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第三章 神子
アンダルク
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第一騎士団が協力してくれても琴音の所に行くにはかなりの労力を使った。っていうか自分で呼んだんだからモンスターなんて配置するんじゃありません!琴音は俺を殺したいのか仲間にしたいのかどっちなんだ。それとも実は俺は黙って突っ立てても襲われないとかだろうか。怖いから試したりしないけど。
相変わらず左右正面背後…ありとあらゆる所から襲ってくる敵を影の皆が倒してくれる。いつもは名の通り影にいる事が多い彼らが前戦で戦ってるのは新鮮だ。
「琴音の後ろに瘴気の元がある!」
さっきよりだいぶ近付いたからわかる。琴音の背後にはこの真っ暗な空と同じくらい真っ黒な瘴気がある。遠くからだと琴音自身の瘴気なのか判断出来なかったけど、ここまで来たら間違いない。
浄化するにも時間がかかりそうな大きさだ。琴音を何とかしてからじゃないと浄化の邪魔されそう。けどあれを浄化しないと騎士団はモンスターで手一杯で琴音を止める事が出来ない。
「___ティエ…!」
「わかってる。全力で止めるから安心して行って」
本当はついて行きたいけど、って小さな声が聞こえた。でも他の影の皆だけじゃ琴音どころかきっとアンダルクも止められない。ティエがいるからって楽勝なわけじゃないけど、それでもいるのといないのとじゃ全然違うだろう。あの二人が俺の邪魔をしないように止めておいてもらわないと俺達には勝ち目がないんだ。
「スナオ!」
「パーピュア!」
後ろから駆け寄って来たパーピュアが俺の横から飛びかかって来た敵を風で切り裂いた。
「僕も行く。ここで全部終わらせるんだ!」
「レイアゼシカは!?」
「護衛が守ってる!僕が守るより安全だ!」
いや、護衛はパーピュアを守る為でもあるのでは!?
「琴音が神子なら魔力はお前と同じ3Sだ。浄化中無防備なお前の護衛がいるだろう!」
浄化中の護衛をする予定だった魔法隊はモンスターの足止めを食らってる。
確かに俺がやられたらもう浄化するのは不可能だ。結局まだパーピュアが提案したっていう神子に代わる浄化の方法は見つかってないから。こんな短期間で見つけられるなら琴音があんな目に遭う必要もなかっただろうしな。
ただ3Sならパーピュアより琴音の方が強いって事だ。
「パーピュアが死んだら意味ないからな…!?」
「馬鹿言うな。我が子を置いて死ぬわけない!」
ここで言い合いしてる時間はない。影とパーピュアの護衛の第二騎士団の小隊を連れて丘を駆け下りる。ぬかるんだ地面に足を取られそうになりながら。離れた場所で聞こえる琴音の放ったらしき魔法の爆音に唇を噛み締めながら。
(琴音は俺より向こうを優先したのか…)
早く浄化しないと犠牲はどんどん大きくなる。あの夢が正夢にならないように俺はここにいるんだ。皆を助けに引き返したい気持ちを押し殺して先へと進んだ。
目の前は真っ暗な靄。2年前は何も見えなかった瘴気の真っただ中だ。でも今はうまく瘴気を防げるようになって周りはちゃんと見える。だから気付いた。真っすぐ俺に向かって飛んでくるナイフに。
ギン、と鈍い金属音を立ててナイフを叩き落としたのはエテュセで、俺はナイフを投げてきた相手を睨みつけた。瘴気の元はもうその後ろにある。
「___アンダルク」
名前を呼んだのはグリニッジだった。
「グリニッジか」
濃紺の髪に深紅の瞳。脳裏に過る燕尾服に体が強張るけど、目の前の相手は俺が知ってる人物じゃない。
でも…良かった。琴音とアンダルクが一緒にいなくて。これなら多少マシな筈だ。ほんの少しだけど。
「どうしてだ。アンダルク」
「___どうして、とは?」
「何故カルヒルトを殺した?」
おっと昔話が始まりそうな雰囲気だな?今の内に…___なーんてうまくいくわけないですよね!!!知ってた!
