【本編完結】農民と浄化の神子を並べてはいけない

ナナメ(新作についてお知らせ)

文字の大きさ
38 / 203
第一章 異世界に来ちゃった

突然の…

もう着く、と言われたのにディカイアスの温もりとふんわりバニラの香りで癒されていつの間にかまた寝ちゃってたらしく。

「着いたぞ」

と言われて一瞬何の事かわからなかった。
着いたってどこに…?

ハッ!?着いた!?騎士団寮に戻ってきたのか!!

「また寝て…………」

また寝てたー!と叫ぼうとして、もうホントに至近距離にお綺麗な顔がありまして。むしろ今ちょっと唇の端に…当たっちゃったよね…?辛うじてかなり唇寄りのほっぺちゅ、だったけど…ごごごごごめんなさーーーーい!!!!

一人アワアワする俺を置いてけぼりに、ディカイアスは俺を抱えて馬車から降りた。
途端にザワッ、となったのは仕事帰りの騎士さん達だ。そうだった。ここは騎士団寮の真ん前だ。しかも普段なら俺はとうに風呂を済ませて部屋に行ってる時間だけど、この時間は帰ってくる騎士さん達で玄関がごった返すんだった。

「団長が…!」

「団長が何か花を飛ばしてるぞ…!」

「おい、見ろよあの緩んだ顔…!!天変地異の前触れか…!!?」

ヒソヒソ話してるつもりなんだろうけど元々声のデカイ騎士さん達だ。全部丸聞こえなんだけど…

(花なんか飛んでないよな…)

物理的に飛んでるんじゃなければ心証的な物だと思うけど、そんな雰囲気欠片もないし。というか顔もいつもの無表情にしか見えない。どの辺りが緩んでるんだ…??俺にはさっぱりわからん。

でもディカイアスは何か心当たりがあるのか、ゴホン、とわざとらしい咳払いのあとジロッと周りを睨み付ける。途端に蜘蛛の子を散らすように逃げていく騎士さん達。

何て言うか…ノリが男子高生みたいなんだよな…。

「んーっと…、何かいいことあった?」

もしかして降りたらすぐ先に好きな人でもいたとか?
もしそうなら可愛いな!あ、でも逆に奥手なのか?俺もどっちかと言えば好きな子にすぐ好きって言えなくてモジモジするタイプだもんな。それで先にかっさらわれた事もあるもん。
でもディカイアスのこの顔で奥手だなんて勿体ない!朝みたいなあの蕩ける微笑みを浮かべて、好きだ、とでも言ったら誰でも着いてきちゃうと思うのに。

「…ディカイアスはカッコイイから自信持って告白したらいいと思う」

「…何の話しだ?」

「えっ、今の騎士さん達の中に好きな人でもいたんじゃないの?」

いつも無表情なディカイアスに、こいつマジか、みたいな顔をされた。俺でもわかる表情変化は嬉しいけどそんな顔しないでくれよ!傷つくよ!

「…そうだな。好ましいと思う相手はいる」

「なんだ!やっぱそうなんじゃん!!」

ん?じゃあ何で俺はあんな顔をされたんだ?あ、隠してたのに俺にバレたからびっくり、って顔だったのかな?

「…相手は全くわかっていないようだがな」

「鈍い人なんだな~。ならどんどんアピールした方が良いと思う!鈍い人にはしっかり伝えないと伝わらないからな!」

と、俺も友達に言われた事があります。

「…そうだな。そうした方が良さそうだ」

うんうん。そうだよ。ディカイアスは俺と違ってイケメンなんだから、もっと自信持ってガンガンいったら良いよ!
何て思ってたら。

ちゅ、と、何だか可愛らしい音と共に頬にキスされた。

「ひぇ…っ!な、なな、何で…っ!!?」

「アピールした方が良いんだろう?」

「俺にしてどうするの…!?」

それは好きな人にしてください!!!俺にしても俺の心臓が爆発するだけで、ディカイアスには何のメリットもないだろ!
ハッ!?これは新手の暗殺手段…!!?

「お前の助言を実行してるだけだが?鈍い相手にはしっかり伝えないと駄目だと言った」

「言ったけど!俺にやっても………え?」

あれ?何でこのタイミングで俺にほっぺちゅ、とかやる?冗談でしたー、とか練習でーす、とか言うオチ?え?でも実行してる、って…えぇぇぇ…??

「…俺…?」

いや、待て。自惚れるな、とか何勘違いしてんだ、とか言われるんじゃないか?だっておかしいよな?こんなに引く手あまたな顔してるディカイアスが俺を好き、とか言うわけない。きっと気のせいだ。そうに違いない。

「お前は鈍そうだからな。早めに手を打たないと横から持っていかれる」

「俺ぇぇぇぇーーー!!!!?何で!!!?」

「…恋慕するのに理由がいるのか?」

「えぇぇぇ!!!言い方かっこよ!いや違う!えっと…!俺!?何で!!!?」

もう何で?以外言葉がないよ!!
だってディカイアスだよ!?王族と懇意な公爵家の人で王子様と乳兄弟で騎士団長のイケメンだよ!!!?こんな優良物件俺なんかよりそれこそ貴族のお嬢様…って女の子いないんだった!貴族のえっとメム様?達がほっとかないだろ!!?

「…恋慕するのに理由がいるのか?」

「2回目ー!?」

いや、でも好きになるのにきっかけとかあるでしょ!?俺まだディカイアスとはそんなに触れ合ってない気がするんだ!

「すぐに答えろとは言わん」

「答えなきゃ駄目ぇ!!?」

いや、答えなきゃ駄目だろ。びっくりするあまり思わず口をついて出てきたけど、内心自分で突っ込む。恋しいと言われて返事しないなんて最悪だもんな。

「…うぅ…、ひ、ひとまず、お友達?からお願いします…」

天国の母さん、父さん。俺、初めて人から告白されました。相手、男ですけど。

感想 91

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)