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第三章 神子
出掛ける
仕事に行く二人を見送ってディアとご飯を食べて。今日は少しだけ固形っぽくなったパン粥だったんだけど、これはオーマイアが用意したんだって。…オーマイアさん、って言ったら敬称はつけるなって遠回しに注意されちゃったので呼び捨てにするけどやっぱり最初は落ち着かない…。アンリエッタさんもさん付けなのに、って言ったら、傭兵には王族や騎士団の色々は通用しないから仕方ないって言われた。
で。オーマイアが用意してくれたパン粥はトマトっぽい味がして美味しくってやっとコップ一杯食べれるようになったんだけど、やっぱり俺はローゼンが作ってくれるパン粥も好き。と、いうか早くパン粥以外も食べれるようになりたいなぁ…。朝からモリモリ食べてるディアがちょっと羨ましかったよ。
食後にまた緑茶っぽいお茶を飲んで、パーピュアの薬を飲んで。今更ながらここがマクシノルト家のタウンハウスとはまたさらに別の屋敷だって知った。普段はほとんど使ってなかったその屋敷をディアが貰い受けたんだそうだ。騎士団寮だとベッドが狭くてみんな一緒に寝れないから、って言われたら恥ずかしいけど嬉しい。去年の冬、旅を中断してた期間は騎士団寮の皆の部屋を日替わりで回ったんだよな。
なんて懐かしんでたら。
「スナオ、少し出掛ける」
って言われて反射で手を振る。
「え、うん。いってらっしゃい」
「違う。お前もだ」
え!てっきりディアが出掛けるかと思ったら俺も出ていいの?だったらちょっと外の空気吸いたい!
「どこに行くの?」
「パーピュアの所だ。一度診察したいと言っている」
なんと!行ってもいいの!?行きたい行きたい!出産おめでとうって言いたいし、心配かけてごめんって謝りたいし、お茶のお礼も言いたい!…というか子供産んだばっかりだよな…?パーピュア働きすぎじゃない?でもパーピュアの赤ちゃん見たい!
一気にテンションが跳ね上がる俺に笑ったディアがオーマイアを呼んで支度をしてくれる。
外は寒いからって着せてもらった、いつぞやローゼンが用意してくれたモコモコポンチョは大分くたびれてきてるけど、これ暖かくて気に入ってるんだよな。旅の途中で寒くて耳が痛いって言ったらティエが買ってくれた耳当ても、手がかじかんでうまく動かせない事に気付いたディアが買ってくれた手袋もお気に入りだ。アークオランの冬は短いから使う時は少ないんだけど。
俺の持ち物一つ一つにもこうやって番のみんなとの思い出がある。まだ出会って2年なのに沢山の思い出が。きっと朝陽達もこうやって積み重ねてきた物がある筈だ。その大事な思い出と一緒に一度は全てを諦めようとした朝陽が『諦めたくない、生きたい』って叫んだ。外に出たらまだ雪は静かに降ってて馬に揺られながら、早く雪が解けて朝陽を助けに行きたいって思う。
「…昨日、神様っぽい人と話をしたんだ」
白い息を吐きながら俺をちらり、と見たディアの視線が先を促してくれる。
「断片的で定かじゃないんだけど、朝陽は人質だから殺さない、って。あとコトネ、助けてって言ってた」
こうして口に出してみたら、神様っぽい人の人質みたいな言い方だけどどうなんだろう。神子だって名乗ってたあの人が朝陽を人質にしてるって事じゃなくて、神様が朝陽を人質にしてるのか?そのコトネっていう何かだか誰かだかを助けさせる為に。もし神様が人質にしてるなら、ホントにこの世界の神様は碌なもんじゃないな。
「コトネ…?」
ふと首を傾げたディアは記憶を辿るようにちらちらと雪が舞う空を見上げる。
「聞き覚えある?」
「…救いの神子がそんな名前だった筈だ」
どういう事だろう。神様らしき人が救いの神子を助けて、って言ってる?でもその神子様って何千年も前の人だよね?
というかこの世界と俺がいた世界の時間軸ってどうなってるんだろう。昔の神子様も俺と同じ異世界から来たって言ってたけど、コトネって俺の世界で何千年も前の人の名前っぽくないんだよな。
まぁ時間軸がどうとかはとりあえず置いておいて…、過去の文献に一番詳しいのはパーピュアらしいからその件も聞いてみよう。
ディアが向かったのは離宮だった。もう離宮にはイリツォーネ公爵もルシアム伯爵もいないけど、第二騎士団がしっかり守ってくれてる。
ディア達のご両親にも去年の冬ここで一度会ったんだよな。雪で旅が中断して、戦いの後始末も一段落ついて、それできちんと挨拶しておこう、ってなって。
…うん。思い出すとまたガッチガチに緊張するから今は忘れていよう…。
馬から降りて、今度はディアが抱き上げてくれて。歩けるよ、と言いたかったけどまだ足フラフラしてるから案内してくれてる騎士さんについていけるとは思えない。普段でも若干小走りになるくらい歩くの速いからなー。
大人しくディアの首に抱き付いておく。ついでに甘いバニラの匂いも嗅いでおく。相変わらずいい匂い…。癒しだ…。
だけど人前だからあんまりくんかくんかし続けるわけにいかない。完全なる変態だからな!