ドン、と頭の上に落ちてきた岩の塊を飛び退いて避ける。雨に交じって次々降ってくる石礫を頭上に展開した結界で防ぎながら立ち止まった。もう目の前に瘴気の元があるっていうのに邪魔だな!
「殺したのはダティスハリア王家だろう」
神子召喚の儀式を行うのに犠牲にしたのは王家の人間だ、と言われた瞬間グリニッジが斬りかかる。
「そそのかしたのはお前だ…!!!」
「何を根拠に?」
「国王の部屋に出入りしていた人間を片っ端から調べた」
ダティスハリアに濃紺の髪の人間は多いけど、深紅の瞳を持つ人間は多くないらしい。ダリアセンはその頃まだ兄であったカルヒルトの元にいた。カルヒルトの婚約者であったマグアイーズと共に。ならその時に王城へ出向けた深紅の瞳を持つ人物はそう多くはいない、とグリニッジは言う。
「信じられなかったし信じたくなかったよ」
一人一人アリバイを確かめた。信じたくなくて何度も調べた。でも結局答えは一つしかなかった。
そう言って震える背中をエテュセが黙って見てる。
「国王をそそのかして、実の弟を生贄にして召喚の儀式をさせたのはお前だろう!!」
「___だったら?」
結局その召喚で神子は呼び出されてない。俺がこの世界に来た時と時期が合わないからだ。そしてその後召喚の儀式をした形跡はないらしい。
「お前は…!マグアイーズを壊す為だけにカルヒルトを殺した!!」
俺には信じられないけど、あの狂った王は優しいだけの王子だった。欲もなく、ただその日を生きているだけの。婚約者とその家族と暮らすことが幸せだっただけの優しい王子を狂った王にした元凶はコイツだ。
「国を滅ぼすには必要な犠牲だった。___結局マグアイーズも大して役には立たなかったが」
「どうしてそんなに国を滅ぼしたいんだ?琴音はまだわかるよ。でもあんたは何でそんなに全てを憎んでるんだ」
アンダルクは小さく笑う。
「コトネ様の為だ」
相変わらず左右正面背後…ありとあらゆる所から襲ってくる敵を影の皆が倒してくれる。いつもは名の通り影にいる事が多い彼らが前戦で戦ってるのは新鮮だ。
「琴音の後ろに瘴気の元がある!」
さっきよりだいぶ近付いたからわかる。琴音の背後にはこの真っ暗な空と同じくらい真っ黒な瘴気がある。遠くからだと琴音自身の瘴気なのか判断出来なかったけど、ここまで来たら間違いない。
浄化するにも時間がかかりそうな大きさだ。琴音を何とかしてからじゃないと浄化の邪魔されそう。けどあれを浄化しないと騎士団はモンスターで手一杯で琴音を止める事が出来ない。
「___ティエ…!」
「わかってる。全力で止めるから安心して行って」
本当はついて行きたいけど、って小さな声が聞こえた。でも他の影の皆だけじゃ琴音どころかきっとアンダルクも止められない。ティエがいるからって楽勝なわけじゃないけど、それでもいるのといないのとじゃ全然違うだろう。あの二人が俺の邪魔をしないように止めておいてもらわないと俺達には勝ち目がないんだ。
「スナオ!」
「パーピュア!」
後ろから駆け寄って来たパーピュアが俺の横から飛びかかって来た敵を風で切り裂いた。
「僕も行く。ここで全部終わらせるんだ!」
「レイアゼシカは!?」
「護衛が守ってる!僕が守るより安全だ!」
いや、護衛はパーピュアを守る為でもあるのでは!?
