かせたんですかぁ!」
わざわざ呪われに来たようなものだ。酷すぎる。ミズイロはさめざめと泣いた。
「抜かねばどんな呪いかわからぬからな!」
「わからないのに抜かせたの!?僕が死んじゃったらどうしてたの!?」
占いオババは黙って合掌した。
アズラルトは思う。やっぱりラスボスってこいつじゃね、と。
「冗談はさておき……死ぬ呪いでない事はわかっておったのじゃ。しかしよもや幼子になるとはのぅ」
「何で知ってるの!?」
「入り口から見てた」
見てたんかーい。その水晶(という名のガラス玉)で占ったとかじゃないんかーい。ミズイロとアズラルトの心が初めて一つになった瞬間だった。
「だが残念だったのう、アズラルト王子」
「は?何が」
旅の相方がこんな泣き虫弱虫勇者だったという事だとしたら今すぐ叫びたい。「チェンジで!」と。
だがオババはうりうりと肘でアズラルトを小突きながら、
「大抵こういう時のデメリットは発情状態がお約束だろう?幼子とは……可哀想に。えっちな事は出来ぬのぉ」
などと宣うので、とりあえずアズラルトは無言でスラリと剣を抜いた。
アズラルトの剣は特殊仕様だ。魔力も高く剣の腕も申し分ない彼は剣に魔法を付加して戦う魔剣士である。故にその刀身は魔力を通しやすいクリスタルで作られている為、何の魔力も付加されていない時には無色透明だ。しかしすぐ砕けそうな見た目に反し、腕のいい王族御用達の鍛冶士に鍛えられたその切れ味は最高級な代物なのだ。
とりあえずオババは黙った。素知らぬ顔をして口笛を吹いた。それから言った。
「ミズイロの快楽に染まる顔……愛らしいと思うがのぅ」
「まだ言うかこのクソババア!!」
「ふぁっふぁっふぁっ」
ぶんっ、ぶんっ、と風を切って振り回す剣をゆらりゆらりとかわす占いオババ。やっぱりラスボスってこいつじゃね、とアズラルトはそう思えてならない。
良くある、序盤からいてやたら的確なアドバイスをくれる仲間がボスだった、というヤツである。中には序盤からいるのに108人の仲間の中に名前がなくて絶対敵だと神視点でバレてたやつもいるけれど。
「それはともかく」
アズラルトの剣を白刃取りで止める元気なババアは言う。
「ひとまず西へ向かうのじゃ。西の町では夜な夜な魔物が出て若い娘をさらっていくと言う。まず西へ向かい、その魔物を退治するのじゃ」
それと、とオババは真剣な顔をした。
「……ミズイロのお尻にはホクロがある」
「知るかァァァァ!!!」
「言わないでよおばあちゃーーーん!!!」
【現在のパーティーメンバー
勇者 ミズイロ LV2
魔剣士 アズラルト LV10 🔽】
「俺だって聞いてねぇわ!」
聖剣。聖なる剣。王家の禁域にあった剣のくせにすでに呪われている。勇者以外には抜けない仕様だったくせに。
流石にアズラルトもミズイロと一緒にわたわたするしかない。
「どっ、どうするんだこれ……!お前いつ戻るんだ!?」
「知りませんよぉ!」
びぇぇ、と泣き出したミズイロは幼い容姿と相まって庇護欲をそそり、アズラルトの中のまだまだ小さな父性的な物がうず、と動く。
ふわふわとした名前と同じ淡い水色の髪に優しく触れたーー瞬間、ぼふん、と音を立てて元に戻り、ミズイロは絶望した。あわよくば子供を危険な旅には連れていけない、と家に帰れるのではないかと画策していたからである。
そしてアズラルトも絶望した。何でこんな成人男子の頭を撫でなくてはいけないのか、と。
そしてやはり、パァン!と小気味のいい音が試練の塔に響くのだった。
「叩かなくてもいいのにぃ……横暴……狂暴……暴れん坊王子ぃぃぃ……!」
「もう一発いってやろうか?」
「脳が揺さぶられたら脳細胞死ぬんですよ!そんなに叩いて僕の頭がバカになったら王子様のせいですからねーー!」
うわぁぁぁんバカァァァ!と泣くミズイロを引きずって塔の出入口まで戻ってきたものの、この先どうしたら良いのだろう。一度王都に戻って(呪われた)聖剣を手に入れたと報告すべきなのだろうか。というか、この呪いは一体どういう類いの物なのか鑑定士を頼った方が良いのだろうか。今のところチラリと見下ろしたミズイロはバカァァァ!嫌いぃぃぃ!と叫ぶのみで他に何か異常があるようには見えない。一応ステータスを確認したが状態異常はなかった。