ここの騎士さん達は二人一組行動だから、俺達の背後についてるもう一人の騎士さん完全に明後日の方向向きながら歩いてるし。ホントすいませんでした。
で。オーマイアが用意してくれたパン粥はトマトっぽい味がして美味しくってやっとコップ一杯食べれるようになったんだけど、やっぱり俺はローゼンが作ってくれるパン粥も好き。と、いうか早くパン粥以外も食べれるようになりたいなぁ…。朝からモリモリ食べてるディアがちょっと羨ましかったよ。
食後にまた緑茶っぽいお茶を飲んで、パーピュアの薬を飲んで。今更ながらここがマクシノルト家のタウンハウスとはまたさらに別の屋敷だって知った。普段はほとんど使ってなかったその屋敷をディアが貰い受けたんだそうだ。騎士団寮だとベッドが狭くてみんな一緒に寝れないから、って言われたら恥ずかしいけど嬉しい。去年の冬、旅を中断してた期間は騎士団寮の皆の部屋を日替わりで回ったんだよな。
なんて懐かしんでたら。
「スナオ、少し出掛ける」
って言われて反射で手を振る。
「え、うん。いってらっしゃい」
「違う。お前もだ」
え!てっきりディアが出掛けるかと思ったら俺も出ていいの?だったらちょっと外の空気吸いたい!
「どこに行くの?」
「パーピュアの所だ。一度診察したいと言っている」
なんと!行ってもいいの!?行きたい行きたい!出産おめでとうって言いたいし、心配かけてごめんって謝りたいし、お茶のお礼も言いたい!…というか子供産んだばっかりだよな…?パーピュア働きすぎじゃない?でもパーピュアの赤ちゃん見たい!
一気にテンションが跳ね上がる俺に笑ったディアがオーマイアを呼んで支度をしてくれる。
外は寒いからって着せてもらった、いつぞやローゼンが用意してくれたモコモコポンチョは大分くたびれてきてるけど、これ暖かくて気に入ってるんだよな。旅の途中で寒くて耳が痛いって言ったらティエが買ってくれた耳当ても、手がかじかんでうまく動かせない事に気付いたディアが買ってくれた手袋もお気に入りだ。アークオランの冬は短いから使う時は少ないんだけど。
俺の持ち物一つ一つにもこうやって番のみんなとの思い出がある。まだ出会って2年なのに沢山の思い出が。きっと朝陽達もこうやって積み重ねてきた物がある筈だ。その大事な思い出と一緒に一度は全てを諦めようとした朝陽が『諦めたくない、生きたい』って叫んだ。外に出たらまだ雪は静かに降ってて馬に揺られながら、早く雪が解けて朝陽を助けに行きたいって思う。
「…昨日、神様っぽい人と話をしたんだ」
白い息を吐きながら俺をちらり、と見たディアの視線が先を促してくれる。
「断片的で定かじゃないんだけど、朝陽は人質だから殺さない、って。あとコトネ、助けてって言ってた」
こうして口に出してみたら、神様っぽい人の人質みたいな言い方だけどどうなんだろう。神子だって名乗ってたあの人が朝陽を人質にしてるって事じゃなくて、神様が朝陽を人質にしてるのか?そのコトネっていう何かだか誰かだかを助けさせる為に。もし神様が人質にしてるなら、ホントにこの世界の神様は碌なもんじゃないな。
「コトネ…?」
ふと首を傾げたディアは記憶を辿るようにちらちらと雪が舞う空を見上げる。
「聞き覚えある?」
「…救いの神子がそんな名前だった筈だ」
どういう事だろう。神様らしき人が救いの神子を助けて、って言ってる?でもその神子様って何千年も前の人だよね?
というかこの世界と俺がいた世界の時間軸ってどうなってるんだろう。昔の神子様も俺と同じ異世界から来たって言ってたけど、コトネって俺の世界で何千年も前の人の名前っぽくないんだよな。
まぁ時間軸がどうとかはとりあえず置いておいて…、過去の文献に一番詳しいのはパーピュアらしいからその件も聞いてみよう。
ディアが向かったのは離宮だった。もう離宮にはイリツォーネ公爵もルシアム伯爵もいないけど、第二騎士団がしっかり守ってくれてる。
ディア達のご両親にも去年の冬ここで一度会ったんだよな。雪で旅が中断して、戦いの後始末も一段落ついて、それできちんと挨拶しておこう、ってなって。
…うん。思い出すとまたガッチガチに緊張するから今は忘れていよう…。
馬から降りて、今度はディアが抱き上げてくれて。歩けるよ、と言いたかったけどまだ足フラフラしてるから案内してくれてる騎士さんについていけるとは思えない。普段でも若干小走りになるくらい歩くの速いからなー。
大人しくディアの首に抱き付いておく。ついでに甘いバニラの匂いも嗅いでおく。相変わらずいい匂い…。癒しだ…。
だけど人前だからあんまりくんかくんかし続けるわけにいかない。完全なる変態だからな!
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