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新婚編
40.伝統衣装
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「このような服はキエザでも見かけますけれど、思ったよりも生地が厚いのですわね」
リリアーナは身につけたスカートの裾を抓んで、まじまじと服を見つめた。
リリアーナに用意されたのは、オズヴァルドの平民に親しまれている伝統衣装で、麻のブラウスの上から天然のウールで作られた色鮮やかなエプロンドレスを合わせたものだった。
いつも着ているようなドレスとは違い、動きやすさと暖かさが重視された衣装は、キエザには存在しないものだった。
オズヴァルドの北部にある山岳地帯は古くから牧畜が盛んに行われており、毛織物が特産物の一つとして知られている。
貴族や王族はそういった毛織物だけではなく、上質な絹や綿などをふんだんに使った衣服を着用しているが、一般的には身近で手に入りやすい毛織物が広く使われているようで、昨日の孤児院にいた子供たちが着ていたのも、毛織物のズボンやピナフォアだったのを思い出す。
「おや、気に入りませんでしたか?」
意外そうな顔をして見せるラファエロはというと、リリアーナと同じく男性用の伝統衣装で、袖口の広いブラウスにぴったりとした黒のズボンとベスト、それに癖の強い金髪を覆い隠す黒の丸っぽい帽子、という出で立ちだった。
「そんなことはありませんわ!………ただ、とても可愛らしいのですけれど………気慣れていないせいか、落ち着かない気分で………」
今日は街に出てお忍びデート、ということでラファエロはオズヴァルドの平民に広く用いられている伝統衣装を用意してくれていたらしい。
キエザを発つときの荷物にはこのようなものはなかった事を考えると、オズヴァルドに到着してから手配をしたのだろう。
だがいくらお忍びと言っても、人目を引く、しかも只者ではないオーラを纏うラファエロはともかくとして、オズヴァルドに知り合いがいるわけでもない自分が変装をすることに意味があるのだろうか、とリリアーナは考えていた。
「気にせずとも、そのうち慣れますよ。………ああ、でも………あなたのその美しさはその程度の衣装で隠すのは難しそうですね」
ラファエロは妖艶な笑みを浮かべると、緩やかに編み上げられたリリアーナのストロベリーブロンドの髪を掬い上げ、その先端に優しい口付けを落とした。
リリアーナは身につけたスカートの裾を抓んで、まじまじと服を見つめた。
リリアーナに用意されたのは、オズヴァルドの平民に親しまれている伝統衣装で、麻のブラウスの上から天然のウールで作られた色鮮やかなエプロンドレスを合わせたものだった。
いつも着ているようなドレスとは違い、動きやすさと暖かさが重視された衣装は、キエザには存在しないものだった。
オズヴァルドの北部にある山岳地帯は古くから牧畜が盛んに行われており、毛織物が特産物の一つとして知られている。
貴族や王族はそういった毛織物だけではなく、上質な絹や綿などをふんだんに使った衣服を着用しているが、一般的には身近で手に入りやすい毛織物が広く使われているようで、昨日の孤児院にいた子供たちが着ていたのも、毛織物のズボンやピナフォアだったのを思い出す。
「おや、気に入りませんでしたか?」
意外そうな顔をして見せるラファエロはというと、リリアーナと同じく男性用の伝統衣装で、袖口の広いブラウスにぴったりとした黒のズボンとベスト、それに癖の強い金髪を覆い隠す黒の丸っぽい帽子、という出で立ちだった。
「そんなことはありませんわ!………ただ、とても可愛らしいのですけれど………気慣れていないせいか、落ち着かない気分で………」
今日は街に出てお忍びデート、ということでラファエロはオズヴァルドの平民に広く用いられている伝統衣装を用意してくれていたらしい。
キエザを発つときの荷物にはこのようなものはなかった事を考えると、オズヴァルドに到着してから手配をしたのだろう。
だがいくらお忍びと言っても、人目を引く、しかも只者ではないオーラを纏うラファエロはともかくとして、オズヴァルドに知り合いがいるわけでもない自分が変装をすることに意味があるのだろうか、とリリアーナは考えていた。
「気にせずとも、そのうち慣れますよ。………ああ、でも………あなたのその美しさはその程度の衣装で隠すのは難しそうですね」
ラファエロは妖艶な笑みを浮かべると、緩やかに編み上げられたリリアーナのストロベリーブロンドの髪を掬い上げ、その先端に優しい口付けを落とした。
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