アズラルトは、ふむ、と空を見上げ思った。空が青いなぁ。ーーつまりは現実逃避である。
しかしいつまでも現実逃避し続けるわけにもいかない。ひとまず王都に戻ろう。そうしよう。それで誰か別の人にミズイロを押し付けてしまおう。きっとそれがいい。
うんうん頷いて大型魔術二輪の元へ戻った時であった。
「迷っておるのぉ、お若いの」
大型魔術二輪の横にいかにも怪しげな黒ローブの人物。紫の布がかかった机にある水晶という名のガラス玉は今日もピカピカしている。
一瞬の間の後ミズイロは叫んだ。
「何やってるのおばあちゃーーーん!!?」
「悩める者の所にオババありじゃ。ふむふむ、何と。聖剣が呪われておったとな?」
「何で知ってるのおばあちゃーーーん!!?」
アズラルトは思った。もしかしてラスボスってこいつじゃね、と。というか聖剣呪ったのもこいつじゃね?
「たわけが!」
すこーん!と頭に当たる風の魔術は突っ込み専用魔術なのか。
「聖剣が呪われておるのは国王陛下もご存知よ!」
「じゃあ何で僕に抜かせたんですかぁ!」
わざわざ呪われに来たようなものだ。酷すぎる。ミズイロはさめざめと泣いた。
「抜かねばどんな呪いかわからぬからな!」
「わからないのに抜かせたの!?僕が死んじゃったらどうしてたの!?」
占いオババは黙って合掌した。
アズラルトは思う。やっぱりラスボスってこいつじゃね、と。
「冗談はさておき……死ぬ呪いでない事はわかっておったのじゃ。しかしよもや幼子になるとはのぅ」
「何で知ってるの!?」
「入り口から見てた」
見てたんかーい。その水晶(という名のガラス玉)で占ったとかじゃないんかーい。ミズイロとアズラルトの心が初めて一つになった瞬間だった。
「だが残念だったのう、アズラルト王子」
「は?何が」
旅の相方がこんな泣き虫弱虫勇者だったという事だとしたら今すぐ叫びたい。「チェンジで!」と。
だがオババはうりうりと肘でアズラルトを小突きながら、
「大抵こういう時のデメリットは発情状態がお約束だろう?幼子とは……可哀想に。えっちな事は出来ぬのぉ」
などと宣うので、とりあえずアズラルトは無言でスラリと剣を抜いた。
アズラルトの剣は特殊仕様だ。魔力も高く剣の腕も申し分ない彼は剣に魔法を付加して戦う魔剣士である。故にその刀身は魔力を通しやすいクリスタルで作られている為、何の魔力も付加されていない時には無色透明だ。しかしすぐ砕けそうな見た目に反し、腕のいい王族御用達の鍛冶士に鍛えられたその切れ味は最高級な代物なのだ。
とりあえずオババは黙った。素知らぬ顔をして口笛を吹いた。それから言った。
「ミズイロの快楽に染まる顔……愛らしいと思うがのぅ」
「まだ言うかこのクソババア!!」
「ふぁっふぁっふぁっ」
ぶんっ、ぶんっ、と風を切って振り回す剣をゆらりゆらりとかわす占いオババ。やっぱりラスボスってこいつじゃね、とアズラルトはそう思えてならない。
良くある、序盤からいてやたら的確なアドバイスをくれる仲間がボスだった、というヤツである。中には序盤からいるのに108人の仲間の中に名前がなくて絶対敵だと神視点でバレてたやつもいるけれど。
「それはともかく」
アズラルトの剣を白刃取りで止める元気なババアは言う。
「ひとまず西へ向かうのじゃ。西の町では夜な夜な魔物が出て若い娘をさらっていくと言う。まず西へ向かい、その魔物を退治するのじゃ」
それと、とオババは真剣な顔をした。
「……ミズイロのお尻にはホクロがある」
「知るかァァァァ!!!」
「言わないでよおばあちゃーーーん!!!」
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勇者 ミズイロ LV2
魔剣士 アズラルト LV10 🔽】
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