「琴音が神子なら魔力はお前と同じ3Sだ。浄化中無防備なお前の護衛がいるだろう!」
浄化中の護衛をする予定だった魔法隊はモンスターの足止めを食らってる。
確かに俺がやられたらもう浄化するのは不可能だ。結局まだパーピュアが提案したっていう神子に代わる浄化の方法は見つかってないから。こんな短期間で見つけられるなら琴音があんな目に遭う必要もなかっただろうしな。
ただ3Sならパーピュアより琴音の方が強いって事だ。
「パーピュアが死んだら意味ないからな…!?」
「馬鹿言うな。我が子を置いて死ぬわけない!」
ここで言い合いしてる時間はない。影とパーピュアの護衛の第二騎士団の小隊を連れて丘を駆け下りる。ぬかるんだ地面に足を取られそうになりながら。離れた場所で聞こえる琴音の放ったらしき魔法の爆音に唇を噛み締めながら。
(琴音は俺より向こうを優先したのか…)
早く浄化しないと犠牲はどんどん大きくなる。あの夢が正夢にならないように俺はここにいるんだ。皆を助けに引き返したい気持ちを押し殺して先へと進んだ。
目の前は真っ暗な靄。2年前は何も見えなかった瘴気の真っただ中だ。でも今はうまく瘴気を防げるようになって周りはちゃんと見える。だから気付いた。真っすぐ俺に向かって飛んでくるナイフに。
ギン、と鈍い金属音を立ててナイフを叩き落としたのはエテュセで、俺はナイフを投げてきた相手を睨みつけた。瘴気の元はもうその後ろにある。
「___アンダルク」
名前を呼んだのはグリニッジだった。
「グリニッジか」
濃紺の髪に深紅の瞳。脳裏に過る燕尾服に体が強張るけど、目の前の相手は俺が知ってる人物じゃない。
でも…良かった。琴音とアンダルクが一緒にいなくて。これなら多少マシな筈だ。ほんの少しだけど。
「どうしてだ。アンダルク」
「___どうして、とは?」
「何故カルヒルトを殺した?」
おっと昔話が始まりそうな雰囲気だな?今の内に…___なーんてうまくいくわけないですよね!!!知ってた!
ドン、と頭の上に落ちてきた岩の塊を飛び退いて避ける。雨に交じって次々降ってくる石礫を頭上に展開した結界で防ぎながら立ち止まった。もう目の前に瘴気の元があるっていうのに邪魔だな!
「殺したのはダティスハリア王家だろう」
神子召喚の儀式を行うのに犠牲にしたのは王家の人間だ、と言われた瞬間グリニッジが斬りかかる。
「そそのかしたのはお前だ…!!!」
「何を根拠に?」
「国王の部屋に出入りしていた人間を片っ端から調べた」
ダティスハリアに濃紺の髪の人間は多いけど、深紅の瞳を持つ人間は多くないらしい。ダリアセンはその頃まだ兄であったカルヒルトの元にいた。カルヒルトの婚約者であったマグアイーズと共に。ならその時に王城へ出向けた深紅の瞳を持つ人物はそう多くはいない、とグリニッジは言う。
「信じられなかったし信じたくなかったよ」
一人一人アリバイを確かめた。信じたくなくて何度も調べた。でも結局答えは一つしかなかった。
そう言って震える背中をエテュセが黙って見てる。
「国王をそそのかして、実の弟を生贄にして召喚の儀式をさせたのはお前だろう!!」
「___だったら?」
結局その召喚で神子は呼び出されてない。俺がこの世界に来た時と時期が合わないからだ。そしてその後召喚の儀式をした形跡はないらしい。
「お前は…!マグアイーズを壊す為だけにカルヒルトを殺した!!」
俺には信じられないけど、あの狂った王は優しいだけの王子だった。欲もなく、ただその日を生きているだけの。婚約者とその家族と暮らすことが幸せだっただけの優しい王子を狂った王にした元凶はコイツだ。
「国を滅ぼすには必要な犠牲だった。___結局マグアイーズも大して役には立たなかったが」
「どうしてそんなに国を滅ぼしたいんだ?琴音はまだわかるよ。でもあんたは何でそんなに全てを憎んでるんだ」
アンダルクは小さく笑う。
「コトネ様の為だ」
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